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2019年5月16日 (木)

コンサートの記(555) 尾高忠明指揮 大阪フィル×ザ・シンフォニーホール「ソワレ・シンフォニー」

2014年7月31日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時30分から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、大阪フィル×ザ・シンフォニーホール「ソワレ・シンフォニー」というコンサートを聴く。途中休憩なし、上演時間約1時間という、通常のハーフサイズのコンサートで、井上道義が首席指揮者になったこの4月から大阪フィルがザ・シンフォニーホールで始めたシリーズである。今シーズンは有名作曲家の交響曲第1番をメインにしたプログラムが組まれている。今日の交響曲第1番はエルガー作曲のもの。ショーピースとして先に同じエルガーの行進曲「威風堂々」第1番が演奏される。指揮は日本におけるイギリス音楽演奏の第一人者といっても過言ではない尾高忠明。今日の大阪フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターは田野倉雅秋。フォアシュピーラーは渡辺美穂。

演奏開始前に尾高忠明によるプレトークがある。「7時30分開演。皆さん、不思議でしょう。でもヨーロッパではこれが普通なんです。午後8時開演、スペインなどでは午後11時開演というコンサートもあります。午後11時開演だと終わるのが翌日の午前1時。で、そこからレクチャーを行ったりしまして、午前6時に終わってそのまま移動という大変なことになったりするのですが」と話し始める。
「私は桐朋学園大学というところで齋藤秀雄先生に指揮を習いまして、齋藤先生は今から40年前に亡くなりましたので若い方はご存じないかも知れませんが。齋藤先生が仰ったのは、『指揮者は余り喋っちゃ駄目だよ』」と語って笑いを取る。

「日本指揮者協会というものがありまして、二代目の会長が齋藤秀雄先生。そして三代目の会長が大阪フィルの朝比奈隆先生でした。朝比奈先生が会長をされていた頃に、『みんなで何かやろうじゃないか』という話が持ち上がりまして、その時、日本指揮者協会には70人ほどが参加していたのですが、70人で指揮しても仕方がない。そこで、みんなでオーケストラをやろうという話になりました。朝比奈先生はヴァイオリン、私もヴァイオリンをやっておりまして、井上道義君はコントラバスです。指揮者はなしで演奏しようということになりました。で、モーツァルトの『フィガロの結婚』序曲、オッフェンバックの『天国と地獄』序曲、最後に『カステラ一番』と出てくる奴ですね。『天国と地獄』には美しいヴァイオリンソロがありまして、これを誰がやるのがいいか、そこで、江藤俊哉先生、彼はヴァイオリニストでありましたが指揮者もしていまして指揮者協会にも入っていた。で、江藤さんがいいだろうと。次は『越天楽』(近衛秀麿編曲のオーケストラ版である)ですが、これは指揮するのも難しいが、演奏するのも難しい(雅楽はクラシックとは異なり、他の奏者と出だしを合わせてはいけないのである。クラシックは合わせるのが基本だが、邦楽、特に雅楽では「音が重なるのは相手に失礼」という正反対の考え方をする)。そこで、江藤先生に『首を振ってくれ』と注文すると上手く合った。じゃあ、これで行こうと。で、指揮者はみんな忙しいので、練習は本番前の2時間だけ。山本直純さんがトランペットを吹いていたのですが、『調子が良い』というので、それで練習を終えまして、大賀典雄さん、ソニーの大賀典雄さんが『フィガロの結婚』のアリアを歌うというので(大賀典雄はソニーの社長として有名だが、東京芸術大学声楽科を卒業しており、ドイツに音楽留学もしていて当初はバリトン歌手志望であり、企業人になる予定はなかった。指揮者としての活動もしており、晩年にはレコーディングも行っている)ちょっと歌って、『良い、良い』というので本当は3分のところを30秒で終わりまして、そうやって本番と。『フィガロの結婚』序曲でもう拍手喝采であります。『天国と地獄』では、『江藤、ブラボー!』と個別にブラボーが掛かりまして。で、それが良くなかったんですね。『越天楽』では、江藤さんが首を振るのを忘れてしまいまして、しっちゃかめっちゃかに。『江藤さん、首振って、首振って』と言ったのですが、江藤先生はブラボーを貰ったものですから良い気分になっていて、もう自分の世界に入ってしまって人の声が聞こえないわけです。客席からは『しっかりしろ!』なんて声も聞こえる。で、山田一雄先生、山田先生はハープが得意だったのですが、山田先生のような偉い方を奥に置いていくわけにはいかないので、ステージの前寄り、私の横ぐらいにハープを置いていたんです。我々はパート譜だけだったのですが山田先生は総譜を持っていまして、『ああ助かった』と思い、『山田先生、今、我々はどこにいますか?』と聞いたところ、山田先生から『我々は今、何の曲をやってるんだい?』と返ってきまして。今日は『しっかりしろ!』などと言われないように演奏したいと思います」と大阪人好みのユーモアを交えた話をした。

今日は前から6列目。ザ・シンフォニーホールはどの席で聴いても良い音はするが、前から6列目だと、直接音が届きすぎて、マスとしての響きは堪能しにくいため、私好みの音を聴くことは残念ながら出来なかった。

行進曲「威風堂々」第1番。重心のしっかりした演奏であり、BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団(ウェールズ人は「自分達はU.K.には含まれるがイングランド人ではない」と考えているかも知れないが)の首席指揮者としての活躍で知られる尾高のイギリスものへの適性がよく示されている。推進力もあり、それでいてノーブルさを失わない。

エルガーの交響曲第1番。
「ブラームスの交響曲第5番」と賞賛された(実は「ブラームスの交響曲第5番」といわれたのには他にもわけがある)スケール豊かな作品である。尾高指揮の大フィルは潤いのある音色で、堂々とした演奏を展開する。この今日はリズム楽器に打楽器ではなくコントラバスを多用するという特徴があるのだが、コントラバスの生かし方も優れている。
弦の俊敏さ、管の力強さが目立ち、弦と管のバランスにも秀でている。「見事」と言う他ないエルガーであった。

演奏終了後、尾高はマイクを持って登場し、「井上(道義)君と僕とは50年来の親友でありまして、(井上道義が癌で入院したということを聞いたときは)ショックを受けましたが、あれから何度もメールのやり取りを致しまして、かなり元気になっているようです。秋には井上君もきっと復帰してくれるだろうと思っております」と語った。尾高忠明は今では見るからに紳士然としているが、桐朋学園大学時代は、井上と共に、「悪ガキ井忠(イノチュウ)」と称されるほどやんちゃであった。井上道義は今もやんちゃであるが。

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