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2018年11月15日 (木)

観劇感想精選(265) 兵庫県立ピッコロ劇団第62回公演「小さなエイヨルフ」

2018年11月6日 尼崎市塚口の兵庫県立ピッコロシアター大ホールにて観劇

午後6時30分から、尼崎市塚口のピッコロシアターで兵庫県立ピッコロ劇団の第62回公演「小さなエイヨルフ」を観る。作:ヘンリック・イプセン、テキスト日本語訳:原千代海、演出:鵜山仁(文学座)。出演は、岡田力、森万紀、今井佐知子、吉村祐樹、亀田妙子(声の出演)、橘義。

近代演劇の父といわれるイプセン。世界で上演される回数がシェイクスピアの次いで多い劇作家といわれている。日本でも近年、上演される回数は増加傾向にある。

ノルウェーのフィヨルドに面したアルメルス家が舞台である。著述家のアルフレッド・アルメルス(岡田力)が久しぶりに家に戻ってくる。家の中では妻のリータ(森万紀)がアルフレッドのトランクを開けて衣装を取り出し、匂いをかいで喜んでいる。リータはアルフレッドのことを心底愛していた。
二人の間には、足の不自由な9歳の息子、エイヨルフがいる。エイヨルフが人形で表され、亀田妙子が影アナを担当している。
それまで仕事一辺倒で、エイヨルフを顧みなかったアルフレッドだが、仕事よりもエイヨルフを大事にすることに決めていた。だが、アルフレッドの愛を独占したいリータはエイヨルフのことを疎ましく思い始めており……。
幼い頃にアルフレッドから「小さいエイヨルフ」と呼ばれていた妹のアスタ(今井佐知子)とアスタに気のあるボルグヘイム(吉村祐樹)も絡んで愛を求める心の迷宮が展開される。

鼠ばあさん(橘義)の登場で話が動き出すのだが、この話は「ハーメルンの笛吹き」の亜流である。「ハーメルンの笛吹き」では足の不自由な子だけが残されるのだが、ここでは足の悪い子だけが犠牲になる。

鵜山仁の演出だけに、かなり新劇した演技と展開である。舞台は二段になっており、上の舞台がアルメルス家の内部、その外の素の高さの屋外となる。屋外が舞台となる第2場では家具類が中空に吊されるという展開がある。上の舞台の床面はムンクの絵画のような毒々しい赤で塗られている(美術:加藤登美子)。「小さなエイヨルフ」のチラシもムンクの「生命のダンス」をモチーフにしたものだそうだ(チラシデザイン:チャーハン・ラーモン)。

愛を巡る展開が続いた後で、アルフレッドとリーダは愛よりも高い感情を追求するようになる。身分の低い人達に対する慈悲のまなざしがそれである。上手く組み立てないととってつけたようなラストになるところだが、それが自然な階梯に見えるのがイプセンの筆の巧みさだろう。やはりイプセンは最高である。



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