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2015年3月 4日 (水)

笑いの林(34) 元祖黒久1・1・1笑劇談「タクシードライバーエピソード」

2015年1月6日と7日 大阪・玉江橋のABCホールにて

両日とも、午後7時から、大阪・玉江橋にあるABCホールで、元祖黒久1・1・1笑劇談「タクシードライバーエピソード」を観る。

昨年の暮れにチケットを購入したのだが、その時は公演の内容を把握しておらず、お笑いの公演を2日続けてやるのかと思っていたが、実際は芝居の公演であった。12月30日にZAZA道頓堀に行ったときにチラシを見て、「タクシードライバーエピソード」が劇であることを知ったのだ。元祖黒久1・1・1は、メッセンジャーの黒田有(台本作家、演出家としては黒田たもつ名義)とザ・プラン9のお~い!久馬の二人が主宰する演劇ユニットであるようだ。

それにしても、二日間とも出演予定の早希ちゃんは公演当日にも仕事はあるはずで、稽古はどうするのだろうと思っていたが、新年4日に初めて稽古に参加したそうで、5日の夜に通し稽古を2回行い、その後は通す時間もないので場当たりのみで乗り切ったようだ。

MKならぬYKタクシーの休憩所が舞台であるが、舞台は2段に組まれており、平台を積んで高くした部分がYKタクシーの休憩所で現在進行形の場面、素の高さの部分はそれ以外の場所で主に過去の場という設定である。

PAを使った公演であるが、初日は平台を積んだ舞台の上に直接横長のマイクを置いたため、出演者が平台の舞台の上を歩いたり体重移動をしたりするたびに平台の軋む音が盛大に聞こえてしまっていた。2日目をそれを避けるため、見た目は少し不自然になるが、縦長の木材を平台に打ち付け、マイクを少し浮かせた状態で使用。軋む音はしなくなった。

脚本:黒田たもつ、お~い!久馬(ザ・プラン9)、森澤匡晴(スクエア)、演出:黒田たもつ。出演:黒田有(メッセンジャー)、お~い!久馬、西澤裕介(ダイアン)、津田篤宏(ダイアン)、桜 稲垣早希、寺下怜見(てらした・れみ。ブルーシャトル所属)、樋口みどりこ(つぼみ)、森澤匡晴ほか。森澤は当初は出演する予定はなかったのだが、黒田が強引に出番を作って出演することになったそうだ。日替わりゲストが登場し、6日はモンスターエンジン・西森、7日は笑い飯・西田がちょい役ではあったが出演した。

タクシードライバーの矢島(黒田有)は、高校を卒業してすぐに芸能事務所を立ち上げたことがあった。矢島は高校時代、フェスティバルホールを満員にするほどの人気を誇ったスーパーアイドル・松山みさき(寺下怜見)の大ファンであり、ファンクラブの会員証の番号も2番であった。同級生の北川(お~い!久馬)も松山みさきの大ファンであり、ファンクラブの会員証の番号は何と1番。矢島よりもファンである。北川はフェスティバルホールで出待ちし、松山みさきのマネージャーになりたいと望んでいた。だが、高校生がアイドルのマネージャーになれるわけがない。

そこで、矢島は高校卒業後に芸能事務所を立ち上げるという夢を語る。夢に過ぎないと北川は考えていたのだが、実際に矢島は芸能事務所を立ち上げ、矢島がプロデューサー、北川がマネージャーとして働くことになる。1フロアの小さな事務所であったが、矢島は一人の女の子をアイドルとして売りだそうとしていた。松山ひかり(寺下怜見。二役)。松山みさきの娘だった。
松山みさきは、全盛期に不倫の末、ひかるを産んだが、その後に芸能界から追放され、生活のために内職やレジ打ちのパートなどをしていたが、病気になり、今は生活保護を受けて何とか暮らしているという。だが、ひかるはアイドルではなく、アーティストとして売れたいと望んでおり、矢島に反発している。シングルを2曲出したが、いずれも北川の作詞・作曲で「どすこい女」シリーズというコメディソングにしかならないものであり、ひかるは「もしアイドルとして売りたいのなら、作詞・作曲はちゃんとした人に頼んで下さい。北川さんはマネージャーじゃないですか」と訴える。小さな事務所なので稽古場もなく、ひかりは近くにあるABC公園でボイストレーニングを行っていた。
それからしばらくして、ひかるはスキャンダルを起こして芸能界から引退。矢島と北川も芸能事務所を畳み、ひかる売り込みのためにあちこちの事務所から借りていた金を返すため、矢島はタクシードライバーに転職したのだった。

タクシー会社では、OLのヨシコ(樋口みどりこ)、コックの岡部(西澤裕介)、桜 稲垣早希演じる炊事場係の女性(役名はないようである)、津田篤宏演じる無線・配車係(やはり役名はないようだ)が働いている。

早希ちゃん演じる女性が、「ABCテレビの土曜日朝6時半からやっている『おはよう朝日土曜日です』に出ている桜 稲垣早希ちゃん可愛いなー」と言っているが、樋口みどりこ演じるヨシコは、「あの年齢であのコスプレはきつくないですか」と痛いところをつく。ヨシコが「つぼみというアイドルグループがあるんですけど」というと、早希ちゃんは「ない」と否定。ヨシコが「4月29日にCDをリリースするんです」と、樋口みどりこが所属するつぼみの宣伝をするが、早希ちゃんは「しない。NMBに押しつぶされてポーン」と縁起の悪いことを言う。ヨシコはダイエットをしていて、カレーもスプーンに一匙もない少量のものを注文するが、ダイアン・津田演じる配車係がダイアン・西澤演じるにコックの岡部にカレーを頼むと、西澤は津田に「お前に出すカレーはない」と言う。西澤に言わせると津田にカレーを出すだけでも恥なのだそうだ。そこから脱線して、津田が高校に落ちたという本当の話になる。本命の工業高校を受験したのだが滑り、商業高校に行ったのだという。ちなみにその年、本命の工業高校を受験した生徒の中で不合格になったのは津田だけだったという、嘘か本当かわからない話も出る。

矢島が現れたところで、女性二人が「矢島が女性トイレにいた」と話す。矢島は大きい方を催したのだが、男性トイレの個室は満席であり、もう我慢できないので、女性トイレの個室に入ったのだった。だが、折り悪く、そこで休業のタイムとなり、早希ちゃん演じる炊事係の女性、ヨシコ、更に、お~い!久馬演じる名前不明のOL、そして6日はダイアン・西澤が、7日は笑い飯・西田が演じたもう一人のOLが化粧室の鏡に向かって井戸端会議を始めてしまい、矢島は出るに出られなくなった。

女性達の井戸端会議はアドリブだらけであり、出演者それぞれが持っているエピソードを語ったり、STAP細胞だの、ASKAの麻薬所持問題などが語られる。
ようやくみんなが去ったと思った矢島は個室から出るが、トイレの入り口で、化粧道具を忘れたので戻って来た炊事係の女性とヨシコとばったり顔を合わせてしまう。

YKタクシーに新人の運転手が入って来る。他ならぬ北川であった。北川は逃げだそうとするが矢島に止められる(7日は、お~い!久馬が壁にぶつかり、「タクシーなんてシャボン玉」と、島田珠代のギャグを真似ていた)。

北川の過去が語られる。歌番組に出た、といっても「のど自慢」なのだが、アスカのコスプレをした早希ちゃんと二人で、“チャゲ&アスカよ”として「YAYAYAYA」を唄ったり(早希ちゃんは、エヴァンゲリオン弐号機を説明するアスカのセリフを語るだけ。なお、寺下怜見が、別の女の子の役で出演して「Let It Go」を唄ったのだが、音程もテンポもグダグダ。わざとではなく本当に音痴なのだそうで、基本的に歌は事務所からNGが出ているのだという。これでも懸命にカラオケで練習してきたのだそうだ)、映画の助監督をしたり(樋口みどりこが女優役。早希ちゃんがそのマネージャー役である。相手役のダイアン・津田は蒲生という役名で、蒲生のマネージャーをダイアン・西澤が演じている。ダイアン・津田演じる蒲生は童貞キャラで売っているという意味不明の設定がある)。バスの運転手をしていたり(モンスターエンジン・西森はこの時に、乗客として登場。更に「東大阪市の中小企業魂」というバスアナウンスに掛けた影アナを行っていた。影アナで行われるバスアナウンスに該当する人がバスを降りるという設定。ダイアン・津田は、「次は、田舎予備校。高校に落ちたことのある方はお降り下さい」、早希ちゃんは「次は、ガイナックス。勝手にキャラクターを演じてしまっている人はお降り下さい」と言われていた。ダイアン・津田はその他にも「次は、Google本社。グーグルマップに実の母親が映り込んでしまっている方はお降り下さい」でも降りていた。7日の早希ちゃんは「30を過ぎていい歳なのに、一晩中ドラゴンクエストに嵌まっている方はお降り下さい」とも言われるが、何故かダイアン・津田も一緒に降りてしまうという稽古不足と即興性重視故の展開となった。

実は当初に予定していたキャストが降りたため、急遽、脚本を変えて上演に間に合わせたそうで、場面転換が多すぎたのはそのせいかも知れない。森澤匡晴という、ウェルメイドな本を書く人を起用してもようやくこの程度なのは時間がなかったということもあるのだろう。笑えるということに関しては及第点だが、劇としては「あながち悪いとも言い切れない」という微妙な出来である。

早希ちゃんは思ったよりも出番は多かったが、自分に関することや、いつも言っているアスカのセリフ、日常会話程度であり(セリフの量もかなり削ったとのこと)、会話劇ではないのも幸いして、稽古不足の割りにはまずまずの出来。彼女は舞台女優としても才能はある方だと思うので、年に2回くらいは本格的な芝居に出て欲しいというのが本音である。

樋口みどりこは、ダンスシーンなどもあって色々大変だったと思うが、今のところちょっと華に欠ける感じは否めない。顔の造形はいいのだが。まだ若く化ける可能性もあるので今後に期待したい。

寺下怜見は、ちゃんとセリフは話せているのだが、感情が伝わってこない。感情が内にこもっているだけで外に表す方法をまだ心得ていないのだと思われる。滑舌良くセリフが語れても、それだけでは駄目だということである。滑舌が悪くても味のある演技をする俳優はいるので、技術でない、若しくは技術以上の何かを見つけると良いと思う。

メッセンジャー・黒田は芸人の、お~い!久馬も吉本芸人的演技であるが、二人にはそうしたものが求められているのであって、上手い演技は最初から期待されていないのだと思われる。実際、彼らが上手く演技できたとして満足するかといえばそうではなく、逆に居心地の悪いものになってしまうだろう。

ダイアンの二人は役者というより芸人そのままであったが、専門の若手女優、演技もする吉本の若手女性芸人、芸人的演技をする主宰二人の中にあってスパイス的な役割を果たしており、演技力はそもそも不必要なのだと思われる。演技の上手い吉本芸人だけだったらお笑いの要素はなくなってしまうだろうから。

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