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2018年11月17日 (土)

美術回廊(19) 「ムンク展 ―共鳴する魂の叫び」@東京都美術館

2018年11月10日 東京・上野の東京都美術館にて

JR総武線と山手線を乗り継いで、上野へ。

東京都美術館で行われている「ムンク展 ―共鳴する魂の叫び」を観る。

「叫び」で知られるノルウェーの画家、エドヴァルド・ムンク。日本でも特に人気の高い画家の一人である。

ということで、多くの人が押しかけたため、ゆっくりと観る時間は残念ながらない。観ようと思えば観られないこともないのだが、今日は午後5時前に大津のびわ湖ホールに着いていなければならない。ということで、気に入った作品を重点的に観ていくことにする。

展覧会は冒頭と最後にムンクの自画像が置かれている。1枚目はモノクロの写実的なものだが、2枚目からはすでムンクらしい沈んだ雰囲気が出ている。北欧ノルウェーは冬が長く暗い。そうした地理的気候的な影響もあると思われるが、幼くして亡くなった姉の影響も無視出来ないだろう。「病める子」という連作からは死へ向かう幼子への悲哀が面に出ている。グリーグの「オーセの死」(オーセは幼子ではないが)が聞こえて来そうな絵である。
一方で、晩年の自画像は平明で色彩もシンプル。心境の変化が表れている。

「叫び」は有名なので説明は不要だと思われる。日本文学に例えると晩年の芥川龍之介作品的な世界である。

実は同じ構図による「不安」というこれまた有名な作品も横に飾られているのだが、そちらは余り注目されていない。


不吉さはその他の作品にも表れていて、生と死の境にいるような「マドンナ」、異世界へ旅立つ人を描いたかのような「二人、孤独な人々」などが挙げられる。

恋人の別れを描いた作品では、瀕死の表情を浮かべた男と平然としている女の対比が描かれているが、これはムンク自身が愛人に殺されそうになったという事件を背景にしている。
この事件を題材にした作品の中で最もよく知られているのが、「マラーの死」である。フランスのジャコバン派の領袖であったマラーと「暗殺の天使」ことシャルロット・コルデーを描いた作品は様々な画家が手掛けているが、多くの画家がシャルロット・コルデーは「暗殺は行ったが天使」というコンセプトに基づいているのに対し、ムンクは「天使だかなんだか知らないが暗殺者だ!」と告発している。そばで観ると分厚く塗られた絵の具が立体的であり、ある種の威圧感と異様さが観る者に迫ってくる。絵画作品が持つパワーを再認識させられる作品である。

代表作の一つである「生命のダンス」には人生の諸相が一気に迫ってくるような「邯鄲の夢」的テイストがある。


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