カテゴリー「室内楽」の11件の記事

2017年11月26日 (日)

楽興の時(17) 「テラの音 圓光寺第10回公演」

2017年11月19日 左京区北白川の真宗大谷派圓光寺にて

午後4時から、北白川にある真宗大谷派圓光寺で、「テラの音(ね) 圓光寺第10回公演」を聴く。今日は弦楽四重奏のコンサートである。
真宗大谷派圓光寺から、北に歩いて20分ほどのところに、紅葉の名所としても知られる臨済宗圓光寺があり、混同されることが多いそうだ。樋口住職によると、真宗大谷派圓光寺は、1970年に西本願寺のそばから北白川に移ってきたそうである。

北白川は、京都大学の教授達が疎水沿いに住んだことに端を発する高級住宅街であるが、真宗大谷派圓光寺があるのは、白川通より東の茶山の裏手であり、「熊出没注意」の看板もある山深いところである。京都の街は少し位置が変わるだけで表情が大きく変わる。

出演は全員、同志社女子大学学芸学部音楽科のOGである、高木玲(第1ヴァイオリン)、牧野貴佐栄(まきの・きさえ。第2ヴァイオリン)、野田薫(ヴィオラ)、桜井裕美(チェロ)の4人。弦楽四重奏曲は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが並ぶ布陣になることが多いが、今日は下手から時計回りに、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンと並ぶヴァイオリン両翼のポジショニングである。
トークは、テラの音主催である牧野貴佐栄が受け持ったが、牧野さんは一週間前に風邪を引いてしまったそうで、濁声であった。


曲目は、第1部が、ヴォーン・ウィリアムズの「グリーンスリーブス幻想曲」、モーツァルトのディヴェルティメント K.136、モーツァルトの歌劇「魔笛」より夜の女王のアリア(「復讐の心は炎と燃え」)と「パパパの二重唱」、プッチーニの「菊」、ハイドリヒ名義の「ハッピーバースデー変奏曲」。第2部が、菅野よう子の「おんな城主 直虎」のテーマ、伊福部昭の「ゴジラ」よりメインテーマ、久石譲の「もののけ姫」よりと「いのちの名前」(「千と千尋の神隠し」より)、荒井由実の「ルージュの伝言」(「魔女の宅急便」より)、幸松肇の「日本民謡組曲」(「さんさ時雨」、「ソーラン節」、「五木の子守唄」、「茶切節」)


全員、大学の音楽科卒で、ある程度のレベルは保証されているもののプロの専業演奏家ではないため、感心するほどの出来映えにはやはりならない。ただ、曲目がバラエティに富んでいて楽しめる。

第1部のラストでは、「新たに作曲された」という設定で、「ハッピーバースデー」の変奏曲が3曲演奏される。ハイドリヒ名義であるが、おそらくはメンバーによる編曲で、名義はスティーヴンソンのハイド氏と弦楽四重奏の父・ハイドンに由来するのだろう。3曲目はドヴォルザークの「アメリカ」カルテットを模した編曲であった。


第2部では、スタジオジブリの映画音楽が並ぶ。「もののけ姫」と「千と千尋の神隠し」は観ているが、「魔女の宅急便」はまだ観ていない。ジブリ作品自体、観たことのないものの方が多い。


「日本民謡組曲」。私の好きな「五木の子守唄」が入っている。被差別階級(農奴同然)の子守女の悲哀が歌われている曲であり、演奏も入魂といった感じで良かった。


アンコールとして、さだまさしの作曲で山口百恵の歌唱でも知られる「秋桜」が演奏された。

テラの音(ね) 真宗大谷派圓光寺10回記念公演

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2017年2月26日 (日)

楽興の時(14) 「テラの音 冬のクラシックコンサート」2017

2017年2月16日 京都市北区の真宗大谷派 唯明寺にて

午後7時から大徳寺の東にある真宗大谷派 唯明寺(ゆいみょうじ)で、「テラの音(ね) 冬のクラシックコンサート」を聴く。寺院の場合、神社と違って気軽に入れる施設の方が少ないということもあり(拝殿の前で参拝を終える神社と違って、寺院は建物の中に入らないとお参りも礼拝も出来ないということでセキュリティの問題もある)、普段は檀家しか入れない本堂の中に入れるのも「テラの音」の魅力である。

    
真宗大谷派 唯明寺は現在の住職である亀田晃巖(かめだ・こうがん)のお祖父さんが説法の名手であり、お祖父さんのファンが説法を聴くためのお堂が欲しいというので、80年前に建立した寺院だという。それまではお祖父さんは他の寺院の住職をしていたようだ。亀田晃巖も子供の頃は説法が好きではなかったのだが、今では落語のルーツとされる「節談(ふしだん)説教」に取り組んでおり、私も真宗大谷派岡崎別院で亀田の「節談説教」を聴いたことがある。

コンサートの前に亀田住職のお話。話し好きの人なので、どうしても挨拶や話が長くなってしまう。80年前は北大路から北は全面畑だったそうで、大宮通が北大路通から北に延びて新大宮通が開通し、街が出来ていく過程と唯明寺の歴史は重なっているそうだ。

「テラの音」は出演者はノーギャラだが、開催寺院のために「お志」を頂戴する。お志を投げ入れるための籠を亀田が動かして、その際にキーボードの前に置かれた譜面台が倒れてしまうというアクシデントがあった。

亀田住職は、「喋りすぎたし司会の人はカンカンなんちゃうか」と言って挨拶を終える。ちなみに司会といっても最初と最後に挨拶をするだけの人なのだが、唯明寺の檀家の代表さんで、実は立命館小学校の校長先生という「お偉いさん」だそうである。亀田は「お偉いさんをこき使ってまんねん」と冗談を言う。


今日はソプラノ歌手の加治屋菜美子、「テラの音」企画担当のヴァイオリニスト・牧野貴佐栄、ピアノの山口日向子の3人によるコンサート。
加治屋と牧野は共に同志社女子大学音楽学科の出身。また山口日向子は牧野貴佐栄の名古屋市立菊里高校音楽科時代の同級生だそうである。山口は菊里高校卒業後、東京芸術大学音楽学部器楽科に進学。同大学院音楽研究科修士課程器楽専攻修了。同大学院在学中に渡独してマンハイム音楽大学大学院を満点の成績で修了している。イタリアの第15回ロケッタ市国際音楽コンクールで第1位獲得。ロータリークラブ賞も受賞している。これもイタリアで行われた第23回イブラ国際音楽コンクールでは優秀賞とリスト特別賞を受けている。


今日はピアノはないので、ローランドのキーボードで代用する。
曲目は、第1部が、ヴェルディの「椿姫」から“乾杯の歌”、プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」より“ねえ私のお父さん”、ショパンの前奏曲第7番、ヴィヴァルディの協奏曲「四季」から“冬”第2楽章、鈴木鎮一編曲による「キラキラ星変奏曲」、ヨハン・シュトラウスⅠ世「ラデツキー行進曲」、イタリア民謡「オーソレ・ミーオ」。第2部が、中田章の「早春賦」、冬の歌メドレー(「雪」、「かあさんの歌」、「雪の降る街を」、「スキーの歌」)、宮沢賢治作曲・林光の伴奏編曲による「星めぐりの歌」、金子みすゞの詩に石若雅弥が曲をつけた「わたしと小鳥とすずと」、小椋佳作詞・作曲の「愛燦燦」、永六輔作詞・いずみたく作曲の「見上げてごらん夜の星を」

「テラの音」企画者である牧野貴佐栄がマイクを手にトークを行うが、「乾杯の歌」が含まれているオペラのタイトルが浮かんで来なかったり、「ねえ私の父さん」の歌詞に出てくる川の名前を「ヴェッキオ川」と言ったり(ヴェッキオは橋=ポンテの名前。下を流れるのはアルノ川である)、3曲目はショパンの前奏曲第7番なのに、「続いてヴァイオリンの曲をお聴き頂きたいと思います」と言ってしまったりと、板についた感じがしない。

お寺の本堂ということで、音響がプラスに働くということは余りない。加治屋菜美子のソプラノも細く聞こえてしまうが、会場が音楽用の場所ではないため仕方ないだろう。

ショパンの前奏曲第7番。「太田胃散」のCM曲として知られている曲である。山口日向子は、「ある胃腸薬のコマーシャルで使われています」と話してから演奏。聴衆から笑いが起こった。
ちなみに、この曲のラスト近くには、手がかなり大きくないと弾けない和音があり、普通はアルペジオで処理するのだが、山口は音を抜くことで対処したようだ。


スズキメソッドの鈴木鎮一の編曲による「キラキラ星変奏曲」。ヴァイオリンとピアノのための編曲である。モーツァルトが作曲したピアノのための「キラキラ星変奏曲」の編曲。
牧野貴佐栄は、「キラキラ星」を「モーツァルトの作曲」と語ったが、これは間違いで、「キラキラ星」はフランス民謡で作者不詳である。
牧野はヴィオラよりもヴァイオリンの方がやはり合っていると思うが、ハスキーな音色を出したり、音程が上ずったりという難点がある。リハーサルの時間も十分に取れるわけではないので、仕方ないといえば仕方ないのかも知れないが。


ウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサートの掉尾を飾る曲として知られる、ヨハン・シュトラウスⅠ世の「ラデツキー行進曲」。聴衆も手拍子を入れながら音楽を楽しんだ。

第1部最後の曲は、イタリア民謡「オーソレ・ミーオ」。牧野が、「イタリアの恰幅の良い歌手が歌っているようなイメージがありますが」と語るが、そうしたイメージを作り出したのはおそらくルチアーノ・パヴァロッティだろう。パバロッティは「オーソレ・ミーオ」を十八番としていた。
女声による「オーソレ・ミーオ」は男声による同曲歌唱とは異なる。男声歌手が歌うと、「朗らかな情熱の響き」がするのだが、女声歌手が歌うとどことなく寂しそうだ。歌詞自体が女性が歌うようなものではないということも影響しているだろう。
山口が弾いた「ハバネラ」のリズムを強調した伴奏は面白い。


第2部の第1曲は「早春賦」。加治屋がマイクを手に、「今の季節のピッタリ」として選んだことを語ったのだが、第3番の歌詞では「恋への憧れ」という解釈で歌ったのでそれを意識して欲しいと予め述べる。会場が会場だけに不利だが、伸びやかな声は楽しめる。

冬の歌メドレーでは、「雪」、「かあさんの歌」、「雪の降る街を」、「スキーの歌」の4曲が歌われる。加治屋が、「皆さんも歌って下さい」と言うので、「雪」、「かあさんの歌」、「雪の降る街を」は私も含めて多くの人が口ずさんだが、「スキーの歌」は聴いたことはあってもよく知らないでの歌えない。他の人も同様のようで、「スキーの歌」に入った途端に歌声が止んだ。日本においてフランス音楽の影響を受けた最初期の作曲家である橋本國彦作曲の「スキーの歌」は、おそらく雪国の小学校では教えられているのだろうが、私のように千葉県というスキー場皆無(湾岸スキーヤーと称した「ららぽーとスキードーム」などはあったが)の場所ではまず歌われないだろう。


宮沢賢治作詞・作曲の「星めぐりの歌」。CMでも用いられたことがあり、東北出身の歌手などもこの曲をよく取り上げている。宮沢賢治は、チェロやオルガンが弾けたため、譜面も読めるし、メロディーを作ることも難しくはなかったと思われるが、詞とメロディーだけは作ったものの、伴奏を作曲していないという。武満徹のように「歌い手に任せるために敢えて伴奏を書かなかった」ケースもあるが宮沢賢治は音楽の専門家ではないため、対位法などには通じておらず、伴奏を作曲するだけの技能を持ち合わせていなかったということだと思われる。
今日は、現代音楽の作曲家としては平易な楽曲を多く書いたことで知られる林光作曲の伴奏による演奏。細かなピアノの粒立ちが星々の煌めきを表現しているかのようだ。


金子みすゞの詩「わたしと小鳥とすずと」に石若雅弥がメロディーをつけた楽曲。実は、金子みすゞの童謡にメロディーをつけた作品はとても多い。だが、どれも金子みすゞの言葉に音楽が負けてしまい、「これは」と言った楽曲は生まれていないというのが現状である。そもそも金子みすゞの童謡は読んでこそ魅力が味わえれというもので、音楽に向いていないとも思える。
石若雅弥がメロディーをつけた「わたしと小鳥とすず」も、作品自体が持つ「静謐さ」を音楽は破らざるを得ないため、「悪くはないんだけど」という印象にとどまる。


「愛燦燦」。小椋佳の作詞・作曲で、美空ひばりの歌唱でも知られている。加治屋がこの曲を知ったのは美空ひばりバージョンでも小椋佳バージョンでもなく、美空ひばりの歌真似をしている青木隆治の映像で見て引き込まれたのだという。
「クラシックの歌手が『愛燦燦』を歌うとどうなるか」ということだったが、クラシックの歌唱法は整いすぎて、この曲が持つ良い意味での素朴さを消してしまうように聞こえた。


「見上げてごらん夜の星を」。永六輔作詞・いずみたく作曲、坂本九歌唱による作品である。唯明寺住職の亀田晃巖によると、永六輔は小沢昭一と共に唯明寺に来たことがあるそうである。
この曲はヴァイオリンとピアノの伴奏、ソプラノの独唱にとてもよく合っているように感じた。


アンコールは、「蛍の光」もメロディーを取り入れた歌曲「空より高く」。前半はオリジナルメロディーだが後半「蛍の光」の旋律が挿入されている。

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2017年2月21日 (火)

コンサートの記(276) ゲヴァントハウス弦楽四重奏団来日演奏会2014京都

2014年11月7日 京都府立府民ホールALTIにて

午後7時から、京都府立府民ホールアルティで、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の来日演奏会を聴く。

ゲヴァントハウス弦楽四重奏団は、その名からもわかる通り、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のメンバーから成る弦楽四重奏団であり、1809年結成という世界最古の弦楽四重奏団とされる(当然ながらメンバーは入れ替わっている)。メンバーはいずれも首席奏者から選ばれるようだ。

現在のゲヴァントハウス弦楽四重奏団のメンバーは、コンラート・ズスケ(第2ヴァイオリン。苗字からも分かるとおり、カール・ズスケの息子である)、ユルンヤーコブ・ティム(チェロ)、フランク=ミヒャエル・エルベン(第1ヴァイオリン)、オラフ・ハルマン(ヴィオラ)。

曲目は、モーツァルトの弦楽四重奏曲第15番、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第6番、モーツァルトの弦楽四重奏曲第19番「不協和音」。

アルティは、残響可動システムを導入しているが、天井が高いということもあって、弦楽四重奏曲を演奏するには余り向いていないように感じた。響かないのでどうしてもスケールが小さく感じられてしまう。

東ドイツであった時代から、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は渋い響きを出すといわれ、一部では「東ドイツはお金がないので安い楽器しか買えないためだ」などといわれたりもしたが、今日もゲヴァントハウス弦楽四重奏曲のメンバーは渋めの音を出しており、伝統的にこうした音を守り抜いてきたのだと思われる。

モーツァルトの弦楽四重奏曲第15番は、第1楽章の哀切な旋律が特徴。アルバン・ベルク・カルテットのCDで愛聴してきたが、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の音色はアルベン・ベルク・カルテットほどウエットではない。

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第6番も悲哀に満ちた作風。メンデルスゾーンの姉であるファニーがなくなってから2ヶ月後に着手され、2ヶ月で完成。「ファニーへのレクイエム」となっている。
ゲヴァントハウス弦楽四重奏団も真摯な演奏で、自分達の大先輩であるメンデルスゾーンの音楽を歌い上げる。

モーツァルトの弦楽四重奏曲第19番「不協和音」。第1楽章の冒頭で、調性が定まらないため「不協和音」というタイトルが付いた。今現在「不協和音」と聞いて思い浮かべるようなものではなく、「不安定な音楽だ」程度の感じなのだが、モーツァルトの生前は斬新な作品であったといわれる。

調性が安定してからはいかにもモーツァルトらしいチャーミングな音楽となり、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団も格調の高い演奏を示した。

アンコールは2曲。

まず、ハイドンの弦楽四重奏曲第81番「ロプコヴィッツ四重奏曲」より第2楽章。たおやかな曲と演奏である。

そして最後はモーツァルトのセレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第1楽章・弦楽四重奏版。颯爽とした演奏であった。

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2017年2月12日 (日)

コンサートの記(274) チェコ・フィルハーモニー・ストリング・カルテット@京都2017 「これが聴きたい~アンコール“超名曲”ベスト20!」

2017年2月3日 京都コンサートホールにて
午後7時から、京都コンサートホールで、チェコ・フィルハーモニー・ストリング・カルテット(チェコ・フィル・ストリングカルテット)の来日演奏会を聴く。

今回は、「これが聴きたい~アンコール“超名曲”ベスト20!」と題した名曲コンサートである。
テレビCMでも使われるような名曲、通俗名曲と呼ばれたりもするが、そうした誰もが耳にしたことのあるクラシック曲というものは、実は実演に接する機会は稀である。
通俗名曲と呼ばれることからも分かるとおり、一段低いものと思われる傾向があるのだ。それでも、ヘルベルト・フォン・カラヤンなどは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して、通俗名曲のアルバムを多く作っているが、マーラーやブルックナーなどの大曲路線が顕著になると、一流の指揮者が通俗名曲を録音することすら皆無に等しくなる。

EMIが、まだ東芝EMIだった頃(東芝も最近、危なくなってきたが)、名曲アルバムが少なくなったのを嘆いて、アンドルー・デイヴィスやウォルフガング・サヴァリッシュを起用して、名曲小品だけのアルバムを作ったことがあったが、それももう30年以上前のことだ。

ポピュラーの名曲は競ってカバーされ、最近ではカバーアルバム供給過多の傾向があるが、クラシックは真逆である。
大阪のザ・シンフォニーホールでは、ブルガリアのソフィア・ゾリステンを招いて名曲コンサートをやっていたり、関西フィルハーモニー管弦楽団が真夏にポップスコンサートをやっていたりするが、京都では京都フィルハーモニー室内合奏団がたまにやるぐらいで、聴く機会は少ない。


曲目は、前半が、モーツァルトのセレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章、J・S・バッハの「G線上のアリア」、モーツァルトの「トルコ行進曲」、ベートーヴェンの「エリーゼのために」、シューマンの「トロイメライ」、ブラームスの「ワルツ」、ショパンの「子犬のワルツ」、ドヴォルザークの「ユモレスク」、ハチャトゥリアンの「剣の舞」。後半が、オッフェンバック(オッフェンバッハ)の歌劇「天国と地獄」序曲より、ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ「美しく青きドナウ」、バダジェフスカの「乙女の祈り」、レハールの「メリー・ウィドゥ・ワルツ」、モンティの「チャールダーシュ」、ピラソラの「リベルタンゴ」、ビートルズの「イエスタデイ」、グレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」、ロドリゲスの「ラ・グランパルシータ」、デューク・エリントンの「A列車で行こう」

チェコ・フィルハーモニー・ストリング・カルテットは、その名の通り、東欧随一の名門オーケストラであるチェコ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーによって組織された弦楽四重奏団。1992年結成され、チェコ・フィルの本拠地であるルドルフィヌムでの室内楽シリーズを行っている。2007年に初来日し、今回が9度目の来日というから、ほぼ毎年来日演奏会を行っていることになる(同じく、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の楽団員からなるチェコ・フィルハーモニー弦楽四重奏団という団体があるがそれとは別の団体である。チェコ・フィルハーモニー弦楽四重奏団の英語表記は、チェコ・フィルハーモニック・カルテットだ)。

メンバーは、マグダレーナ・マシュラニョヴァー(第1ヴァイオリン。チェコ・フィル第2アシスタント・コンサートマスター)、ミラン・ヴァヴジーネク(第2ヴァイオリン。チェコ・フィル第1ヴァイオリン奏者)、ヨゼフ・シュパチェク(チェロ。チェコ・フィル首席代理チェロ奏者)、ヤン・シモン(ヴィオラ。チェコ・フィル・ヴィオラ奏者。プロ・アルテ・アンティクア・プラハのリーダー)。


今日は、前から2列目、真ん真ん中の席である。京都コンサートホールは前の方の席は音が余りよくないのだが、今日は問題なく聴くことが出来た。
京都コンサートホール(大ホール)は、オーケストラ演奏用なので、室内楽向きではない。チェコ・フィルハーモニー・ストリング・カルテットのメンバーが最初の音を出した時には、「音、ちっちゃ!」と思ったのだが、すぐに慣れる。

第1ヴァイオリンのマグダレーナ・マシュラニョヴァーが、マイクを手に、テキストを横目で見ながら、「皆さん、こんにちは(ソワレなので「こんばんは」だが、外国人だからわからなくてもいいだろう)。本日はようこそいらっしゃいました。最後までゆっくりお楽しみ下さい」と日本語で挨拶してから演奏スタート。
名曲が並ぶということもあり、室内楽のコンサートにも関わらず、京都コンサートホールには結構、人が入っている(ポディウム席、ステージサイド席などは販売されていない)。

チェコ人は、ビロードという言葉が好きで、民主化も「ビロード革命」と呼ばれているが、チェコ・フィルの弦の音色も「ビロード」と称される。正直、技術面ではいくつか怪しいところもあったのだが、音色は温かで心地よく、上品でもある。


ブラームスの「ワルツ」の演奏前に、メンバー紹介がある。第2ヴァイオリンのミラン・ヴァヴジーネクが、「日本の食べ物美味しいです」と日本語で言い、ヴィオラのヤン・シモンは、「味噌ラーメン、餃子、寿司、刺身、チャーハン」などと好きな日本食を挙げていく。チェロのヨゼフ・シュパチェクは、「豚骨ラーメン最高!」。マグダレーナ・マシュラニョヴァーは、「やっぱりお酒が美味しいです」と言っていた。

チェコの国民的作曲家であるドヴォルザークの「ユモレスク」の演奏前にもマグダレーナ・マシュラニョヴァーは、「日本語、とっても難しいです」と言い、「Japanese is so difficult for me.」と英語で言って、英語で、「プラハや我が国(our country)へお越し下さい」と述べた後で、日本語で「プラハへお越し下さい」と語る。
チェコ語も日本人が学習するには相当難しいのだろう。そもそもメンバーの名前も舌を噛みそうなものばかりだ。


名曲ばかりなので、演奏について書いてもさほど意味があるとも思えないので、エピソードを連ねていく。

日本では人気のバダジェフスカの「乙女の祈り」。だが、ヨーロッパでは余り知られていない曲である。ということで日本人向けにプログラミングされたもののようだ。

1990年代に、ギドン・クレーメルやヨーヨー・マが演奏してブームになったピアソラ。ブーム沈静後はそれほど演奏されなくなっているが、ヨーヨー・マがCMで弾いていた「リベルタンゴ」は今でもよく取り上げられている。

「イエスタデイ」。ビートルズナンバーというのはやっかいな問題を抱えていて、訳詞をすることがほぼ不可能である。村上春樹がその名も「イエスタデイ」という短編小説で、「イエスタデイ」のパロディ関西弁訳を作り、雑誌に掲載されたが、これも駄目で、短編集『女のいない男たちに』に収録された「イエスタデイ」では、「イエスタデイ」の関西弁訳の冒頭しか載せられていない。「イエスタデイ」は物語のキーになる曲なので残念なのだが。
メロディー自体は、ポール・マッカートニーが、朝、ベッドから転げ落ちた際に、瞬時に出来上がったもので、朝飯前に出来たということから、正式な歌詞がつくまでは「スクランブルエッグ」という仮タイトルがついていた。


グレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」はビッグバンドのためのジャズナンバーで落ち着いた曲調であるため、弦楽四重奏でもさほど違和感はないが、デューク・エリントンの「A列車で行こう」はノリノリのナンバーであるため、チェコ人の演奏ということもあってスウィング出来ないムード・ミュージックのようになっていた。スウィング感は黒人のジャズマンでないと上手く出せないのだろう。もともとがクラシックのコンサートであるし、「スウィングしなけりゃ意味がない」ということもない。
アンコール。まずは、ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲より“スイスの行進曲”。推進力のある演奏である。
2曲目は、イタリア繋がりで、ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」。ロマンティックな仕上がりである。

カーテンコールで、マグダレーナ・マシュラニョヴァーは、お辞儀をしてから帰ろうとするのだが、ミラン・ヴァヴジーネクがそれを引き留めてもう1曲。
マグダレーナは、マイクを手に、「ありがとうございました。楽しかったですか?」と日本語で客席に聞き、「最後の曲。これは皆さんもよく知っていると思います」と言って、ヨハン・シュトラウスⅠ世の「ラデツキー行進曲」が演奏される。ヨゼフ・シュパチェクがホイッスルを吹いて、聴衆の拍手を促す。楽しい演奏であった。


アンコール曲目が、ホワイトボードに書かれて発表されていたのであるが、今日も誤記あり。「ラデツキー行進曲」の作曲者がヨハン・シュトラウスⅡ世になっている。ワルツ王(ヨハン・シュトラウスⅡ世)の作品ではなく、ワルツの父(ヨハン・シュトラウスⅠ世)が書いたものというのはクラシックファンにとっては常識に近いものなのに。

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2016年8月 6日 (土)

ポール・マッカートニー&クロノス・カルテット 「Yesterday」

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2016年6月 1日 (水)

コンサートの記(242) 「エマニュエル・パユ with フレンズ・オブ・ベルリン・フィル」2016京都

2016年5月10日 京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホール・ムラタ」にて

午後7時から京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホールムラタ」で、「エマニュエル・パユ with フレンズ・オブ・ベルリン・フィル」という室内楽のコンサートを聴く。

かつて「フルートの貴公子」と呼ばれたエマニュエル・パユ(「フルートの貴公子」と呼ばれた人は実は何人もいるのだが)。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席フルート奏者であり、ベルリン・フィルの現役メンバーの中でもおそらく一番有名、ということで「ベルリン・フィルの顔」と呼んでも大袈裟でないほどの演奏家である。ソロ・フルーティストとしても高い評価を得ている。

メンバーはパユの他に、マヤ・アヴラモヴィチ(ヴァイオリン)、ホアキン・メケルメ・ガルシア(ヴィオラ)、シュテファン・コンツ(チェロ)。全員、ベルリン・フィルの団員である。
パユはスイス・ロマンド圏の出身。マヤ・アヴラモヴィチはセルビア、ホアキン・メケルメ・ガルシアはスペイン、シュテファン・コンツはオーストリアのそれぞれ出身である。全員、名前がいかにもそれらしい。


ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は東京のサントリーホールでで「ベートーヴェン交響曲チクルス」を行っており、別働隊の形で、ベルリン・フィル団員による室内楽や合奏のコンサートも行われる。


曲目は、モーツァルトのフルート四重奏曲第3番、モーツァルトのフルート四重奏曲第2番、ロッシーニのフルート四重奏曲第2番、モーツァルトのフルート四重奏曲第4番、武満徹の「エア」(エマニュエル・パユの独奏)、モーツァルトのフルート四重奏曲第1番。

モーツァルトが残したフルート四重奏曲全曲と、ロッシーニが若い頃に書いた「4声のソナタ」からのフルート四重奏曲編曲版、武満徹の遺作である「エア」という豪華なプログラムである。


「フルートの貴公子」と呼ばれたパユも恰幅が良くなり(まあわかりやすく書くと少し太ったわけです)、貴公子然とはもうしていない。
ただ、フルートの技巧は流石で、特に弱音が美しい。どんなパッセージでも軽々吹いてしまう技術も凄い。

弦楽担当の3人であるが、安定感のある合奏を聴かせる。最初はビブラートも控えめで、「ピリオドかな?」と思ったが、その後はビブラートもそこそこ掛けられるようになり、ボウイングもピリオド的ではない。音には古雅な響きも含まれているので、「ピリオドの要素も取り入れた折衷的な演奏」と見るのが一番適当であるように思う。

モーツァルトのフルート四重奏曲は第1番が飛び抜けて有名であり、他の3曲については「他の作曲家が手を加えた可能性」が指摘されている。ちなみに全てマンハイムで書かれたものであり、当時モーツァルトは当地に住むアロイジア・ウェーバーに熱を上げていたがフラれてしまい、ウェーバー家の策略によりアロイジアの妹であるコンスタンツェと結婚させられることになる。

フルート四重奏曲第1番は確かに親しみやすいメロディーと才気が特徴的であり、モーツァルトの真作に間違いないであろう。


ロッシーニのフルート四重奏第2番は、先に書いたとおり、「4声のソナタ」を第三者がフルート四重奏曲に編曲したものである。オペラ作曲家として一時代を築いたロッシーニらしいドラマティックな作品であるが、実は原曲である「4声のソナタ」を書いたときにロッシーニはまだ12歳の子供であり、早熟ぶりに驚かされる。


武満徹の「エア」。武満の遺作である。オーレル・ニコレの依頼によって書かれたものだが、そのニコレも先日他界した。1996年に武満の訃報を知ったときには驚いたがそれからもう20年が経過してしまった。今回の演奏も「武満徹没後20年メモリアル」として行われる。
武満の没後に追悼盤として出されたCDに入っていたニコレ演奏の「エア」を初めて聴いた時には正直ピンとこなかった。良い曲なのかどうかすらわからなかったほどだ。だが、今ではこの曲の良さがわかる。「幽玄」「寂」「無常」「空」「墨絵のような」という日本的な要素を込めて作曲しつつ、そうした「日本的なるもの」に封じ込められることなく、その「外」へと飛び出していく力がこの曲にはある。極めて優れたフルート独奏曲である。
ニコレの弟子であるパユの演奏は、渋さと仄暗さを兼ね備え、「流れ」を聴く者に伝えてくる。「美」を乗り越えた「美」がそこには感じられる。


アンコール。パユは「おおきに」と関西弁でお礼を言い、「アンコールはドヴォルザークのアメリカン・カルテット、フィナーレです」と日本語で言って、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」より第4楽章のフルート四重奏版(チェロのシュテファン・コンツが編曲したもの)が演奏される。楽しい演奏であった。

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2016年5月12日 (木)

コンサートの記(239) 「ローム ミュージック フェスティバル2016」より『VIVA!カーニバル!』&『豪華コンチェルトの饗宴』

2016年4月24日 左京区岡崎のロームシアター京都サウスホール&メインホールにて

左京区岡崎のロームシアター京都で行われている「ローム ミュージック フェスティバル2016」のコンサート2つを聴く。

「ローム ミュージック フェスティバル」は今年始まったばかりであるが、メインホールとサウスホールの2つがあるロームシアター京都の他に、中庭になっているローム・スクエアも用いた音楽祭典である。
23日と24日の両日、正午過ぎから、ロームシアター京都のサウスホールとメインホールで行われるリレーコンサートと、その合間の時間にローム・スクエアで行われる大学や高校の音楽団体(今年は、龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部、京都府立洛西高校吹奏楽部、同志社グリークラブ、京都市立樫原中学校吹奏楽部、京都両洋高校吹奏楽部、立命館大学混声合唱団メディックスが参加)の演奏が二本柱となる。


2日目となる今日は、まず午後1時からサウスホールで室内楽とピアノの演奏会があり、注目のヴァイオリニストである小林美樹と売り出し中のピアニストである小林愛実(こばやし・あいみ。血縁関係はないようである)が出演するのだが、昨日舞台を観て、今日コンサートを3本は流石にきついので、この公演は遠慮して、午後3時30分からサウスホールで行われる「VIVA!カーニバル!」というタイトルの室内楽公演から聴くことにする。

曲目は、フォーレの組曲「ドリー」(ピアノ・デュオ:菊地裕介&佐藤卓史)、モーツァルトのフルート四重奏曲第1番より第1楽章(フルート:難波薫、ヴァイオリン:石橋幸子、ヴィオラ:赤坂智子、チェロ:中木健二)、モーツァルトのクラリネット五重奏曲より第1楽章(クラリネット:金子平、ヴァイオリン:石橋幸子&瀧村依里、ヴィオラ:赤坂智子、チェロ:中木健二)、サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」(ピアノ:佐藤卓史&菊地裕介、フルート:難波薫、クラリネット:金子平、パーカッション:池上英樹、ヴァイオリン:石橋幸子&瀧村依里、ヴィオラ:赤坂智子、チェロ:中木健二、コントラバス:佐野央子)。

美人フルーティストとして有名な難波薫(なんば・かおる。日本フィルハーモニー交響楽団フルート奏者)や、名門チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団に在籍する石橋幸子、読売日本交響楽団首席クラリネット奏者である金子平が参加しており、メンバーはかなり豪華である。


フォーレの愛らしいピアノ・デュオ作品。女性の譜めくり人を付けての演奏である。東京音楽大学の専任講師でもある菊地裕介と、伴奏ピアニストとしても定評のある佐藤卓史(さとう・たかし)の共演。佐藤が第2奏者とペダリングを受け持つ。二人とも洒落た感覚の持ち主だが、佐藤はリズム感に長け、菊地はタッチが冴えている。


モーツァルトのフルート四重奏曲第1番より第1楽章。変なCDでデビューした難波薫であるが、勿論今日は正統派のフルートを聴かせる。音符が天に向かって昇っていく様が見えるほど軽やかなフルートだ。


モーツァルトのクラリネット五重奏曲第1番より第1楽章。金子平のクラリネットは音色が若干重く感じられたが、技術は達者。他の演奏家の技量も高い。


サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」。アンナ・パヴロワのバレエでも知られる「白鳥」が飛び抜けて有名だが、実際は「動物の謝肉祭」は冗談音楽である。様々な動物が出てくるのだが中に「ピアニスト」が混じっていたり(ピアノのスケールを弾くのだが、わざと下手に弾くよう指示されており、下手に弾けば弾くほど良いとされる)、「カメ」がオッフェンバックの「天国と地獄」より“カンカン”を超スローテンポで弾いただけのものだったり(著作権の厳しくなった今では考えられない曲である)、「ゾウ」もベルリオーズの音楽のパロディだったりする(ゾウのコントラバス独奏を務めた佐野央子(さの・なかこ)の音が乾き気味だったのが気になった)。
「白鳥」の他で有名なナンバーとしては「水族館」が挙げられる。美しくも神秘的な作風で、テレビCMなどにも良く用いられる。ちなみに「郭公」も登場するのだが、郭公の鳴き声を担当するクラリネットの金子平は「水族館」が始まる前に舞台上手袖にはけ、袖から郭公の鳴き声を吹いて、「ピアニスト」の前にステージに戻ってきた。
「白鳥」を奏でたチェロの中木健二。有名ソリストが手掛けた演奏や録音に比べると分が悪いが、それでも十分に美しいチェロ独奏を聴かせた。


今日は最前列での鑑賞となったため、ロームシアター京都サウスホールの音響の良し悪しについては明言出来ない。ただ、素直な音のするホールであることはわかった。



午後5時30分から、ロームシアター京都メインホールで、「豪華コンチェルトの饗宴」というコンサートを聴く。阪哲朗指揮京都市交響楽団の演奏。曲目は、ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲、ベートーヴェンのヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲(トリプル・コンチェルト。ヴァイオリン独奏:神谷未穂、チェロ独奏:古川展生、ピアノ独奏:萩原麻未)、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏:神尾真由子)

日本人女性ヴァイオリニストとしては別格級の一人である神尾真由子、売り出し中の新進ピアニスト・萩原麻未が出演する注目のコンサートである。
ヴァイオリン両翼の古典配置での演奏である。今日の京都市交響楽団のコンサートマスターは泉原隆志。渡邊穣は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。オーボエ首席奏者の髙山郁子、トランペット首席のハラルド・ナエスは前後半共に出演。フルートは次席奏者の中川佳子が吹く。


京都出身の指揮者である阪哲朗。京都市立芸術大学作曲専修卒業後、ウィーン国立音楽大学で指揮を学ぶ。1995年に第44回ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝して注目を浴びるが、その後、活動の拠点をドイツに置いており、日本のオーケストラから声が掛からないということもあって、今のところ竜頭蛇尾気味の指揮者である。
以前、大阪シンフォニカー交響楽団(現:大阪交響楽団)のニューイヤーオーケストラを聴いたことがあるが、音楽の線の細さが気になった。


ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1楽章への前奏曲。
ロームシアター京都メインホールでオーケストラの音を聴くのは初めてだが、評価の難しい響きである。京都会館第1ホールとは比べものに鳴らないほど良く、ヴァイオリンは始めとする弦楽器の音は美しく聞こえるが、マスとしての響きはモヤモヤとして今一つ手応えがない。内観も含めて同じ永田音響設計が手掛けた兵庫県立芸術文化センター大ホールに似たところがあるかも知れない。コンクリートがしっかり固まりホールの音が引き締まるまで5年程度は掛かるという話もあるので、メインホールの響きもこれから良くなっていく可能性もある。また、コンチェルトでは特に響きに不満はなく、残響も2秒近くあった。
歌劇場を主な仕事場としてる阪。オペラは得意中の得意のはずであるが、重厚スタイルで行きたいのかスマートに響かせたいのか、聴いていてどっちつかずの状態になっているのは気になった。もっと京響を盛大に鳴らしても良いと思うのだが。


ベートーヴェンの、ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲。昨年、ミッシャ・マイスキー親子のトリオで聴いたばかりの曲である。

迷彩柄風の衣装で登場したヴァイオリンの神谷未穂は、桐朋学園大学を卒業後、ハノーファー国立音楽演劇大学に留学して首席で卒業。その後、パリ国立高等音楽院の最高課程を修了。現在は、仙台フィルハーモニー管弦楽団と横浜シンフォニエッタのコンサートミストレス、そして私の出身地である千葉市に本拠を置くニューフィルハーモニーオーケストラ千葉(今後、千葉交響楽団に改名する予定がある)の特任コンサートミストレスも務めている。

今や日本を代表するチェリストとなった古川展生。東京都交響楽団の首席チェロ奏者でもある。京都生まれであり、2013年には京都府文科賞も受賞している。ちょっと中年太り気味であろうか。黒の衣装で登場。

藤岡幸夫や飯森範親という、関西に拠点を置く指揮者が絶賛するピアニストの萩原麻未。「題名のない音楽会」にも何度か出演している。今日は水色のドレスで登場。広島県出身。広島音楽高校を卒業後、パリ国立高等音楽院に留学。修士課程を首席で修了し、その後はザルツブルクのモーツァルティウム音楽大学でも学んだ。


さて、名手3人によるトリプルコンチェルトであるが、やはり萩原麻未は上手い。というより、マイスキーの娘であったリリー・マイスキーがいかに下手であったかがわかった。
萩原のピアノはエッジが立っており、涼やかな音色を基調としているが音色の変化も自在。場面によっては鍵盤上に虹が架かったかのような印象を受ける。

古川のチェロは貫禄があり、難しいパッセージも難なく弾きこなす。

神谷の艶のあるヴァイオリンも聞き物だ。

阪哲朗指揮の京都市交響楽団はビブラートを徹底して抑えたピリオドアプローチでの演奏。タイトだが堂々とした響きが生まれていた。
神尾真由子をソリストに迎えた、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。

紫紺のドレスで登場した神尾は圧倒的なヴァイオリンを披露する。

神尾というとしっとりとした音色が特徴だが、今日はハスキーな音も出す。特筆は弱音の美しさで、これほど美しい弱音を出せるヴァイオリニストはなかなかいない。

情熱的な演奏であったが一本調子にはならず、足し引きと駆け引きの上手い演奏。阪の指揮する京響も神尾に負けじと個性溢れる伴奏を披露。

神尾、阪、京響3者丁々発止の熱演となり、終演後、客席は多いに沸いた。

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2016年2月25日 (木)

楽興の時(10) 「Kyo×Kyo Today Vol.6」

2016年2月17日 京都芸術センター講堂にて

午後7時から、京都芸術センター講堂で、「Kyo×Kyo Today vol.6」を聴く。京都市交響楽団(略称は京響)の楽団員による室内楽の公演。「京響・今日」が掛詞(要するに駄洒落だが)になった公演タイトルである

今回は、金管五重奏による演奏会。出演は、稲垣路子(トランペット、フリューゲルホルン)、西馬健史(にしうま・たけし。トランペット、ピッコロ・トランペット)、垣本昌芳(ホルン)、岡本哲(おかもと・てつ。トロンボーン)、武貞茂夫(たけさだ・しげお。テューバ)。
岡本哲がメンバー代表であり、MCも務める。
配置は、コンサートマスターの位置から時計回りに、西馬、垣本、武貞、岡本、稲垣となる。


曲目は、シャイトの「戦いの組曲」より“戦いのガリヤード”、パーセルの「トランペット・ヴォランタリー」、酒井格(さかい・いたる)の「コン・マリンコニーア」、サン=サーンスの「ロマンス」、フィルモアの「シャウティン・ライザ・トロンボーン」、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」より“象”、スザートの「ルネッサンス舞曲集」より“4つのブラジル”、“ロンド(わが友”、“バス・ダンス(羊飼い)”、15分の休憩を挟んで、ギリスの「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー」、「ずいずいずっころばし」(菊池雅春編曲)、レナード・バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」


まず、シャイトの「戦いの組曲」より“戦いのガリヤード”が演奏された後で、岡本がマイクを手にしてトークを行う。前半のプログラムは1曲ごとに主役が変わるという趣向。パーセルの「トランペット・ヴォランタリー」では西馬健史のピッコロ・トランペットが、酒井格の「コン・マリンコニーア」では稲垣路子のフリューゲルホルンが、サン=サーンスの「ロマンス」では垣本昌芳のホルンが、フィルモアの「シャウティン・ライザ・トロンボーン」では曲名通り岡本哲のトロンボーンが、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」より“象”では武貞のチューバが主役となる。前半最後のスザートの「ルネッサンス舞曲」よりは全員が主役のアンサンブルとなる。
主役を担う楽器とプレーヤーを岡本が紹介していく。
トランペットとピッコロ・トランペットを吹く西馬健史は現在30歳で今日のメンバーの中では一番若い。25歳で京響に入団しているが、25歳でプロオーケストラのトランペッターになるのはかなり若い方だという。
ちなみに新婚だそうだが、岡本によると奥さんはかなりの別嬪さんだそうで、「彼よりも奥さんの方が私は好きです」(岡本)だそうである。
岡本によるとトランペッターは顔を真っ赤にして吹くため、「それが良くないのか髪が抜ける。はげる人が多い」そうである。

稲垣路子は京響ブラス群の紅一点であるが、日本のプロオーケストラを見ても女性トランペッターはほとんどいないそうで、岡本によると「女性のホルニストなどはかなり増えてきていますが、トランペッターは彼女(稲垣)だけではないでしょうか。あと、テューバも海外のオーケストラでは女性が結構いますが、日本はいないと思います」ということだった。
なお、稲垣はメンバーの中で唯一、関西人ではない(名古屋生まれで愛知県立芸術大学卒)が、他のメンバーも関西人ではあるが京都出身者はゼロ。京都の音大(共学は京都市立芸術大学しかないが)や音楽高校出身者もいない(馬西は神戸出身で大阪音楽大学短期大学部卒。垣本は尼崎出身で大阪教育大学芸術専攻音楽コース卒。岡本は兵庫県川西市出身で相愛大学音楽学卒。武貞は神戸出身で大阪音楽大学卒)。

垣本昌芳は、岡本によると「演奏前のルーティンが不思議」だそうで、左足を曲げて斜めにかがむようになりながら吹くのだが、「あれでどうしていい音が出るようになるのかわからない」そうである。あた岡本によると「ホルンもはげる人が多い」そうで、「彼(垣本)も時間の問題」だそうである(垣本は「まだ」、と書いていいのかどうかはわからないが、はげてはいない)。

岡本哲は「自分で自分を紹介しようがない」と言うが、隣にいた武貞が代わりに岡本を紹介してくれる。武貞によると岡本は料理上手だそうで、奥さんが忙しい時などには代わりに料理を作ることもよくあるそうだ。岡本は「他人には『はげる』などとろくなことは言っていないのに褒めて頂いて嬉しい」と喜ぶ。
ちなみに岡本が後で語ったところによると、「料理をよくするのは単純に食費を浮かすため」で、「学生時代、彼女とデートをする前などにはお金がないので、20個ぐらい弁当を作って、1個500円で後輩などに売っていた」そうである。

武貞は、岡本によると「褒めて頂いたので、こちらも褒めないと。彼はご覧の通りガッチリとした体格をしておりますが、『気は優しくて力持ち』という言葉はその通りだなと納得させられる人」と述べた。
また武貞はいわゆる「鉄ちゃん」であり、精巧な電車模型を作るのが得意だという。
演奏であるが、プロオーケストラの主要メンバーとはいえ、常日頃から金管のみのアンサンブルを行っているわけではないので、「まあ、こんなものだろう」という予想通りの出来である。決して悪くはないが、手作り感覚の演奏で、圧倒させられるということはない。

なお、「コン・マリンコニーア」の作曲者であり酒井格が客席に来ており、主役であるフリューゲルホルンを吹いた稲垣路子がそれに気がついて岡本に告げ、岡本が酒井を紹介した。岡本は稲垣に「よく気づいたね」と言っていたが、酒井が座っていたのは、稲垣のほぼ正面であったため気づくべくして気づいたのであろう。
「コン・マリンコニーア」は、酒井が中京圏でトランペット奏者として活躍する近藤万里子の誕生日にプレゼントした曲で、近藤の得意とするフリューゲルホルンをフィーチャーした作品である。ジャズの影響が窺える作品で、タイトルは「メランコリー」をイタリア語にしたものであるが、同時に近藤万里子のあだ名である「こんまり」に掛けられてもいる。


後半の1曲目、ギリスの「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ジー」は、黒人霊歌に基づくディキシーランド・ジャズのナンバー。スウィング感は余りないが、技術は達者である。


「ずいずいずっころばし」。菊池雅春による編曲が面白い。主旋律が様々な楽器に移動してフーガのようになる部分もある。


レナード・バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」。岡本がバーンスタインの交響曲の数を「4曲」と言ったり(実際は3曲である)、バーンスタインのミュージカルについて、「他には『キャンディード』ぐらいでしょうか」(「オン・ザ・タウン(映画化された時のタイトルは「踊る大紐育」)」などもある)といった風に知識面での物足りなさがあったが(音楽家は意外に音楽について知らないのである)、チャイコフスキーやベートーヴェンの交響曲についてデフォルメされた演奏に説得感があるということを語っていた。
岡本は、「演奏が終わりましたらば、出来れば盛大な拍手をお願いいたします。そうすると更に1曲加わるというシステムになっております。もう1曲練習してきましたので、演奏させて下さい」とユーモアを交えたトークを行った。
オーケストラでも「シンフォニック・ダンス」がよく演奏されるということもあり、堂に入った演奏が展開された(なお、稲垣路子はこの曲ではトランペットとフリューゲルホルンを併用)。


アンコールは、ウーバーの「ある日の草競馬」。トランペットによる競馬のファンファーレに始まり、フォスターの「草競馬」、ヨハン・シュトラウスⅡ世の「こうもり」よりワルツ、アメリカ民謡「おうまはみんな」などの旋律を取り入れた賑やかな曲である。西馬のトランペットが馬のいななきを模すなど楽しい作品と演奏であった。

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2016年2月16日 (火)

楽興の時(9) 「Rabbit LIVE」2016年1月

2016年1月15日 京都七条新町の富士ラビットカフェにて

七条通新町南西隅にある富士ラビットビル(1926年竣工。国登録有形文化財)の2階にある富士ラビットカフェで行われるRabbit LIVEを聴きに出掛ける。

Rabbit LIVEは午後8時30分開演。上演時間約1時間のミニコンサートである。

今日のRabbit LIVEの出演者は、永野伶実(ながの・れみ。フルート)と永野歌織(ソプラノ)の永野姉妹。姉妹は昨年、京都芸術センター講堂で行われた「音楽百鬼夜行絵巻」に出演していたが、その時は曲目が全て現代音楽であったため、古典も聴いてみたくなったのだ。
伴奏の小型チェンバロを奏でるのは澤朱里(さわ・あかり)。彼女がRabbit LIVEの主催者であるようだ。

曲目は、まずヘンデルの「9つのドイツ歌曲」からを3人で演奏した後、永野歌織の独唱と澤朱里のチェンバロで、モーツァルトの歌劇「魔笛」より夜の女王のアリア“復讐の心は炎と燃え”が歌われる。永野歌織によると「チェンバロの伴奏ではまず歌われることがないので敢えて」夜の女王のアリアを選んだそうだ。永野歌織はソプラノにしては声が低めだが(そもそも日本人女性は体格などの問題もあり、純粋なソプラノの歌手は少ない)コロラトゥーラと呼ばれる高音の技術などは優れたものがある。

続いて、永野伶実のフルート(今日は全曲、フルート・トラヴェルソというバロック時代のフルートを用いている)独奏によるテレマンの「ファンタジー」、そして永野伶実と澤朱里の演奏で、同じくテレマンのソロ・ソナタより「フルートと通奏低音」が演奏される。

5分間の休憩を挟んで、まず澤朱里が短めの自作を弾いた後で、フィッシャーという作曲家の「シャコンヌ」と自由な変奏、J・S・バッハの「平均律クラヴィーア曲集」よりプレリュードBWV846、同じくバッハの「ゴルトベルク変奏曲」より“アリア”を演奏する。

今度は3人で、J・S・バッハの「マタイ受難曲」より“流れよ、いとしき御心の血よ”を歌い、演奏する。
最後は再び、ヘンデルの「9つのドイツ歌曲集」より第4曲が歌われた。

アンコールが1曲、ヘンデルの歌劇「リナルド」より“私を泣かせてください”。フルートとチェンバロの伴奏で出来るよう特別に編曲された版での演奏である。

バリバリの技巧が繰り広げられたわけではないが、アットホームで良いコンサートであった。

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2014年9月 2日 (火)

コンサートの記(152) スイス・ロマンド弦楽四重奏団来日演奏会・京都2014

2014年7月19日 京都・上桂の青山音楽記念館バロックザールにて

午後5時から、上桂にある青山音楽記念館バロックザールで、スイス・ロマンド弦楽四重奏団の来日演奏会を聴く。

スイス・ロマンド弦楽四重奏団はその名からも分かる通り、ジュネーヴを本拠とするスイス・ロマンド管弦楽団のメンバーからなるストリング・カルテットである。メンバーは、第1ヴァイオリン=粟野祐美子、第2ヴァイオリン=イネス・ラーデヴィッグ・オット、ヴィオラ=ヴェレーナ・シュヴァイツァー、チェロ=ヒルマー・シュヴァイツァー。チェロのヒルマー・シュヴァイツァーだけが男性で、他の三人は女性である。ヴェレーナ・シュヴァイツァーとヒルマー・シュヴァイツァーの関係であるが、同じデトモルト音楽大学を卒業し、共にクラウディオ・アバド指揮のグスタフ・マーラー・ユーゲントオーケストラを経て、二人ともデトモルト室内管弦楽団に所属。現在はスイス・ロマンド管弦楽団の同僚である。夫婦か兄妹だと思うが、実際は不明。女性奏者の常として、ヴェレーナ・シュヴァイツァーの生年は不明であるため、どちらが年上なのかもわからない。

粟野祐美子が京都生まれで、京都市立音楽高等学校(現・京都市立堀川音楽高等学校)卒であるため(大学は東京芸術大学に進んでいる)京都でも公演が行われるのだと思われる。スイス・ロマンドSQは、今後、米沢と東京で公演を行う。

全員、スイス・ロマンド管弦楽団のメンバーではあるが、スイス人なのはイネス・ラーデヴィッグ・オットだけである。しかし、オットという苗字から分かるとおり、ドイツ語圏のバーゼル出身でスイス・ロマンド(スイス・フランス語圏のこと)ではない。シュヴァイツァーという苗字の二人はドイツ人だ。

曲目は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第1番、リヒャルト・シュトラウスの弦楽四重奏曲イ長調、ブロッホの「山にて」(“たそがれ”&“田舎の踊り”)、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」。

実は、スイス・ロマンドSQに関する事前の知識は、「多分、スイス・ロマンド管弦楽団のメンバーによるSQだろう」というかなり大雑把なものしかなく、男女構成すら把握していなかった。ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」が聴けるというのでチケットを購入したのである。

青山音楽記念館バロックザールに来るのは初めて。室内楽&器楽専用の音楽ホールであり、以前もチケットを取ったことがあったのだが、持病が良くない状態だったため、見送っている。

無料パンフレットには、スイス・ロマンド管弦楽団の現在の音楽監督であるネーメ・ヤルヴィと首席客演指揮者を務めている山田和樹によるスイス・ロマンド弦楽四重奏団への賛辞が記されている。

スイス・ロマンド弦楽四重奏団のメンバーは、カラフルな衣装で登場。粟野祐美子がオレンジ、イネス・ラーデヴィッグ・オットが紫、ヴェレーナ・シュヴァイツァーがターコイズブルーのドレス。ヒルマー・シュヴァイツァーは上下共に黒である。

メンデルスゾーンは、「真夏の夜の夢」などの明るい曲も魅力的だが、ヴァイオリン協奏曲や序曲「フィンガルの洞窟」、交響曲第3番「スコットランド」のような短調の曲の方が名曲が多い。
この弦楽四重奏曲第1番も仄暗い曲調が特徴である(一応、全体を通しては長調の曲ではある)。
定石を絶妙に外していく旋律がメンデルスゾーンの才気を感じさせる。

スイス・ロマンドSQのメンバーは全員、音に張りと艶があり、優れたストリング・カルテットだ。

今年が生誕150年となるリヒャルト・シュトラウスの弦楽四重奏曲。現代音楽が次々に発表される時代も生きているが、作風を変えることはなく、「私がこの時代にいるのはたまたま長生きしただけだ」とシュトラウス本人も語っている。作風もドイツ後期ロマン派最後の巨匠という言葉そのままのものである。ただ小洒落ているのがR・シュトラウスらしい。
第1楽章は快活な感じでスタート。その後の旋律も美しい。
第3楽章には、現在はドイツ連邦共和国の国歌「ドイツの歌」の旋律となっているハイドンの弦楽四重奏曲第77番「皇帝」第2楽章の旋律を想起される箇所がある。
弦楽四重奏は、「ヴィオラが要」と言われることがあるが、この曲では特にヴィオラが活躍する。

ブロッホは、ユダヤ教の音楽を数多く作曲していることで知られるが、ジュネーヴ生まれであり、ジュネーヴを本拠地とするスイス・ロマンド管弦楽団ゆかりの作曲家である。
「山にて」は、“たそがれ”と“田舎の踊り”からなるが、“たそがれ”は今日演奏された曲の中で最も現代音楽寄りである。不協和音の移り変わりが黄昏の光景を描き出していく。
“田舎の踊り”は、その名の通り、一転して賑やかな音楽となる。

ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」。今日演奏される曲の中で飛び抜けて有名な作品である。個性が強く、弦楽四重奏曲というジャンルの中でも一二を争うほどの人気曲である。
ヴィオラが歌い出し、第1ヴァイオリンへと引き継がれていく主題を二人とも伸びやかに奏で、第2ヴァイオリンも必要な渋さを発揮し、チェロのリズム感も秀でている。

スイス・ロマンド弦楽四重奏団は、世界的に見ても有名なストリング・カルテットではないが、実力は高い。

第1ヴァイオリンの粟野祐美子は笑顔を浮かべるなど終始楽しそう。第2ヴァイオリンのイネス・ラーデヴィッグ・オットは眉間に皺を寄せての演奏で、各奏者で演奏スタイルは異なる。

室内楽というと、「聴くよりも弾いて楽しむもの」というところがあり、仮に私が作曲家だとしても交響曲、交響詩、協奏曲、独奏曲などは聴衆のために書くが、室内楽だけは演奏家が弾いて楽しめるようなものを生むと思う。ただ今日のスイス・ロマンドSQの演奏会は、音も素晴らしかったし、音の受け渡しを視覚で確認出来るのも面白かった。

アンコールは、ドヴォルザークの「ユーモレスク」(弦楽四重奏版)。第1ヴァイオリンの粟野祐美子が伸びやかなヴァイオリンを奏でる。

アンコールをもう1曲。粟野が、「東日本大震災の時に、スイスのラジオで流れていた曲です。題名は敢えて言いません」と語った後で、童謡(文部省唱歌)「故郷」の弦楽四重奏版が演奏された。

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