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2015年8月13日 (木)

観劇感想精選(159) 復曲能「菅丞相」

2015年8月2日 京都芸術劇場春秋座にて観劇

午後2時から、京都芸術劇場春秋座で復曲能「菅丞相(かんしょうじょう)」を観る。菅原道真を主人公(シテ)とした能の復活上演。能の演目の中には埋もれてしまっているものも多く、時には豊臣秀吉や徳川綱吉といった能好きの為政者が復曲を行うこともあるのだが、大槻文藏と京都造形芸術大学舞台芸術センターでは、今なお埋もれている能の演目復曲に力を入れていく予定である。

まず京都造形芸術大学舞台芸術研究センター所長の天野文雄による解説がある。第13代天台座主の法性坊尊意は様々な呪術を行ったそうであり、溢れている鴨川の水を左右にわけ、真ん中を通って京に入ったというモーゼのような伝説を残しているという。
また、「菅丞相」は後に「雷神」という題で改作されており、そちらの方が内容がわかりやすいのでよく知られているという。

出演:大槻文藏、大槻裕一、喜多雅人、福王和幸、茂山茂(大蔵流狂言方)、福王茂十郎。

なお丞相は普通は「じょうしょう」と読むのだが、「じょうしょう」というのは発音しにくいので「しょうじょう」という読み方が昔からなされているそうである。

比叡山延暦寺の第13代天台座主、法性坊(福王茂十郎)が、菅原道真が藤原時平による筑紫国に流されて以降、帝の体調が優れたいというので、加持祈祷を行っている。法性坊と侍僧は比叡山の素晴らしさを自慢する。

そこに菅原道真の亡霊(大倉文藏)が現れる。菅原道真は法性坊の仏弟子である。道真は己の境遇を嘆く。そして法性坊に帝から参内の勅があっても断ってくれと頼む。しかし法性坊は「二度までなら断るが三度目は参内せざるを得ない」と答える。それを聞いた道真は怒り狂う。

道真や法性坊が舞台から去ると、アイの茂山茂が出てきて、菅原道真の人生と藤原時平の讒言、そしてこれまでの舞台のいきさつを語る。

法性坊が、参内することになる。ところが一行が白川に差し掛かったところで、一天にわかにかき曇り、白川と鴨川が溢れて進めない状況になってしまう。菅原道真が火雷神(大槻裕一)を連れて登場。火雷神は法性坊の乗った牛車を押し戻す。押し戻された場所は推定によると現在の北白川別当付近であるらしい。造形大学のすぐそばである。

法性坊は菅原道真に自分は道真の仏道の師であると諭し、道真を諫めると道真は一転して改心し、法性坊の牛車を内裏に渡す手伝いをし、その後天満天神となって今も日本を守るという、なんだか妙に素直な亡霊となってしまう。ラストにドラマがないのが、この曲が主要演目から落ちた理由かも知れない。もう一つ、「菅丞相」では、讒言を行った藤原時平の影が薄く、どちらかというと帝が悪役になっている。ということで明治から終戦に至るまでの日本ではタブーに触れるとされたのかも知れないというようなことをアフタートークで前京都造形芸術大学舞台芸術研究センター所長で、現在は同大学の客員教授である渡邊守章は語っていた。

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