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2018年6月10日 (日)

AI・HALL 世界演劇講座番外編 「劇作家デーア・ローアーを迎えて」

2018年5月28日 伊丹市立演劇ホールAI・HALLカルチャールームBにて

午後7時15分から、AI・HALLカルチャールームBで、世界演劇講座番外編「劇作家デーア・ローアーを迎えて」に参加する。

デーア・ローアーはドイツの女性劇作家。バイエルン州・トラウンシュタイン生まれ、ミュンヘン大学(正式名はルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン)で哲学とドイツ文学を学んだ後、ベルリン芸術大学に入りハイナー・ミュラーに師事、在学中に上演台本を書き始める。主に劇作を行っているが、小説を1冊、エッセイを数冊、オペラ台本を2本書いているという。

「オルガの部屋」でデビュー後、次作の「タトゥー」(1992年)と「リバイアサン」(93年)で演劇専門誌テアター・ホイテの年間最優秀新人劇作家に選ばれる。「タトゥー」は2007年に東京で上演され、デーア・ローアーもその時に来日しているが、東京しか訪れる機会がなかったそうだ。93年にゲーテ賞、98年に劇作家賞、2006年にブレヒト賞受賞。

世界演劇講座は、演劇評論家の西堂行人(にしどう・こうじん)とエイチエムピー・シアターカンパニー所属の演出家・笠井友仁(かさい・とものり)によって行われる講座で、最初は西堂行人が所属していた近畿大学国際人文科学研究所の主催により大阪・日本橋の近大会館で行われていたが、研究所が閉鎖されたため、2014年からは伊丹AI・HALLに場所を移して開催されているようである。今年度は7月から来年2月まで5回の講座が行われる予定。西堂行人は昨年、近畿大学教授を退職し、新設された明治学院大学文学部芸術学科演劇身体表現コース教授に就任している。
世界演劇講座自体は受講料が1回につき1500円掛かるが、今回は番外編であるため無料である。

笠井友仁は、2011年にデーア・ローアーの「最後の炎」を演出し、AI・HALLと笠井の出身地である仙台などで上演しているという。

「最後の炎」のテキスト冒頭部が印刷されて配られたが、セリフに役は振られておらず、文脈から語り手が誰か明確でない場合は演出家に一任する場所もある。
7年前の8月19日の正午から物語は始まるのだが、8月19日という日付やその日の天気、正午だったことは短いスパンで何度も繰り返し提示され、ミニマル演劇の影響を受けていることがわかる。

またフラグメントを集合させるという手法を特徴としており、作品自体の集合性(コレクティブ)を大切にしているようである。視座を集合させることにより、共同体とその中での関係性を浮かび上がらせることを得意とするようだ。

「最後の炎」は、2007年に南米で実際に起こった交通事故をモチーフとして創作されたという。新聞記事で南米での交通事故を知った後で、デーア・ローアーはアフガニスタンに出掛けたのだが、悲惨な環境のアフガニスタンで悪いことにローアーは病気になってしまい、野戦病院のようなところで三日ほど横になっていたという。そうした経験から、アフガニスタンの兵士やアフガニスタンに派遣された国連軍の多くがトラウマを抱えており、しかもトラウマを人に伝達する言葉を持っていないことに気づき、記憶とトラウマを語るための言語を、ステージにおいて、観客も含めて模索するような作品を書こうと志したそうである。

またブレヒトなどの時代にはカテゴリーが今よりはっきりしていたとも語る。冷戦があり、東と西があり、レーゾンデートルもはっきりしていた。今ではそうしたものが曖昧になっており、はっきりわかるのはドナルド・トランプに代表される狂ったアメリカ人だけになってしまっているという。

「最後の炎」が役を振られていない文章であることに関して、西堂行人が日本の伝統演劇である語り物を踏まえつつ、対話というものを必要としているのは弱者なのではないかと唱える。確かにトランプ大統領のような人は対話をする必要がない。自分の思いつくままを語っておれば良く、人の話など聞かなくても問題ない。ローアーは、「弱者には発言力がない」ことを指摘する。発言を聞いて貰えるのは強者だけで、弱者はほとんど何も聞いて貰えない。そこでローアーは弱者のための言葉を見つけることにも腐心していると語った。

ちなみに日本ではリアリズム演劇が主流であるが、ローアーはアンチ・リアリズムの手法を貫いているようである。舞台とは芸術の空間であり、日常とは違った空間であるためそこにリアルを求めるのはおかしいと考えているようだ。



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