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2018年6月 3日 (日)

コンサートの記(393) 藤岡幸夫指揮関西フィルハーモニー管弦楽団第205回定期演奏会

2008年9月4日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、大阪のザ・シンフォニーホールで、関西フィルハーモニー管弦楽団の第205回定期演奏会を聴く。今日の指揮は関西フィル首席指揮者の藤岡幸夫。

曲目は、ヴォーン=ウィリアムズの「タリスの主題による幻想曲」、吉松隆の左手のためのピアノ協奏曲「ケフェウス・ノート」(ピアノ独奏:舘野泉)、シベリウスの交響曲第5番。
藤岡幸夫は、日本におけるシベリウス解釈の泰斗であった渡邊暁雄の弟子であり、シベリウスの交響曲第5番は、藤岡が最も愛する曲とのことである。

午後6時40分頃に、例によって関西フィル事務局の西濱さんが出てきて、指揮者の藤岡を招いてのプレトークを行う。藤岡によると今日の演奏会は、今年の関西フィルが組んだ最も美しいプログラムであるとのことである。

ヴォーン=ウィリアムズの「タリスの主題による幻想曲」。プレトークで、藤岡は弦楽の別働隊(というものがこの曲では用いられるのである)にノンビブラートでの演奏をさせると語っていたが、その通り、徹底してビブラートを抑えた古雅な響きが美しかった。
関西フィルの音色は綺麗だが、私は数ヶ月前に「タリスの主題による幻想曲」を大植英次指揮の大阪フィルハーモニーの演奏で聴いており、大植が描いた異様なほど繊細な美しさや、弦楽別働隊と本隊との切り替えの巧みさが思い出されてしまった。
やはり現時点では、大植の実力が藤岡のそれの遙か上を行っていると断言していいだろう。


吉松隆の左手のためのピアノ協奏曲「ケフェウス・ノート」は、今日のソリストである舘野泉(男性です)のために書かれ、昨年、ドレスデン室内管弦楽団の来日公演時に舘野のピアノソロで初演された。
今回は、藤岡の要請を受けて、吉松隆自身が2管編成のフルオーケストラ用に改訂した版での演奏。改訂版での世界初演である。

会場には吉松隆の姿もある。

吉松隆と藤岡幸夫は慶應高校の先輩後輩であるが、実は舘野泉も慶應高校の出身であるという。吉松と藤岡はそのまま慶應大学に進んだが(吉松は大学を中退した)、舘野は東京藝術大学に進学している。

そんな慶應高校トリオ(?)による曲と演奏。まず吉松の曲であるが、これが世にも美しい佳編。朝靄の高原の中を歩いているかのような可憐な冒頭、小川のせせらぎのようなピアノの楚々とした音色。シベリウスを意識したと思われる(吉松も藤岡も舘野もシベリウス好きという共通点がある)オーケストレーション。今後、左手のためのピアノ協奏曲の定番になってもおかしくない秀麗さを持っていた。

演奏終了後に吉松もステージに呼ばれ、聴衆から喝采を浴びる。

脳溢血のため、右手が不自由になり、現在は左手のピアニストとして活躍している舘野泉。フィンランドに居を構え、日本シベリウス協会の会長でもある。舘野泉の父親が舘野泉に会うために一人でフィンランドを訪れたところ、フィンランドの空港でパスポートを見た税関の職員が、「オー、ピアニスト、TATENO!」と言ったため、父親に「お前はそんなに有名なのか」と驚かれたというエピソード(舘野泉本人が以前話していた)があり、おそらく存命中の人物としてはフィンランドで一番有名な日本人は舘野泉だと思われる。

現在もリハビリに励んでおり、いつの日か両手のピアニストとして復帰する夢を持っているという舘野。しかし、出てくる時は足を引きずる感じで、ピアノのもとまで行くのが難儀そうであった。それでも演奏は素晴らしく、彼らしいリリカルな音色が最大限に発揮されていた。

アンコール曲として、舘野はカッチーニの「アヴェ・マリア」を弾く。「左手独奏のための編曲は吉松だろうか?」と思っていたが、「アヴェ・マリア」の演奏が終わった後に吉松も登場したのでどうやらそうらしいことがわかる(後で確認したところ、やはり吉松の編曲であった)


シベリウスの交響曲第5番。藤岡のこの曲への愛情が滲み出ているかのような演奏。第1楽章ラストの追い込みが激しすぎるのでは、という疑問もあるが、全曲を通して透明感に溢れた美演を繰り広げた。第3楽章で金管の音型が崩れる場面が何度かあったのが残念であるが、良きシベリウス演奏であったと思う。

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