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2017年12月 4日 (月)

コンサートの記(327) アンサンブル九条山コンサート Vol.4 酒井健治個展「Borders」

2017年11月24日 京都府立府民ホールALTIにて

午後7時から、京都府立府民ホールALTI(アルティ)で、アンサンブル九条山(くじょうやま)コンサート Vol.4 酒井健治個展「Borders」を聴く。若手作曲家、酒井健治の個展演奏会。

酒井健治は、1977年、大阪府池田市生まれ。兵庫県で育ち、京都市立芸術大学作曲科卒業後に渡欧。パリ国立高等音楽院、ジュネーヴ音楽院に学び、いずれも最優秀の成績で卒業。Ircam(フランス国立音響音楽研究所)で研究員を務め、2012年には、マドリッド・フランスアカデミー芸術部門の会員に選出されている。2009年に武満徹作曲賞第1位を獲得。2012年にはエリザベート王妃国際音楽コンクール作曲部門でグランプリに輝き、2013年には芥川音楽賞も受賞している。現在はパリ在住。これまで弟子などは取らず、作曲家一本で仕事をしてきたが、来年4月より、母校である京都市立芸大の教員になる予定であるという。


演奏を行うアンサンブル九条山は、ヴィラ九条山のレジデントであったヴァレリオ・サニカンドロによって設立された現代音楽アンサンブル。メンバーには、長岡京室内アンサンブルの石上真由子(いしがみ・まゆこ。ヴァイオリン)、いずみシンフォニエッタ大阪のメンバーでもある上田希(クラリネット&バスクラリネット)、ロームシアター京都ノースホールでソロリサイタルを行った畑中明香(はたなか・あすか。パーカッション)らがいる。


曲目は、「カスム」(ヴァイオリンとピアノのための)、「リフレクティング・スペース-鐘、雲と幽体離脱-ピアノのための」、「私は他人である Ⅰ」(ソプラノのための)、「私は他人である      Ⅱ」(ソプラノとピアノのための)、「オスモシス Ⅱ」(5人の音楽家によるアンサンブルのための)、「モノポリフォニー/デフィギュラシオン」(独奏チェロのための)、「ボーダーズ」(ソプラノと5人の音楽家のための。Music      From Japanとの共同委嘱。日本初演)


「カスム」は、成田達輝からの「オーロラを題材にした作品を」という依頼によって書かれたものだそうで、「カスム」というのは英語だと「亀裂」を意味するものだが、古代ローマでは「オーロラ」を指した言葉だったという。石上真由子のヴァイオリンと森本ゆりのピアノによる演奏。英語の意味である「亀裂」と取ったほうが把握しやすい作品である。演奏は相当な技術が要求されるであろうことが見て取れる。

演奏終了後に作曲者である酒井健治がステージに上がって、マイクを片手にスピーチ。顔がというわけではないのだが、雰囲気がどことなく堺雅人を連想させるものがある。喋りは余り得意ではないように見受けられた。


「リフレクティング・スペース-鐘、雲と幽体離脱-ピアノのための」。森本ゆりによるピアノ独奏。低音を強く叩いた後でダンパーペダルを踏み続け、残響を残したままで高音を紡いだり、低い音の雲を空間に漂わせたりする。


「私は個人である」ⅠとⅢ。ソプラノ独唱は太田真紀。Ⅰは、声を打楽器的に扱った作品で、細切れの声の合間にタンギング、更に指を鳴らしたりと、ボディパーカッションの要素が散りばめられている。後半に、太田真紀がトークゲストとして登場し、酒井と語った内容によると、ソプラノパートなのに譜面が二段になっているという。初演時は三段になっていたそうで、ボディパーカッションが二段目や三段目に書かれているそうだ。
森本ゆりのピアノ伴奏によるⅢはⅠよりはメロディアスな楽曲である。ちなみに「私は他人である」という言葉はアルテュール・ランボーの詩の一節から取られているそうだが、ボーダーズもランボーの「永遠」という詩の内容を音楽にした部分があるそうで、ランボーにはかなり影響を受けているようである。
「オスモシス Ⅱ」。石川星太郎が指揮を務め、石上真由子、福富祥子(ふくとみ・しょうこ。チェロ)、上田希、若林かをり(フルート&ピッコロ)、森本ゆりが演奏を行う。
石川星太郞は、1985年生まれの若手指揮者。東京藝術大学指揮科とロベルト・シューマン音楽大学指揮科に学び、昨年行われた第1回フェリックス・メンデルスゾーン国際指揮者コンクールで2位を獲得している。
やはりフランスで学んだ作曲家であるということが感じられる作品である。ドビュッシーやラヴェル、メシアン、ブーレーズなどの響きをこの作品の中に見いだすことが出来る。


チェロ独奏のための「モノポリフォニー/デフィギュラシオン」。福富祥子のチェロ。
この曲も、見るからに聴くからに難しそうな曲である。難度はSであろう。バッハの無伴奏チェロ組曲第5番より「サラバンド」を換骨奪胎した作品だそうだが、現代色が強いため、バッハ風という感じではない。


日本初演となる「ボーダーズ」。コンサートのタイトルにもなっている曲である。世界初演は今年の2月にニューヨークで行われたという。
この曲も石川星太郎が指揮。尺八独奏として田嶋謙一が客演し、石上真由子、福富祥子、上田希、畑中明香とのアンサンブルで演奏。太田真紀がソプラノ独唱を受け持つ。
邦楽器と西洋楽器の境界や、ノイズと音楽の境界などを描いた作品である。
演奏前に行われたトークによると、京都市立芸大時代の酒井は邦楽関係の授業は一切取っておらず、邦楽器を格下と見なしていて西洋音楽のエクリチュールばかり研究していたそうだが、海外に行ってから日本の伝統音楽の良さにも気づいたそうで、Music From Japan Festivalからの委嘱を受けたときに、尺八を用いることを思いついたそうである。

尺八は構造が西洋の楽器に比べると単純であるため(そのため熟練するのが難しい)、音がより自然に近いように思える。自然と芸術の対比が浮かび上がる(日本では余り意識されないが、西洋では「自然」の反義語は「芸術」である)。ソプラノ太田真紀がヘリコプターのプロペラ音のような音を出すが、これもまた自然との対比のように取ることが出来る。


結構、面白い演奏会であった。

客席には、酒井の身内と思われる人も多数。2階席にいた若者達は、来年から酒井に教わる予定の京都市芸の学生だと思われる。白人が多いのも特徴。名前は浮かばないが顔は見覚えがあるという人も何人かいて、皆、音楽家だと思われる。休憩時間にホワイエに出た時に、「背の低い白髪のおばあちゃんがいるなあ」と思ったら、長岡京室内アンサンブルの森悠子であった。

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