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2017年9月30日 (土)

コンサートの記(320) 春秋座オペラ「魔笛」

2017年9月24日 京都芸術劇場春秋座にて

午後2時から、京都芸術劇場春秋座で、歌劇「魔笛」を観る。モーツァルト最後のオペラにしてオペラ史上最も人気のある作品(もともとはジングシュピール=音楽劇である)。人気作だけに観る機会も多い。
モーツァルトの三大オペラは、「魔笛」、「フィガロの結婚」と「ドン・ジョヴァンニ」であるが、心理劇である「ドン・ジョヴァンニ」は「魔笛」や「フィガロの結婚」に比べると上演機会が少なく、私はまだ生で観たことがない。ということを開演前に公演プロデューサーの橘市郎氏と話す。
指揮は大勝秀也(おおかつ・しゅうや)、上演台本・演出は三浦安浩。今日の出演は、片桐直樹、根本滋、服部英生、原田幸子(はらだ・さちこ)、高嶋優羽(たかしま・ゆは)、三輪千賀、畠中海央(はたなか・みお)、糀谷栄里子(こうじたに・えりこ)、内田真由、松井るみ、土岐真弓、森井美貴、萩原次己(はぎはら・つぐみ)、大淵基丘(おおふち・もとく)、山内政幸、田中大揮ほか。公演監督:松山郁雄(歌手としては松山いくお名義で昨日出演)。
演奏:ミラマーレ室内合奏団(弦楽六重奏+エレクトーン2台、フルート。ティンパニ)、合唱:ミラマーレ合唱団。日本語訳による歌唱と演技での上演である。

毎年恒例の春秋座オペラ。今回も花道や回り舞台を駆使した演出が行われる。

指揮の大勝秀也は1961年東京生まれ。東京音楽大学卒業。1988年に渡独し、ベートーヴェンの生まれた街にあるボン市立歌劇場でアシスタントとなってオペラ指揮者としての道を歩み始め、ボン市立歌劇場とゲルゼンキルヒェン市立歌劇場の第一指揮者に昇格。その後、スウェーデンのマルメ歌劇場の音楽監督に就任し、日本でもザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の正指揮者になるなどオペラ畑を歩み続けている指揮者である。
1998年6月のNHK交響楽団C定期演奏会に登場。この時はA定期を大植英次が、B定期を上岡敏之が指揮しており、「N響が若い指揮者を正指揮者候補として試したのではないか」と噂された。結果としては3人とも不合格となったようで客演は続かなかったが、この時すでにN響も注目する指揮者の一人だったのは間違いない。

大勝は、ピリオド・アプローチを採用。ティンパニが硬い音を出し(幕間に確認したがバロックティンパニではなかった)、弦楽がビブラートを抑えた響きを奏でる。キビキビとした音運びであり、大勝の確固とした才能が感じられる。私の席からは指揮姿もよく見えたが、棒はとても上手い。

序曲が始まると同時に緞帳が開き、タミーノ(根本滋)が花道から登場する。タミーノはプレーヤーにレコードを音楽を聴きながら眠りに落ちる。すると三人の童子(本当に子供をキャスティングする場合もあるが、今回は、三輪千賀、畠中海央、糀谷栄里子という三人の成人女性が務める)が踊りながら現れ、ファンタジックな雰囲気を作る。

「光と闇」、「男と女」、「知と情」などの二項対立が描かれる「魔笛」であるが、今回は春秋座での上演ということで、舞台装置も「春と秋」の風景を描いているようである。舞台が緑色に塗られた時が春、木目そのままで棒を束ねた薄のようなものが立っている時が秋である。基本的に色恋ごとは春のセットで起こり、ザラストロが主役の場面は秋のセットとなる(舞台美術:柴田隆弘)。春は「若さ、情」であり、秋は「老いと知」である。こういう構図にするとパパゲーナがなぜ初登場時には老婆の格好をしていたのかわかるような気がするし、ザラストロが全面肯定されているわけではないことも伝わってくる。

日本語訳されたテキストによる歌唱と演技であるが、やはり日本人歌手が日本語で上演するのは難しいようで、「そう書いてあるんだから」と書いたとおりに台詞を読み上げてしまう歌手もいる。歌唱と演技両方を求めるのは酷かも知れないが、もっと頑張って欲しいとも思う。勿論、ちゃんと出来る人や上手い人もいるのだが。

日本語という言語は一音が一音でしかないため歌に乗りにくい。西洋の言語は一音に複数の単語を含ませることが可能だし、東洋でも中国語などは一音一意味であるため歌唱が聴き取りやすい。日本語の歌唱だとどうしても内容がわかりにくくなってしまう。ただ、歌詞が多少わからなくても支障はない上演にはなっていた。

ラストの合唱には夜の女王と三人の侍女達も参加。分け隔てのない結末を迎え、「旅の終わりは恋人達の巡り会い」(シェイクスピア 「十二夜」)で幕となる。

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