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2015年10月25日 (日)

コンサートの記(210) シベリウス生誕150年 シベリウス 交響曲第2番ほか 藤岡幸夫指揮関西フィルハーモニー管弦楽団第5回城陽定期演奏会

2015年8月23日 京都府城陽市の文化パルク城陽プラムホールにて

午後2時から、京都府城陽市の文化パルク城陽プラムホールで、関西フィルハーモニー管弦楽団の第5回城陽定期演奏会を聴く。今日の指揮は関西フィル首席指揮者の藤岡幸夫。コンサートマスターは岩谷祐之。

曲目は、吉松隆の「三つの水墨画」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(ピアノ独奏:金子三勇士)、シベリウスの交響曲第2番。関西ではシベリウスの交響曲チクルスは行われないが、関西フィルは毎年1曲ペースで進めているシベリウス交響曲全曲演奏(今年は秋に交響曲第6番が演奏される予定)に加え、先日、いずみホールで交響曲第1番が演奏され、今日は交響曲第2番が演奏される。
 

午後1時20分開場であり、午後1時40分から藤岡幸夫によるプレトークがある。
藤岡はまず、慶應義塾高校と慶應義塾大学の先輩である作曲家・吉松隆の「三つの水墨画」について説明。2013年に作曲されたばかりの曲であり、吉松が2012年に大河ドラマ「平清盛」の音楽を手掛けたのを機に京都という街に対する視点が変わり、その直後に京都府物産協会50周年記念曲作曲の依頼を受けて書かれたものだという。ちなみに吉松の先祖の一人は国学者で京都で私塾を開いていた大国隆正なる人物だという。大国隆正の門下には「岩倉具視の右腕」として知られる玉松操がいるそうである。

「六波羅」、「孤月(こげつ)」、「京童(きょうわらべ)」の3曲からなり、初演は2013年6月7日にJR京都駅特設ステージにおいて藤岡指揮の関西フィルの演奏で行われているが、音響の良い場所ではない上に室内オーケストラ編成での演奏だったので、今日のようにフル編成で演奏してどう聞こえるのかは藤岡にもわからないということだった。

「六波羅」は平家の栄華を描いたもので、繊細で雅やかな曲調が特徴である。「孤月」はチェロ独奏が渋い旋律を奏で、曲全体も落ち着いた趣がある。「京童」は「京の童歌」(歌詞は「まるたけえびすにおしおいけ」という京都の東西に延びる通りの頭文字を挙げていくもの)を題材にしたもので、弦と管がフーガのように「京の童歌」の旋律を歌い交わす。リズミカルで楽しい音楽である。

フルオーケストラによる演奏でも何の問題もなかったように思う。なお、この曲だけは藤岡はノンタクトで指揮した。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏の金子三勇士(かねこ・みゅうじ)は、日洪のハーフ。1989年、日本に生まれ、6歳の時に母親の祖国であるハンガリーに一人で渡る。バルトーク音楽小学校でチェ・ナジュ・タマーシュネーにピアノを師事。2001年にハンガリー全国ピアノコンクール・9歳~11歳の部で優勝。その後、飛び級で国立リスト音楽大学に入学。2005年から2006年にかけて3つのピアノコンクールで優勝後、日本に帰り、東京音楽大学附属高校に編入学。東京音楽大学卒業、東京音楽大学大学院修了後、再び渡洪。現在は国立リスト音楽大学大学院博士課程に在籍中である。2008年にバルトーク国際ピアノコンクールで優勝。
三勇士という名前は「ミュージック」に掛けたもので、「爆弾三勇士」とはおそらく何の関係もないと思われる。

以前から日本でも精力的にピアニストとしての活動を続けた金子三勇士。藤岡はプレトークで金子のピアノを「男性的」と評していた。
 

藤岡は故・園田高弘(日本音楽史上に残る名ピアニスト)から、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のレクチャーを受けたことがあり、園田は「藤岡君、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は遠くで鐘が鳴るようにして始まる。そしてネヴァ川――ロシアの曲なのでロシアの川です――ネヴァ川の流れのように滔々と進む」と語ったそうだ。

金子のピアノを一言で言い表すと「ダイナミック」。スケールが大きく、良い意味で細かなことにとらわれない。高音の強打は痛烈だが、基本的には温かな音色で弾くピアニストである。第3楽章ではペダルを踏んでいない左足でステージを何度も蹴るなど情熱的な演奏を展開した。

文化パルク城陽プラムホールは多目的ホールであるため残響がほとんどないが、多目的ホールにしてはよく聞こえる方である。ただ、残響がないため音が美しく変わるということはない。京都コンサートホールなどは響きが良くないが、それはクラシック専用ホールにしては良くないということであり、何だかんだで音響設計のされていない多目的ホールよりはずっと良い音がする。
不利な状況でのオーケストラ伴奏であるが、関西フィルは力強い演奏を展開した。

ピアノアンコール。金子は、「こういう曲(ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番)の後でアンコールを弾くのは難しいのですが、落ち着いた雰囲気をということで、ショパンの夜想曲遺作を」と言って、ショパンの夜想曲第20番嬰ハ短調(遺作)を演奏する。冒頭をかなり弱く弾き、トリルを伸ばすという独特の演奏であった。

シベリウスの交響曲第2番。プレトークで藤岡はこの曲について、「ロシア圧制下に書かれて発表された曲で、フィンランドでは祖国の勝利を切望する愛国的な作品として熱狂的に支持されたが、実はこの曲を書く前にシベリウスは娘を幼くして亡くし、気分転換のために家族でイタリアに旅行に出るも、『ローマに行く』という置き手紙をして一人で家族から離れてしまうなど精神的に不安定な状況にあった」と語る。第4楽章は煽るような凱歌であるが、熱狂的な旋律の他にもう一つ、憂鬱な印象を受ける主題も存在する。高揚感のある主題が強烈であるためついメランコリーなメロディーの存在を忘れがちになってしまうのだが、一般に第4楽章に対して行われる「熱狂的な凱歌」という解釈が的確なものなのかに関しては再考の余地があるように思う。

藤岡の造形は見事で、彼のシベリウス指揮者としての確かな成長が感じられる。ただ、第2楽章のコントラバスとチェロのピッチカート、木管の旋律の後でヴァイオリンが加わるときの加速が余りに急激であり、これほど赤裸々な苦悩という表現で良いのかという疑問も浮かぶ。

それ以外は優れた解釈であったが、関西フィルは第4楽章に入って最初の金管の合奏が思いっ切り散らかるなど、技術面での弱さはまだ感じられる。それでも総体としては優れたシベリウス演奏であったように思う。

藤岡はプレトークで「今日はアンコールがあります」「クラシックの曲ではありません」と言っていたが、アンコール曲は「ダニー・ボーイ(ロンドンデリーの歌)」。先月聴いた広上淳一指揮京都市交響楽団の「ダニー・ボーイ」には及ばなかったが、整った美しい演奏ではあった。

 

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