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2018年6月24日 (日)

観劇感想精選(246) 「ハングマン HANGMEN」

2018年6月15日 左京区岡崎のロームシアター京都サウスホールにて観劇

午後7時から、ロームシアター京都サウスホールで「ハングマン HANGMEN」を観る。作:マーティン・マクドナー、テキスト日本語訳:小川絵梨子、演出・出演:長塚圭史、出演:田中哲司、秋山菜津子、大東駿介、宮崎吐夢、大森博史、市川しんぺー、谷川昭一朗、村上航、富田望生(みう)、三上市朗、羽場裕一。

「ビューティー・クイーン・オブ・リナーン」、「ウィー・トーマス」、「イニシュマン島のビリー」などで知られるマーティン・マクドナー。イギリスとアイルランドの二重国籍の劇作家であり、映画監督としても活躍。バイオレンス、ブラック・ユーモア、差別などを題材とした本を書いている。長塚圭史はマクドナーの作品を何度も演出しており、今回の「ハングマン」は、「ウィー・トーマス」、「ピローマン」、「ビューティー・クイーン・オブ・リナーン」に次いで4度目の演出となる。

開演前には舞台となる1960年代に流行ったブリティッシュロック(ビートルズなど)が流れている。出演者の平均年齢が高いことや京都ではマーティン・マクドナーの名前が余り知られていないこともあってか入りは「悲惨」の部類に入ると思う。

1963年、絞首刑執行人(ハングマン)であるハリー・ウェイド(田中哲司)が、ジェームズ・ヘネシー(村上航)という男を今まさに死刑にしようとしていた。ヘネシーは女性暴行犯として死刑を言い渡されたのであるが、最後まで無罪とアリバイを主張。ハングマンがハリーであることに関しても、「せめてピアポイント(最も腕が良いといわれた絞首刑執行人)を呼べ!」と言ったことからハリーを激高させる。ハリーがレバーを引き、死刑は執行された。

2年後。イングランドの北西部にある工業都市オールダムにあるパブ。ここはハリーの妻であるアリス(秋山菜津子)が経営する店である。絞首刑の執行が法律によって廃止になるその日、ハングマンをお払い箱になったハリーは、このバーでマスターのようなポジションとなり(この時代はビールを出すときにはカウンターにあるレバーを引いてグラスに注いでいたようである)馴染み客と飲んでいたのだが、そこに見知らぬ客が一人加わっている。マンチェスターから来た新聞記者のクレッグ(長塚圭史)である。クレッグは最後のハングマンであるハリーのインタビューを取ろうとやって来たのだが、ハリーは応じようとしない。ハリーは「2階で話すなら」と妥協案を出すのだが、ハリーは本質的にはお喋りであり、グレッグの口車に乗って、必要以上のことを話してしまう。ただこの記事のおかけで、ハリーは翌日にはオールダムの有名人となる。
店に新客がもう一人やって来る。金髪の若い男、ピーター・ムーニー(大東駿介)である。田舎の工業都市であり、教養も十分とはいえない(ニーチェという名前もキルケゴールの名も聞いたことがない)他の客とは違い、ムーニーはスマートではあるがミステリアスというより不気味な印象を抱かせる。
ハリーとアリスにはシャーリー(富田望生)という15歳の娘がいる。肥満気味で内向的なシャーリーは学校では浮いた存在のようで……。

ブラックな味わいのサスペンスである。ヘネシーが本当に犯人だったのか、またムーニーの正体は何者なのか、なぜムーニーは自らを危機にさらすような行動に出たのか(ニーチェの名前が出るのは伏線なのかも知れないが)、いずれにおいても最後まで解決はなされておらず、観る者の意識は死体さながらに宙づりになったまま。それこそがマクドナーの意図なのだろう。

マクドナー作品の特徴として不毛な恋愛という要素があるのだが、ハリーとアリスの娘であるシャーリーは異性にモテるどころか、学校も休みがちの存在であり、見た目と性格のハンディから今後も異性から相手にされるかどうかも怪しいという状態。それを見越したムーニーに付け込まれるのだが、当然ながら本物の恋愛に発展することはない。結局の所、ハリーもその家族も元の自分からは抜け出せず、未来は暗いままというマクドナーならではのラストが待っている。



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