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2015年3月26日 (木)

コンサートの記(180) 三ツ橋敬子指揮 大阪交響楽団第191回定期演奏会

2015年1月16日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、大阪交響楽団の第191回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は期待の若手、三ツ橋敬子。

大阪交響楽団は、2014/15シーズンは生誕450年となるシェイクスピア(1564-1616。「人殺し色々」という覚え方がある)の作品を題材にした曲目を取り上げており、今日の演目は、オットー・ニコライの歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲、クラウディオ・カヴァッリーニ(1970- )のティンパニ協奏曲(世界初演。ティンパニ独奏:エンリコ・カリーニ)、エルガーの交響的習作「ファルスタッフ」。ニコライとエルガーの作品がシェイクスピアを題材にした楽曲である。

三ツ橋敬子は1980年生まれ。東京藝術大学音楽学部卒業、同大学院修了。イタリアのキジアーナ音楽院、更にウィーン国立音楽大学にも留学している。2008年に第10回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールに史上最年少で優勝。2010年に第9回アルトゥーロ・トスカニーニ国際指揮者コンクールで2位。同コンクールにおける女性指揮者初入賞者となった。いずれもイタリアの指揮者コンクールであるが、現在もヴェネツィア在住。

三ツ橋指揮のコンサートには2度接しているが、オーケストラを鳴らす術に長けており、優れた指揮者であることは確認済みである。

大阪交響楽団は、オーケストラの力も経済状況も大阪府に4つあるプロコンサートオーケストラの中で一番下。音楽監督・首席指揮者の児玉宏のアイデアによる「知られざる名曲路線」が評価されているが、その児玉も契約更新せずに退任することが決まっており、後任として外山雄三がミュージック・アドバイザーの肩書きで就く予定だが、オーケストラトレーナーとしても指揮者としても人気面でもピークをとうに過ぎている外山の起用には疑問符も付く。外山も自分が腕を振るえる最後の仕事としてオファーを受けたのかも知れないが。

大阪交響楽団の団員の枠のうち、空席が実に10人分もある。第2ヴァイオリン、チェロは副首席(次席)奏者が空席。コントラバスとトロンボーンに至っては首席奏者が空位状態にあるなど、かなり厳しい状況にある。今日も出演者の中で正規団員なのは半分にも満たず、エキストラ(楽隊用語で「トラ」)を多く入れての演奏である。

なお、今日のパンフレットのニコライとエルガーの曲に関しては、英国エルガー協会の会員で防衛大学校教授の等松春夫氏が執筆している。等松教授とは木屋町・龍馬で顔を合わせたことがあるが、直接、言葉を交わしたことはない。等松教授が龍馬から出る際に、エルガーの「愛の挨拶」を口笛で吹いてお送りしたことがある。等松教授はザ・シンフォニーホールにいらっしゃっていた。

ニコライの歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲。黒のスーツで登場した三ツ橋は小柄であるが、パワフルな指揮を見せる。三ツ橋と対面する座席(他のホールではP席と呼ばれる席)で聴くのは初めてであるが、棒が驚くほど上手い。以前のコンサートの感想で書いた通り、指揮棒を手にした右手と同等かそれ以上に左手がものを言っており、シャープで無駄のない指揮姿は理想的という言葉を使っても大袈裟ではないほどだ。少なくとも実演で、対面する席で聴いたことのある指揮者の中で、三ツ橋よりも優れたバトンテクニックを持つ日本人指揮者はいない。海外の指揮者を含めても三ツ橋より棒の上手い現役の指揮者はパーヴォ・ヤルヴィぐらいだろう。もっとも、棒が上手いからといって音楽もいいとは限らないのだが、三ツ橋の場合は棒の上手さが優れた音楽作りに生かされている。

第一音から普段の大阪交響楽団とは音の抜けが違うのがわかる。大阪交響楽団は淡泊な音色を持つオーケストラなのだが、三ツ橋は通常とは違った密度の良い音を引き出す。
リズム感も抜群であり、これはその後の曲目にもプラスに作用する。

時には笑顔を見せながら指揮する三ツ橋。心から音楽が好きなのであろう。優れた演奏となった。

クラウディオ・カヴァッリーニのティンパニ協奏曲。
クラウディオ・カヴァッリーニは、1970年生まれのイタリアの若手作曲家であり、ティンパニ奏者である。パルマ音楽院で打楽器、作曲、ピアノを学び、これまで87の作品を作曲している。打楽器奏者としても活躍しており、1998年から2001年まではイタリア国営放送交響楽団の打楽器奏者を務め、現在はヴェネツィアのフェニーチェ劇場オーケストラに所属している。
ティンパニ協奏曲は1995年に作曲されたものだが、その後、打楽器奏者としての活動が忙しくなったため、カヴァッリーニ自身のもその存在を忘れてしまっていた。その後、2011年にその存在を思い出し、弦楽パートにヴィオラを加えて、今日が世界プレミア公演となる。弦楽編成は風変わりで、ヴァイオリンは加わっておらず、ヴィオラが第1ヴィオラと第2ヴィオラに分かれて演奏する。今日の演奏では第1ヴィオラ5人、第2ヴィオラ4人である。チェロ、コントラバスは加わる。管楽器編成は特に変わったところはない。
ヴァイオリンが用いられないため、通常は第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンが陣取る舞台下手側が空き、そこにソリストのためのティンパニ5台が並べられる。

ティンパニソロのエンリコ・カリーニは、ローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団の首席ティンパニ奏者。指揮者としても活躍しているそうである。

カヴァッリーニのティンパニ協奏曲は、旋律よりもハーモニーの美しさで聴かせる曲。どことなく映画音楽を想起させる作風であるが、カヴァッリーニが意図的にそうしたのか、結果としてそうなってしまったのかは不明。

カリーニは威勢の良い演奏を聴かせる。第1楽章ではスネアドラムを叩くようにバチ二つで一台のティンパニを小刻みに叩き、第2楽章と第3楽章では、ティンパニの皮の部分ではなく、枠や下の金属の部分を叩く。皮ではなく枠や筒を叩くというのは和太鼓ではよく目にするが、ティンパニとしては特殊奏法となるだろう。
第3楽章では、特に豪快なティンパニの打撃が聴かれる。

三ツ橋の指揮はリズム感抜群であり、リズム楽器であるティンパニを独奏とするコンチェルトの伴奏としては最適のものとなった。

演奏終了後、作曲者であるクラウディオ・カヴァッリーニが客席からステージに呼ばれ、喝采を浴びた。アンコールはそのカヴァッリーニとカリーニの二人がティンパニを叩く、カヴァッリーニ作曲の「Two Timpani Players」。二人でハイタッチではなく、スティックタッチをして木の響きを出すなど、視覚的にも面白さに溢れた楽しい曲であった。

メインであるエルガーの交響的習作「ファルスタッフ」。曲名はクラシックファンなら知っているが、実際に耳にすることは少ない曲である。CDもほとんど出ておらず、私も今日の予習用にかなり前に1枚注文したが結局品薄で、今日に至るまでCDは届いていない。

三ツ橋はオーケストラを存分に鳴らすが、徒に響かせるだけではなく、造形、情感、音の密度まで「これがあの大阪響か!?」と驚くほどの快演を繰り広げる。エルガーのユーモア、高貴さ、快活さなどを鮮やかな手法で詳らかにしていく三ツ橋。大した指揮者である。

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