カテゴリー「スペイン」の6件の記事

2018年10月 2日 (火)

美術回廊(16) 美術館「えき」KYOTO 「フランス国立図書館版画コレクション ピカソ 版画をめぐる冒険」

2018年9月25日 JR京都駅ビルの美術館「えき」KYOTOにて

京都駅の近くで用事があったので、ついでに美術館「えき」KYOTOで、「フランス国立図書館版画コレクション ピカソ 版画をめぐる冒険」を観に行く。

パブロ・ピカソが残した版画作品と、影響を受けた版画作品などを紹介する展覧会。ピカソがレンブラントの作品を再構成した作品なども展示されている。

ピカソというと、デフォルメされた人物が特徴的だが、極限までデフォルメするまでの中間地点を描いた作品もあり、ピカソがどこを強調したのかを知ることが出来る(目が特に誇張されている)。

祖国であるスペインの闘牛を題材にした版画がいくつかあるが、闘牛そのものを描いた作品からは不吉な印象を受けるものの、ピカドールと闘牛の戦いを描いたものから受けるのはピカドールの軽やかさと躍動感の方であり、闘牛は脇役に過ぎないように見える。

ピカソはスペイン出身者である自身のリビドーの象徴としてミノタウルスを描いており、画面全体を揺るがすような迫力を与えている。

またミノタウルスの時代である古代ギリシャの影響を受けた作品も残していて、シンプルな裸体画や、牧神やディオニソスの巫女、ケンタウルスといった想像上の生き物を題材としたリトグラフなどを観ることが出来る。

マネの「草上の朝食」をヴァリエーションとして描いたり(エロスへの転換が見られる)、レンブラントの「エッケ・ホモ(この人を見よ!)」の主役をイエスではなく自分に置き換えてしまったりと、やりたい放題なのがいかにもピカソらしい。

ピカソの肖像画は、モデルのみでなく自分を含めた画家を作品の中に登場させるというのも特徴だそうで、一人真面目くさった画家を登場させるという皮肉を効かせたものもある。


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2018年8月22日 (水)

スペイン国立ダンスカンパニー 「ロミオとジュリエット(ロメオとジュリエット)」@びわ湖ホール大ホール

2008年11月29日 びわ湖ホール大ホールにて

午後3時から、大津市のびわ湖ホール大ホールで、ナチョ・ドゥアト芸術監督率いるスペイン国立ダンスカンパニーの公演、バレエ「ロミオとジュリエット」(音楽:セルゲイ・プロコフィエフ、振付:ナチョ・ドゥアト)を鑑賞。プロコフィエフの音楽を演奏するのは、ペドロ・アルカルデ指揮の関西フィルハーモニー管弦楽団。

ペドロ・アルカルデは作曲家でもあり、近年は1年に1作ずつバレエ音楽作品を発表しているようだ。
スペイン国立ダンスカンパニーは、1979年にスペイン国立クラシックバレエとして創設。その後、「クラシック・バレエを否定することなく、より現代的なスタイルを取り入れた」団体となり、名称も現在のものに変更された。

スペイン国立ダンスカンパニー芸術監督のナチョ・ドゥアトは、バレンシア地方の生まれ。ベルギーでモーリス・ベジャールに師事し、その後、ニューヨークに渡って更なる研鑽を積んで、1990年にスペイン国立ダンスカンパニーの芸術監督となる。コンテンポラリーダンスに主軸を置いていて、クラシック・バレエの全曲作品の振付を手掛けたのは、「ロミオとジュリエット」が唯一だそうだ。

スペイン国立ダンスカンパニーは、さいたま市でも公演を行ったが、その時は、演奏してくれるプロオーケストラが確保できなかったのか、テープ録音によって音楽を流したとのこと。
今日の公演は生演奏で音楽が聴ける。もちろん、その場でオーケストラが演奏した方がずっと感動的である。

幕が開くと、ロミオ(ゲンティアン・ドダ)がベンチで休んでいる。やがて、友人のマキューシオ(フランシスコ・ロレンツォ)らがやってきてロミオと戯れるが、ロミオは、たまたまそばを通り過ぎた女性の後についていってしまう。どうも、今回のバレエでのロミオは遊び人という解釈のようだ。シェークスピアの原作でもロミオはいい加減な奴なので、こういうのもありだろう。

一方のジュリエット(ルイサ・マリア・アリアス)はというと、ピョンピョン跳びはねながら口うるさそうな婆やから逃げ回っている。かなりお転婆なジュリエットである。

さて、イタリア・ヴェローナの名門、モンタギュー家とキャピュレット家の争いというのが、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」の枠組みであるが、今日のバレエでは、モンタギュー家の人々は男女ともに庶民のような格好で、広場で踊るなどして楽しんでいる。そこへ正装のキャピュレット家の男達がやってきて、楽しんでいるモンタギューの人々にちょっかいを出し、剣を抜く。モンタギューの人々は鋤で応戦。ということは、スペイン国立ダンスカンパニーのバレエではモンタギュー家の人々はどうやら本当に庶民で、キャピュレット家が貴族であり、原作の権門争いではなく、階級闘争に設定が変えられているようだ。

キャピュレット家での舞踏会に、ロミオやマキューシオは仮面を付けて、道化に化けて忍び込み、手品をしたり悪ふざけをしたりしている。
そして、ジュリエットに一目惚れしてしまうロミオ。ジュリエットも無理矢理結婚相手に決められたパリス(アモリー・ルブラン)やジュリエットの親戚であるティボルト(クライド・アーチャー)ではなく、仮面のままのロミオと踊りたがる。露骨に悔しがるティボルト。
やがて、ジュリエットが一人になったところにロミオが現れ、仮面を取る。瞬く間に恋におちる二人……。

モンタギューの人々が広場で車座になり、中央で踊っているマキューシオが乗ってくると皆で同時に手を打つところなどは、まさに「オーレー!」で、スペイン的味わいが出ている。
モンタギューの人々の踊りがダイナミックで、マスゲームのように良く計算されているのも印象的。
幕、布、旗などの使い方も効果的である。

ラスト。仮死状態になったジュリエットを見て本当に死んでしまったと思い、短剣で胸を突くロミオ。ロミオが崩れ落ちるのとほぼ同時にジュリエットが目を覚ます。何てずるい演出なんだ。ストーリーを知っていても、「あー、ロミオがもっと迷っていれば上手くいっていたのに」と悔しくなる。
そして、ロミオが死んだことを知って自らも死を選ぶジュリエット。ここは音楽だけでも十分に美しくて悲しいのに、ジュリエットの動きが加わると、もう卑怯なほど美しくて悲しい。
こういうものを見てしまうと、それを言葉で語るのが馬鹿らしくなる。言葉なんてもう余計なものだ。プロコフィエフの音楽だけで十分である。
といいながら言葉で書いてしまっているけれど。

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2008年5月24日 (土)

ロドリーゴ 「アランフェス協奏曲」 カルロス・ボネル(ギター) シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団

最もスペイン的なクラシック音楽として真っ先に思い浮かぶのが、ホアキン・ロドリーゴ(1901-1999)の「アランフェス協奏曲」。悲劇的なメロディーが印象的な第2楽章が特に有名ですが、全曲を通して名曲です。今日紹介するのは、カルロス・ボネルがギターを弾き、シャルル・デュトワ指揮のモントリオール交響楽団が伴奏を務めたCD。DECCAレーベル。「ある貴紳のための幻想曲」を併録。

ロドリーゴ 「アランフェス協奏曲」 カルロス・ボネル(ギター) シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団 カルロス・ボネルのギターは音が美しく、それも含めた技術が万全です。

シャルル・デュトワ指揮のモントリオール交響楽団は、極めて洗練されたスタイルで、特に澄んだ弦楽の響きは、どこまでも高く真っ青な空を想起させます。

スペイン的な土俗感からは遠い演奏ですが、誰が聴いても曲の素晴らしさを味わうことの出来る好演でもあります。

ロドリーゴ/Concierto De Aranjuez  Fantasia: Bonell  Dutoit / Montreal.so

カルロス・ボネル(ギター) シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団 「アランフェス協奏曲」の現行版ジャケット

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『ロルカ詩集』(土曜美術社出版販売)

詩が好きにとってはおなじみの、土曜美術社出版販売から出ている『ロルカ詩集』を紹介します。世界現代詩文庫の第21巻として出ているもの。小海永二:訳。

『ロルカ詩集』(土曜美術社出版販売) 小海永二:訳 20世紀のスペイン詩壇を一人で代表しているといっても過言ではない、フェデリコ・ガルシア・ロルカ。
1898年にアンダルシア地方のグラナダ近郊に生まれ、グラナダ市、マドリッド、ニューヨーク、キューバなどで生活。
スペインに戻ってからは、素人劇団を立ち上げて、主に劇作家として活躍しています。

しかし、この素人劇団が左派であった共和政府からの援助を受けていたため、フランコが独裁政権を築くと同時に、ロルカは左派知識人として追われることになり、グラナダの友人宅に潜んでいるところを見つかって、すぐそばのオリーブ畑で銃殺されました。時に38歳。

フランコ政権下のスペインでは、ロルカ作品は発禁となり、長い間読むことが出来ませんでした。
沢木耕太郎の『深夜特急』にも、スペインを訪れた沢木が、「ロルカの詩を読むことは出来るのか?」と現地の人に訊いて否定される場面があります。

濃厚なスペイン情緒とダダイズムなどの影響も受けたロルカの詩。わかりやすい詩とイメージ連鎖が必要な難解な作品が混在していますが、難解なものでも声に出して読んでみると、案外すっと体と心に染み込んでくるところがあり、そこが魅力です。

『ロルカ詩集』(世界現代詩文庫 土曜美術社出版販売) 紀伊國屋書店BookWeb

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2008年5月23日 (金)

観劇感想精選(36) アトリエ・ダンカン・プロデュース「血の婚礼」

2007年5月17日 東京・新大久保の東京グローブ座にて観劇

東京・新大久保の東京グローブ座で、フェデリコ・ガルシア・ロルカ作、白井晃:台本・演出の舞台「血の婚礼」を観る。
スペインが生んだ悲劇の詩人、ロルカの代表的戯曲の上演。大阪での上演もあるが、紀尾井ホールでのコンサートを聴くついでに東京で観ておくことにしたのだ。


「血の婚礼」は午後7時開演。出演は、森山未來、ソニン、浅見れいな、岡田浩暉、尾上紫(おのえ・ゆかり)、陰山泰、根岸季衣、新納慎也、江波杏子。
ギター演奏を渡辺香津美が担当する。

「血の婚礼」は、詩人であるロルカらしく韻文が多用されるなど、上演の難しい作品である。
演出の白井晃はロルカが書いた歌詞をカットし、その代わりにダンスを多く取り入れる。森山未來、ソニンなど、ダンスの達人がキャスティングされているだけに、舞踏のシーンは迫力がある。

最初は、パーツパーツは優れているものの、それが上手く噛み合わないもどかしさがあったが、森山やソニンのダンスはセリフ以上に雄弁であり、詩人ロルカの戯曲上演への期待が良い意味で裏切られる。
「血の婚礼」の“血”には3つの意味があるが、血が持つ因縁を表現するには言葉よりも肉体の動きがより適している。言葉も肉体より発せられるが、肉体そのものの動きの方が、より血に直結しているのは明らかであり、言葉は情熱の血を沸き立たせる媒体でしかない。

婚礼から2人が逃げ去る場面以降は、役者の動きとセリフとが絶妙の止揚(という表現を敢えて用いる)を見せる。

情熱的で呪わしいという“血”の両面を描き出すことに成功した優れた舞台であった。

出演者では、森山未來、ソニン、尾上紫の3人が特に良かった。森山未來は期待通りであるが、ソニンは予想以上に優れた表現を見せ、尾上紫の可憐さと妖しさの両方を兼ね備えた演技にも魅せられた。

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たぎる血の惨劇 森山未來主演 「血の婚礼」

2007年5月に東京・新大久保の東京グローブ座で上演されたアトリエ・ダンカン・プロデュース「血の婚礼」を収録したDVDを紹介します。TBSの制作、ポニー・キャニオンの販売。

「血の婚礼」は、フランコ独裁政権下で殺害された、スペインを代表する詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカが書いた戯曲。韻文が多用されていたり、月の成りをした人物が登場するなど、そのままでは、少なくとも現代の日本で上演することは難しい作品です。

森山未來主演 「血の婚礼」DVD

台本と演出を手掛けた白井晃は、多くのセリフをカットし、ダンスの場面を数多く取り入れています。「血の婚礼」の“血”には少なくとも3つの意味が掛けられていると思いますが、そうした血を表すには言葉よりもダンスの方が説得力があります。たぎる血は言葉よりも肉体により近しく、ダンスを生かした情熱と因縁と愛の迸りが見事です。
音楽は渡辺香津美を起用。渡辺は舞台上でギターを奏で、その熱い演奏も極めて効果的です。

原作:フェデリコ・ガルシア・ロルカ、台本・演出:白井晃、主演:森山未來、ソニン、出演:尾上紫(おのえ・ゆかり)、江波杏子、岡田浩暉、池谷のぶえ、陰山泰、浅見れいな、新納慎也、根岸季衣。

Original Cast/血の婚礼

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