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2015年11月 6日 (金)

コンサートの記(213) シベリウス生誕150年 藤岡幸夫指揮関西フィルハーモニー管弦楽団第269回定期演奏会

2015年10月30日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、関西フィルハーモニー管弦楽団の第269回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は関西フィル首席指揮者の藤岡幸夫。

曲目は、シベリウスの交響曲第6番(シベリウス生誕150年記念)、吉松隆の「ドーリアン」(関西初演)とサイバーバード協奏曲(サクソフォン独奏:須川展也、ピアノ独奏:小柳美奈子、パーカッション独奏:山口多嘉子)

藤岡幸夫と関西フィルハーモニー管弦楽団は、1年1曲のペースでシベリウス交響曲全曲演奏を進めており、今回が4年目。交響曲第7番、交響曲第3番、交響曲第4番に次いで、今年は交響曲第6番を取り上げる。なお、来年は交響曲第2番を演奏することがすでに決まっている。

2015年7月14日付けで、打楽器奏者の細江真弓が入団。吉松の曲では打楽器が効果的に用いられているため、早速の大活躍となった。「ドーリアン」では小太鼓で熱演。「サイバーバード」ではシンバルやタンバリンで活躍した。

午後6時40分頃から、指揮者の藤岡幸夫によるプレトークがある。慶應義塾高校と慶應義塾大学の先輩である吉松隆の才能に藤岡は惚れ込んでおり(吉松隆は厳密にいうと慶應義塾大学中退である)、シベリウスの交響曲第6番は、高校1年生だった吉松が初めてLPで聴いて涙を流すほど感動した曲で、この曲を聴いて吉松は作曲家になることを志したということから、藤岡はシベリウスの交響曲第6番を演奏する時には、吉松の作品を一緒に演奏しようと決めていたという。

その後、吉松隆がステージ上に呼ばれ、シベリウスの交響曲第6番は吉松の大好きな宮澤賢治の作品に相通じるものを感じたと語る。ミステリアスで純度の高いところは両者の作品に共通している。「ドーリアン」は、シベリウスを聴いて作曲家になろうと志した人が書いたとは思えないほど賑やかな曲だが、吉松としては現代音楽の殻を破りたいと思って作曲したとのこと。シベリウスの交響曲第6番は「ドーリア旋法」を用いて書かれているのだが、吉松の「ドーリアン」もタイトルからわかる通り、ドーリア旋法が用いられている。

吉松は小綺麗な演奏が嫌いだそうで、藤岡が吉松作品のレコーディングを終えて、袖に戻ってくると、「演奏が整い過ぎている。お前、ちょっと行ってぶっ壊してこい」と言ったり、今回のリハーサルでもサキソフォンの須川展也に、「音が綺麗すぎる。もうちょっと汚い音を出せないのか」と注文を付けていたそうである。

今日のコンサートマスターは岩谷祐之。アメリカ式の現代配置による演奏である。なお、NHK-FMによるライブ録音が行われ、後日放送されるとのこと。

シベリウスの交響曲第6番。冒頭、第2ヴァイオリンが澄んだ美しい響きを奏で、ヴィオラが加わって立体的になり、更に第1ヴァイオリンが繊細この上ない旋律を奏でる。この曲は元々ヴァイオリン協奏曲として書かれたということもあり、チェロやコントラバスよりも明らかに第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラの3パートを重視して書かれている。

関西フィルはあっさりとした音色を持つオーケストラだが、そのことが透明感のあるシベリウスの交響曲第6番にはプラスに作用している。

藤岡は今日は全曲譜面台の上に総譜を置き、めくりながら指揮。指揮姿は端正で、大きな音が欲しい楽器の方を向いてその通りの音を弾き出すなど、オーソドックスなものである。

全4楽章を通して繊細且つ優美、聴いていて耳が洗われるような清澄な音楽を藤岡と関西フィルは生み出していた。

吉松隆の「ドーリアン」。大編成の打楽器が特徴である。シベリウスというよりもストラヴィンスキーの作品のようなリズム重視の曲。この曲は吉松が27歳の時に初演されているが、同時期に初演され、吉松のデビュー曲として認知されている「朱鷺に捧げる哀歌」の方がずっと有名である。

新しい作品を生んでやろうという意欲に満ちた曲であり、変拍子など現代音楽的な要素もあるが、響き自体は美しく、特に弦楽は漆のような独特の光沢の音色を奏でる。吉松は無調音楽には反対であり、無調音楽のアンチテーゼとしてこの曲を生んだそうだ。難解な部分もあるが全体を通してみるとなかなか楽しい音楽である。

吉松隆のサイバーバード協奏曲。一応、サキソフォン協奏曲となっているが、ピアノやパーカッションのソリストも大活躍する。

日本人クラシックサキソフォンの第一人者である須川展也(すがわ・のぶや)は光沢のある美しい音色を奏でる。ピアノの小柳美奈子とパーカッションの山口多嘉子は共にソリストとしてよりもアンサンブルの奏者として活躍している人だが、それだけに須川とのやり取りは万全である。パーカッションの山口はドラムセットの他に、小さめの銅鑼2つ、更には様々な鈴を奏でる。

藤岡指揮の関西フィルも堂々たる演奏。第1楽章「彩の鳥」はジャズの影響の強い曲だが、終盤に弦楽とピアノがシベリウスの交響曲第4番の冒頭を意図的に真似る箇所がある。須川は普通のサキソフォン曲では使わないような高い音も出す。

第2楽章「悲の鳥」はエレジー。この曲を作曲している時に、吉松は実妹の晴子を亡くしており、悲しみの気持ちをこの楽章に込めた。ピアノとサックスがノスタルジアにも似た懐かしい響きを奏でる。

最終楽章「風の鳥」では、再びジャジーな要素が戻ってくるが、今度は洗練された現代のジャズである。第1楽章がジョン・コルトレーンだとすると、最終楽章は楽器こそ違えどウイントン・マルサリスだ。

須川展也、小柳美奈子、山口多嘉子の3人はアンコール演奏を行う。吉松隆の「融けてゆく夢」。ピアノが雪の上を歩くかのように、左手、右手が交互に冷たい音色の和音を奏で、サキソフォンが煌びやかだが、哀感に満ちた旋律を歌う。パーカッションの山口は後半になると風鈴で合いの手を入れる。サキソフォンの音が上昇すると、突然、断ち切られるようにして音楽は終わる。夢を題材にした楽曲としては効果的なラストだったように思う。

今日は指揮者、オーケストラ、ソリストのいずれもが充実した、満点に近い演奏会であった。

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