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2015年12月31日 (木)

コンサートの記(220) 三ツ橋敬子指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 大フィル×ザ・シンフォニーホール「ソワレ・シンフォニー」vol.6

2015年11月17日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時30分から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、大阪フィル×ザ・シンフォニーホール「ソワレ・シンフォニー」vol.6を聴く。今日の指揮者は台頭著しい若手の三ツ橋敬子。

大阪フィルハーモニー交響楽団とザ・シンフォニーホールの企画による「ソワレ・シンフォニー」は昨年始まり、最初は小品1曲と交響曲1曲、途中休憩なしの、文字通りシンフォニーをメインとしたコンサートだったのだが、今年度に入ってからは模様替えし、若手指揮者と若手ソリストによるチケット料金を抑えたコンサートとなった。「ソワレ・シンフォニー」のシンフォニーも「交響曲」から「ザ・シンフォニーホールでの」という意味に変わっている。新体制の「ソワレ・シンフォニー」は5月に垣内悠希の指揮、山本貴志のピアノ独奏で今年1回目があり、今日の演奏会が今年2回目となる。開場時間が午後6時30分、開演時間が午後7時30分と少し遅めなのも特徴。

曲目は、ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏:木嶋真優)、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

なお、今日のコンサートマスターは垣内悠希の回と同様、ベテランの藤原浜雄が務める。指揮者が若いので、ベテランをコンサートマスターに置いて援護しようということなのかも知れない。

開演10分前から、三ツ橋敬子によるプレトークがある。三ツ橋敬子は颯爽と登場したのはいいが、途中で蹴躓いてしまい、右手で口を押さえながら照れ笑いをする。凛としたイメージの人だが、こういう仕草を見ると「可愛いな」と思う。

三ツ橋は、「皆様、こんばんは。いきなり恥ずかしい姿をさらしてしまいましたが、足元の悪い中、お越し下さってありがとうございます。今は大降りになっているそうです(私がザ・シンフォニーホールに入るまでは普通の降りであった)」と挨拶し、今日演奏する3つの曲についての解説を行う。「ロッシーニという人は、若くして作曲を止めて悠々自適の生活を送るのですが、20年間で38作のオペラを書いています。ですので、かなりの早書きの作曲家だったわけです。「ウィリアム・テル」はロッシーニが37歳の時に書いた最後のオペラです。皆さん、ステーキのロッシーニ風というフォアグラを乗せたものをご存知ですかね。そこからもわかるようにロッシーニはかなりのグルメでした。肖像画を見るとわかりますが、見事なメタボ体型です。ロッシーニが生まれたのはペーザロという海に面した街です。イタリアを長靴に例えますと、ふくらはぎの上の方にある街です(三ツ橋はイタリア在住であるため、イタリアには詳しい)。海が綺麗で、海の幸なども美味しいです。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、『これぞヴァイオリン協奏曲!』といえるような、非常によく知られた曲です。
ストラヴィンスキーの「火の鳥」ですが、これはディアギレフという有名なバレエ興行師の依頼を受けて差曲された者で、バレエ全編の筋書きはハッピーエンドで終わるのですが、ストラヴィンスキーがバレエ組曲として編纂した最初の版が1912年に出まして、このバレエ組曲はラストが魔王の踊りで終わるんです。その7年後の1919年に再度編纂されたバレエ組曲を今日は演奏するのですが、これはハッピーエンドに戻っています。7年間の間に第一次世界大戦が勃発しまして、ストラヴィンスキーはスイスに亡命を余儀なくされていました。そして大戦が終わってから、「火の鳥」を編纂し直したのですが、ストラヴィンスキーはラストに希望を見出したかったのではないかと思います」というようなことを語る(正確には記憶出来なかったので大雑把に再構成しました)。

ちなみに、三ツ橋敬子は身長151cmと平均的な日本人女性と比べてもかなり小柄であるため、指揮台は通常よりも高いものが用いられていた。大阪フィルの前音楽監督で現在は桂冠指揮者の大植英次も小柄で、大阪フィルではそれを補うための特注の指揮台を使っていたというから、あるいは大植用の指揮台が用いられたのかも知れない。

ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲。三ツ橋というと、何よりも棒の巧さが際立つ指揮者であるが、今日の優れたバトンテクニックが存分に発揮される。指揮棒を持っていない左手が雄弁なのもいつもの通りである。

この曲は暗譜で指揮した三ツ橋。「朝」の詩情、「嵐」の迫力、「静寂」の抒情美、「スイス軍隊の行進」の推進力など、いずれも見事であり、彼女のイタリア音楽への共感も良く伝わってくる演奏であった。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。ソリストを務める木嶋真優(きしま・まゆ)は、兵庫県神戸市生まれの若手ヴァイオリニスト。まだ十代の頃と二十代前半の時期に京都市交響楽団定期演奏会に出演したことがあるが、いずれも高音の美しさは光っていたものの、終始ブスッとした表情でつまらなそうに演奏していたため、「聴衆のことも考えてよ」と思ったものだが、その後は悪い癖もなくなり、ヴァイオリニストとしての腕も上げている。ケルン音楽大学ヤングコースを経て同音大を卒業。ケルン音楽大学ではソロのみならず室内楽の演奏も学んでいる。先日、ケルン音楽大学大学院を満場一致の首席で卒業し、ドイツの国家演奏家資格も取得している。

黄色のドレスで登場した木嶋。以前とは違って、今日は時折笑顔も浮かべながら演奏する。ヴァイオリンの音色は高音のみならず全ての音が美しくなっているが、基本的に陽性のヴァイオリンであるため、陰影に乏しいという印象を受けたのも事実である。スケールは雄大、メカニック面はとても優れている。

三ツ橋指揮の大フィルもややスケールは小さかったが、まとまりの良い伴奏を奏でた。

メインであるストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)。冒頭のコントラバスを始めとする低弦の築き方、その後の管楽器の煌びやかな活躍、スーパーフォルテシモの迫力、終盤の立体的な音楽進行など、確かな楽曲把握と造形を感じさせる演奏である。この曲も暗譜で指揮したが、棒は非常に機敏でわかりやすい。ストラヴィンスキーは棒の巧拙が演奏に直結しやすいため、三ツ橋のバトンテクニックは大きな武器となる。
ジャン=クロード・カサドシュ指揮の京都市交響楽団による9月の同曲演奏に比べると色彩面ではかなり劣勢という印象を受けたが、フランス人の名匠と日本人の若手では出来上がる演奏に違いが出るのは仕方ないことである。三ツ橋指揮大フィルの「火の鳥」もカサドシュ&京響と比べなければ十分に優れた出来であった。

「イタリア在住の指揮者だから、アンコール演奏があるとしたら、マスカーニの歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲かな?」と思っていたら、本当にアンコールとして「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲が演奏されたのでちょっと驚く。優美にして透明度の高い佳演であった。

幸い、雨は峠を越したようで、ザ・シンフォニーホールを出たときには小降りになっていた。

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