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2015年5月31日 (日)

観劇感想精選(151) 市村正親、益岡徹、平田満 「ART」

2015年5月17日 京都四條南座にて観劇

午後1時から京都四条南座で、市村正親、益岡徹、平田満による三人芝居「ART」を観る。フランスの劇作家であるヤスミナ・レザの本をフランスの演出家であるパトリス・ケルブラが演出。テキスト日本語訳は、齋藤雅文、藤田美香、真藤美一の3人が手掛けている。

コメディであるが同時に心理劇であり、ボーッと観ていても楽しめる類の芝居ではない。

舞台はセルジュの部屋である。

幕が上がると市村正親演じるマークが舞台中央に立っており、友人であるセルジュ(益岡徹)が500万円もする絵を買ったと一人語りで説明するところから始まる。この芝居は一人語り、説明ゼリフ、傍白などがかなり多い。
セルジュが買った絵は、アントニウスという画家の作品であるが、縦120cm、横160cmの真っ白なキャンバスに白い絵の具の一本の線を入れただけというもの。マークはそれがアートだとはとても思えず、セルジュが本気なのか疑っている。マークによるとセルジュは「仕事でも人生においても成功している人間」であり、皮膚科の医師である一方で若い頃からギャラリー巡りをするなど芸術方面にも詳しいそうである。

購入した絵画を手にしながら舞台上手から現れたセルジュは、本当は550万円するものを特別に500万円で購入出来たとマークに語るのだが、マークは「そんなものはクソだ!」とにべもない。アントニウスはポンピドゥーセンターに絵画が飾られている程の才能のある画家であり、自分が購入したアントニウスの絵は作風が変わる前の貴重な作品だとセルジュはマークに説明する。
セルジュの一人語りがあり、マークは航空エンジニアの仕事をしているエリートだが芸術に関する知識はゼロ。15年来の友人であるが、エリートなので鼻につくところがあると説明される。
マークは、「だったらイワンの意見を聞いてみよう」と言うが、マークはイワンに関して「寛容な人物だが、それが友情においては致命的だ。寛容であるところは無関心であることに等しい」というようなことを言う。ここで二人は退場。

イワンを演じる平田満が「イワンです」と言いながら下手から登場。客席を笑わせる。イワンはマークやセルジュのようなエリートではない。文房具販売の仕事に転職したばかりであり、カトリーヌという女性と近く結婚する予定なのであるが、カトリーヌの実家が文房具店であるということで、文房具店を継ぐことの準備を始めているのである。
イワンは、マークからセルジュが購入した絵を見せられ、値段がいくらか当てるように言う。20万からスタートしたイワンは、マークにもっと値段は上だと促され、500万円まで行き着くが、そこまでの価値があるのかどうかは判断できないという。単なる白い絵ではなく特別な何かを感じるというのだ。

セルジュは白い線の他にグレーや、更には赤いものまで見えるという。流石に赤いものが実際に目に見える人はいないだろうが。

数日後、マークとセルジュはイワンと3人で映画を観に行く約束をしている。だが、イワンが中々やって来ない。セルジュはイワンについて「いつも遅刻する。時間通りに来た試しがない」と嘆いている。もう映画の上映開始時間は過ぎてしまったようだ。
セルジュはマークに、「傲慢なところがある」と指摘し、「セネカを読め」と言ってセネカの『幸福な人生について』を手渡す。
45分遅刻してイワンが登場。遅刻した理由を延々と語る。イワンには実母と継母がいるのだが、どちらとも関係が良くない。結婚相手であるカトリーヌにも実母(すでに亡くなっている)と継母がいるのだが、カトリーヌは継母とも関係がいいので、結婚式の招待状に実母と継母の両方の名前を載せようというのだが、イワンは自分の実母と継母の名前は載せたくない。それを正直にカトリーヌにいうと、自分だけ実母と継母の名前を出してイワンが出さないのはおかしいと言われたため、実母に名前を載せてもいいか電話で聞いたのだが、実母はイワンの話を断って、という内容であった。かなり長いセリフであり、平田満が全て語り終えると客席から拍手が起こった。
マークはイワンに「セネカを読め」と言って『幸福な人生について』を手渡し、客席から笑いが起こる。

マークはセルジュとの間に「私達の時間」ともいうべき時間があったと言うが、セルジュにはそんな覚えはない。マークはアートがセルジュを自分から引き離し自立させてしまったというのだが、セルジュはマークが芸術の知識がゼロであるため、「私達の時間」ともいうべきものも存在しなかったと思っている。マークは「私達の時間」の代わりに入ってきたのが真っ白な絵だと断言する。

真っ白な絵が何らかの寓喩的なものであることはわかり、ラストには一応の種明かしがあるのだが、その種明かしも暗示めいたものに終わっており、正体が明かされることはない。

平田満演じるイワンはコミックリリーフ的な役割であり(自分で「ピエロのイワン」と言うシーンがある)、笑えることをすることが多いのだが、セリフ自体は必ずしも分かり易いものではなく、時には暗示的になったりする。

3人が仲違いに終わるということはないのだが、白い絵の中から見出されたものから、「15年の歳月の経過」が浮かび上がってくる。

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