« コンサートの記(456) ジョン・アクセルロッド指揮 京都市交響楽団第525回定期演奏会 | トップページ | コンサートの記(458) ドビュッシー没後100年スペシャル・シリーズ 光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー 第3回「ドビュッシーが見た風景」 パスカル・ロジェ・ピアノ・リサイタル »

2018年11月30日 (金)

コンサートの記(457) 金沢歌劇座 ヴェルディ 歌劇「リゴレット」

2018年11月25日 金沢歌劇座にて

午後2時から、金沢歌劇座でヴェルディの歌劇「リゴレット」を観る。原作はヴィクトル・ユゴーの『王は愉しむ』。鈴木織衛指揮オーケストラ・アンサンブル金沢による演奏。演出は三浦安浩。出演は、青山貴(リゴレット)、森麻季(ジルダ)、アレクサンドル・バディア(マントヴァ公爵)、森雅史(スパラフチーレ)、東園(ひがし・その。ジョヴァンナ)、藤井麻美(ふじい・あさみ。マッダーレナ)、李宗潤(イ・ジョンイン。モンテローネ伯爵)、藤井勇雅(ふじい・ゆうや。マルッロ)、原田幸子(はらだ・さちこ。チェプラーノ伯爵夫人)、近藤洋平(ボルサ)、石川公美(いしかわ・くみ。公爵夫人付きの小姓)、吉田大輝(金沢オペラ合唱団より。チェプラーノ伯爵)、国谷優也(金沢オペラ合唱団より。王宮の随行)。男声合唱は金沢オペラ合唱団、貴婦人達も金沢オペラ合唱団の選抜メンバーが務める。


「リゴレット」は、テノールのアリアである「女心の歌」がとにかく有名な作品。テノールの歌う曲としては一二を争う知名度を誇り、特に日本では藤原義江が十八番としていたことから「最も有名なオペラナンバー」と断言しても構わないほどよく知られている。
オーケストラ・アンサンブル金沢と金沢歌劇座はこれまで、国内のホールとの共同制作によるオペラを毎年上演してきたが、今回は初の金沢独自公演として、今日1回限りの上演を行う。


金沢歌劇座は、以前は金沢観光会館という名前で知られていた建物である。2001年に金沢駅前の石川県立音楽堂が出来るまでは、オーケストラ・アンサンブル金沢はここを本拠地にしていた。2007年に名称が金沢歌劇座に変わっている。
1962年竣工ということで、京都会館(現・ロームシアター京都)の2年後の完成。当時流行っていた扇形の広がりのある内観である。竣工からかなりの歳月が経っているが、内部は改装が行われているようで、それほど古いという印象は受けなかった。
音響であるが、構造からいって2階席の方が1階席よりも音が通るような感じである。ただオペラを上演するには響きすぎるようで音のクリアさは十分でなく、オーケストラ・アンサンブル金沢の演奏にしては濁りが感じられ、声も場面によっては十分に届いて来ない。2階席の出入り口横の席で観たのだが、この席は手すりが視覚の邪魔になり、舞台の一部がよく見えない。こちらも慣れているので、想像力でその欠点を補うことは比較的たやすいが、「この手すりは本当にいるのか?」と疑問に思う構造ではある。


指揮の鈴木織衛は、現在、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の専任指揮者を務めている。東京藝術大学指揮科卒業後、同大学院修了。藝大在学中より、中田喜直の薫陶を受け、中田とのジョイントコンサートでピアニストとしてデビュー。その後、二期会の指揮者やコレペティートゥアとしてキャリアを積み、2010年にOEKの専任指揮者に就任している。


好色家のマントヴァ公爵が、主人公である道化師リゴレットの主として登場する。好色ということで、ドン・ジョヴァンニを連想させる人物であり、老いたモンテローネ伯爵が「ドン・ジョヴァンニ」における騎士団長の役割をなぞっていることも見ていてわかる。ただ「ドン・ジョヴァンニ」とは違って「リゴレット」では好色家は地獄には落ちない。


歌舞伎の戸板を模したような舞台セットが用いられており、場面の転換や「戸板返し」などで効果を発揮する。

照明は、赤、白、緑のイタリアンカラーを基調としたもので、暗さが増すシーンでは不吉な青が用いられる。

もう一つ印象的なのが、キャットウォークから下りてくるゼルダのためのブランコで、これに乗って歌うことによりゼルダの心の揺れと無邪気さが強調され、ラストではその喪失感が見る者の胸に迫るような仕掛けになっている。

第2幕が始まる前に、総合プロデューサーの山田正幸がマイクを持って登場する。何かと思ったら、マントヴァ公爵役のアレクサンドル・バディアが体調不良だそうで、昨夜点滴を受け、今朝も点滴を行ったそうで、山田は代役も考えたそうであるが(ボルサ役の近藤洋平がマントヴァ公爵のアンダースタディとしても入っている)、バディアが「金沢のお客さんのために最後まで頑張る」と言っているため、最後まで任せることにしたそうだ。山田が退場した後で客席が少しざわついた。


バディアは「女心の歌」などでは流石に声の出が悪かったが、全般を通しては体調不良を感じさせない元気な振る舞いを見せた。

タイトルロールを歌う青山貴は、貫禄と安定感のあるリゴレットを聴かせる。

ゼルダ役の森麻季は最初のうちは技術偏重のように感じられたが、伸びのある高音ときめ細やかな声音の変化、そして音程も輪郭も全くぶれない歌唱で世評の高さを納得させる圧倒的存在感を示した。

金沢オペラ合唱団は、オーディションで選ばれたアマチュア団体。ということもあってか、ダンスのシーンなどではキレに欠けたりもしたが、一定の水準に達した歌唱を聴かせる。


ちなみに、第3幕にはヴェルディが作曲技術の限りを尽くした4重唱が登場するのだが、これはロナルド・ハーウッドの本に基づく黒柳徹子主演の舞台「想い出のカルテット~もう一度唄わせて~」のクライマックスで用いられている。「想い出のカルテット~もう一度唄わせて~」の種明かしになるのだが、この4重唱には「嘘」という言葉が繰り返し登場する。


鈴木織衛指揮のOEKも起伏に富んだ音楽作りで聴衆を魅了。オーケストラ、歌手、演出の三拍子が揃い、感動的なオペラ上演となった。


|

« コンサートの記(456) ジョン・アクセルロッド指揮 京都市交響楽団第525回定期演奏会 | トップページ | コンサートの記(458) ドビュッシー没後100年スペシャル・シリーズ 光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー 第3回「ドビュッシーが見た風景」 パスカル・ロジェ・ピアノ・リサイタル »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: コンサートの記(457) 金沢歌劇座 ヴェルディ 歌劇「リゴレット」:

« コンサートの記(456) ジョン・アクセルロッド指揮 京都市交響楽団第525回定期演奏会 | トップページ | コンサートの記(458) ドビュッシー没後100年スペシャル・シリーズ 光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー 第3回「ドビュッシーが見た風景」 パスカル・ロジェ・ピアノ・リサイタル »