カテゴリー「シアター・ドラマシティ」の3件の記事

2018年12月 8日 (土)

観劇感想精選(271) 椎名桔平主演「異人たちとの夏」

2009年7月28日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて観劇

大阪へ。梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで行われる「異人たちとの夏」を観るためである。

「異人たちとの夏」は午後7時開演。原作:山田太一、脚本・演出:鈴木勝秀。主演:椎名桔平。出演は、内田有紀、甲本雅裕、池脇千鶴、羽場裕一ほか。ほかといっても他には女優が一人出ているだけなのだが、パンフレットを買わなかったので名前はわからない。

映画「異人たちとの夏」は結構好きな作品で、これまで何度も観ている。

ライターの原田(椎名桔平)は都心のマンションで一人暮らし。離婚したばかりで、家を引き払い、仕事場だったマンションの一室に今は住んでいるのだ。原田が住んでいるマンションには企業が多く入っており、深夜になると静寂に支配される。ある夜、同じマンションに住む藤野桂(内田有紀)という女性が原田の部屋を訪ねてくる。シャンパンがあるのだが、一人では飲みきれないので一緒にどうかと桂はいうのだった……。

場面が移動するために、暗転が多くなるのが舞台版の欠点ではある。でもそれは舞台用に作られた作品ではないので仕方のないことだ。脚本、演出ともに良く工夫されており、物語を楽しむ上では何の問題もなかった。

主演の椎名桔平は出ずっぱり。ということもあってか、上演時間約2時間の作品であったが途中に休憩が入った。

役者陣は全員、熱演。前の方の席だったが、椎名桔平と池脇千鶴は細やかな表情の演技をする。内田有紀は大変な熱演だったが、セリフの間をもう少し開けるとより自然だったように思うのだが。彼女もブランクをまだ埋め切れていないのかも知れない。

特に新しい発見はなかったが、安定感のある舞台だったと思う。

ちなみにすき焼きを囲むシーンだが、その場で本当に煮て作っており、芳香が漂っていた。

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2018年9月 3日 (月)

観劇感想精選(254) 舞台「野球」~飛行機雲のホームラン~

2018年8月25日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて観劇

午後5時から梅田芸術芸場シアター・ドラマシティで舞台「野球」~飛行機雲のホームラン~を観る。作・演出:西田大輔。音楽:笹川三和。出演:安西慎太郎、多和田和弥、永瀬匡、小野塚勇人、松本岳、白又敦、小西成也、伊崎龍次郎、松井勇歩、永田聖一朗、林田航平、村田洋二郎、田中良子、竹内諒太、本間健大、書川勇輝、秋山皓郎、今井直人、田上健太、藤木孝。野球監修:桑田真澄。

第二次大戦中の中学野球(現在の高校野球に相当)を舞台に戦争と友情を主題にした群像劇が繰り広げられる。

伏ヶ丘商業学校の唐澤静(多和田和弥)と会沢商業学校の穂積均(安岡慎太郎)は小学校時代の友人にしてライバル。唐澤は甲子園の常連校である伏ヶ丘商業に進み、穂積は敢えて伏ヶ丘商業を避け、会沢商業に進んだ。1944年、戦争の激化のため、全国中等学校野球選手権は2年連続の中止が決定。予科練に進んだ野球部員は唐澤の神風特攻前日にかつての所属学校野球部ごとに分かれ、試合に臨む。南海軍(南海ホークス。英語が敵性言語であるとしてニックネームとしての使用も禁止されたための措置)に進むことが決まっていた唐澤だが、夢は絶たれた。肘を傷めていた唐澤だが、マウンドに上がるのは今日が最後であり、全力で投球する。

立ち上がりが不安定であるが、ストレートの威力は沢村栄治に匹敵するといわれる穂積。穂積が会沢商に進むきっかけとなった先輩の岡光司(永瀬匡)、併合当時は日本人とされたが差別も受けてきた朝鮮半島出身の伏ヶ丘・菱沼力(小野塚勇人)、唐澤の姉で新聞記者だったが反戦記事を書き続けたために解雇となった唐澤ユメ(田中良子)、ユメと共に狂言回しの役割を受け持つ海軍中佐の遠山貞昭(藤木孝)、新聞記者になること夢見て唐澤に関する記録を書き続けていた伏ヶ丘の三塁手・堂上秋之(松井勇歩)、会沢商業の監督に指名されるが野球には疎い街軍中尉の菊池勘三(名前の似ている菊池寛にちなんであだ名は「父帰る」である。演じるのは林田航平)らが時系列を飛ばす形でドラマを構成する。舞台後方には黒板状のスコアボードがあり、試合が進むごとに、出演者がチョークで得点を記していく。

八百屋飾りの舞台。マウンド、各塁、バッターボックスなどは特定の場所に置かれず、状況によって次々とフォーメーションを変えていく。客席通路も使用し内外野の守備が客席で行われることもある。

ボールは使用するが、投手役の俳優が直接投げることはない。なお、開演前に「本日は演出としてボールを使用いたします。ボールが客席に飛び込むことがあるかも知れませんが、ボールはスタッフが回収に伺いますので、くれぐれも客席に投げ返さないようお願いいたします」という影アナがあった。当然ながら劇場でそんなアナウンスを聞くのは初めてである。

PL学園時代に甲子園での高校通算最多勝記録となる20勝を挙げ、読売ジャイアンツとピッツバーグ・パイレーツで投手として活躍した桑田真澄が野球監修を手掛けており、そのためピッチャーの二人は桑田によく似た仕草をする。特に穂積均役の安西慎太郎は前屈みになったサインの見方、ワインドアップから右肩を下げながらのテイクバック、上体を捻って打者に背中を見せるところなどが桑田のフォームに瓜二つである。腕の使い方は桑田よりも元カープの池谷公二郎に似ているが、安西は世代的に池谷を知らないはずなので、たまたま似たのだと思われる。唐澤役の多和田和弥はサイン交換時のポーズは桑田や穂積と一緒だが、その後は違う。

俳優陣で私が知っているのはベテランの藤木孝だけ(最も重要なセリフを与えられているのも彼である)。若い俳優達に関してはほとんど知らないが、開場時間を予定より15分早めて行われたグッズ販売に女性が長蛇の列を作っており、相当な人気があることがうかがえる。後で調べたところミュージカル「テニスの王子様」の出演者が多いことがわかった。
私自身は「桑田真澄が野球監修をするなら」ということで観に行ったのだが、客席に男性はほとんどいない。劇場と球場に通う層はどうやら重なっていないようである。

戦時ということで野球自体が敵性競技として疎まれており、使用語はストライクが「良し!」、ボールが「駄目!」、ファールが「圏外球」、セーフが「安全」といった風に日本語に直され、アラビア数字も駄目で背番号は漢数字で書かれている。グローブも戦前戦中のものは現在と大きく異なるのだが(当時はスポットの浅い握るタイプのもの。挟み込むタイプの現在のものとは違い、片手を添えて両手で捕らないと取りこぼしてしまうことになる。日本では今でも「ボールは両手で捕る」が常識化しているのはこのためである)、客席にそこまでこだわる人はいないのと、ドラマ進行状に特に問題とはならないので、現代タイプのものを使用している。

漫画原作も手掛けるという西田大輔の本と演出はスピード感と視覚効果を大事にした上で外連味にも富むもの。一貫したストーリーよりもシャッフリングされた矢継ぎ早の展開を重視しており、各々のエピソードを絡めてラストへ持って行く形はラヴェルの「ボレロ」のようである。客席が女性中心ということで客席の各所からすすり泣きが聞こえ、上演としてはかなりの成功だと思える。

上演後は毎回アフタートークがあるようで、今日も永田聖一朗と伏ヶ丘商業の生徒達によるトークが行われる。天才エース・唐澤静役の多和田和弥は実は野球が大嫌いであったことを明かす。子供の頃のキャッチボールが顔に当たったことがトラウマになっており、野球が好きな人の気持ちが理解出来ないほどであったそうだが、この舞台をきっかけに野球が好きになったそうである。



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2018年8月13日 (月)

観劇感想精選(251) 「アンナ・クリスティ」

2018年8月4日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて観劇

午後5時30分から、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで「アンナ・クリスティ」を観る。近年、再び注目を浴びつつあるアメリカの劇作家、ユージン・オニールの初期作品の日本初演である。テキスト日本語訳:徐賀世子、演出:栗山民也。出演:篠原涼子、佐藤隆太、たかお鷹、立石涼子、原康義、福山康平、俵和也、吉田健悟。

「アンナ・クリスティ」は1921年にピューリッツァー賞を受賞している。1930年にグレタ・ガルボ主演で映画化されており、マリリン・モンローが自身の初主演舞台に選んだ作品でもあるそうだ。

ニューヨークの海岸近く、サウス通りの「坊さんジョニー」という酒場。スウェーデン系のクリス・クリストファーソン(たかお鷹)が、娘のアンナ・クリストファーソン(アンナ・クリスティの名で呼ばれる。演じるのは篠原涼子)との再会を待っている。クリスとアンナは、アンナが5歳の時に別れてから一度も会っておらず、15年ぶりの再会となる。

生まれてからずっと船乗りとして生活してきたクリスは家庭を顧みず、妻が亡くなってからもアンナをミネソタ州の親戚ところに預けっぱなしにしていた。アンナは数年前からミネソタ州のツインシティーの一つ、セントポールで暮らしていたという。子守をやって過ごしていると手紙には書いてあった。

クリスは家代わりにしているはしけ船に老いた商売女のマーシー(立石涼子)を住まわせていたが、娘に会う手前、出て行って貰いたいとお願いをする。

クリスが食事に出ている間にアンナがやって来る。マーシーは一目でアンナと気づくが、自身のことは「クリスとはたまに会う」間柄ということにする。共に酒を飲むうちに、アンナは自身の身の上話を始める。ミネソタの田舎では奴隷のように扱われ、親戚の男に犯されたこと、家を飛び出してセントポールに移ってからは子守の仕事に就くが、限界を感じ、売春婦へと身をやつしたこと。何もしてくれなかった父への愚痴。
やがて対面したクリスとアンナ。クリスはアンナのこれまでを全く知らず、想像しようともしない。二十歳になったアンナにクリスは「陸の男」と結婚するように言う。自分のような「海の男」は駄目だと。
だが10日後、ボストンの港に移った親子のところに、難破船が近づく。難破船に乗っていたアイルランド人のかま焚き係であるマット・バーグ(佐藤隆太)とアンナとは一目で恋に落ちるが、マットはクリスが嫌悪する「海の男」であり……。

「アンナ・クリスティ」というタイトルであり、クレジットにもタイトルロールである篠原涼子の名前が一番上に来るのだが、本当の主役というべき存在はアンナの父であるクリスであるように思われる。好き勝手に生きてきて娘のことを一度も顧みなかったが男の贖罪の物語ともいえる。もっとも自分に原因があることでもクリスは「海の運命」のせいにしてしまって正面から向き合おうとしないというダメ男の部分があるのだが。ユージン・オニールが自身と自身の父親を投影したのだろう。
今日はパンフレットを買ったのだが、実際、「アンナ・クリスティ」は初演時のタイトルは「クリス・クリストファーソン」だったそうで、2011年にはロンドン・ウエストエンドでジュード・ロウの出演で話題となったとあるから、イギリスでの上演はクリスが主役という解釈で行われたのだろう。

13年ぶりの舞台出演で、初の舞台単独主演となった篠原涼子。テレビドラマや映画ではヒット作をいくつも持っているが、今回はセリフが浮き気味であり、的を上手く射抜けないもどかしさがある。表情や佇まいは魅力的なのだが。やはり映像の人なのか。

日大芸術学部出身で、デビューが舞台だったという佐藤隆太。ワイルドで腕力だけが自慢のマットを飾り気のない演技で見せる。マットはクリスと相似形だけに噛み合った演技をする必要があるのだが、上手くはまっていたように思う。

真の主役ともいうべきクリスを演じた、たかお鷹。老いた放蕩児の悲哀をそこはかとなく感じさせる演技が良かった。

かつての自分や娘との和解を得たクリスだが、目の前に広がる霧に不鮮明な未来を見いだしたところで芝居は終わる。

今日はアフタートークがある。出演は、篠原涼子、佐藤隆太、たかお鷹の主要キャスト3人。司会は朝日放送の桂紗綾(かつら・さあや)アナウンサーが担当する。
「ほっとする時」、たかお鷹は「家で家内と二人で飲んでいる時」(「そう言えって言われてます」だそうだ)、篠原涼子は「台所」。水が流れる場所が好きだそうだ。阪神タイガースファンで日大櫻丘高校時代は野球部に所属しいた佐藤隆太は「甲子園」だそうで、明日から夏の全国高等学校野球選手権大会が甲子園で始まることから、「体調に気をつけて」と言うも、「ここで言うことじゃないですね」とも話していた。
子どもの頃の夢について、たかお鷹は「家具職人」と答え、「実は今でも夢を諦めていない」と語る。篠原涼子は「保母さんかメイクアップアーティスト」で、娘が生まれてから保育園やっていた「保母一日体験」のようなものに参加したことがあるそうだが、「無理だと思いました」とのこと。佐藤隆太は「先生」が子どもの頃の夢で、「英語教師になりたい」と本気で思ったことが一時期あったそうである。



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