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2016年10月22日 (土)

コンサートの記(256) 井上道義指揮大阪フィルハーモニー交響楽団京都特別演奏会2016

2016年10月16日 京都コンサートホールにて

午後3時から京都コンサートホールで大阪フィルハーモニー交響楽団京都特別演奏会を聴く。指揮は大フィル首席指揮者の井上道義。

井上道義はプロフィールの末尾に、「自宅でアヒルを飼っている」というツッコミ希望のどうでもいい情報を載せていたのだが、今日配られた無料パンフレットには「自宅でアヒルを飼っていた」と過去形で書かれている。アヒルさんは旅立ってしまったらしい。


曲目は、前半がガーシュウィンのキューバ序曲と「ラプソディー・イン・ブルー」(ピアノ独奏:小曽根真)、後半がチャイコフスキーの交響曲第4番。

京都コンサートホールがオープンした時の京都市交響楽団の音楽監督であった井上道義。外連が大好きな人だが、今日も前半後半ともに楽団員がステージに出てくる前に京都コンサートホールの天井の照明が3階席後方からステージに向かって流れて見えるように(見方を変えるとステージ後ろから3階席に向かっての流れにもなる)明滅させるなど、普段の京都コンサートホールの演奏会とは違った雰囲気を作る。

今日の大阪フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターは田野倉雅秋。エキストラを多く入れた大編成での演奏である。

井上道義は全曲ノンタクトで指揮。前半は指揮台を用いず、ステージ上に直接立って指揮した。


ガーシュウィンのキューバ序曲。リズムを強調することはなかったのでノリノリの演奏とはならなかったが、この曲の重層的構造をはっきりと聴衆に示す明快さが光る。
井上は左右にステップを踏むなど、「らしい」指揮である。
演奏終了の拍を振ると同時にターンして1階席の方を向くなど、サー・ロジャー・ノリントンのような外連も見せていた。
舞台下手サイドに陣取った打楽器陣の演奏も視覚的に楽しい。


「ラプソディー・イン・ブルー」。ピアノ独奏の小曽根真は何度もこの「ラプソディー・イン・ブルー」を演奏している。ジャズ・ピアニストだけに即興を交えながらの演奏。ラグタイムを入れたり、音に装飾を施したりする。
井上の指揮する大フィルもスケールの大きな演奏を繰り広げた。

小曽根真のアンコールはキューバの作曲家であるエルネスト・レクオーナ(Ernesto LECUONA)のピアノ曲「Gitanerias(ジプシー風)」を演奏する。異国情緒溢れる曲であり、小曽根の演奏にも冴えがあった。
「ラプソディー・イン・ブルー」演奏後も自分でピアノの蓋を閉じた小曽根だが、「Gitanerias」演奏終了後も自分で蓋を閉めて「もう演奏はありません」と示して笑いを誘う。


後半、チャイコフスキーの交響曲第4番。井上は胸ポケットにしまったチーフを赤から紺に変えて登場する。
チャイコフスキーの交響曲第4番は井上がガンを乗り越えて復帰したステージで大フィルと共に演奏した曲でもあり、その際にライブ・レコーディングが行われてEXTONから発売されており、優れた仕上がりを確認することが出来る。ちなみに私は同時期にパスカル・ロフェ指揮NHK交響楽団の演奏するチャイコフスキーの交響曲第4番を京都コンサートホールで聴いたため、「重複する」と思って井上復帰の演奏は聴いていない。

ホールが異なるため、井上の演奏も当然ながら変わる。第1楽章の序奏である運命主題は豪快に鳴らすが、その後はテンポを落として孤独感を強調するなどメリハリのはっきりした演奏である。井上はチャイコフスキーの嘆きを共感を持って表現するが、チャイコフスキーのオーバー気味の呻吟に井上の外連は良く乗る。

描写力に優れた演奏で、第1楽章、第2楽章ともに緩やかな場面では、凍てついた広大な大地を一人トボトボと歩いているような寄る辺なさが胸に染みる。

第3楽章の浮かんでは消えるようなピッチカートの波の表現も巧み。アタッカで突入した第4楽章では畳みかけるような演奏で、狂気すれすれの激しさを感じさせるがラストは狂気ではなく、ゴージャスな響きを築く。
大フィルは低弦がしっかりしていて音が分厚く、彩りも豊か。この十数年間でかなり成長していることがわかる。弱点だった金管も大幅にレベルアップ。ホルンも安定するようになった。


アンコールはまずチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」第2楽章より。弦の瑞々しさが印象的な演奏である。

ラストはルロイ・アンダーソンの「プリンク・プレンク・プランク」。井上は「アンダーソン!」と歌ったり、コントラバスの方を向いて禿頭を右手でなでながら指揮する(この時、コントラバス奏者は楽器を一回転させる)。頭をツルンとやる仕草に大フィルのコントラバス奏者は本気で笑っていた。

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