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2017年7月27日 (木)

コンサートの記(312) レナード・スラットキン指揮デトロイト交響楽団来日公演2017大阪

2017年7月16日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後2時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、デトロイト交響楽団の来日演奏会に接する。指揮はデトロイト交響楽団音楽監督のレナード・スラットキン。

デトロイト交響楽団は、アメリカを代表する工業都市で「自動車の街」としても知られるデトロイトを本拠地とするオーケストラ。1914年の創設。ポール・パレーとのフランスものやアンタル・ドラティとのストラヴィンスキーなどの名盤で日本でもよく知られている。来日は19年ぶりだが、関西で公演を行うのは初となるようである。

レナード・スラットキンは、「史上最もアメリカ的な指揮者」とも呼ばれるアメリカ出身の名匠(ただしWASPではなく、ウクライナ系ユダヤ人の血筋である)。日本でもNHK交響楽団への客演で知られており、NHK交響楽団の初代常任指揮者候補のラスト3人の中の1人となっている(最終的にはシャルル・デュトワに決定。もう一人の候補であるガリー・ベルティーニはその後、東京都交響楽団の指揮者となった)。父親はポップスオーケストラであるハリウッド・ボウルの指揮者であったフェリックス・スラットキン。
1980年代に、音楽監督を務めていたセントルイス交響楽団を全米ランキングの第2位に押し上げて注目される。ワシントンD.C.のナショナル交響楽団やロンドンのBBC交響楽団の音楽監督時代にはレコーディングがなくなったということもあって低迷したと見られていたが、2008年にデトロイト交響楽団の音楽監督に就任するや復活。「全米の音楽監督」との名声を得ている。NAXOSレーベルへの録音も継続中。

MLBの大ファンであり、セントルイス交響楽団音楽監督時代には同地を本拠地とするカージナルスの大ファンであったことで知られる。スラットキンがナショナル交響楽団の音楽監督に転任する際には、「問題はただ一つ、彼がセントルイス・カージナルスのファンからボルチモア・オリオールズのファンに乗り換われるかどうかだ」という記事が書かれたこともある(当時まだワシントン・ナショナルズは存在せず、D.C.最寄りの球団はボルチモア・オリオールズだった)。現在ではデトロイト・タイガースのファンのようである。


曲目は、レナード・バーンスタインの「キャンディード」序曲、シンディ・マクティーの「ダブルプレー」、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」(ピアノ独奏:小曽根真)、チャイコフスキーの交響曲第4番。

アメリカのオーケストラらしく、黒人の奏者が何人もいる。
基本的にドイツ式の現代配置での演奏だが、第2ヴァイオリンとチェロの副首席奏者は指揮者の正面に回り込むという独自の配置。金管はホルンは管楽の最後列に陣取るが、他の楽器は少し離れて、舞台上手奥に斜めに陣取るというロシア式の配置に近いものを採用していた。


レナード・バーンスタインの「キャンディード」序曲。デトロイト交響楽団の音色は美しく、輝きと軽やかさもある。日本のオーケストラも90年代からは考えられないほど成長したが、デトロイト交響楽団に一日の長があるように思う。


シンディ・マクティーの「ダブルプレー」。
シンディ・マクティーは、現代アメリカを代表する女性作曲家であり、レナード・スラットキン夫人でもある人物。
「ダブルプレーは」、チャールズ・アイヴズの「答えのない質問」にインスパイアされた作品で、現代音楽的側面と伝統に基づくそれの両方が上手く息づいているように思う。
演奏終了後、作者のシンディ・マクティーがステージに上がり、夫君でもあるスラットキンと共に喝采を浴びた。


ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。スラットキン指揮のデトロイト交響楽団はお国ものということもあり、万全の演奏を聴かせる。ノリもリズムも日本のオーケストラとは桁違いで、本場であることの強さが感じられる。
小曽根真のピアノは色彩感豊か。アドリブの場面では、印象派的な響きやエスパニッシュスタイルの旋律を奏でるなど表現が巧みである。

小曽根はアンコールとして自作の「Home」を演奏した。


チャイコフスキーの交響曲第4番。デトロイト交響楽団の弦は合奏を徹底的に整えることで生まれる透明で冷たい響きを発し、チャイコフスキーの楽曲に相応しい雰囲気を作り出す。スラットキンは適度に客観的なアプローチを行い、そのことでチャイコフスキーの苦悩がより把握しやすいようになっていた。管楽器奏者達の腕も達者であり、力強さも万全に発揮されている。
第2楽章と第3楽章はアタッカで繋がれ、曲調のコントラストが強調されている。第4楽章ではスラットキンはそれほどペシミスティックな解釈は行っていないように感じられた。


アンコール演奏。まずは、「悪魔の夢」。演奏前にスラットキンは1階席の方を振り返り、「ファースト、アメリカン・ナンバー(中略)アレンジド バイ マイ ファーザー」と語ってから演奏を始めた。煌びやかなオーケストレーションが印象的である。スラットキンは聴衆に手拍子を求め、手拍子も指揮する。

アンコール2曲目、スラットキンは「サプライズ!」と語り、「六甲おろし(阪神タイガースの歌)」が演奏される。デトロイトにもTIGERSがあるための特別演奏。スラットキンは阪神タイガースのキャップ(黄色のつばに縦縞の入ったウル虎の夏仕様のもの)をかぶっての指揮である。
別の曲のように美しい「六甲おろし」であった。

レナード・スラットキン指揮デトロイト交響楽団大阪公演アンコール

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