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2018年12月16日 (日)

観劇感想精選(275) KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 「セールスマンの死」

2018年12月8日 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて観劇

午後5時から、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで、「セールスマンの死」を観る。アーサー・ミラーの代表作の上演。テキスト日本語訳:徐賀世子、演出:長塚圭史。出演は、風間杜夫、片平なぎさ、山内圭哉(やまうち・たかや)、菅原永二、伊達暁(だて・さとる)、加藤啓(かとう・けい)、ちすん、加治将樹、菊池明明(きくち・めいめい)、川添野愛(かわぞえ・のあ)、青谷優衣(あおや・ゆい)、大谷亮介、村田雄浩。

プロローグ的に、主人公のウィリー・ローマン(ウィリアム・ローマン。風間杜夫)の家族と友人が喪服を来て横一列に並ぶというシーンがある。一同が振り返ると、後ろからウィリーが大きな鞄を提げて歩いてくる。全編が追憶ということになっているようだ。

若い頃は敏腕セールスマンとして、ニューイングランド中で尊敬を勝ち得ていたウィリーだが、60を過ぎた今では、かつてのお得意様がすでに鬼籍に入るなどして売り上げが激減。全く売れないことも珍しくはない。
妻のリンダ(片平なぎさ)との間に二男を設けたウィリーだが、期待していた長男のビフ(山内圭哉)は、稼げる職に就けておらず、自立もしていない。次男のハッピー(本名はハロルド。菅原永二)も仕事の不満ばかり言っているつまらない男にしかなれていないのだが、全員、プライドだけは高く、他の人間を「カス」呼ばわりする。

ビフは、ハイスクール時代はアメリカンフットボールの名選手としてクラスの英雄であり、名門大学3校から誘いが来て、ヴァージニア大学を選択するも、数学のテストで落第点を取り、進学どころか卒業にすら辿り着けなかった。通信教育を受けるもどれもものにならず、仕事も転々。直前までは、安月給ではあるが牛飼いの仕事に就いていたが、それも辞めて家に戻って来ている。

ハッピーは、女癖が悪く、社会的な信用を勝ち得ていない。

ビフは、数学のテストで65点取れば良いところを61点で失格。それでもサマースクールでの補講を受ければ卒業は間違いなかったのだが、ビフは出席を拒否していた。その原因はウィリーにあり、ウィリーはビフが自分を恨んでいるに違いないと思っているのだが……。


1949年の初演、アメリカンドリームの終焉の時期に発表された本作は、ピューリッツァー賞を受賞している。

「セールスマンの死」は、ハヤカワ演劇文庫の第1巻(第1回発売)だったはずで、私も大分以前に読んでいる。
成功者が時の流れに置いていかれ、失墜する様を冷徹な筆致で描いた作品なのであるが、読んだ時と、実際に舞台を観た時とでは印象が異なるのも事実である。悲劇は悲劇なのだが、それは死ではなく理解し合えないことにあるのではないだろか。そしてそれは単純な破滅よりももっと深刻で悲しいことなのではないかと思える。

自分自身が最大の売りものというセールスマンの特徴は、そのまま現代人、就中、俳優に当てはまるものがある。出演者達は当然それは自覚しながら演じているだろう。その哀感が胸に迫ったりもする。


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