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2017年5月11日 (木)

観劇感想精選(210) 日中国交正常化45周年記念「中国国家京劇院 愛と正義と報恩の三大傑作選」

2017年4月2日 左京区岡崎のロームシアター京都メインホールにて観劇

午後6時30分から、ロームシアター京都メインホールで、日中国交正常化45周年記念「中国国家京劇院 愛と正義と報恩の三大傑作選」を観る。
北京の伝統芸能である京劇。その京劇の総本山ともいうべき中国国家京劇院の来日公演である。中国国家京劇院は中国文化部直属の団体であり、京劇の歴史的名女形の梅蘭芳が設立に関与していて初代院長に就任している。

演目は、「西遊記・金銭豹」、「太真外伝」より抜粋、「鎖麟嚢」の3つ。いずれも上演の前に紗幕に内容を説明する映像が投影される。日本語字幕付きでの上演。

京劇を観るのは今回が2度目。前回は、NHK大阪ホールで観ている。

陳凱歌監督の映画「さらば我が愛 覇王別姫」でも知られる京劇。故レスリー・チャンが女形を演じていたため、現在でも歌舞伎同様、女形が存在していると思われることが多いようだが、清朝時代は女は舞台に上がれなかったものの、その後は徐々に状況が変わり、改革開放以降は、女役は基本的に女優が歌い、演じている(男性が老女役を演じることはある)。
ちなみに、中国の地方演劇の中には京劇よりも早い時代に女優制度を取り入れたものも存在する。

今回の公演では、ロームシアター京都メインホールはバルコニー席(サイド席)は用いられていなかった。
今日は4階席最前列の真ん真ん中の席での観劇。手すりが多少目障りになるが、手すりがないと移動する際に命が危ないのでこれは我慢するしかない。

開演前には中国の民謡などがインストゥルメンタルで流れていたのだが、中国初のロックンローラーとして知られる崔健が中国共産党批判のメッセージを込めてカバーしたとされることでも有名な「南泥湾」も流れていた。


「西遊記・金銭豹」。天竺に向かう途中の三蔵法師(演じるのは陳旭之)の一行、紅梅山という山の麓に差し掛かった時の話である。紅梅山に住む妖怪の金銭豹(張志芳)は、地元の住人である鄧洪(馬翔飛)の娘(劉夢姣)に一目惚れして、鄧洪に娘と結婚させるようせまる。そこに三蔵法師の一行が宿を借りに鄧洪の家にやって来る(京劇は庶民のための娯楽として発展したため、かなりご都合主義の筋書きが多い)。鄧洪の悩みを聴いた孫悟空(馬燕超)は、猪八戒(危佳慶)と共に、鄧洪の娘と娘の侍女(戴忠宇)に化けて金銭豹に近づき、退治しようとする。

アクロバットな要素が多く、孫悟空役の馬燕超はバック転にバック宙と身軽であり、如意棒の捌き方も巧みである。金銭豹役の張志芳も武器とする棒を巧みに操る。

孫悟空役の馬燕超と鄧洪の娘役の劉夢姣、猪八戒役の危佳慶と侍女役の戴忠宇は化けたという設定で入れ替わりながら演技をする。

日本でも有名な『西遊記』であるが、内容が通俗的であるため、「子供のうちは『西遊記』は難しくて読めないが、大人になったら『西遊記』は馬鹿馬鹿しくて読めない」という言葉が中国にはあり、実際、どの層が主に読んでいるのか謎の物語であったりする。

京劇は基本的に歌う劇であり、北京オペラ(もしくはチャイニーズ・オペラ)とも呼ばれている。演劇の台本を戯曲というが、中国では戯曲というと、京劇など古典演劇のことを指す。歌があるので曲という字が入っている。わかりやすい。

高いところにある席には高い音色の直接音が飛んで来やすい。「西遊記・金銭豹」は活劇であるため、銅鑼や鐘がやたらと打ち鳴らされて、かまびすしく感じた。


「太真外伝」より抜粋。楊貴妃(本名:楊玉環。演じるのは朱虹)と玄宗皇帝(本名:李隆基。演じるのは劉塁)のロマンス劇である。喧嘩をした玄宗皇帝と楊貴妃。だが、七夕の夜に織姫と彦星のことを祈る楊貴妃を見た玄宗は再び心惹かれ、二人で鵲の橋(西洋の星座でいうはくちょう座のこと)となり、比翼連理の誓いを結ぶ。
抜粋上演なので、短く、少し物足りなかった。


「鎖麟嚢」。これが最も本格的な上演演目である。山東半島にある登州が舞台。富豪の令嬢である薛湘霊(李文穎)が嫁入りする日。侍女の梅香(載忠宇)がまず登場して状況を説明する。この作品は現代京劇であるためか、聞いていてもセリフの内容がわかりやすい。
薛湘霊というのがまた、わがままな女性で、嫁入り道具のデザインが気に入らないというので、執事の薛良(王宝利)に何度も買いに行かせては「買い直してきて」と命令している。
登州には、嫁入りする娘に鎖麟嚢という袋を持たせることになっている。この袋に宝石などを詰め込んで持たせると娘が子宝に恵まれるというのだ。だが薛湘霊は、鎖麟嚢に書かれた麒麟が「豚や犬に見える」と文句を付けている。薛夫人(張静)は、そんな娘にわがままを言わないよう諭す。

婚礼の一行は、雨に降られたため、春秋亭という東屋で雨宿りをする。そこで薛家の人々は、趙守貞(朱虹)というやはり嫁入りする女性の泣き声を聞く。趙朱貞は貧しい家の娘であり、嫁入りなのにみすぼらしい体裁しか取れないのを嘆いていたのだ。薛湘霊は誰もが自分のように恵まれているのではないということを悟り、趙守貞に鎖麟嚢を与えるのだった。

これまたラストではかなりご都合主義な展開になるのだが、庶民は悲劇よりも予定調和の大団円を好んだのであろう。日本で「水戸黄門」が好まれるのも同じ心理だと思われる。
なお、この劇に出てくる男の子の役は女優(「西遊記・金銭豹」で鄧洪の娘役で出ていた劉夢姣)が演じていた。

元々、京劇の伴奏楽器として発達した胡弓(二胡)の響きも心地よく、楽しめる演目であった。

カーテンコール。出演者達はまず、中国式の拱手で拍手に応え、その後、西洋式の胸に手を当てる形のお辞儀を行った。

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