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2018年3月13日 (火)

コンサートの記(358) 井上道義指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第516回定期演奏会

2018年3月9日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第516回定期演奏会を聴く。指揮は大フィルの前首席指揮者であった井上道義。

曲目は、バーバーのピアノ協奏曲(ピアノ独奏:アレクサンデル・ガジェヴ)、ショスタコーヴィチの交響曲第2番「十月革命に捧げる」と交響曲第3番「メーデー」。井上道義が得意としているショスタコーヴィチの交響曲が並ぶ。交響曲第2番、3番ともに上演機会は少なく、実演に接するのは初めて。バーバーのピアノ協奏曲を生で聴くのも初となるはずである。

今日のコンサートマスターは田野倉雅秋。

バーバーのピアノ協奏曲。ソリストのアレクサンドル・ガジェヴは1994年生まれという若いピアニストである。登場したときは少し頼りなげに見えたがピアノに向かうと高度なメカニックを武器とした情熱的な演奏を繰り広げる。
幾何学模様のように不可思議な第1楽章、リリカルな第2楽章、怒濤のように音が押し寄せる第3楽章と、独自の魅力を持った曲である。井上指揮の大フィルも充実した伴奏を聴かせる。

井上に促されるようにしてガジェヴはアンコール演奏を行う。ラフマニノフのエチュード「音の絵」より作品39の5。ペダリングに問題があるのか音が濁り気味であったが、技術は優れている。

後半。大阪フィルハーモニー合唱団のメンバーが入場するのに少し時間がかかるということもあってか、井上がマイク片手にトークを行う。井上道義が大阪フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者就任披露演奏会のメインに選んだのはショスタコーヴィチの交響曲第4番。「その年は、ハイドンの交響曲第44番やブラームスの4番など4の付く曲ばかりやりまして、縁起でもないなあと思っていたら病気になりまして」

井上はバーバー本人に会ったことがあるそうだ。井上が17歳の時、師である齋藤秀雄と共にロサンゼルスに行き、齋藤がバーバーの弦楽のためのアダージョを指揮したところ、演奏終了後に熱心にスタンディングで拍手を送るおじさんがいたそうだが、「あれがバーバーだよ」と説明された井上は、「え? 作曲家で生きている人いるの?!」と驚いたそうである。当時の井上は作曲家というのは全員死んでいるものだと思っていたらしい。

ショスタコーヴィチの交響曲第2番と第3番は共に作曲者が二十代前半の頃に作曲されているのだが、「二十歳の頃は大人が馬鹿に見え」と井上は自身と多くの多くの若者の気持ちを語り、若きショスタコーヴィチのとんがった気持ちを代弁する。とんでもない速度で書かれており、「人間に演奏できるのか?」と思える箇所もあるが、ショスタコーヴィチは自身が天才で出来る人だったため、他の人にも出来ると思い込んでしまったようなところがあると指摘する。「ショスタコーヴィチは、スターリンとかそんなんじゃなく、オーケストラのメンバーに総スカンを食らったのだと思います。オーケストラのメンバーは保守的で、『お前さんのやろうとしていることはわからないよ』」と反発を受けたらしい。ロシア革命からレーニンの死までのソ連はかなり自由な時代であり、ロシアンアバンギャルドが隆盛を誇っていた。
井上道義は交響曲第3番「メーデー」に関して、「マーラーの『大地の歌』やショスタコーヴィチの交響曲第9番の要素などが散りばめられているので、プロの聴き手の方は探してみて下さい」と語る。

交響曲第2番「十月革命に捧ぐ」と交響曲第3番「メーデー」。共に合唱付きの交響曲である。字幕付きでの演奏。

井上が十八番としているショスタコーヴィチだけあって音が生き生きしている。大阪フィルの演奏は力強く、超速で駆け抜ける場所も破綻を来すことなく見事な疾駆を見せる。
交響曲第3番は交響曲第2番の続編として構想されたということもあって2曲とも曲調は似ており、ショスタコーヴィチ的音楽性がすでに刻印されているが、交響曲第3番の方には後に書かれることになるショスタコーヴィチの交響曲の様々な要素の発芽が見られる。今聴いてもかなり先鋭的な交響曲群である。衒学的要素も多分に感じられるが、若い頃はこれほど暴れ回らないと大作曲家にはなれないのかも知れない。
大阪フィルハーモニー合唱団も充実した歌を聴かせ、国内のおけるショスタコーヴィチ演奏としては間違いなく第一線のものとなるだろう。

喝采を浴びた井上。最後はステージ下手でくるりとターンして引き上げるなど、お馴染みの外連を見せていた。

なお、天井からデッカツリーが下がり、舞台上の要所要所にマイクが立っていたため、EXTONによるライブ収録が行われたものと思われる。



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