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2016年1月 2日 (土)

観劇感想精選(172) 「オレアナ」2015

2015年12月13日 大阪の森ノ宮ピロティホールにて観劇

午後1時から、大阪の森ノ宮ピロティホールで、パルコ・プロデュース公演「オレアナ」を観る。作:デイヴィッド・マメット、テキスト日本語訳:小田島恒志(おだしま・こうし)、演出:栗山民也。
田中哲司と志田未来(しだ・みらい)による二人芝居である。東京、豊橋、北九州、広島公演を経て、昨日から大阪公演が始まり、今日が全体の楽日となる。

「オレアナ」は、1992年にアメリカのケンブリッジ(ハーバード大学のある街である)で初演、同年にオフ・ブロードフェイ作品としてニューヨーク初演されている。日本では1994年に長塚京三と若村麻由美のコンビにより初演され、更に1999年にも長塚京三と今度は永作博美のコンビで再演されており、今回はキャストを全面に変えての3度目の上演となる。ちなみに長塚京三の「オレアナ」はいずれも酒井洋子の日本語訳テキストで上演されたのだが、今回は小田島恒志の新訳による上演である。


アメリカのとある名門大学の研究室が舞台。大学教員のジョン(田中哲司)と、女学生のキャロル(志田未来)のやりとりのみによる劇である。

貧しい階級から苦労して名門大学に進学したキャロルだったが、ジョンの授業内容に付いていけない。このままでは単位を落としてしまうため、ジョンに詳しく教えて欲しいと頼むキャロル。しかし、キャロルが書いてきたレポートは表面をなぞっただけで内容に踏み込むことがまるで出来ておらず、このままでは単位を取るのは難しい。ジョンはキャロルに「君は聡明な学生だ」と励まし、「自分が出来ない学生だと考えると本当に出来なくなってしまう」という経験に基づく話をし、個人授業をすることを持ちかける。そして、キャロルの肩に手を置く。

上演開始から40分程度で休憩に入るのだが、第2部に入ると状況は一変している。キャロルがジョンをセクハラで大学当局に訴えたのだ。キャロルはジョンが卑猥な例え話をし(「セックスをする回数は貧乏人の方が多いが、ことをするときに脱ぐ服の枚数は金持ちの方が多い」というたわいのないもの)、自分の肩に手を置き、腕を回して(腕を回すシーンはなかったのだが)性的要求を行ったと告発書に書いていた。劇が始まった時はオドオドした感じだったキャロルだが、第2部に入ると一転して、モンスターフェミニストのような人格に変わっている。
モンスターと化したキャロルにジョンは戸惑う。ジョンには妻子があり、今まさに大学の終身教員のポストに手が届きそうなところだったのだ。ジョンは新たな家を買うことを計画しており、ジョンとキャロルの話が佳境に入ろうという時には必ずといって良いほど新居関連の電話が入って邪魔をし、登場人物と観客をイライラさせる。
第2部ラストでは、研究室を去ろうとしたキャロルを引き留めるために彼女の手を掴んだジョンの行動にキャロルは過剰反応する。

第3部では、ジョンは大学から追われることになり、その原因を作ることになったキャロルを研究室に呼び出す。キャロルは相変わらずのモンスターぶりだが、激昂したジョンはつい女性蔑視発言とキャロルに対して最初から見下していたことを口にしてしまい、自分も自分を誤魔化しているだけのモンスターだと気づいて呆然とする。「そう、そうです」というキャロルの台詞で芝居は終わる。


舞台経験の豊富な田中哲司は、ソルボンヌ大学卒の長塚京三とは違い知的な雰囲気満点というわけにはいかなかったが、間の取り方などが抜群であり、巧みな演技を見せる。      

プライベートでも話題になっている志田未来はこれが初舞台。幕が開いてからしばらくの間はテンションが高すぎ、演技をしすぎのように思えたが、田中哲司演じるジョンが徐々に雄弁になるにつれてキャロルの精神状態に近づいてくるため、第1部終盤以降は気にならなくなる。第2部、第3部における憎らしいまでのモンスターぶりはキャロルという人格と完全に一体化しており、演技力の高さが感じられる。

キャロルの一見不可思議と思えるモンスターぶりであるが、キャロルは貧しい階層の出身であり、そこから抜け出るために名門大学に何とか入ったのだが、ジョンは上流階級の出で、大学教育には批判的でもある。大学が教養の場ではなく、「学習する習慣を身につける場、技術を磨くところ、経済的な糧を得るための手段」と就職予備校になっていることに軽蔑心を抱いている。ジョンの高踏的な考え方はキャロルが抱いている立身出世の敵なのだ。
生きている世界が違うといえばそれまでなのだが、世代の違いも伴って二人の間に渡ることの出来ない裂け目があることは感じられる。

カーテンコールに応えた田中哲司と志田未来は一緒に「どうもありがとうございました」と言うはずが息が合わず、田中哲司だけが挨拶をしていまい、二人は顔を見合わせて照れ笑い。再度挨拶をし、今度は二人一緒に「どうもありがとうございました」とお礼を言うことが出来た。

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