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2018年1月23日 (火)

We Love マタチッチ

※ この記事は2018年1月4日に書かれたものです。

Matacic

1985年1月4日、NHK交響楽団名誉指揮者として知られたロヴロ・フォン・マタチッチが死去しました。享年85。

東欧ユーゴスラヴィアの生まれということもあり、ヨーロッパの中央楽壇では知名度は今一つに終わりましたが、日本のクラシック音楽界においては最大級の功績を残した指揮者です。

マタチッチはウィーンに学んだあと、祖国のザグレブ歌劇場とベオグラード歌劇場の指揮者として活躍。その後もオペラ指揮者としては洋の東西を問わず高く評価され、バイロイト音楽祭にも登場しています。

「ピアノを食べてしまう」といわれるほどピアノが上手であった一方で、手先は不器用であり、生涯を通して靴紐が結べることはなかったといわれています。「ハリー・ポッター」のダニエル・ラドクリフが発達性協調運動障害で、靴紐が結べないことで知られていますので、マタチッチも同じ障害を持っていたのかも知れません。

マタチッチのピアノの上手さには逸話があり、ユーゴスラヴィア建国の父であるチトーに反抗し、投獄されて死刑を宣告されるも、ピアノが抜群に上手かったために赦免されたといいます。

 

日本においては、1965年にスラヴ歌劇場の指揮者として来日してNHK交響楽団を指揮。N響の楽団員から絶賛され、またマタチッチもN響を気に入り、蜜月時代が始まります。1967年にはN響と特別な関係を結んだ指揮者に送られる名誉指揮者の称号を得て、以後は毎年もしくは1年おきに来日してN響を振るようになり、それは死の前年まで続きました。

ブルックナーを得意としたマタチッチは、日本におけるブルックナー演奏の普及に大いに貢献しました。またオペラの指揮台にも登場し、ヘンデルの「メサイア」などの大規模声楽曲の演奏でも高い評価を得ました。

更には珍しいことにマタチッチの自作、対決の交響曲もN響の指揮台で指揮しています。この曲には変拍子があるのですが、音楽評論家の宇野功芳によると不器用なマタチッチは変拍子が上手く振れず、見かねた楽団員が「先生は指揮台の上で泳ぐ真似をしていて下さい。自分達でやりますから」と進言。本番でマタチッチは本当に指揮台の上で泳ぐ真似をしていたといいます。対決の交響曲はDENONからCDがリリースされているため、今でも聴くことが可能です。

 

ご存知の通り、NHK交響楽団は全ての定期演奏会を放送で流しており、放送用音源が残っています。というわけで、近年になってからマタチッチ指揮NHK交響楽団の演奏がキング・レコードやALTUSレーベルなどから次々とCD化されるようになりました。

以前から日本コロムビア(DENON)でリリースされていた、ブルックナーの交響曲第8番、ベートーヴェンの交響曲第2番と第7番に加え、ブルックナーの交響曲第7番、スメタナの「わが祖国」全曲、年末の第九、村上春樹の『1Q84』で有名になったヤナーチェクのシンフォニエッタ、十八番であったワーグナーの序曲集と管弦楽作品集、N響との初顔合わせとなったムソルグスキーの歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」、ブラームスの交響曲第1番と第3番、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、チャイコフスキーの交響曲第5番などが発売され、ファンの垂涎の的となっています。

その死から30年以上が経過し、祖国であるユーゴスラヴィアも崩壊・分裂した今となってはマタチッチがこれほど愛されている国は日本をおいて他にないかも知れません。

海外では、スヴャトスラフ・リヒテルがピアノ独奏を務めたグリーグとシューマンのピアノ協奏曲の伴奏(オーケストラはモンテカルロ国立歌劇場管弦楽団)とエリザベート・シュワルツコップが主演したレハールの喜歌劇「メリー・ウィドウ」(フィルハーモニア管弦楽団を指揮)ぐらいでしか知られていないと思われるマタチッチ。しかし日本においては今でもその名がファンの口に上るほど愛されているのです。日本人が真に愛したマエストロ、それで良いではありませんか。

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