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2016年2月14日 (日)

コンサートの記(229) トーマス・ヘンゲルブロック指揮北ドイツ放送交響楽団(NDR交響楽団)来日演奏会2015大阪

2015年6月3日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、トーマス・ヘンゲルブロック指揮北ドイツ放送交響楽団(NDR交響楽団)の来日演奏会を聴く。

ギュンター・ヴァントとのコンビで世界的な名声を得た北ドイツ放送交響楽団はドイツ第二の都市であるハンブルクを本拠地とするオーケストラ。北ドイツ放送(NDR)はハノーファーにもオーケストラを持っているが、ハンブルクの北ドイツ放送交響楽団が第1オーケストラ的存在である。

戦後に西ドイツの政府の肝いりによって結成された放送オーケストラの一つであり、ハンス・シュミット=イッセルシュテットを首席指揮者に迎えて結成。1982年から始まったギュンター・ヴァントの時代に、特にブルックナーの名演で世界的に注目される。ただ、ヴァントとのコンビはヴァントが首席指揮者を退任後に更に名声が高まる。ヴァントは終身名誉音楽監督となり、ジョン=エリオット・ガーディナーが首席指揮者に就任したのだが、この古楽器出身の指揮者は自らが組織した古楽器オーケストラとの活動に忙しく、北ドイツ放送響を指揮することが少なかったため、ヴァントが代わりに指揮台に立つことが多かった。

ガーディナーとは契約を更新せず、今度はスウェーデンの名匠であるヘルベルト・ブロムシュテットを首席に迎えたが、ブロムシュテットがライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスターに指名されたため兼任不可として3年契約を2年で打ち切る。90年代の北ドイツ放送響は名指揮者を迎えることに成功しながら自身の音楽以外の理由で不運が続いた。その後、クリストフ・エッシェンバッハ、クリストフ・フォン・ドホナーニを指揮者に迎えるが、レコーディングなどには恵まれなかった。トーマス・ヘンゲルブロックを首席指揮者に招いて以降はソニー・クラシカルへのレコーディングが行われるようになり、再び世界的な注目を浴びている。また今年から、期待の若手、クシシュトフ・ウルバンスキが首席客演指揮者に就任する予定である。

欧米のクラシック界ではハードよりもソフトにお金を掛ける傾向があり、演奏家が厚遇されている一方で、演奏会場などは日本でいう街の公会堂程度のものが利用されているのが普通である。北ドイツ放送響もその例に漏れなかったようだが、現在建設中の音楽専用ホール、エルプフィルハーモニー・ハンブルクのレジデンスオーケストラになることが決定している。

トーマス・ヘンゲルブロックは1958年生まれのドイツの指揮者。まずヴァイオリニストとして活動を開始。ニコラウス・アーノンクールが組織した古楽器オーケストラ、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスに参加。その後、アーノンクールを始め、ヴィトルド・ルトスワフスキ、アンタル・ドラティといった指揮者や作曲家の影響を受けて指揮者としても活動を開始。1985年に古楽器オーケストラであるフライブルク・バロック管弦楽団の設立に協力し、指揮者として活動。1995年にはドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンの初代芸術監督に就任。ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンはモダン楽器の室内管弦楽団だが、ここでヘンゲルブロックはピリオド奏法を取り入れたモダンオーケストラによる演奏に熱心に取り組み、その伝統はダニエル・ハーディングを経てパーヴォ・ヤルヴィにまで受け継がれている。

曲目はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏:アラベラ・美歩・シュタインバッハー)とマーラーの交響曲第1番「巨人」(1893年ハンブルク稿)。

トーマス・ヘンゲルブロックと北ドイツ放送交響楽団ではブランド力が足りなかったのか、ザ・シンフォニーホールの入りは半分程度である。関西では、大植英次、井上道義、広上淳一、佐渡裕などマーラーを得意とする指揮者がオーケストラのポストを持っているため、「安い値段で良いマーラーが聴けるのに、良いかどうかわからない外来のオーケストラのマーラーを高い金を払って聴く必要はない」と考える人もいるかも知れない。実際、安い値段の席は埋まっていたが、料金の高い席は半分以上が空席である。

北ドイツ放送交響楽団であるが、一見、ドイツ式の現代配置に見えるが、よく見ると第1ヴァイオリンの隣りにいる奏者の楽器が一回り大きい。実は第1ヴァイオリンの隣りにいたのはヴィオラ奏者であり、通常のドイツ式の現代配置なら第2ヴァイオリンがいる場所にヴィオラが陣取り、第2ヴァイオリンとヴィオラの位置が入れ替わるという独特の配置による演奏であった。

トーマス・ヘンゲルブロック登場。CDジャケットなどではわからないが、頭髪がかなり禿げ上がっており、頭頂部はツルピカである。広上淳一と同い年なので禿げていても別に不思議はない。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏のアラベラ・美歩・シュタインバッハーは、日独ハーフの女性ヴァイオリニスト。ただ、ドイツの血が濃いのか、見た目からは余り日本的な要素は感じられない。同じ日独ハーフでありながら日本の血が濃いアリス=紗良・オットとは真逆のようである。
1981年、ミュンヘン生まれ。父親はドイツ人でバイエルン州立歌劇場のコレペティートル(オペラリハーサル初期におけるピアノ伴奏者)、母親は日本人の歌手である。ミュンヘン音楽院で学んだ後、イヴリー・ギトリスに師事。日本でも活動をしており、NHK交響楽団などの定期演奏会のソリストとして招かれている。

アラベラは緑色のドレスで登場。彼女の弾くヴァイオリンは音に艶と張りがあり、表情は優しげだ。聴いていて「慈愛」という言葉が浮かぶ。

ヘンゲルブロック指揮の北ドイツ放送響はピリオド・アプローチによる伴奏を行う。ピリオドは弦が音の最後を伸ばさずにサッと刈り上げるのが特徴であるが、ヘンゲルブロックは管楽器奏者にも音を伸ばさずに止めるよう指導をしているようで、かなり個性的な伴奏となる。
不満点を挙げると、ピリオドであるために、伴奏に威力が不足していること。ピリオドでも力強い伴奏を奏でるコンビもあるので、これはヘンゲルブロックの責任であろう。クラリネットが音を外したりしていたが、名門オーケストラとはいえミスは付きものなので気にするほどではない。

第3楽章をアラベラはかなり弱い音で開始。その影響もあったと思うが、アラベラが望んだテンポよりも北ドイツ放送響のテンポが遅くなり、アラベラとヘンゲルブロックがアイコンタクトを交わして速度の修正を行った。

アラベラのアンコール曲は、プロコフィエフの無伴奏ヴァイオリン・ソナタより第1楽章。プロコフィエフならではのキッチュな曲調を巧みに奏でていく。

マーラーの交響曲第1番「巨人」。今日は1893年にマーラー自身の手によって改訂されたハンブルク稿による演奏が行われる。
この曲が初演されたのは1899年、ブダペストにおいて。この時は「花の章」を含む5楽章であり、他の楽章にも全てタイトルが付いている。この譜面はブダペスト稿と呼ばれている。
ハンブルク稿は、初演の4年後に改訂されたもので、やはり「花の章」を含む5楽章の交響曲である。各楽章のタイトルは初稿に比べて長くなっており、「花の章」は第2楽章となっている。
「巨人」はその後、2度の改訂を経て、現在演奏会などで取り上げられている決定稿となった。なお、決定稿では「巨人」というタイトルも削除されているのだが、慣例としてタイトルは現在も生きている。

ヘンゲルブロックは譜面台を置かず、暗譜での指揮。指揮棒の振り幅は小さめのことが多く、指揮棒全体を動かすというより、先端でチョンチョンと突いていくようなスタイルである。腕を大きく動かすこともあるが、曲の表情付けなどは指揮棒を持たない左手で行うことが多い。

ヘンゲルブロックは音を一つずつ積み上げていくような丁寧な音楽作りを行う。北ドイツ放送響の音色からは、正統的なドイツの響きが聴き取れる。日本のオーケストラからは聴くことの出来ないドイツならではの音だ。メカニックに関していえば、日本のプロオーケストラも負けてはいない。今日の北ドイツ放送響もトランペットがミスを犯すなど技術的に完璧なわけではない。だが、ハーモニーに関する感性というものが、ドイツ人と日本人とでは決定的に違っているのだと思われる。悔しいが、ドイツ音楽の演奏に関しては日本のオーケストラがドイツの一流オケに追いつくには今後も相当の時間を要しそうである。

ハンブルク稿と決定稿とでは、旋律を受け持つ楽器が違い、第2楽章の「花の章」が入り、トランペット奏者がステージ下手に立ってソリストとして演奏する。また最終楽章に書かれた視覚的オーケストレーション「ホルン奏者、全員立ち上がれ!」は、ハンブルク稿ではまだ書かれていないようで、ホルン奏者達が立ち上がることはなかった。

ヘンゲルブロックは、第4楽章と第5楽章ではかなり速めのテンポを採用。素朴さは後退し、スマートな演奏となる。

アンコール曲は、ワーグナーの歌劇「ローエングリン」より第3幕への前奏曲。格好いい演奏であった。

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