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2017年4月 1日 (土)

観劇感想精選(207) UMEDA BUNRAKU うめだ文楽2017「義経千本桜」河連法眼館の場

2017年3月24日 グランフロント大阪北館4階のナレッジシアターにて観劇

午後7時から、グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル4階にあるナレッジシアターで、うめだ文楽2017 「義経千本桜」より河連法眼館の段を観る。二代目竹田出雲ほかによる合作。
「仮名手本忠臣蔵」、「菅原伝授手習鑑」と共に三大傑作の一つに数えられる「義経千本桜」。歌舞伎でも有名だが、人形浄瑠璃としての方が先で、歌舞伎はいわゆる義太夫狂言として行われたものである。
「河連法眼館の段」は歌舞伎では四段目の切りであることから「四の切」という通称でも知られているが、文楽ではそういう表現はしないようである。歌舞伎の四の切は市川猿之助の先代と当代の十八番であり、私も京都四條南座などで歌舞伎版の「河連法眼館の段」を観ている。猿之助がラストで宙乗りを行うことで有名だ。

うめだ文楽は、大阪にある民放テレビ局5局の共同で制作されており、今回は読売テレビの担当で、司会は読売テレビアナウンサーの諸國沙代子(しょこく・さよこ)が務める。
毎回ゲストが招かれており、開演前のトークショーが行われる。今日のゲストはシンガーソングライターの嘉門達夫。替え歌でお馴染みの嘉門達夫だが、今日も新作替え歌である「森友の籠さん(原曲:「森のクマさん」)」を披露する。嘉門は、ナレッジシアターに来る前は、ラジオの仕事をしてきたそうで、「森友の籠さん」はすでにラジオで発表済みで、YouTubeにもすでにアップしたという。嘉門は「今日やれて良かったわ。明後日ぐらいになったらもうみんな忘れている」

嘉門は、歌舞伎は勘三郎と友人だったためよく観ていたが、文楽は3回ほど観たことがあるものの、いずれも居眠りしてしまったそうである。司会の諸國も1回観たことがあるだけだそうだ。うめだ文楽は文楽に馴染みのない人にも文楽をアピールするという目的もある公演であるが、嘉門が客席に「文楽を観るのは今日が初めてという人」と聞くと、手を挙げる人はまばらで、嘉門は、「今日はベテランばかりですね」と言う。文楽を観に来ない人は立地が良かろうが値段が安かろうが観に来ないので、まあ、当然といえば当然の結果である。うめだ文楽は国立文楽劇場と違って字幕は出ないので、わかりにくいという一面もある。

その後、静御前の人形を操りながら吉田簑紫郎、吉田簑太郎、桐竹勘次郎が登場し、トークを行う。吉田簑紫郎は今年42歳にして芸歴30年だそうだが、13歳の時に文楽を観たのがきっかけで人形に興味を持ち、楽屋に遊びに行くようになって、そのまま弟子入りとなったそうだ。吉田簑太郎は父も祖父も文楽の人形遣いであったため、高校生の頃には「自分もそうなるんだろう」と思っていたそうである。桐竹勘次郎は比較的遅く、大学生の時に授業の単位欲しさに観に行った文楽に惹かれてしまい、そのまま学生生活と平行して文楽の技芸員になるための見習いを始め、大学卒業後に本格的に文楽技芸員の世界に飛び込んだという。
国立文楽劇場には研修所があるため、そこ経由で来る人と弟子入りで来る人の二通りがあるそうだ。嘉門達夫は、「吉本でいってみれば、巨人師匠に弟子入りするか、NSC入るか」と例えていた。研修所に入ると、2年ある課程のうちの1年は、太夫、三味線、人形遣いの全てを学ぶ必要があるが、弟子入りだと一本で行けるそうである。ただどちらが良いかは人によるという。

人形遣いは、まず足遣いから始めて10年、左遣いに10年から15年掛かるそうである。だが簑紫郎は、「入門から21年間ずっと足遣いで、これは騙されたと。ただ自分は中学しか卒業していないので、潰しが利かない。だからこれをやるしかない」と腹をくくったそうである。また全員が主遣いになれるわけではなく、うだつが上がらないままに終わる人もいるそうである。

諸國沙代子が、「笑いたくなるときなんてないんですか?」と聞くと、簑紫郎は、「聞かないで下さい」と言う。実は下で介錯をしている人が、笑わせようとして変なものを出してくる場合があるそうだ。だが、人形遣いは何があっても動じてはいけないため、笑った方が悪いということになるそうである。

トークのラストでは、嘉門の代表曲である「鼻から牛乳」に合わせて、静御前の人形に動いて貰った。
なお、昨年、関西テレビの回のうめだ文楽トークゲストとして登場した兵動大樹は演目は観ずに帰ってしまったそうだが、嘉門達夫はちゃんと観劇していた。


「義経千本桜」より河連法眼館の段。字幕はないがその代わり、河連法眼館の段に至るまでの「義経千本桜」のあらすじがCG映像で説明された。
太夫は豊竹希太夫。三味線は鶴澤寛太郎と鶴澤燕二郎。出演は、吉田幸助(佐藤忠信、狐、狐忠信)、吉田簑紫郎(静御前)、吉田玉勢(源義経)、吉田簑太郎、桐竹勘介、吉田玉誉(よしだ・たまよ)、吉田簑之、吉田玉路(よしだ・たまみち)、桐竹紋吉(きりたけ・もんよし)、吉田玉延(よしだ・たまのぶ)、桐竹勘次郎、吉田玉彦ほか。

歌舞伎の河連法眼館の場は、狐忠信(源九郎狐。大和郡山市の源九郎稲荷神社に祀られている)の早替わりが見物であるが、文楽で狐忠信の主遣いを担当する吉田幸助も歌舞伎俳優と同等か、それ以上の早替わりを行う。人形を変えたり衣装を着脱させたりするだけでなく、自身の衣装の早替えも行う。主遣いの衣装の早替えは、春秋座で観た淡路文楽で観たことがあるが、それ以来である。
吉田幸助は顔を赤くしながらの熱演。障子を破ったり戸板返しを行うなど、想像力豊かな展開を見せる。

歌舞伎では猿之助の狐忠信が宙乗りで去るのだが、今回の文楽上演では、狐忠信が客席に降りてきて、中央通路を下手から上手へと移動し、ドライアイスの煙が漂う上手通路口から退場していった。

今回の公演ではカーテンコールがあり、狐忠信の主遣いを務めた吉田幸助がスピーチを行う。「ああ、しんど」と吉田幸助。歌舞伎の狐忠信も大変だが、文楽の狐忠信も激しく動きっぱなしの上に、移動距離も他の演目の人形より長く、早替えもあるということで、体力がないと務まらない役である。
吉田幸助は、「来月も国立文楽劇場の方で公演がございますが、19日だけお休みとさせて頂いております。19日にお越しになってもご覧いただけませんので、それだけはよろしくお願いいたします」とユーモアを込めて語っていた。

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