カテゴリー「ロームシアター京都」の58件の記事

2019年6月 8日 (土)

コンサートの記(559) 「東儀秀樹 雅楽&コンサート ゲストにチェリスト溝口肇を迎えて」@ロームシアター京都

2019年5月9日 ロームシアター京都メインホールにて

午後6時30分からロームシアター京都メインホールで、「東儀秀樹 雅楽&コンサート ゲストにチェリスト溝口肇を迎えて」を聴く。

雅楽師の東儀秀樹による、前半は雅楽の公演、後半はスペシャル・コンサートというプログラムである。

曲目は、第1部の「東儀秀樹による雅楽公演」が、神楽「朝倉音取(あさくらのねとり)」、管弦「越天楽」、管弦「陪臚(ばいろ)」、舞楽「納曾利(なそり)」。第2部の「東儀秀樹と溝口肇によるスペシャル・コンサート」が、「Fly Me To The Moon」、「浜辺の歌」、東儀秀樹のオリジナルである「君の夢を守りたい」、「枯葉」、溝口肇のソロによる「鳥の歌」、溝口肇のオリジナルである「ミスターロンリー」(TOKYOFMテーマ)、溝口肇の「世界の車窓から」、ピアソラの「リベルタンゴ」

客席はお年寄りが多い。

 

まず、東儀秀樹の篳篥ソロによる「朝倉音取」。東儀秀樹は狩衣姿で演奏しながら客席上手のドアから登場し、中央通路を通って舞台に上がる。「朝倉音取」は、本来は人間ではなく、神々にだけ聴かせる曲だそうである。

2曲目のお馴染み「越天楽」。この曲では東儀秀樹は篳篥ではなく鞨鼓(かっこ)を演奏する。太鼓:多田泰大、鉦鼓:矢田浩子、笙:中村華子、篳篥:須崎時彦、龍笛:〆野護元、琵琶:安達圭花、箏:中村香奈子。
雅楽の中でも最も有名な曲であり、正月には神社でこの音楽が掛かっていることも多い。雅楽は西洋音楽とは違い、音を合わせてはいけないため(同時に打つのは相手に失礼になると考えるため)あうんの呼吸による絶妙のずれと揺らぎを楽しむことになる。ということで、雅楽は西洋音楽より即興性が強くなると思われる。「越天楽」は同じメロディーが繰り返されるミニマルのような音楽であるが、同じ演奏は二度と出来ないのだと思われる。

「越天楽」演奏終了後に、東儀秀樹がマイクを手に解説を行う。「皆様、雅楽というと堅苦しいものを思い浮かべるかも知れませんが、ご覧になった通り、とっても堅苦しいものです」と言って笑いを取る。
「雅楽については余り詳しい方はいらっしゃらなくて、大抵の人は、『神社のあれでしょ?』となる。『あれ』って言い方はないと思いますが」「雅楽は1400年前に仏教の音楽として日本に入ってきたわけで、当時は『お寺のあれ』だったわけです」と言ってまた笑いを誘っていた。
管弦「陪臚」は聖徳太子が好んだ曲という伝承がある。6拍子で描かれており、唐招提寺の4月8日に仏誕会には必ず演奏されるそうで、754年の大仏開眼の時に演奏されたという言い伝えがある。ちなみに736年にインドの僧が日本に伝えた曲とされており、聖徳太子のいた時代とは合わず、聖徳太子云々はあくまで伝説のようだ。

舞楽「納曾利」では、横山玲子と正木友美による舞がある。双龍の舞であり、舞人は龍の面をつけている。演奏は、篳篥:須崎時彦&矢田浩子、高麗笛:〆野護元&中村香奈子、鞨鼓:多田泰大、太鼓:中村華子、鉦鼓:安達圭花。
今日は1階席の20列目で、それほど前の方ではないが、迫力は伝わってくる。

 

第2部「東儀秀樹と溝口肇によるスペシャル・コンサート」。バックバンドは、ピアノ:松本圭司、ベース:田中晋吾、ドラム:天倉正敬。
東儀は黒のジャケットで登場。「Fly Me To The Moon」演奏後、「第1部に出てきた東儀秀樹によく似ていると言われるんですが、同一人物です」「『(篳篥で)そんなこと可能なんですか?』『怒れませんか?』と言われたりしますが、才能があるもんで出来ちゃうんです」とお馴染みのナルシシストキャラを発揮するも「お客さんの反応が悪い」「笑ってくれないととんでもないことを言っていることになる」と語っていた。

東儀は、「日本の抒情曲が好き」だそうで、特に日本語の美しさが伝わってくる歌詞が好きなのだが(東儀「この感覚は皆さんにもおわかりいただけると思います。見たところお若い方がいないので」)、最近の小学校の音楽の教科書には抒情曲が載らなくなってきており、その理由が「歌詞が難しくて子どものはわかりにくい」という理由を知って、「穏やかな口調で話しておりますが、憤っております」と話した。日本の抒情曲の中で特に好きだという「浜辺の歌」を演奏される。

「枯葉」では東儀は途中で松本に替わってピアノソロを受け持ったりする。

その後、ゲストの溝口肇が登場する。東儀秀樹はここでいったん退場。
溝口が愛用しているチェロには「アンジェラ」という名前がついているそうで、溝口は「メンバー紹介」と称してまず、「アンジェラです」と言う。
楽器についている愛称は、貴族が所有していた時代につけられたものが多く、例えば高嶋ちさ子のヴァイオリンについている「ルーシー」という名称は貴族によってかってつけられたものだそうだが、溝口のチェロには名前がついていなかった。そこで、友人が名前をつけてくれたそうだ。
演奏曲であるカタロニア民謡「鳥の歌」。溝口は子供の頃にパブロ・カザルスが国連でこの曲を演奏するのを聴いて感動したと語る。「ピース、ピース」と鳴く鳥の声の録音を流した中でのチェロ独奏である。

「ミスターロンリー」。この曲は約15年に渡って「ジェットストリーム」のオープニングテーマだったのだが、今では別の人に取られてしまったそうで、溝口はエンディングテーマのみを担当しているそうである。

「世界の車窓から」。ここで東儀秀樹が再び登場する。
溝口は昨年の誕生日には東儀から篳篥をプレゼントされたそうだが、「才能がないので」ものに出来なかった。悔しいというので、ヤフオク!で笙を購入して、今はそちらを練習しているようである。というわけで冒頭は溝口が笙を吹く。東儀も負けじと笙を吹いて二つの笙がハーモニーを造る。その後、溝口のチェロで「世界の車窓から」がスタート。CMで流れているものは15秒だけだそうだが、今日はそれより4分ほど長い全曲版演奏である。東儀も途中から篳篥に持ち替えての演奏を行う。

プログラムの最後は「リベルタンゴ」。篳篥と笙を吹いた東儀秀樹は、篳篥によるラストの音を思いっ切り伸ばすという外連で喝采を受ける。

 

アンコールとして演奏されたのはピアノの松本圭司の編曲によるというビートルズナンバーの「Yesterday」。雅やかさと無常観の入り交じった演奏となる。

雅楽の楽器の音色は陰影が豊かというべきか濃淡が鮮やかというべきか、明と暗が瞬時にして入れ替わったり同居していたりするのが特徴である。笙などは特にそうだが、篳篥も西洋楽器に比べると光と闇が共に豊穣な音色を宿していることがわかった。

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2019年6月 4日 (火)

観劇感想精選(302) 日本ポーランド国交樹立100周年記念公演 ヤネック・ツルコフスキ 「マルガレーテ」

2019年5月20日 ロームシアター京都ノースホールにて観劇

午後7時からロームシアター京都ノースホールで、ヤネック・ツルコフスキの「マルガレーテ」を観る。日本ポーランド国交樹立100周年記念公演。

ヤネック・ツルコフスキは、ポーランド西部のシュチェンにある劇場Kana Theatre Centreの企画にも携わる演出家。ニューヨークの演劇フェスティバル「アンダー・ザ・レイダー・フェスティバル」に招聘されるなど、欧米を中心に活動している。日本で公演を行うのはこれが初めて。

「マルガレーテ」は今から10年前に初演された作品。小さなスクリーンに映像が投影され、観客も1回25名までという少人数での上演が行われる。ツルコフスキが英語で喋り、大庭裕介(カンパニーデラシネラ)が日本語吹き替えを行う。プライベートな雰囲気を生み出す上演時間約1時間の作品である。

ツルコフスキが、蚤の市で8ミリフィルムと映写機を手に入れる。価格は日本円で2500円という安さであった。そのフィルムに映っている一人の老女。フィルムを収める箱に記された文字から、彼女の名前が「マルガレーテ」であることがわかる。ドイツのヴォルガストという街の住所も記されている。マルガレーテの苗字はルーベといい、ドイツ人らしくないがはっきりしたことはわからない。

特にどうということもない映像が流れる。彼女は歩き、旧東ドイツ国内や旧ユーゴスラビア、当時はソ連の首都だったモスクワや映画「戦艦ポチョムキン」で有名なオデッサの大階段などに友人と旅行に出掛ける。撮影者の正体は不明。ツルコフスキはヴォルガストが原発に近い街であることから、撮影者は西側のスパイで、ヴォルガストの街を撮っているふりをして実は原発の情報も密かに撮影し、確実なものは西側に送ったと……、というのはあくまでツルコフスキの妄想である。そもそも世界を揺るがすような出来事が偶然手にしたフィルムに映っているなどということは、まずあり得ない。
ツルコフスキは、フィルムから何かを手に入れようと、気になった部分を探ってみるのだが、実は重要な部分はツルコフスキが気になった部分とは別のところに映っていたことが後にわかる。
今はインターネットの時代ということで、ヴォルガストの住所をグーグルマップで検索するなどしているうちに、マルガレーテの現在の居場所が判明する……。

マルガレーテは、ヴォルガストの薬局に勤めていた女性で、双子の姉がおり、長生きでツルコフスキと出会った時には99歳。2度目に出会った時に100歳の誕生日を迎えている。
彼女はラトヴィア出身だった。

フィルムは思い出のために撮ったもので、旅行から帰った時には、親族でささやかな上映会も開いたそうだ。
映っているもの自体は平凡なものなのだが、マルガレーテと彼女が映った映像を見たものにとっては、それは特別なものとなっていく。一人の老女のささやかな歴史に向かい合うことは、実はスパイ映画などよりもドラマティックなのだ。
実は、マルガレーテのフィルムに映っていた当時7歳ぐらいの少年から1か月程前にコンタクトがあり、ツルコフスキは会ったそうだ。彼もインターネットでマルガレーテのことを検索して映画になっていることがわかり、連絡をくれたそうである。本来は埋もれるはずだったフィルムからこうした広がりが生まれているというのも素敵なことだと思う。

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2019年5月24日 (金)

コンサートの記(557) 押尾コータロー 「Encounter」京都公演

2019年4月27日 ロームシアター京都サウスホールにて

午後6時からロームシアター京都サウスホールで押尾コータローのコンサート「Encounter」を聴く。押尾の同名のニューアルバムに収めた楽曲を中心としたコンサートだが、これまでアルバムの収録曲全曲を演奏するという試みはありそうでなく、今回が初の全曲一挙演奏となるそうである。

押尾のライブは、ユーモラスなトークも売りであり、それを楽しみにしている人も多いと思われるが、今日も憧れだったギタリストの石田長生(いしだ・おさむ)との思い出を語り、「みんな石やん、石やんと呼んでるんですけど、恐れ多いので『石田さん』と呼んだら『誰や? それ?』、『おさむさん』と呼んだら『誰がぼんちやねん?!』」というやりとりを再現して笑いを誘う。押尾は売れない頃は梅田の旧バナナホールでウエイターをやったりしていたそうだが、石田だけは無名時代の押尾の挨拶に応えてくれたそうで、押尾は「この人、すげえな」と思ったそうである。
そんな石田が押尾の苗字にちなんだ作った「Pushing Tail」という曲をプラスティック製のギターで演奏。1950年代のビンテージものだそうで、表がプラスティック、裏も木に見えるがプラスティック、ネックもプラスティック、「弦もプラスティックで出来ています」と言うが、「これは嘘です。『なんでやねん!』と突っ込むところ」
今回はその他のギターも紹介され、12弦ギター、18弦ギターでの演奏がある。
近年、12弦ギターは余り弾かれない傾向にあり、楽器店に行っても「あ、12弦ギター用の弦は置いてないんですよ」と言われることが多いらしい。ただ押尾は自称「12弦ギター推進委員長」で、12弦ギターの良さを再確認して貰うための作曲や演奏を行っているようである。
18弦ギターであるが、一見すると普通のギターと一緒。実は表ではなく、内部に12本の弦が張られていて、共鳴する仕掛けになっているようだ。「シタールと一緒」ということで、インド風の音楽が奏でられたりする。

「Encountor」以外の曲もリクエストに応えて「ウルトラマン」などを演奏し、一人「メンバー紹介」ではアリスの「チャンピオン」の弾き語りを行う。演奏終了後、押尾は堀内孝雄の真似で「ありがとう!」とやっていた。

「Encountor」は押尾の2年3ヶ月ぶりのアルバムなのだが、その間、コラボレーションユニットを組んでレコーディングとツアーを行っており、なかなか自作を作る時間がない。そんな時にエンジニアに誘われて沖縄旅行に行った時の話をする。新曲を作って録音する予定だったのだが、サーターアンダギーやソーキそばなどの沖縄グルメを堪能し、夜は泡盛やオリオンビールで乾杯して「仕事は明日でいいよね」という生活が毎日続いたため、なかなか曲が出来ない。あと数日で沖縄を離れるという日の夕方、海に落ちる夕日を見て浮かんだという「夕凪」が演奏された。

 

アンコールでは「久音 ジョン・アリラン変奏曲」「ナユタ」「Message」が作曲時の思い出を語った後で演奏される。「ナユタ」は憧れのギタリストであるウィリアム・アッカーマンから唯一、手放しで賞賛された曲だそうだ。

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2019年4月29日 (月)

コンサートの記(551) ローム ミュージック フェスティバル 2019 「オーケストラコンサートⅡ 二大コンチェルトの饗宴~日下紗矢子・反田恭平 with 京都市交響楽団」&「リレーコンサートC 河村尚子ピアノ・リサイタル~偉大なるベートーヴェン~」

2019年4月21日 左京区岡崎のロームシアター京都メインホールおよびサウスホールにて

午後2時30分から、ロームシアター京都メインホールで、ロームミュージックフェスティバル2019 オーケストラコンサートⅡ「二大コンチェルトの饗宴~日下紗矢子・反田恭平 with 京都市交響楽団」を聴く。ロームミュージックフェスティバル2019の2日目にして楽日のオーケストラ公演。指揮は、2016年に行われたロームミュージックフェスティバルのタクトも執っている阪哲朗。ナビゲーターをフリーアナウンサーの朝岡聡が務める。反田恭平人気もあって、チケットは完売である。

曲目は、まずオッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲が演奏され、次いでメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とチャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番(原典阪)という二つのコンチェルトが登場する。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は「メンコン」の愛称で知られ、三大ヴァイオリン協奏曲の一つにも数えられる有名作だが、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番は取り上げられる機会が極めて希少な作品である。第1番から第3番までを収めた「チャイコフスキー ピアノ協奏曲全集」はいくつかあって、私はヴィクトリア・ポストニコワが夫君であるゲンナジー・ロジェストヴェンスキーの指揮で録音したものを千葉にいた頃に聴いているが、それでも聴いたのは2回程度、京都に来てからは聴いておらず、曲も忘れている。ということで事実上、初めて接することになる。YouTubeにはいくつか演奏がアップされていると思われるが、敢えて聴かずに出掛ける。


指揮者の阪哲朗は京都市出身。京都市立芸術大学音楽学部で作曲を専攻し、卒業後にウィーン国立音楽大学で指揮をレオポルド・ハーガーらに師事。1995年に第44回ブザンソン指揮者コンクールで優勝して一躍脚光を浴びている。欧州では一貫してオペラ畑を歩き、アイゼナハ歌劇場音楽総監督、レーゲンスブルク歌劇場音楽総監督などを務めている。コンサート指揮者としては客演が主で、これまで特にこれといったポストには就いていなかったが、この4月に山形交響楽団の常任指揮者となっている。


今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーに尾﨑平。ヴァイオリン両翼の古典配置での演奏である。どうも第2ヴァイオリンは今日は全員女性のようで、ありそうでなかなかない光景となった。小谷口直子は降り番だったが、それ以外は首席奏者が前半後半ともに顔を揃える。


オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲。阪哲朗はかなり細かな指示を京響に送る。指揮の動きがかなり細やかだ。
阪哲朗は若い頃はスケールが小さいという難点があったが、最近は音楽が徐々にではあるが拡がりを増しているように思われる。ただ、これまで何人もの指揮者を目にしてきたが、指揮棒を動かしすぎる指揮者は得てしてスケールが小さいように感じられる。楽団の自発性を引き出しにくいということが影響しているのだろうか。


メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。ソリストの日下紗矢子は、現在、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の第1コンサートマスターと読売日本交響楽団の特別客演コンサートマスターを務めている。

朝岡聡による楽曲の紹介があり、第1楽章の美しさ、第2楽章の希望、第3楽章の「天使が跳ねるような」快活さが語られる。

一週間前のスイス・ロマンド管弦楽団の来日演奏会で辻彩奈のソロによるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いたばかりだが、日下のヴァイオリンは辻に比べて旋律を線として捉えることに成功しているように思われる。音色には艶があり、スケールが大きくて音の通りも良いが、ロームシアター京都メインホールは同じ永田音響設計が手がけた兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール同様、オーケストラよりもヴァイオリンの方が聞き取りやすいようである。
日下も京響も音色や曲調の変化の描き方に長けており、京都らしい雅やかな演奏となった。


チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番。まず朝岡聡が楽曲とソリストである反田恭平の紹介を行う。「今更申し上げるまでもないと思いますけれど」と前置きしての「今最も上り調子であるピアニスト」反田の紹介。高校在学中に第81回日本音楽コンクールで1位となり、チャイコフスキー記念モスクワ音楽院に首席で入学。現在はショパン音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)で学んでいる。反田がTwitterやInstagramをやっているということで、このコンサートのために反田が書いた文章も朝岡は読み上げた。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番であるが、カデンツァがもの凄く、p(ピアノ)の指示が12個並ぶ。「pが弱く、ppがピアニシモ、pppがピアニシモシモ、12個だとなんと読むんでしょうか」。更にf(フォルテ)も9個並ぶことが紹介される。「このカデンツァを聴くだけでも来た甲斐がある」そうで、全曲を聴き終えたときには、「感動を通り越して衝撃。もしかしたら子孫末代に至るまでの語り草となる」というところで笑い声が起こったので、「いや、大袈裟じゃありません」と続けた。

その反田のピアノであるがとにかく巧い。巧すぎるといってもいいほどで、メカニカルな部分に関しては少なくとも実演に接したことのある日本人ピアニストの中では最高である。韓国人ピアニストのキム・ソヌクを京都市交響楽団の定期演奏会で初めて聴いた時も余りの巧さに驚いたのだが、それに匹敵するほどの超絶技巧の持ち主と見ていい。音にクッキリとした輪郭があり、いかなる時も音に淀みや歪みはなく、あるべき時にあるべき場所に音がはまっていく。シャープな感受性の持ち主であることも察せられ、まさに21世紀スタイルの日本人ピアニストの登場と書いても過言ではないほどだ。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番であるが、第1番とは違い、ニコライ・ルビンシテインから高く評価されている。初演もニコライがピアノを弾く予定だったのだが、それに至る前にニコライは逝去。初演はニコライの死の翌年にセルゲイ・タネーエフのピアノ、ニコライの兄であるアントン・ルビンシテインの指揮によってモスクワで行われ、大成功を収めた。ただ、その後、評価は落ちてしまったようである。
曲調や表情がコロコロと変わるため、作曲者の意図が今ひとつはっきりしないというのも理由の一つだと思われる。第2楽章でヴァイオリンとチェロのソロがピアノをそっちのけにして掛け合いを続けるというのもピアノ協奏曲としては奇妙である(第1楽章のカデンツァなどに超絶技巧が必要とされるため、ピアニストに休む時間を与えたと考えることも出来るように思う)。今日は泉原隆志とチェロの中西雅音(まさお)が情熱的なソロを奏でた。
反田の壮演に会場は沸きに沸き、スタンディングオベーションを行う人が多数。ポピュラー音楽のコンサート並みに盛り上がる。

最後に反田はピアノの蓋を閉じて、京響のメンバーの顔が見えるようにして拍手を送るというパフォーマンスを見せた。


次いで、午後5時30分から、サウスホールでリレーコンサートC「河村尚子ピアノ・リサイタル~偉大なるベートーヴェン~」を聴く。

曲目は、ピアノ・ソナタ第26番「告別」、ピアノ・ソナタ第27番、ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」

現在、連続してベートーヴェンのピアノ・ソナタの演奏に取り組んでいる河村尚子。CDのリリースも始まっている。

今日は最前列。選んだのではなく、コンピューターが勝手に割り振った席である。クラシックのコンサートでは最前列は演奏者に近いがその割に音が飛んでこないので敬遠されることが多く、余り期待していなかったのだが、かなり音が良い。上からピアノの音が降ってくるような音響である。サウスホールはステージが高めなので、ピアノの蓋に当たった音が直接最前列に降りてきたのだと思われる。

河村尚子の描くベートーヴェンであるが、やはり凄い。壮絶である。反田恭平が天に羽ばたくようなピアノを弾くなら、河村尚子は地上を駆け抜ける駅馬車のような重厚なピアノで勝負する。表現の幅が広く、優れたピアニストが再創造者であることを確認させられるような優れたベートーヴェンであった。

今日はアンコールがある。河村が昨日一昨日とNHK交響楽団との共演で矢代秋雄のピアノ協奏曲を弾いたということで、矢代秋雄が書いた4手のためのピアノ曲「夢の舟」を岡田博美が2手のために編曲したものを弾く。友人であった三善晃の作品にも通じる穏やかな抒情美を讃えた作品であった。
 

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2019年4月28日 (日)

コンサートの記(550) ローム ミュージック フェスティバル 2019 「リレーコンサートB ローム ミュージック フレンズ 木管&弦楽スペシャル・アンサンブル」

2019年4月20日 ロームシアター京都サウスホールにて

午後6時30分からロームシアター京都サウスホールで行われるロームミュージックフェスティバル2019の室内楽公演「リレーコンサートB ローム ミュージック フレンズ 木管&弦楽スペシャル・アンサンブル」を聴く。前半が木管アンサンブルの演奏で、ロッシーニの歌劇「セビリャの理髪師」より「序曲」「第1幕アリア『陰口はそよ風のように』」「第1幕カヴァティーナ『私は町のなんでも屋』」(山本真編曲)とビゼーの「カルメン」組曲より「前奏曲」「セギディーリャ」「アルカラの竜騎兵」「闘牛士」「ハバネラ」「闘牛士の歌」「ジプシーの踊り」(山本真編曲)。後半が弦楽八重奏によるメンデルスゾーンのずばり八重奏曲変ホ長調。


前半の木管アンサンブルの演奏。出演は、濱崎由紀(クラリネット。東京藝術大学、上野音楽大学非常勤講師。藝大フィルハーモニア管弦楽団と横浜シンフォニエッタのクラリネット奏者)、吉岡奏絵(クラリネット。日本センチュリー交響楽団クラリネット奏者)、荒絵理子(オーボエ。東京交響楽団首席オーボエ奏者)、本多啓祐(オーボエ。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団首席オーボエ奏者)、黒木綾子(ファゴット。ザルツブルク・モーツァルティウム管弦楽団ファゴット奏者)、岩佐政美(ファゴット。読売日本交響楽団ファゴット奏者)、高橋臣宜(たかはし・たかのり。ホルン。東京フィルハーモニー交響楽団首席ホルン奏者)、熊井優(ホルン・神奈川フィルハーモニー管弦楽団ホーン奏者)、そしてコントラバスの高橋洋太(東京都交響楽団コントラバス奏者)が加わる。

普段は別の楽団に所属している面々が、ロームからの奨学金を得ていたという繋がりで一堂に会して行う室内楽演奏会。各々が楽しそうに演奏しているのを見るのも喜びの一つである。


後半、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲変ホ長調。出演は、島田真千子(ヴァイオリン。セントラル愛知交響楽団ソロコンサートマスター)、中島麻(ヴァイオリン。イルミナートフィルハーモニーオーケストラコンサートマスター)、青木調(あおき・しらべ。ヴァイオリン。NHK交響楽団ヴァイオリン奏者)、吉田南(ヴァイオリン。まだ学生だが、藤岡幸夫が司会を務める「エンター・ザ・ミュージック」に単独ゲスト出演して藤岡に絶賛されている)、金丸葉子(ヴィオラ。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団ヴィオラ奏者)、須田祥子(ヴィオラ。東京フィルハーモニー交響楽団首席ヴィオラ奏者)、横坂源(チェロ。ソリストとして活躍)、渡邊方子(わたなべ・まさこ。NHK交響楽団チェロ奏者)。

メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲は、私が最も好きな室内楽曲の一つだが、弦楽奏者8人が必要ということで(編成も弦楽四重奏団2つ分である)実演に接する機会は余り多くない。
チェロ奏者2人以外は立ったままでの演奏である。
メンデルスゾーン16歳時の作品であるが、ほとばしるような旋律、陰影の濃さなど「モーツァルトを凌ぐ神童」といわれたメンデルスゾーンの才能が脈打っているのが感じられる。
実演ということで音の受け渡しを目で確認出来るのも面白い。

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2019年4月22日 (月)

観劇感想精選(297) パルコ・プロデュース2019「母と惑星について、および自転する女たちの記録」(再演)

2019年4月13日 左京区岡崎のロームシアター京都サウルホールにて観劇

午後6時からロームシアター京都サウスホールで、パルコ・プロデュース2019「母と惑星について、および自転する女たちの記録」を観る。作:蓬莱竜太、演出:栗山民也。出演:芳根京子、鈴木杏、田畑智子、キムラ緑子。
2017年に初演された作品であり、第20回鶴屋南北戯曲賞を受賞している。

長崎とトルコ・イスタンブールの場面を行き来しながら描かれる女優四人の芝居。いくつかの事例から、この作品が蓬莱竜太流「三人姉妹」の翻案であることが察せられる。

 

辻美咲(田畑智子)、優(鈴木杏)、シオ(芳根京子)は峰子(キムラ緑子)の娘である。父親は物心ついた頃にはすでに蒸発しており、不明だ。
長崎市内の自身が経営するバーで、庄野真代の「飛んでイスタンブール」をよく歌っていた峰子が死んだ。三人の娘は、母親の遺骨を散骨するためにイスタンブールに来ている。軍楽が響く街(実際にイスタンブールに行ったことはないが、おそらく今のイスタンブールでは実際に軍楽を聴くことはないと思われる)。
美咲はバザールで4000トルコ・リラの絨毯を買ったのだが、桁を一つ誤魔化されており、実際はクレジットカードで4万トルコ・リラ(約200万円)を支払っていた。雑誌にエッセイや旅行記などを書いているフリーライターの美咲は貯金が少なく、これでほぼ一文無しとなってしまう。
優はバンドマンで派遣社員をしている男と結婚したのだが、以前からの願いで専業主婦をしている。お相手は月一でバンドライブを行っているのだが、売れていないので儲かるどころかやるたびに借金が膨らんでいる。
美咲が東京の大学に進学し、優も東京を出て行った後も長崎に残って峰子の世話をしていたシオは、町の売店で働いているのだが、当然ながらお金になる仕事ではない。
三人の母親の峰子は、社会的には破綻した女性であり、三人の娘を生んだのも、自分が好きなところに飛んで行ってしまわないよう「重石」とするためだった。
峰子の遺骨を撒く場所を探して、三姉妹はイスタンブールを彷徨うのだが、そのうち、誰からともなく母親の幽霊を見たと言い出して……。

三女のシオを演じる芳根京子がストーリーテラーを兼ね、長女の美咲役の田畑智子や次女の優役の鈴木杏も峰子との思い出などを語ったり、録音された声がエッセイの題材や独り言として流れたりする。更に優は旦那にLINEを打って現状報告、ということで語りが多すぎるきらいはある。
内容もどちらかといえば映像作品にした方が映える種類のもので、最も見せ場の多い芳根京子の演技も表情をクルクル変えるなど映像向きである。そのため、「これが演劇である必要があるのか」という疑問も浮かばないではなかったが、ストーリー展開は好感の持てるものであり、四人の女優の熱演もあって満足のいくものに仕上がっていた。

次女が突然、「働く」と言い出したり、ラスト付近で行進曲が奏でられたりするのが、チェーホフの「三人姉妹」へのオマージュだと思われる。ロシアの田舎町からではなく母親から旅立って行く「三人姉妹」の物語だ。

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2019年2月14日 (木)

観劇感想精選(290) シリーズ 舞台劇術としての伝統芸能vol.2 能楽「鷹姫」

2019年2月3日 左京区岡崎のロームシアター京都サウスホールにて観劇

午後2時からロームシアター京都サウスホールで、シリーズ 舞台芸術としての伝統芸能vol.2 能楽「鷹姫」を観る。

イェーツが能に触発されて書いた舞踊劇「鷹の井戸」を横道萬里雄が新作能「鷹の泉」として改作・翻案したものを観世寿夫が新たに「鷹姫」としたもの。1967年に初演されている。

出演:片山九郎右衛門(鷹姫)、観世銕之丞(老人)、宝生欣哉(空賦麟)。岩:浅井文義、味方玄、浦田保親、吉浪壽晃、片山伸吾、分林道治、大江信行、深野貴彦、宮本茂樹、観世淳夫。
囃子方:竹市学(笛)、吉阪一郎(小鼓)、河村大(太鼓)、前川光範(太鼓)。
後見:林宗一郎。

空間設計は、dot architects(ドットアーキテクツ。家成俊勝&赤代武志)が手掛ける。


絶海の孤島が舞台である。その島には、鷹の泉と呼ばれる、飲めば永遠の命を得られるという霊水が湧き出ている。鷹の泉を守るのは鷹姫と呼ばれる謎の乙女だ。

島には、鷹の泉の霊水を求めて長年住み着いている老人がいる。鷹の泉はもう何十年を湧き出ておらず、いつ湧き出るのかも不明である。

島に一人の若者がやって来る。王の第三王子である空賦麟(くうふりん)である。空賦麟も霊水である鷹の泉を求めてきたのだが、老人に泉の由来を聞かされ、早く帰るように言われる。
その時、鷹が鳴く。老人は、泉を守る鷹姫の声だと空賦麟に告げる。やがて姿を現した高姫に空賦麟は戦いを挑むのであるが……。


「岩」と呼ばれる謡い達がずらりと並ぶ様は異様であり、異界での物語であることを印象づけられる。「岩」は元々は地謡が務めていたらしいのだが、装束と面をつけて「岩」として舞台上に現れるようになったようだ。物語の語り手であり、ある意味、島と鷹の泉の状況そのものともいうべき存在である。泉そのものを演じていることから主役とする見方もあるようだ。

赤い着物の鷹姫は居ながらにして高貴にして畏るべき存在であることが伝わってくる。空賦麟と対決した後、背後の坂を上って消えていく様は、霊的であり、鷹の泉の霊力は鷹姫の存在あってのことであることを告げる。泉は湧くには湧くのだが、鷹姫去った後では……、ということで悲しい結末が待っている。


老人を演じる観世銕之丞の威厳、鷹姫役の片山九郎右衛門の可憐さ、空賦麟役の宝生欣哉の凜々しさなど、配役は絶妙であり、能の幽玄な味わいが存分に発揮されている。
dot architecsのセットも効果的であった。


第2部としてディスカッションが設けられている。出演は、西野春雄(法政大学名誉教授・能楽研究所元所長)、観世銕之丞、片山九郎右衛門。

西野春雄は、「鷹姫」の初演を観ているそうで、当時、西野は22歳。それから50年以上が経ったことを紹介する。
能の存在をイェーツに紹介したのは、イェーツの秘書で詩人でもあったバウンズである。バウンズは、フェノロサの遺稿の翻訳を手掛けた人であり、それを通して能を知り、イェーツにも紹介することになった。イェーツは「能こそ私の理想とする演劇だ」と感激し、「鷹の井戸」を書いたそうである。


観世銕之丞は、dotarthitecsによるセットが、緩やかで短いが上り下りのあるものであり、稽古はしていたが、馴染むのに時間が掛かり、今日の本番でようやく間に合ったことを明かす。「鷹姫」の初演時にはまだ子どもであり、客席で観ていたそうだ。また、「鷹姫」に関しては何度も観てはいるが教わったことはないそうで、観た時の記憶を頼りに自己流で行ったものであることを語る。

片山九郎右衛門は、2年前の2017年が「鷹姫」初演50周年に当たるということで、周囲で話題になっており、自分もやってみたいということで今回の上演に漕ぎ着けたことを語った。また、dot architecsへの感謝も片山から述べられた。



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2019年2月10日 (日)

コンサートの記(521) ロベルト・フォレス・ベセス指揮 NHK交響楽団演奏会京都公演2019

2019年2月1日 左京区岡崎のロームシアター京都メインホールにて

午後7時からロームシアター京都メインホールで、NHK交響楽団演奏会京都公演を聴く。指揮はロベルト・フォレス・ベセス。

NHK交響楽団の京都公演は、京都コンサートホールを使うことが多かったが、今回初めてロームシアター京都メインホールが用いられる。東京のオーケストラでは日本フィルハーモニー交響楽団が毎年ロームシアター京都メインホールで演奏会を行っているが、それに次ぐ登場である。


指揮者のロベルト・フォレス・ベセス(ヴェセス)は、スペイン出身の指揮者。バレンシアの生まれだが、フィンランド・ヘルシンキのシベリウス音楽院でレイフ・セーゲルスタムに師事して指揮を学び、2006年のオルヴィエート指揮者コンクールと2007年にはルクセンブルクのスヴェトラーノフ国際指揮者コンクールで入賞を果たしている。現在はフランスのオーヴェルニュ室内管弦楽団芸術・音楽監督の座にある。


曲目は、チャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(ピアノ独奏:ソン・ヨルム)、ドヴォルザークの交響曲第7番。


今日のコンサートマスターは伊藤亮太郎。オーボエには定年退職が迫る茂木大輔。N響首席オーボエ奏者としての茂木さんを生で見るのは今日が最後かも知れない。第2ヴァイオリン首席の大林修子、チェロ首席の藤森亮一、フルート首席の甲斐雅之など、お馴染みのメンバーも顔を揃える。


チャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ。
N響の力強さがありありと感じられる演奏である。ロームシアター京都メインホールの音楽特性もあって硬質の響きであるが、キビキビとした音運びや、質の高い合奏力など、N響の美質が存分に生かされている。
フォレス・ベセスの指揮は若々しくエネルギッシュである。


チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。
ソリストのソン・ヨルムは、韓国の若手演奏家の中で最も将来有望とされている女性ピアニスト。11歳の時に「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」で2位入賞、2011年のチャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門でも2位に入っている。オバーリン国際ピアノコンクールとエトリゲン国際青少年ピアノコンクール、ヴィオッティ国際音楽コンクール・ピアノ部門ではいずれも史上最年少で優勝。韓国芸術総合学校を卒業後、ハノーファー音楽舞台芸術大学で学んでいる。

ソン・ヨルムのピアノはスケールが大きく、音色よりも輪郭の明晰さで勝負するタイプである。メカニックは高度で、表現力も高い。パウゼを長く取るのも個性的である。
フォレス・ベセス指揮のN響もパワフルな伴奏を聴かせる。

ソン・ヨルムのアンコール演奏は、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」より中国の踊り(ミハイル・プレトニョフ編曲)。原曲ではファゴットで吹かれる低音と煌びやかな高音が印象的なチャーミングな演奏である。


ドヴォルザークの交響曲第7番。
全般的に純音楽的な解釈による演奏で、スラブ的なローカリズムは余り感じられないが、上質の演奏芸術を味わうことが出来る。N響のアンサンブル能力や表現力は高く、マスの響きで聴かせる。これがヴィルトゥオーゾ・オーケストラを聴く愉しみなのだろう。


アンコール演奏は、シベリウスの「悲しきワルツ」。遅めのテンポでスタートし、アッチェレランドで盛り上がる。オペラも得意とするというフォレス・ベセスらしい物語性豊かな演奏であった。


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2019年1月11日 (金)

コンサートの記(500) 京響クロスオーバー「バレエ×オーケストラ」New Year Gala

2019年1月6日 左京区岡崎のロームシアター京都メインホールにて

午後3時から、ロームシアター京都メインホールで、京響クロスオーバー「バレエ×オーケストラ」New Year Galaに接する。指揮者は京都市交響楽団常任首席客演指揮者の下野竜也。今日のコンサートマスターは泉原隆志。少し浅めにしたオーケストラピット内での演奏である。

出演は、首藤康之(しゅとう・やすゆき)、中村恩恵(なかむら・めぐみ)、イ・ドンタク、カン・ミソン、福岡雄大(ふくおか・ゆうだい)、渡辺理恵、山井絵里奈全京都洋舞協議会メンバー。演出・振付:中村恩恵。

曲目は、第1幕が、チャイコフスキーのバレエ組曲「眠れる森の美女」よりワルツ(出演:山井絵里奈全舞踏協議会メンバー)、シベリウスの「悲しきワルツ」(福岡雄大のソロ)、プロコフィエフのバレエ「シンデレラ」第2幕より(イ・ドンタクとカン・ミソンのパ・ド・ドゥ)、シベリウスの交響詩「4つの伝説」よりトゥオネラの白鳥(首藤康之と中村恩恵のパ・ド・ドゥ)、チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」第3幕より(福岡雄大と渡辺理恵のパ・ド・ドゥ)、プロコフィエフのバレエ「シンデレラ」第1幕よりワルツ(全員)。第2幕が、ベルリオーズの幻想交響曲より第2楽章(オーケストラ演奏のみ)、マーラーの交響曲第5番より第4楽章「アダージェット」(首藤康之と中村恩恵のパ・ド・ドゥ)、マスネの「タイスの瞑想曲」(福岡雄大と渡辺理恵のパ・ド・ドゥ)、フォーレの「パヴァーヌ」(渡辺理恵のソロ)、チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」第2幕より(イ・ドンタクとカン・ミソンのパ・ド・ドゥ)、ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ「美しく青きドナウ」(全員)。


下野竜也指揮の京都市交響楽団は、華やかで分厚く、密度の濃い響きでメインホールを満たす。下野竜也、流石のオーケストラ操縦術である。京響も予想を上回る力強さだ。

新春公演ということで、華やかな演目も多いのだが、人間の根源的な孤独やすれ違いを描いたものが複数ある。

シベリウスの「悲しきワルツ」は元々は「クオレマ」という劇付随音楽の中の1曲で、病の床に伏せる若い女性が、現れた紳士の正体が死神だと気づくことなく一緒にワルツを踊るという場面の音楽である。
今回のバレエ公演では、福岡雄大のソロで、何かを求めて思索し、彷徨うも、結局どこにも辿り着けずに戸惑う男性を描いているように見える。

プロコフィエフの「シンデレラ」第2幕よりの、イ・ドンタクとカン・ミソンのパ・ド・ドゥも、踊るときは息が合っているが、去り際にはもう心が離れてしまっている男女のようで、バラバラに退場する。「タイスの瞑想曲」のパ・ド・ドゥでも同様で、ラストでは互いの姿が確認出来ないようであり、「パヴァーヌ」のソロへと続く。

マーラーの交響曲第5番より第4楽章「アダージェット」は、レナード・バーンスタインがJ・F・ケネディ大統領追悼の1曲としてこの作品を選んだことや、映画「ベニスに死す」のテーマ音楽となったことにより「死」に結びつけられることが多い。今回の公演でも、彼女を亡くした男声が、思い出の中の彼女と共に踊るも、ラストは蘇生することはないと悟って悲嘆に暮れるという筋書きになっていたようだ。かなり印象深い舞である。

最後の「美しく青きドナウ」では、白い衣装を纏ったバレリーナ達が愛らしくも幻想的な舞で魅せ、華やかに幕を下ろす。


アンコール曲目であるヨハン・シュトラウスⅡ世の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」が演奏される中、カーテンコール。演奏終了後は下野竜也もステージに上がり、喝采を受けた。上質の公演である。京都市交響楽団も幸先が良い。


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2019年1月 4日 (金)

観劇感想精選(281) ロームシアター京都「能楽チャリティ公演 ~被災地再興、京都からの祈り」2017 第2部

2017年8月24日 ロームシアター京都サウスホールにて観劇

午後6時から、ロームシアター京都サウスホールで、「能楽チャリティ公演 ~被災地再興、京都からの祈り」第2部を観る。今日の午前中に第1部公演があり、ソワレが第2部である。演目は異なる。

演目は、能「花月」(出演:大江広祐ほか)、能「雪」(出演:金剛永謹ほか)、狂言「梟」(出演:茂山茂ほか)、能「一角仙人」(出演:松野浩行、浦田親良、河村紀仁、梅田嘉宏ほか)。

外国人の観客も多いということで、豊嶋晃嗣(てしま・こうじ)が上演前に作品の解説を行い、それを通訳の女性が英訳した。


能「花月」。京都の清水寺(「せいすいじ」と読まれる)が舞台。筑紫国出身の僧侶が花月と呼ばれる少年芸人(見た目は少年に見えない)を見かけ、花月こそ自分の子であると僧侶が気づくという話である。


能「雪」。ストーリーのない能である。摂津国野田(現在の大阪市北区野田)が舞台。僧侶が正体不明の女性と出会い、女性の正体が雪の精だとわかり、雪の精が舞う。


狂言「梟」。弟が山に行って何かにとりつかれた状態になったため、兄は山伏に祈祷を求める。だが、最後はミイラ取りがミイラになるという狂言である。弟を島田洋海が、兄を茂山逸平が演じているのだが、それぞれ「ひろみ」、「いっぺい」と本名で呼ばれていた。

能「一角仙人」。ちょっとした大道具が用いられる。釣り鐘のようなものは洞窟、小さな牢屋のものは一角仙人の住まいである。一本の角を持っている一角仙人が龍神を洞窟に閉じ込めてしまい、日照りになる。そこで村の美女が一角仙人を訪ねてきて、仙人に酒を飲ませて神力を弱めようとする。「桂の葉に溜まった露を飲んでいるので酒はやらない」という仙人だったが美女の踊りを見て調子に乗り、酒をあおって結局は雨が降り始める。ラストは仙人と龍神二人が戦うことになるのだが、赤い髪の龍神は佇まいからして迫力に溢れていた。

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