« 桜 稲垣早希 コント「とにかく楽して有名になりたい女Youtuber」 | トップページ | 芥川龍之介 「煙草と悪魔」(青空文庫) »

2016年5月27日 (金)

楽興の時(11) 「テラの音」vol.13

2016年4月1日 京都市中京区御幸町通竹屋町下ルの真宗大谷派浄慶寺にて

午後7時から、中京区御幸町通竹屋町通下ルにある真宗大谷派浄慶寺で、「テラの音 vol.13」を聴く。今回はバンジョー奏者の吉崎ひろしによるコンサート。「テラの音」主催者であるヴァイオリンの牧野貴佐栄と、「テラの音」の評判を聞いて是非参加したいと申し出たヴァイオリニストの辻本恵理香も参加する。

「テラの音」は、京都のお寺に気軽に立ち寄っていただこう、そして若手の音楽家と僧侶も育てよう(僧侶の方は冗談だと思うが)ということで立ち上がった企画。僧侶は冗談と書いたが、法話の時間も設けられているので、仏教に興味を持って貰いたいという思いはあるのだろう。残念ながら今日の聴衆は満員ながらお年の方が大半。私よりも若い人は2人か3人しかいない。
バンジョーの吉崎ひろしも52歳と若いとはいえない年だが、前の方の席に座った方達は吉崎のお弟子さんのようである(吉崎よりも年上である)。その他、バンジョーではなくてギターを弾くというお年の方もいた。出来れば若い人に仏教が広まるようになると良いのだが。

浄慶寺の住職である中島宏彰氏も大谷大学仏教学科在学当時はギターの腕で鳴らしたそうである(吉崎談)。中島住職はテレビ朝日系の「ぶっちゃけ寺」に何度か出演しており、先週の放送で、Amazonの「お坊さん便」反対の代表者として意見を戦わしていた。まあ「お坊さん便」は仏教どころか宗教ですらないからね。寺院は数はとにかく多いので(一番多い曹洞宗の寺院だけでも日本全国のコンビニの数を上回る。その他の宗派の寺院を入れるとコンビニの数倍になるだろう。ただもはや寺院として機能していないお寺も残念ながら多い)、寺院を中心にした文化が発生するのが日本的風土と歴史からいえば普通なのだが、廃仏毀釈と神道の国教化の影響がかなり大きく、戦後70年を経てもお寺と一般市民の距離は縮まらず、仏教は哲学でも宗教でもなく、儀式としての葬式仏教としか認識されていない。


吉崎ひろし(吉崎は「よしざき」と読む)は、1986年に高石ともや&ザ・ナターシャ・セブンの3代目バンジョープレーヤーとしてデビュー。今年でプロ音楽科として活動30周年を迎えた。38歳の時からマラソンを始め、最近では丹波篠山のマラソンを走ったという。京都マラソンは一昨年、昨年とエントリーするもくじ引きで外れて参加出来ず、東京マラソンに至っては10年連続抽選で外れたという。東京マラソンの抽選は15倍だそうなので、「普通に考えるとあと5年は外れる」と吉崎は笑いながら語った。関東ツアーを終えて、長野県大町市のホテルでコンサートを行ったとき、聴衆は大町アルプスマラソンの出場者で、マラソンの存在を知った吉崎は飛び入りでマラソンに参加。3時間44分という好タイムで走り、打ち上げでもバンジョー奏者として一緒にマラソンを走った人と盛り上がるという妙な経験をしたそうだ。


オープニングとして、「テラの音」に興味を持ったという辻本恵理香によるヴァイオリン独奏がある。曲目は「アメイジング・グレイス」。前半はよく知られているメロディーを弾き、後半にはアレンジを加える。辻本は双子だそうで、双子の姉妹揃ってヴァイオリンをやっており、Happy      Twinsという、辻本曰く「アホっぽい名前」のユニットでも活動しているそうだ。今日はアコースティックのヴァイオリンだが、エレキのヴァイオリンを弾くこともあるという。

続いて、辻本と牧野貴佐栄のデュオで、バルトークの「2つのヴァイオリンのための44の二重奏曲」より“バグパイプ”、“セルビアの踊り”などが演奏される。

そして、吉崎、辻本、牧野のトリオでピアソラの「リベルタンゴ」が演奏される。20世紀の終わりにヨーヨー・マが出演したウイスキーのCMで一気に有名になった曲である。当時はピアノ編曲版の楽譜も出版されて、私もよく弾いた。ピアソラブームは去ってしまったが、「リベルタンゴ」だけは今でも様々なコンサートで聴く機会がある。

女性二人が去った後で吉崎は、「女性で、綺麗でヴァイオリンも上手いってずるいですね。ただ、同じ人種だとは思ってます。二足歩行だし」とギャグをいう。

吉崎は、「カントリーロード」を歌ってからトークを行う。バンジョーを弾いていると、「なんでバンジョーなんですか?」と必ず聞かれるそうである。吉崎が若い頃はフォークブームで、吉崎も中学生の頃にギターの弾き語りで「神田川」などを歌っていたのだが、ある日、高石ともや&ザ・ナターシャ・セブンのコンサートを聴いて、その陽気さに呆気にとられたそうである。それまで「あなたはもう忘れたかしら」の世界だったのに、「陽気に行こうぜー」と歌われて、興味が沸き、特に丸い形をした楽器に惹かれて、「あれ何?」「バンジョーだよ」ということでバンジョーを弾きたくなったそうである。しかし、親にギターを買って貰ったばかりなのでバンジョーを買うお金がない。ということで、ギターの弦をバンジョー用に張り替え、5つある弦の内の一番上にあるものは短いのだが、フレットに釘を打って、「バンジョーもどき」を完成させ、それで演奏していたそうである。そして高校入学のお祝いにバンジョーを買って貰い、晴れて本格的にバンジョーデビューとなったそうである。最初の頃はギターとバンジョーの両方を弾いていたのだが、「これから本格的に音楽活動をしていくのでどちらかに絞ろう」と思い、「競争率の低い方を選んだ」そうである。しかし後に気づくのだが、「バンジョーは競争率も低かったが需要も低かった」。ただ、バンジョー奏者として活躍をしているのは関西では吉崎一人だけということもあって独占状態であり、色々なところから声が掛かるという。

NHKの「生活笑百科」でバンジョーを演奏しているのも吉崎だそうで、今日はフルバージョン(といっても短いものだが)を演奏する。

その後、THE BOOMの「島唄」の弾き語り、アニメソング「ゲゲゲの鬼太郎」、ロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲より“スイス軍の行進曲”などを演奏する。いずれもABCラジオでレギュラーを持っていた時代にリスナーからリクエストされてやってみたことのある曲だそうだが、中には変わったリスナーの方もいて、「左手で押さえて音を出すんですよね。押さえないと演奏出来ませんか?」という葉書(かメールかはわからないが)が届き、そこでフレットを使わずに演奏出来ないかということで……、ここから先は残念ながら企業秘密なんですね。


中島住職の法話。東日本大震災で真宗大谷派の寺院も被害が出たため、中島住職も東北を訪れることが多いのだそうだが、復興住宅の建設が当初は中々進まなかった。被災者はプレハブの仮設住宅暮らし。以前のご近所さんと一緒ではあったが、隣の家の音が丸聞こえという粗悪な環境であったという。だが、復興住宅が次々に建てられ、状況が好転するかと思いきや、復興住宅への入居は抽選式で、お隣さんが誰なのかわからない状態になり、しかも新しいご近所さんはお年寄りばかり。復興住宅街には集会所もないということで、「心が寒くなりました」と言われたそうである。


第二部は、まず辻本恵理香と吉崎ひろしのデュオで「チャールダーシュ」。辻本の腕の冴え、吉崎のリズム感、いずれも見事であった。

ちなみに吉崎のバンジョーは1933年製であるが、辻本のヴァイオリンは更に古く1820年製である。「なんぼ?」という関西らしい質問があったので、吉崎はバンジョーの値段を「高級な軽自動車が買えるぐらい」と答えた後で、「別荘を売ってヴァイオリンを買うという話がありましたが、今は別荘を2つ3つ売っても良い楽器は手に入らないと語る」。

第二部は吉崎のオリジナル曲が多い。吉崎がランナーであるためか、詞の言葉も走る人の発想で選ばれている。というより自然に浮かぶ言葉がランナーのイディオムになるのだろう。

ラストではヴァイオリンの辻本恵理香、牧野貴佐栄も加わり、大ラストでは住職の中島宏彰もギターで参加して大盛り上がりの内にコンサートは終わった。

なお、お年寄りの方は手拍子が基本的に表打ちであるため(洋楽やJPOPは裏打ちである)、結果として拍手が4つ分鳴っているという状態になっていた。

|

« 桜 稲垣早希 コント「とにかく楽して有名になりたい女Youtuber」 | トップページ | 芥川龍之介 「煙草と悪魔」(青空文庫) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40048/63692911

この記事へのトラックバック一覧です: 楽興の時(11) 「テラの音」vol.13:

« 桜 稲垣早希 コント「とにかく楽して有名になりたい女Youtuber」 | トップページ | 芥川龍之介 「煙草と悪魔」(青空文庫) »