« スタジアムにて(9) 中日ドラゴンズ対東京ヤクルトスワローズ公式戦@ナゴヤドーム 2012年4月6日 | トップページ | 観劇感想精選(287) 「春秋座 能と狂言」2019 »

2019年2月 3日 (日)

2346月日(7) 京都工芸繊維大学美術工芸資料館 「南方熊楠~人、情報、自然~」

2019年1月23日 京都工芸繊維大学美術工芸資料館にて

左京区役所に行く用事があり、ついでに近くにある京都工芸繊維大学の美術工芸資料館に寄る。現在、工芸美術資料館では、「南方熊楠~人、情報、自然~」という展示会が行われている。

知の巨人として知られる南方熊楠。和歌山生まれ、子どもの頃から読んでは筆写し、記憶するということが好きだった熊楠は、長じて驚異的な記憶力と語学力を発揮することになる。和歌山中学を卒業後に上京。共立学校(現在の開成高校の前身)を経て、大学予備門(現在の東京大学教養課程の前身)に進むが、授業にはほとんど出ずに上野の図書館に通うようになる。元々、数理系が苦手ということもあり、代数で落第すると退学し、和歌山に戻る。この頃に脳に異常を感じたことが記されているが(「病を脳漿に感じて」とある)、熊楠の脳は大阪大学医学部に保存されており、MRIで調べたところ、てんかん持ちであることが判明したそうである。

二十歳の時に渡米。サンフランシスコのビジネススクールに入学するが、ビジネスに興味を抱けなかったため、半年後にミシガン州ランシングの農学校に移る。しかしここでは、アメリカ人学生と衝突したということもあり、同州アナーバーの街で読書と植物採集の生活に入る。その後、フロリダを経てキューバにも渡った熊楠は、大西洋を渡ってロンドンにたどり着く。ロンドンでは大英博物館で読書と書写に明け暮れた熊楠であったが、この頃に両親が他界。送金がなくなったということもあって困窮し、帰国することになる。以後は、紀伊半島での植物採集と著述の生活に入った熊楠であるが、初期に発表した論文が不評ということもあってか、その後は論文を発表することは少なくなり、とにかく情報収集を徹底することになる。在野の研究者であり、教員としてのキャリアがないということも相まって、学者としての評価を得ることはなかった。最近では、収集による「情報提供者」としての評価が上がっているようである。分野を問わず書き残した業績がデーターベースとして価値があるらしい。
植物学や民俗学以外のことも書き残しており、例えば雑誌に発表された「売女の名歌」には、逃亡した遊女が捕らえられ、通常なら無期懲役になるところを、「果てしなき浮き世のはしに隅田川流れの末をいつ迄かくむ」という優れた歌を詠んだことに大岡越前が感動し、「逃亡した遊女の懲役は3年まで」と決まったことが記されている。

那智で植物採集をして過ごした熊楠だが、どうやら脳の病気を慰めるためだったらしいことが最近の研究でわかってきたようだ。1904年4月21日の熊楠の日記を元に作成した映像(京都工芸繊維大学の制作らしい)が流れている。宿泊していた大阪屋から那智山に遊び、途中で道に迷ったり、川を渡る際に石から滑り落ちて足をすりむいたりしながら探索する様が克明に記されているようだ。

2015年には熊楠が映った映像が発見されている。熊楠が語っているところを映したものだが、残念ながら音声は収録されていない。

熊楠の日記などが展示されているが、字が読みにくい。そのため、十二支考「虎」などは、まず熊楠がなんと記しているのかの解析を学者達が行うことから始まっているという。十二支考「虎」は、新聞の裏紙に熊楠が虎に関する知識を無作為に書き殴っているもので、そこから文章に落としていったのだが、どのように繋がるのかは今も研究の最中だそうである。

熊楠のデスマスクも展示されている。中学時代に鼻が高いため「天狗さん」のあだ名で呼ばれたそうだが、あたかも白人のような鼻の持ち主だったことがこれを見るとよくわかる。

最期は展示されていなかったが、熊楠と京都との関係について。
熊楠の長男、熊弥は父親譲りの利発な少年だったが、高知高等学校(現在の高知大学)を受験した際に、突然、精神に異常を来し、和歌山県田辺市の自宅に帰って療養するも好転しなかったため、京都の岩倉病院(日本初の精神病院である)に入院することになった。熊弥の入院から半年後に岩倉病院に見舞いに行った熊楠は、「全快の見込みなし」と聞いて落胆したという。熊弥は熊楠よりも長生きすることになるが、岩倉病院から出ることはなかった。
ちなみに、熊楠の遺言は、「熊弥…、熊弥…」だと伝わっているが、これに関しては熊楠の長女による創作であることがわかっているようだ。



|

« スタジアムにて(9) 中日ドラゴンズ対東京ヤクルトスワローズ公式戦@ナゴヤドーム 2012年4月6日 | トップページ | 観劇感想精選(287) 「春秋座 能と狂言」2019 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 2346月日(7) 京都工芸繊維大学美術工芸資料館 「南方熊楠~人、情報、自然~」:

« スタジアムにて(9) 中日ドラゴンズ対東京ヤクルトスワローズ公式戦@ナゴヤドーム 2012年4月6日 | トップページ | 観劇感想精選(287) 「春秋座 能と狂言」2019 »