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2016年11月 4日 (金)

観劇感想精選(193) タクフェス第4弾「歌姫」(「歌姫」再々々演)

2016年9月15日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて観劇

午後7時から、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで、タクフェス第4弾「歌姫」を観る。タクフェスは「TAKUMA FESTIVAL JAPAN」の略。宅間孝行が東京セレソンDX解散後に立ち上げた演劇ユニットである。
「歌姫」は再々々演となる。初演は私は観ていないが、再々演を東京・新宿御苑前のシアターサンモールで観ている。その時の日記には観劇に来ていた有名人の名前は明かさなかったが、もう明かしてもいいだろう。椎名桔平と渡辺いっけいである。宅間孝行作・演出の舞台は同業者に人気があった。実は再々演が行われたのはもう9年も前だという。時の流れは速い。
その後、「歌姫」は長瀬智也主演で連続ドラマにもなっている。
土佐清水が舞台だが、宅間孝行はこの作品を書くために土佐清水までロケハンを行っている。
土佐清水は、東京から行くと最も時間のかかる場所としても知られているそうで、東京から土佐清水までは最短でも13時間以上掛かるという。


作・演出・主演:宅間孝行。出演:入山杏奈(AKB48)、阿部力(あべ・ちから)、黒羽麻璃央(くろば・まりお)、酒井美紀、樹里咲穂(じゅり・さきほ)、原史奈、滝川英治、越村友一、北代高士(きただい・たかし)、安田カナ、かとうかず子、斉木しげる、藤木孝

再々演時にヒロインを演じたのは初舞台の村川絵梨であったが、今回はAKB48の入山杏奈がやはり初舞台にしてヒロインを務める。入山杏奈と書いてもよく分からない人がいるかもしれないが、AKBのメンバーが握手会で刃物を持った男に襲撃された事件で、怪我を負ったメンバー二人のうちの一人と書くとピンとくる人がいるかも知れない(負傷したもう一人のメンバー、川栄李奈は「もう握手会に出る勇気がない」としてAKBを卒業、女優として活躍している)。
入山杏奈は千葉県出身。進学校として知られる千葉市立稲毛高校を卒業。芸能活動を優先させて大学には進学しなかったが、各グループに一人はいる「ブレーン要員」のメンバーと目されることもある(かつてのブレーンメンバーにはAKBの仲俣汐里、SKEの秦佐和子らがいた)。
ラストには宅間孝行の「どこで働いてるの?」というセリフに入山が「秋葉原」と答えるセリフがある。

入山杏奈は今年で21歳、再々演の時のヒロインであった村川絵梨は当時二十歳で、共に「歌姫」が初舞台。年齢的には大差ない。ただ村川絵梨は当時すでに朝の連続テレビ小説でヒロインを経験済み、主演映画も2本公開されていて、芸能人としてはともかく女優としては駆け出しの入山杏奈と単純には比較出来ない。
入山杏奈の演技も思っていたよりは良かったが、初舞台ということもあって滑舌の悪さは目立ったし、ヒロインの岸田鈴という女性はもっと多様な面をもった複雑な女性のはずなのだが、可愛らしさしか感じられなかった。村川絵梨は立っているだけで切なさが表現出来たが、入山杏奈の場合は仕草が必要だ。ただ仕草で切なさが十分出せるので筋は良いと思える。
太郎との最後のシーンの感情吐露の演技はとても良かった。


高知県土佐清水市にある映画館、オリオン座が舞台である。まずは現代の場面から始まるのだが、酒井美紀演じる小泉ひばりが一人になったところでタイムスリップ。舞台は昭和33年(1958)のオリオン座に移る。昭和33年は東京タワーが竣工した年であり、長嶋茂雄が読売ジャイアンツに入団した年でもある。世間では力道山やフラフープが人気であった。
四万十太郎(宅間孝行)はオリオン座の従業員。だが実は彼は自分の本当の名前を知らない。特攻隊として出陣した彼は、四万十川のそばの海岸に打ち上げられているのを、岸田勝男(斉木しげる)と岸田鈴(入山杏奈)の親子に発見される。だが記憶は全くなく、何者なのか不明なのだった。
岸田家は現在は、勝男と鈴、鈴の母の浜子(かとうかず子)の3人家族でオリオン座を営んでいるが、鈴には姉の泉(原史奈)がおり、泉は今は小日向晋吉(越村友一)と結婚して東京にいる。だが、身重であり、土佐清水で出産したいというので、戻ってくる。夫の小日向は見るからに変人であるが、小日向を演じる越村はあたかも劇団四季の俳優のように異様に滑舌良く演じ、違和感をより強烈に出す。
お遍路の途中でオリオン座に立ち寄った高知大学文学部在学中の大学生・神宮寺くん(黒羽麻璃央)は、民宿を営む鯖子(安田カナ)に強引に自分の宿に泊まるよういわれる。結局、神宮寺くんは夏休みの間ずっと鯖子の民宿で働きながらオリオン座に通い、ジェームズ・ディーンに憧れて、ジェームズと名乗るようになる。

土佐清水の隣町、中村市(現・四万十市)では愚連隊クロワッサンの松こと松中(阿部力)が暴れ回っており、中村市議の相良金蔵(藤木孝)に金を要求している。金の受け取り場所はオリオン座。松中は太郎によって追い出される。
相良は太郎が自分のよく知っている人物に似ていることに気づく。そしてそれこそが記憶をなくす前の太郎の正体であった……。


とても良く出来たメロドラマである。基本的には悲恋ものなのだが、太郎が及川美和子(酒井美紀。二役)に語るセリフが伏線となり、結末は明るい。
小泉ひばりは実は老女。ということで酒井美紀が老け役を演じることになるのだが、舞台ということもあってか、さほど違和感がない。「白線流し」のイメージが強烈な酒井美紀だが、1978年生まれということで、私と4つしか違わない。若い頃は4歳違うとかなり違ったが、今は42と38で、ほぼ同世代になってしまう。酒井美紀にしてみれば「私はまだ三十代。四十代と一緒にしないで」ということになるのかも知れないが。
酒井美紀も老け役をやってもおかしくない年になったのだ。


劇団員で見せた再々演と、有名俳優を何人も起用した今回の再々々演。アンサンブルで見せた再々演の方が劇の性質からいって見応えがあったように思う。また劇場もシアター・ドラマシティのような中規模劇場よりもシアターサンモールのような小規模劇場の方が合っている。だが、宅間さんも有名になったし、劇場のキャパシティーも拡がるのは必然である。


有名キャストを揃えたタクフェス公演であるが、宅間孝行の存在感が一番の魅力と言って間違いない。
今回も宅間はアドリブ攻勢。ジェームズ役の黒羽麻璃央に、「ジェームズは女に振られてお遍路に出たんだよね。どこで知り合ったの?」と突然聞く。黒羽が「精肉店の看板娘だった」と適当に答えると、「名前は?」と更に聞く。「リエ」という答えに、「可愛いじゃん。苗字は?」と宅間が聞くと黒羽は迷った挙げ句「柴田」とボケる。その場にいる全員の頭に柴田理恵の顔が浮かんでしまった。宅間演じる太郎は「眼鏡掛けてそうな名前」と更なるボケを行う。

入山杏奈には「何でもいいからとにかくボケろ」という指令が宅間から出された場面があったようで、漁師のゲルマンの乳首をつねるというボケをやる。ゲルマン役の北代高士は「こんなこと今までされたことない!」と言うが、斉木しげるが「おめでとう!」と言ったため、北代は逆に喜ぶ。


今日が大阪初日にして全公演の初日。19日まで大阪公演があり、その後、名古屋、札幌、東京、福岡、仙台、新潟を回る。

開演前に、宅間孝行、黒羽麻璃央、安田カナによるグッズ購入者限定のサイン会がある。私もパンフレットは買ったが、宅間さんのサインは二度貰っているので今回は遠慮した。
そしてメンバーによる振付指導の時間があり、本編終了後、出演者がオリジナル曲に合わせて踊り、観客も簡単な振付で踊る。宅間さんと若手の俳優陣が客席に下りてきて客席通路を歩きながら観客とハイタッチ。私は今日は通路に面した席に座っていたので、全員とハイタッチする。

アンコールの拍手もあったのだが、退館時間は午後10時。上演時間は2時間半で少し押したので本編が終わったのが午後9時35分過ぎ。出演者の挨拶(今日は入山杏奈に振られた)、今日が誕生日の北代高士のバースデー祝いなどで5分ちょっと。出演者の着替えで5分。ダンスの時間が5分ほどということで、時計はもう9時50分を示している。ということで、アンコールのダンスはなしで閉幕となった。宅間孝行は「大阪最高!」と口にした。

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