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2017年5月 3日 (水)

MOKK project 05 「地樹なく声、ピリカ」

4月24日 左京区岡崎のロームシアター京都ノースホールにて

午後7時30分から、左京区岡崎にあるロームシアター京都ノースホールで、コンテンポラリーダンスカンパニーMOKK(モック)の公演、MOKK project 05(vol.5) 「地樹なく声、ピリカ」を観る。

MOKKは、村本すみれを中心に、日本大学藝術学部(通称:日藝)出身者によって結成されたダンスカンパニーであり、「劇場機構にとらわれない空間からの発信」を軸に公演を行ってきた。
現在は、日藝出身者にとらわれず、公演毎に出演者を募るプロデュースユニットのような形になっているようである。
「地樹なく声、ピリカ」のピリカはいかにもアイヌ語的な響きを持つが、実際にアイヌ語であり、「美しい」という意味を持つ(北海道には「ピリカ」という言葉の入る施設がいくもある)。
舞台上手に裸の樹が一本そびえ、下手には材木が一本転がっている。舞台中央にはビニールハウスがあり(温室のようにも見える)中に植物が青々としているのがわかる。殺風景な舞台装置の中にあってこのビニールハウスだけが理想郷のようにも見えるのだが、これが今あるものなのか過去なのか未来なのかは明かされることはない。

溶暗すると、まず男女によるハミングが聞こえ、明かりが付くと男性ダンサー2人によるダンスが始まる。

続いて、ダンサー達が多数登場し、10人のダンサー(男性4人、女性6人)が入り乱れての祝祭的なダンスが繰り広げられている。それほどプリミティブな感じはしないが、「春の祭典」の冒頭のようだ。ビニールハウスの中の緑が映えているため、森に集ったロビン・フッド達のようにも見える。
なお、女性ダンサーは6人中4人が日本女子体育大学舞踏学専攻卒業である。「スポ根女子大」のイメージがある日本女子体育大学であるが、最近は舞踏など、スポーツそのものではない分野にも力を入れているようだ。
女性ダンサー達は全員、髪の一部を赤く染めているが、これは視覚的効果を狙ったもので(植物の緑に対して反対色の赤を配したものだと思われる)、それ以上の意味はないそうだ。

その中の一人の女性ダンサー(仕草や表情から子供を演じていることがわかる)が弱々しく倒れる。どうも子供なので疲れてしまったようである。やがて、子供が実際に死んだかのように見える場面もある。リーダー格に見える女性ダンサーが子供役の女性を見つめ悲しみに暮れるような表情をする。どうやら母親ということらしい。
その後、子供は生き返るのだが(最初から死んでいなかった可能性もある)、子供を取り巻く人々も倒れ、死にゆくように見える場面がある。いくつもの死が繰り返され、「喪失」という単語が頭に浮かぶ。

ビニールハウスの中で男女の営みが示唆される場面があり、それを見た人々はメロディーを口ずさみながら踊る。ラストに現れる音楽はこのメロディーを弦楽合奏で弾いたものである。


コンテンポラリーダンスは基本的に「反物語」であり、それ故そのほかのもの(演劇や映画など)に置き換えられないのであるが、そのため却って多様な物語解釈も可能である。
ただ、考えるより感じることの方が大切である。安易に物語に回収しようとすると、コンテンポラリーダンスをすることと観ることの意義がなくなってしまう。


終演後に、MOKK代表で、「地樹なく声、ピリカ」の構成・振付・演出を担当した村本すみれと、追手門大学大学院准教授でダンス批評が専門の富田大介によるトークがある。
「地樹なく声、ピリカ」の音楽は、「そして父になる」で日本アカデミー賞優秀音楽賞を担当している松本淳一が手掛けている。松本は劇伴の作曲家であるため、村本によると「注文したらすぐ曲が出来てしまう」そうであるが、「物語性が強すぎる」と思うものはカットしたり、他の曲に書き換えて貰ったりしたそうだ。安易に物語に回収されることは村本も当然ながら避けているようである。

村本によると、「地樹なく声、ピリカ」は、人によって見方が180度異なる場合が多いそうだが、富田が「昇華」と見た場面を私は「痛切なる喪失」と捉えており、まさに180度異なるのがわかる。抽象的である必要があるため、当然ながら正解もなく、これまでの歩んできた人生によって見方が変わるのも当然である。
村本自身は、「生」か「死」かでいったら「死」の方に重点を置いているそうで、これは私と重なるが、作者の言うことが必ずしも正しいとは限らないのもコンテンポラリーダンスの面白いところである。

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