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2015年9月14日 (月)

コンサートの記(204) 「大阪クラシック」2015 第81公演 大植英次指揮大阪フィルハーモニー交響楽団演奏会

2015年9月12日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時15分から、フェスティバルホールで、「大阪クラシック」第81公演を聴く。大植英次指揮大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会。今年の「大阪クラシック」のトリ公演である。「大阪クラシック」の大植指揮大フィルによるトリ公演はこれまで、ザ・シンフォニーホールを舞台にしてきたが、今年、初めてフェスティバルホールがメインとなった。やはり勘違いした人がいたようで、後ろの方の席から「シンフォニーだと思って行ったら誰もいなくて、チケット見て、え! と思って」という女性の話し声が聞こえてくる。ただ、フェスティバルホールとザ・シンフォニーホールの間は歩いても通えるほど近いので、仮に気付くのがかなり遅れたとしてもタクシーを飛ばせば余裕で開演時間には間に合う。

曲目は、シベリウスの交響詩「フィンランディア」(作曲者生誕150年記念)とブラームスの交響曲第1番。途中休憩なしの比較的短いコンサートである。今日のコンサートマスターは田野倉雅秋。田野倉はコンサート本編終了後に大事な役割を任されることになる。

午後7時から、大植によるプレトークがあり、大植は今年が「大阪クラシック」10年目だというので、これまでの「大阪クラシック」を振り返ろうとする。大植は滑舌がかなり悪い上に言葉をつっかえる癖があって、何を言っているのかわからないことが多かったのだが、フェスティバルホールのスピーカーはかなり優秀なようで(ポピュラー音楽対応でもあるため)、何を言っているのかわかる。 ちなみに登場してすぐに、「第81公演なので、やっ(8)いー(1)な」と駄洒落を言ったが、大阪人が相手なので受けず、「やっぱり駄目ですかね」と言ってすぐに別の話を始めた。

最初の年に、チャイコフスキーの交響曲第4番を指揮し、抑えた指揮で「格好いい!」と言われたのだが、実は指揮中にズボンのお尻の部分が破けてしまい、大袈裟に指揮するとみっともないのでそうするしかなかったと明かされる。
2年目の2006年には、斎藤祐樹が「ハンカチ王子」として人気になり、当時、大阪市長であった關淳一氏から、「君が大阪のハンカチ王子だ!」と言われてハンカチをプレゼントされ、今も大切にしているそうで、今日は原物を取り出して見せた。ただ、その年、大植は太ってしまったため、「大阪クラシック」は普段はクラシックを演奏しない場所で行われることが多いのだが、仮設ステージを多くの人が取り囲んでいたため、大植はそこまで辿り付くのに難儀し、「大植です、通して下さい」と言ったものの、「あんた大植さんじゃない、大植さんはもっと格好いい」と言われて信じて貰えず、結局、本来自分がいるべき場所に辿り付くのに10分以上掛かってしまったという。その後、大植は再びスリムに戻るのだが、「日本で『草食男子』というのが流行っているらしい」と聞いた大植が(大植はドイツ在住である)、「そうかベジタリアンがブームなんだ。僕も野菜を沢山食べて痩せよう」という、流行語を勘違いしたがための怪我の功名だったという。

メインがショスタコーヴィチの交響曲第5番だった年は、演目がチャイコフスキーの交響曲第5番だと勘違いしてしまったまま指揮台に立ち、振ってもオーケストラが音を出さない。「あれ?」と思ってもう一度振るが音はない。そこで楽団員から「大植さん、ショスタコーヴィチです」と言われて間違いに気付いた大植は(大植は声楽を伴う曲以外は完全暗譜で指揮を行うため譜面台も総譜も用意しておらず、スコアを見て間違いに気付くということは出来ない。同じザ・シンフォニーホールで曲目を間違えたまま指揮したことが事件となったヘルベルト・フォン・カラヤンも完全暗譜であり、大植と同様のケースであった)軽く振ったところ、大阪フィルは凄い音で鳴ったそうで、「なんだ、僕がいなくても演奏出来るオーケストラになったんじゃないか」とユーモアを交える。
が、ここで、開演5分前を告げる鳥の鳴き声が響き、大植は「?」となる。その後、女声アナウンスが入り、今日は全員黄色のTシャツを着た大阪フィルのスタッフが時間がないと告げに来る。仕方なく、大植は、女声アナウンスを自分が言っている振りを始める。「本公演では演出の都合上、誘導灯を消灯致します。予め誘導口の場所をご確認下さい」というアナウンスの時は、一階席左右の誘導灯を指すなどして笑いを取る。 その後もマイペースで語る大植であるが、最前列の前で、大フィルのスタッフが「巻きでお願いします」とジェスチャーで伝える。だが、そんなことで考えを曲げる大植ではない。結局、内容をほぼ変えることなく、開演時間からそう遅れずに、全ての年の出来事を語ってみせた。

シベリウスの交響詩「フィンランディア」。ちなみに大植さんはプレトークで「今年はシベリウスの生誕100年」と思いっ切り間違えていたが、まあ、それで演奏スタイルが変わるでなし、いいだろう。 スッキリとした音による見通しのよいシベリウスである。通常はカットされる繰り返しも演奏されたようだ。

ブラームスの交響曲第1番。大植英次と大阪フィルハーモニー交響楽団はライブ録音による「ブラームス交響曲全集」を完成させており(フォンテック・レーベル)、そこに収められたブラームスの交響曲第1番はかなり個性的な演奏だったのだが、今日は録音ほどではないがやはり個性的な演奏が展開される。なお、ブラームスの交響曲第1番を選んだ理由について大植は、「ブラームスの交響曲第1番はベートーヴェンの交響曲第10番と呼ばれることがあり、『大阪クラシック』10年に相応しい」と語っていた。

序奏は、哀感を前面に出したものであり、シャルル・ミュンシュ指揮パリ管弦楽団の情熱の奔流や、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の音の威力で聴かせるものとは完全に異なる。 そして第1楽章では、レコーディングで聴けるのと同様の極端な減速が2回ある。意図はよくわからないのだが、細部までよく聞こえるため、内容を深く掘り下げて聴かせようといういう思いがあるのかも知れない。

田野倉雅秋が美しいヴァイオリンソロを奏でる第2楽章(最初に田野倉のヴァイオリンソロがあった時には大植はほとんど指揮をせず、楽団員に任せていた)、瑞々しさの光る第3楽章が続く。ホルンの出が合わない時が何度があったのが玉に瑕。大フィルのホルン群は急速にレベルアップしたが、それでも完全というわけにはいかないらしい。ホルンが元々難しい楽器ということもある。

最終楽章は緩急自在で、かなりロマンティックにして個性的な演奏となる。録音では凱歌とされる旋律を、「歌うというよりは音を置く」ような演奏をしていた大植であるが、今日は普通に歌う。コントラバスなど低音部に対する配慮などは、いかにもドイツを本拠地としている大植らしい。 演奏終了後に喝采を浴びた大植。しかし、その後のアンコール演奏で、またも大植らしい外連が発揮される。指揮を何とコンサートマスターの田野倉雅秋に任せ、「皆さん、歌って下さい」と言って、大植自身は1階席は勿論、2階席、3階席まで回るというファンサービスを行う。その間、田野倉指揮の大フィルは、山本直純のオーケストレーションによる、「夕焼け小焼け」、「七つの子」、「故郷」を立て続けに演奏し、聴衆が歌う。聴衆が歌うといっても、本当に歌ってくれるのは大阪人ぐらいのもので、東京でも京都でも、また自身の経験から岡山でもこうしたことは不可能である。大阪の人はノリがいいので歌ってくれるのである。私も千葉県出身だが歌う。

ホールを一周して戻って来た大植は田野倉の手を取り、「新しい音楽監督の誕生です」と紹介。大植らしいパフォーマンスである。 アンコール2曲目、今度は外山雄三の「管弦楽のためのラプソディ」よりラストの“八木節”。背中に大阪市章である澪つくしの入った法被を着て登場した大植はほとんど指揮をせず、客席に拍手を求める。私も拍手していたが、面倒くさいので左手を主とした指揮に変えてしまう。ステージからは見えたかな? 見えたとしても私はこの曲はよく記憶しているので指示は合っているはずで、邪魔にはならなかった、と思う。自信がなかったら指揮はしない。

アンコール終了後も、最前列のお客さんと握手するなどファンサービスに努めた大植。下手袖でマネージャーが「巻きでお願いします」というようなことが書かれていると思われる紙を掲げるが、それでも大植は聴衆最優先という姿勢を変えることはなかった。

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