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2017年6月13日 (火)

観劇感想精選(215) 大阪松竹座「五月花形歌舞伎」 「野崎村」&「怪談乳房榎」

2017年5月17日 大阪・道頓堀の大阪松竹座にて観劇

大阪・道頓堀にある大阪松竹座で、「五月花形歌舞伎」を観る。午後4時開演の会で、演目は、新版歌祭文「野崎村」と「怪談乳房榎」

大阪松竹座の「五月花形歌舞伎」には、中村勘九郎、中村七之助の兄弟が出演。市川猿之助も出る。「怪談乳房榎」は、勘九郎・七之助兄弟がニューヨークで行われた平成中村座で大当たりを取った演目でもある。


「野崎村」は、近松半二が人形浄瑠璃のための書いた本を基にした世話物の義太夫狂言である。「心中」がキーワードになっている。
大坂の野崎村が舞台。百姓の久作(板東彌十郎)には一男一女があったが、息子の久松(中村歌昇)は実子ではなく、武士の家の出。訳あって実家が断絶し、久作に引き取られたのだ。久作には実の娘であるお光(中村七之助)がいて、久松とお光は将来を約束した仲だった。
久松は大坂の油屋に奉公に出ていたが、実家に戻ってくる。
冒頭に、久松の男っぷりとお光の容色を村人が褒めるセリフが加わっている。
七之助演じるお光は、久松が戻ってきて結婚も間近ということで浮き浮きとした様子。何度も鏡を見て、自らの容姿におかしなところはないかと確かめるが、どうやら少しナルシストの傾向があるようでもある。
大坂で久松と恋仲だった、油屋の娘・お染が久作の家を訪ねてくる。訪ねて来た人が噂に聞くお染だと悟ったお光は、つれなくして家に入れようとしない。

色々あって、久松とお染は心中しようとして久作に止められ、お光は身をひくため仏門に入る決意をするのだが、「身をひくために仏門に入る」という感覚は、正直、今ひとつピンとこない。現代では「身をひくために仏門に入る」ということはまずないということもあるのだが、身をひくような状況であるのかどうか。お光が幼かったとすればそれまでになるのだが。

七之助のお光は色気があってとても良い。


「怪談乳房榎」。三遊亭円朝の落語が原作である。中村勘九郎は、菱川重信、下男の正助、うわばみ三次の3役を早替りで演じる。

隅田川河畔の隅田堤。絵師の菱川重信の妻であるお関(七之助)が、桜の名所である堤の茶屋で休んでいると、従兄弟の松井三郎(市川猿弥)がやってくる。松井の主家である谷家で、金蔵に盗賊が押し入り、二千両が盗まれるという事件が発生。佐々繁(さっさ・しげる)という侍の羽振りが急に良くなったという話を聞いた松井の父親は佐々を捉えようとするが、佐々は逐電。事件を解決できないまま亡くなった父親の無念を晴らすため、松井は佐々の行方を追っていたのである。

松井が去った後、器量よしであるお関は、通りがかりの者に絡まれるが、深編み笠の浪人がお関を助ける。浪人の名は磯谷浪江(市川猿之助)。磯谷は、「絵師になりたい」ということで、菱川重信に弟子入りする運びとなったのだが、磯谷の正体こそ佐々繁であり……。

中村勘三郎は、正助役として下手に去ったかと思えば、うわばみ三次としてすぐに現れたり、うわばみ三次と正助が階段ですれ違う場面で、三次から正助へ瞬く間に化けたりする。
花道で他の役者と入れ替わるのだが、これがまた実に巧みで、どうなっているのかやはりわからない。勘九郎が早替りを行うたびに、客席から感嘆の声がもれる。歌舞伎の外連の極みである。

今回は、角筈十二社大滝の場では、本水が使用される。勘九郎は水を思いっきりはね飛ばして、客席から笑いが起こる(一階席前から5列目までの人には水よけ用のシートが予め配られていた)。
角筈という地名は現在では消滅しているが、西新宿の一帯であり、東京都庁の辺りである。角筈一二社(じゅうにそう)大滝は、現在の新宿中央公園内にあった人工の滝。淀橋浄水場建設の際に埋めたてられ、現在では影も形もない。

勘九郎は正助の剽軽ぶりがよくはまっている。勘九郎も七之助も実にいい役者である。実いい役者なのだが、二人合わせてもまだ父親の勘三郎には遠く及ばない。勘三郎は不世出の名優であり、超えるのは至難の業であると思われる。

猿之助が出演ということで、勘九郎は猿之助がテレビCMに出ているソルマックの話をしたり(「CMに出ているのがまたいい男」と言っていた)、キーになる印籠に「澤瀉」の家紋が入っているという設定にして笑いを取っていた。

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