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2016年9月17日 (土)

コンサートの記(252) 下野竜也指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2016「オーケストラ・ミステリー」第2回「楽器の秘密~第2の指揮者 ティンパニ編~」

2016年8月28日 京都コンサートホールにて

午後2時から京都コンサートホールで、京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2016 「オーケストラ・ミステリー」第2回「楽器の秘密 ~第2の指揮者      ティンパニ編~」を聴く。

    
今日のオーケストラ・ディスカバリーの指揮者は、京都市交響楽団常任客演指揮者の下野竜也。下野は大河ドラマ「真田丸」のオープニングテーマを指揮しているが、実は昨年の大河ドラマ「花燃ゆ」の指揮者でもある。大河ドラマのオープニングテーマの指揮者に2年連続で選ばれるのは珍しい。

ナビゲーターはロザンの二人。


曲目は、グリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲、ヘンデルの「王宮の花火の音楽」序曲から(マッケラス編曲)、ハイドンの交響曲第103番「太鼓連打」第1楽章から、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」第2楽章から、ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲、グリーグのピアノ協奏曲イ短調から第1楽章(ピアノ:清水和音)、ホルストの組曲「惑星」より“火星”&“木星”
「第2の指揮者 ティンパニ編」と書かれている通り、ティンパニをフィーチャーした演奏会。ティンパニは京都市交響楽団首席打楽器奏者の中山航介。
中山は学生時代から逸材として知られており、京都市交響楽団に入団した時にはちょっとした話題になった。
今日は中山もマイクを持って喋ったのであるが、考えてみれば、演奏会では毎回見かけるものの、中山の声を聞くのは今日が初めてである。思ったよりも高めの声であった。


ドイツ式の現代配置での演奏。コンサートマスターは渡邊穣。泉原隆志は降り番。尾﨑平も降り番でフォアシュピーラーの位置には若い女性奏者が座る。
オーボエ首席奏者の髙山郁子とクラリネット首席奏者の小谷口直子は全編に出演。フルート首席には客演首席奏者の江戸聖一郎が入る。


グリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲。京響の弦はまろやかであり、管は輝かしい。下野の音楽運びも軽快であるが、曲の構成自体が比較的単調であり、特に工夫して演奏したわけではないので、中だるみが発生してしまっていた。ちょっと残念。


ティンパニが「第2の指揮者」と呼ばれていることは比較的良く知られており、高関健が指揮し、ロザンがナビゲーターを務めた「オーケストラ・ディスカバリー」でも、菅広文が例によって楽団員の給料を聞いたときに、高関が中山を指して、「あの人は偉いんですよ。沢山貰ってると思います。第2の指揮者と呼ばれていて」と語っていた。

今日も菅ちゃんがボケて、宇治原が指揮者のフォローをするというパターン。

菅ちゃんが、「ティンパニって凄いんですか。僕らからするとやっぱり主役はヴァイオリンで、ティンパニなんて下の下というイメージですけど」と語り、宇治原が「下の下って失礼やろ。中山さん、怒ってはるで」と突っ込む。中山も怒っているような演技をする。
下野が「ティンパニ2つ、見えるように持ち上げてみて」と中山に指示する。ティンパニを一人で持ち上げられるはずはないのだが、中山は持ち上げようとして無理という仕草をするというノリツッコミを見せる。下野は鹿児島出身、中山は横浜出身なのだが、関西人以上にノリが良い。


ヘンデルの「王宮の花火の音楽」序曲より。この曲と次のハイドンの交響曲では中山はバロック・ティンパニを演奏する。一般に使われるモダン・ティンパニはペダルで音程を変えられるのだが(中山は「かえるの歌」の冒頭を演奏してみせる)バロック・ティンパニは古い時代のティンパニなのでそこまで便利ではなく、音程を変えるには手動でネジ状のものを調整する必要がある。勿論、頻繁に音程を切り替えることは不可能である。
今回はオーストラリア生まれで主にイギリスで活躍した指揮者、サー・チャールズ・マッケラスが大編成用に編曲したバージョンでの演奏である。

ティンパニの重要性を示すために、まず冒頭をティンパニなしで演奏してから、ティンパニ入りでの本編の演奏。当然ながらティンパニが入るとよりゴージャスな演奏となり、低音がしっかりするので構造もより明瞭に聞こえる。

演奏終了後、宇治原が「勇壮ですね」、菅ちゃんが「締まりますね」と言うが、菅ちゃんは「心なしか演奏時間も違って聞こえました」とボケて、宇治原が「実際に違うわ!」と突っ込む。
菅ちゃんは、「冷麺に酢醤油を入れた時のように締まる」とボケるが、下野が「その通りです」と答えたため、その例えでピッタリとなってしまう。
ちなみに関西で冷麺を頼むと冷やし中華が出てきます。関西では冷やし中華のことを冷麺と呼ぶのです。他の地域の方にとってはカルチャーショックだと思いますが。


ハイドンの交響曲第103番「太鼓連打」。下野は「ティンパニをソリストのようにしようと考えたのがハイドン」と語るが、「ハイドンは交響曲が多いので、ニックネームが付くわけです」「『太鼓連打』という身も蓋もないタイトルですが」と続ける。

豪快にティンパニが打ち鳴らされて曲がスタート。ティンパニだけが打ち鳴らされる場面はこの後にもあるのだが、あたかもジャズを聴いているような気分になるのは、ジャズには基本的に各パートのソロがあり、ドラムスのソロも入っているからであろう。


ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」第2楽章より。下野は「ベートーヴェンはティンパニに革命をもたらした人で、この曲でもティンパニの大活躍に初演時の聴衆は演奏中にも関わらず拍手喝采であった」と語る(クラシックコンサートのマナーが厳しくなるのはワーグナーの登場以降である)。

演奏開始。だが、中山はティンパニの上に置いた木魚を叩くというボケを行い、下野も「止め! そこふざけない!」と演技する。
菅ちゃんが、「何やってるんですか。ちゃんと演奏して下さいよ」と言って演奏再開。今度は見事な演奏である。だが、宇治原が「菅が『ちゃんと演奏してくださいよ』と言ったときは、もう一回ボケろという意味なんですけど」と言い、菅ちゃんも「なんで本当にちゃんと演奏しちゃうんですか」と文句を言う。


ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲。ティンパニは再びモダン・ティンパニに戻る。
下野が、「冒頭に『夜明け』と呼ばれている場面があるのですが、そこでティンパニが遠雷のように小さく響く。そこから嵐へと変わっていきます。最後の行進曲はみなさんどこかしら必ず聴いたことがあると思います」と語って演奏スタート。「小さな交響曲」とも「小さな交響詩」とも呼ばれる「ウィリアム・テル」序曲。下野と京響は描写力の高い表現を行う。冒頭のチェロには渋みがあり(チェロ独奏:山本裕康)、「嵐」の場面は立体感に富み、「牧歌」では各楽器の美しさが光る。「スイス軍楽隊の行進曲」では管楽器が燦々とした音色を奏で、リズム感、推進力ともに抜群で迫力満点の演奏となった。


休憩を挟み、グリーグのピアノ協奏曲イ短調より第1楽章が演奏される。
グリーグのピアノ協奏曲はティンパニのロールから始まるのであるが、ティンパニなしの冒頭とティンパニ入りの冒頭がまず演奏される。ティンパニ入りの冒頭で、清水が音程を間違えたので笑いが起こり、清水も下野も苦笑いであったが、ロザンの二人はクラシックには詳しくないため、二人で顔を見合わせて、宇治原が「え? 何が起こったんですか?」と聞く。清水が「いや、間違えたの」「よく間違える」と答えた。
宇治原は清水に「ティンパニがあるのとないのとどちらが入りやすいですか?」と聞き、清水は「一緒」と答えるが、「入りやすいとか入りにくいとかの問題ではない。音楽的にこの曲はティンパニがないと駄目」と補足する。

菅ちゃんが再び「ちゃんと演奏して下さいよ」と言って引っ込んだ後でグリーグのピアノ協奏曲第1楽章本編の演奏。清水は透徹感のある音色と高度な技巧を駆使して優れた演奏を行う。ちょっと甘口なのが気になるが、子供も沢山聴きに来ているコンサートなので、こうした演奏の方が良いとも思う。
演奏終了後に出てきた菅ちゃんは、「流石に間違えませんでしたね」と言う。


ホルストの組曲「惑星」より“火星”&“木星”。この曲ではティンパニ2台が活躍する。もう一台のティンパニを演奏するのは京響副首席打楽器奏者の宅間斉(たくま・いつき)。
ティンパニ2台が交互に音を奏でることでメロディーが生まれる。ティンパニは一台でも音程を変えられるが、皮を張った楽器であるため音程を変える際に音の伸びが生じてしまい、キレがなくなるために2台での演奏になるのだと中山が語る。

まずティンパニ2台で旋律を奏でる。下野が「よくわかるようにゆっくり演奏して」と要求したのでその通りの演奏となる。音が第1ティンパニと第2ティンパニの間を行き交う。今度は第1ティンパニのみの演奏。間が開くので何を演奏しているのかわからない。
最後に下野は「快速で演奏して」と無茶ぶり。下野は「無茶ぶり大好きなんです」と語る。中山と宅間は協力して約倍速のテンポをクリアし、客席から拍手が起こる。

さて、「惑星」からの2曲であるが、「下野さんやり過ぎ」である。速めのテンポを採用したため縦の線が微妙になるし(それでも音が濁らない京響の技術には感心するが)、金管をとにかく思いっきり吹かせるためバランスも何もあったものではない。確かに迫力はあるが虚仮威しである。そもそも「惑星」という曲は完全なエンターテインメント作品で虚仮威し的なところはあるのだが。
速めのテンポで皮相になった分、「木星」の中間部に現れるコラールがより美しく聞こえるという長所もあったが、全体的にはかなりうるさい演奏で、この調子で全7曲を通して聴いたら苦痛に感じるはずである。下野も指揮者としてはまだ若いということか。


アンコールは、ヨハン・シュトラウスⅡ世のポルカ「雷鳴と電光」。この曲では一転して軽快で洒落っ気のある演奏を下野と京響は聴かせた。

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