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2017年5月24日 (水)

コンサートの記(301) 「ならピ!」♯5

2017年5月14日 奈良県大和郡山市のDGM MORI やまと郡山城ホールにて

午後4時から、DGM MORI やまと郡山城ホール大ホールで、「ならピ!」♯5を聴く。

「ならピ!」は、「Nara Piano Friends」の略である。奈良県の家庭のピアノ所有率が全国トップクラスであることから、MBS(毎日放送)の主催で始まったピアノをフィーチャーしたコンサート(音楽祭)である。
ちなみに、「オケピ!」ではなく「ならピ!」であるが、「ならピ!」の音楽監修を務めているのは、ミュージカル「オケピ!」の音楽と指揮を担当した服部隆之であるため、名前を借りてきたと考えるのが普通であろう。

MCを務めるのはMBSアナウンサーの西靖と豊崎由里絵の二人。
出演するピアニストは、若林顕、西村由紀江、岡本真夜(ピアニストとしてはmayo名義)、萩原麻未。若林顕夫人であるヴァイオリニストの鈴木理恵子(元読売日本交響楽団客員コンサートミストレス)も出演し、若林と夫婦デュオを演奏した。

曲目は、第1部が、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」より“イゾルデの愛の死”(リスト編曲)、加古隆の「アダイ・アダイ~ブルネイの古謡による」、モンティの「チャルダッシュ」、西村由紀江の自作自演による「素敵にモーニング」、以前に関西で西村由紀江と番組で共演していた宮川泰作曲作品のメドレー、西村由紀江の「Dear ピアノ」、岡本真夜の弾き語りによる「Alone」、mayo名義による「ほうき星」、岡本真夜の弾き語りによる「TOMORROW」
休憩を挟んで第2部が、映像作品「ならね八十八景 ~風に抱かれて~」の上映、ドビュッシーの「月の光」、ドビュッシーの「喜びの島」、奈良県立桜井高校音楽部と、加藤完二指揮ならピ♪オーケストラによる「前へ」、服部隆之の「風に抱かれて ならピ♪Nara Piano friendsテーマ曲」

ワーグナーが若林顕のソロ、加古隆作品と「チャルダッシュ」が若林顕と鈴木理恵子のデュオ、第2部のピアノは全て萩原麻未が受け持つ。


今回が5回目となる「ならピ!」であるが、やまと郡山城ホールが会場となるのは今回が初めてである。やまと郡山城ホールはシューボックスタイプのホールであり、クラシック専用ではないが、響きの良さに定評のあるホールである。
MCの西靖は、「大阪城ホール(通称・城ホール)とは違い、こちらの城ホールは大和郡山の街並みに溶け込んでいる。屋根が瓦屋根で」と、大和郡山城の真ん前にあるため、景観に気を配った外観を褒めていた。
豊崎由里絵が、「優良ホール100選」にやまと郡山城ホールが選ばれているということを伝えるが、西靖は「そういうものがあるということを知りませんでした」と素直に言う。


今日はMBSによる本格的なテレビ収録があるということで、カメラがホール内に11台設置され、ステージ後方にはスクリーンが降りていて、カメラが捉えた映像がそのまま投影される。
カメラはピアノのすぐ脇にもあり、真上からもピアノを捉えている。


日本を代表するヴィルトゥオーゾピアニストとして知られる若林顕が弾く「トリスタンとイゾルデ」より“イゾルデの愛の死”でスタート。
今日はやまと郡山城ホールの響きを確認する意味も込めてやって来たのだが、最前列だったため、音の響き全体を捉えることは出来なかった。ただ優しい音のするホールだということはわかる。
若林のピアノはスケールが大きく、音に芯が通っている。

鈴木理恵子と若林顕のデュオによる、加古隆の「アダイ・アダイ ~ブルネイの古謡による」。ノスタルジックな作風で知られる加古隆。「アダイ・アダイ」は副題にあるとおり、天然資源が豊かな国として知られるブルネイ・ダルサラーム国の古い民謡を用いた曲だが、加古の作風に変化はない。どこか懐かしい感じのする美しい作品であった。

超絶技巧曲として知られる「チャルダッシュ」。鈴木のメカニックは十分であり、味わい深い演奏となった。


MBSアナウンサー二人による、若林顕と鈴木理恵子夫妻へのインタビュー。若林によると、夫婦共演となると日常とは異なり、互いを「さん」付けで呼ぶような関係となるそうで、相手に対する敬意のようなものが生まれるようである。


ポピュラーピアニストとして活躍している西村由紀江。若林が弾いたものと同じピアノを使うわけだが、やはりというかなんというか音色は異なる。
自作の演奏の他に、関西での演奏ということで、特別に「宮川泰メドレー」(編曲は宮川泰の息子である宮川彬良と西村由紀江が共同で担当)も演奏する。「ゲバゲバ90分」、「恋のバカンス」、「ウナ・セラ・ディ東京」、「ズームイン!朝」、「宇宙戦艦ヤマト」などのピアノ編曲版が演奏される。MBSアナウンサー二人とのやり取りで西村は、「宇宙戦艦ヤマトがやまと郡山城ホールから飛び立ちました」と語った。
 
西村は子供の頃は手が小さいためピアノが上手く弾けず、「頭にきた! もう止めてやる!」と思ったことが何度もあるそうだ。

西村は、やまと郡山城ホールの思い出として、2年ほど前にやまと郡山城ホールでコンサートを行ったのだが、大雪の日であり、「コンサートが終わったら大和郡山の美味しいものを食べたい」とと思っていたものの、雪がどんどん積もるため、「新幹線が止まるかも知れない」ということで、コンサートが終わってすぐに郡山駅でカレーを飲み込むように急いで食べて大和郡山を後にしたという。そのため、「もう一度、やまと郡山城ホールに行きたい」と思っていたが、念願叶って再びやまと郡山城ホールのステージに立つことが出来たという。


岡本真夜。ピアノの蓋を閉じたままでの演奏である。まずは、ならピ♪カルテットとの共演で、「Alone」の弾き語り。もう20年ほど前になると思うが、NHKホールでN響の土曜マチネーの定期演奏会を聴いた帰りに、タワーレコード渋谷店に寄ったのだが、タワーレコードの前のラジオ放送ブースに岡本真夜がいるのを見かけたことがある。というわけで、岡本真夜の声は以前にも生で聴いたことがあるのだが、彼女の歌声を生で聴くのは初めてである。

岡本真夜によるトーク。幼い頃の岡本真夜の夢は「クラシックのピアニストになること」で、中学生までは音大に行こうと思っていたのだが、高校生の時にピアノよりも歌に興味が出て、シンガーソングライターへの道を歩むことになった。「弾き語りだし、ピアノを弾けているからいいか」と思っていたものの、幼少時の夢がその後も捨てられず、ピアノのプライベートレッスンを受けて、昨年の3月にayo名義でピアニストとしてのアルバムをリリースしたという。

「ほうき星」は、ハレー彗星を出会いと別れとして描いた本のイメージ曲として作曲を依頼された作品で、演奏時間がポピュラー作品としては長い8分23秒のものになったという。チェロとピアノのための作品で、チェロ独奏は後藤敏子が務めた。

有名な「TOMORROW」。ピアノ編曲は西村由紀江が行ったそうで、この曲は西村がピアノ伴奏を務め、岡本が立って歌うというスタイルを取る。ならピ♪カルテットも伴奏を行う。
まずはミュージカル「アニー」の「TOMORROW」から取られた序奏を経て、岡本真夜の「TOMORROW」本編へと繋げるという編曲である。

西靖は、22年前のアナウンサーデビュー当時に、岡本真夜にサインを貰ったことがあるそうで、その時のサインに金魚の絵が入っていたという話をする。「大和郡山での公演だし」ということで、朝から温めていたネタだったのだが、当の本人の岡本真夜はサインに金魚の絵を描いたことを完全に忘れていた。当時、金魚にはまっていたことは覚えているのだが、金魚の絵を描いたのかどうか記憶が定かでないという。西靖は肩すかしを食らった格好になった。


休憩を挟んで第2部。まず、映像作品「ならね八十八景 ~風に抱かれて~」。服部隆之が「ならピ!」のために書いたピアノ独奏曲「風に抱かれて」が奈良県内の色々な場所で、様々な人々によって演奏される様を収めた映像である。オープンしたばかりの大和郡山城天守台展望施設、明日香村にある甘樫丘、唐招提寺、薬師寺、平城宮跡、東大寺、奈良県立桜井高校、室生寺などで収録が行われている。女性ピアニストが多いのだが、「女人高野」として知られる室生寺では敢えて男性ピアニストが起用するなど捻りが利いている。
「風に抱かれて」は、左手は基本的に「タタタタ」のバイエル風伴奏であり、右手も単音が多いなど、意図的に平易に書かれており、子供からお年寄りまで幅広い年齢層の人が演奏を行っていた。


注目株のピアニスト、萩原麻未が登場。萩原麻未が今年は関西で演奏を行う機会が多い。おずおずと登場してバリバリとピアノを弾き、また腰を低くして去って行くという、自信があるのかないのかよくわからないという不思議な人でもある(「リアルのだめ」と呼ぶ声もあるそうだ)。

まずは、ドビュッシーの「月の光」。輪郭のクッキリとしたピアノを奏でる。続く「喜びの島」では卓越した技巧を披露した。

MBSアナウンサー二人のインタビューを受けた萩原麻未。喋るのには慣れていない様子で、西靖に、「あなた、ピアノは凄いのに、話し始めるとどんどん後ろに下がろうとする」と言われる。豊崎由里絵が、事前に交わしていた会話の様子から「とっても謙虚なんですよね」とフォローした。


1904年創立の奈良県立桜井高校には、40年間眠っていたスタインウェイのピアノがあった。2012年にそのピアノが直され、復活コンサートの依頼を受けたのが萩原麻未だったという。
そこで、ピアノが桜井高校の復活スタインウェイに交換され、桜井高校音楽部(現役の生徒とOG達からなる)の合唱、加藤完二指揮ならピ♪オーケストラの演奏、萩原麻未のピアノ独奏で、東日本大震災復興のために書かれた「前へ」という合唱曲が演奏された。

ラストは、服部隆之の「風に抱かれて」のピアノとオーケストラと合唱のための編曲版が演奏される。合唱はヴォカリーズである。プロピアニストにとっては技巧が平易であるほど演奏が難しかったりするのだが、その点は萩原麻未は万全で、リリシズムに溢れたピアノとなった。

萩原麻未の顔を見ていて、「誰かに似てるなあ」と思ったのだが、「関西」がキーワードになって思い当たった。「ゆいはん」こと横山由依(AKB48総監督)である。そっくりというわけではないのだが、同傾向の顔であることは間違いない。

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