カテゴリー「京都芸術センター」の4件の記事

2018年12月 4日 (火)

コンサートの記(462) Ensemble FOVE presents “TRANS”@京都芸術センター

2018年11月28日 京都芸術センター講堂にて

午後7時30分から、室町通錦小路上ルにある京都芸術センターの講堂で、Ensemble FOVE presents “TRANS”という公演を聴く。

Ensemble FOVEは、作曲家の坂東祐大を主宰として結成された気鋭の若手演奏家による団体。2016年に発足したばかりである。
今日の出演メンバーは、上野耕平(アルトサックス)、荒木奏美(オーボエ)、中野日出鷹(ファゴット)、伊藤亜美(ヴァイオリン)、安達真理(ヴィオラ)、地代所悠(男性。コントラバス)、宮下和也(エレクトロニクス&テクニーク)。他に録音による演奏参加者が15人。更にグラフィックデザインとして稲葉英樹が参加している。

“TRANS”は全曲、坂東祐大が作曲したもので、「Bubbles&Scales」、「Etude」、「Poly Clock Etude」、「Transform and Deform」、「Trance homage to Jonann Johannsson」、「Seesaw」、「Melting dance」、「Untitlid/fantasitc」の8曲(8部)からなる。

講堂内部は、中央にコンピューターと音響操作スペースになる平台が置かれており、その周りに椅子が無作為無指向に置かれている。その外縁に上にアルミホイル状のもの(被災地などで使う防寒具らしい)を敷き詰めた平台が6つ、客席を取り囲むようにして配されている。中央が宮下和也のスペース、他は各奏者一人ずつにあてがわれた演奏スペースとなる。
不思議な空間である。

客席の外周にはスピーカーも置かれており、開演前から泡がはじけるような音が聞こえているが、演奏者はみな楽器にマイクを取り付けたプラグド状態であり、直接音と同時にマイクが捉えた音も四方八方から飛び出してくる仕掛けとなっている。録音による参加者の音もここから流れて来る。生演奏と録音のコラボも当然ながら多い。

照明も演奏家の真上から当たったり、場内を回転したりと多彩だ。


坂東の書いた音楽であるが、スマートでクールである。メロディーではなく、その瞬間瞬間の響きを聴かせる作品であり、特殊奏法も用いられていて、シャープな印象を受ける。
響きと光の動く様を見聞きしていると、あたかも深海にいるような、あるいは360°水槽に囲まれた水族館にいるような錯覚に陥る。音の遊泳だ。
つかもうとすると逃げてしまう逃げ水のような音楽でもある。現代音楽ならではの面白さだ。
中川日出鷹が長いソロを取る、4曲目の「Transform and Defort」が特に印象的だが、「ドレミファソラシド」の音階を青葉市子のヴォーカルが辿る1曲目「Bubbles&Scales」(楽器演奏者は始めから半音進行となる)や、伊藤亜子がソロヴァイオリンを奏でる8曲目の「Untitled/fantastic」なども特徴的である。

出演者の中では、「題名のない音楽会」の常連でもある上野耕平が最も有名だと思われるが、全員が高い評価を受けている音楽家であり、クオリティは申し分ない。


終演後に、出演者達によるアフタートークがある。フルートの荒木奏美のように「よくわからない」と正直に言う人もいたが、「自然に出来てしまうのだな」と感じさせる発言もあった。
作者の坂東祐大は、「不快と快感の間を狙った作品」だと説明する。ジェットコースターを例えとして挙げて、「ジェットコースターって、不快の塊ですけど、それにあれほど乗る人がいるということはスリルや何かを求める人がいて、快感に変わる」というようなことを話す。
今日は照明が点滅する上に、聴き慣れない現代音楽ということで、上野が「不快さに耐えきれず、出て行ってしまった方が3名ほどいましたが」と言い、坂東は「あそこから快感へと変わるのに、不快なままにさせてしまって申し訳なかった」と語っていた。

安達真理によると、Ensemble FOVEのメンバーは仲がとても良いそうで、プライベートでも和気藹々とやっているそうである。


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2018年11月29日 (木)

コンサートの記(455) 第35回ペトロフピアノコンサート―異国の情景― 河合珠江

2017年12月1日 京都芸術センサー講堂にて

午後7時から、京都芸術センター講堂で、第35回ペトロフピアノコンサート-異国の情景-を聴く。元明倫小学校が所蔵しているチェコのペトロフ社のピアノによるコンサート。演奏は河合珠江。

現在は京都芸術センターとなっている明倫小学校出身の日本画家、中村大三郎の屏風絵「ピアノ」(今日弾かれるピアノを描いたものだという)の原寸大のレプリカを制作することを企図してのコンサート。ということで、ピアノの河合珠江は絵に出てくる女性同様、着物を着ての演奏である。

曲目は、前半が、ショパンのワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」とノクターン第2番、リストのペトラルカのソネット第104番、シューマンの「蝶々」と「トロイメライ」。後半は、メシアンの「鳩」、ラヴェルの「悲しい鳥」と「水の戯れ」、松平頼則(まつだいら・よりつね)の「シャボン玉」と「リードⅠ」、ドビュッシーの「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」と「ゴリウォークのケークウォーク」(いずれも『子供の領分』より)、「亜麻色の髪の乙女」、「途絶えたセレナード」、アルベニスの「コルドバ」と「セギディーリャ」(「スペインの歌」より)。

前半は慣れない着物での演奏ということもあったのか、ミスタッチがあったり音型が崩れたりということもあって、後半の方が出来が良い。特にフランスものは河合のピアノスタイルに合っているように感じられた。ちなみに、松平頼則の「シャボン玉」の出だしは、先に弾かれたラヴェルの「水の戯れ」の冒頭を逆さにしたものだそうで、松平のラヴェルに対する愛情が感じられるという。「シャボン玉」はこれまで録音されたことがなかったのだが、河合珠江によって世界初録音が行われたそうで、会場では「シャボン玉」を収めたCDも販売されていた。

ペトロフのピアノは、まろやかな音で奏でられる。講堂ということもあって、響きはそれほど良くないが、「明倫小学校時代に、ここで奏でられ続けたのだ」という歴史が感じられる演奏会であった。
前回、河合珠江のピアノを聴いたのは、「妖怪」をテーマにした音楽会であり、その時、河合は猫娘の格好をしていた。今回は着物ということで、普通のピアニストがしない格好での演奏を聴くことが続いている。

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2018年3月 4日 (日)

コンサートの記(351) アンサンブル九条山コンサート vol.5 「波形 スペクトル楽派―新音響言語の誕生」

2018年2月28日 京都芸術センター講堂にて

午後7時から、京都芸術センター講堂で、アンサンブル九条山(くじょうやま)コンサート vol.5 「波形 スペクトル楽派―新音響言語の誕生」を聴く。

曲目は、ジャチント・シェルシの「ホウ」よりⅠ,Ⅱ,Ⅴ(ソプラノのための)、カイヤ・サーリアホの「灰」(アルト・フルート、チェロ、ピアノのための)、フィリップ・ユレルの「ループスⅡ」(ヴィブラフォンのための)、トリスタン・ミュライユの「沈みゆく太陽の13の色」(フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ、エレクトロニクスのための)、ジャン=リュック・エルヴェの「外へ」(クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための)、フィリップ・ルルーの「恋しい人、よろしければ ……18世紀のフランス民謡から」(ソプラノのための)、ジェラール・グリゼーの「タレア」(フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための)

出演は、アンサンブル九条山(フルート・若林かをり、クラリネット・上田希、ヴァイオリン・石上真由子、チェロ・福富祥子、ソプラノ・太田真紀、打楽器・畑中明香、ピアノ・森本ゆり)、有馬純寿(ありま・すみひさ。エレクトロニクス。ミュライユ作品のみ)、若林千春(男性。若林かをりの旦那さん。指揮。グリゼー作品のみ)

フランスを中心に生まれたスペクトル楽派に分類される作曲家の作品が並ぶ。現代音楽の中でも比較的新しい潮流の作品群であり、耳に馴染みの良い音楽ではないだろうが、新しい響きを追求した作品だけにそれは当然であるとも言える。

私が名前を知っていてCDも持っているのはフィンランド出身のサーリアホだけだが、他の作曲家の作品も興味深い。
畑中明香(はたなか・あすか)のヴィブラフォン独奏によるフィリップ・ユレルの「ループスⅡ」はミステリアスな音響が印象的だし、サーリアホ作品の微妙なグラデーション(ピアノの森本ゆりがピアノの弦に直接触れて音を出すという特殊奏法もある)、トリスタン・ミュライユの「沈みゆく太陽の13の色」における宇宙的な拡がり、ジェラール・グリゼーの「タレア」では突然現れる民謡風の旋律などが耳に新しい。

スペクトル派の音楽を聞き込んでいるわけではないので、「わかりにくい」と感じたことも事実だが、現代音楽を得意とする演奏家達の好演により、純粋に音楽として楽しめる仕上がりとなっていた。もっと内容を掘り下げて書けたら良かったのだが、わからないものを「わかる」とは言えないのである。



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2018年2月 3日 (土)

楽興の時(20) 京都市交響楽団×京都芸術センター 「Kyo×Kyo Today」2018 京都しんふぉにえった「ウィンター&アレンジ・セレクション!」

2018年1月31日 京都芸術センター講堂にて

午後7時から、京都芸術センター講堂で、京都市交響楽団×京都芸術センター「Kyo×Kyo Today」というコンサートを聴く。今回は「ウィンター&アレンジ・セレクション!」と題して、京都市交響楽団のメンバーで結成された京都しんふぉにえったのメンバーが冬を題材にした曲を取り上げる。
京都しんふぉにえったのメンバーは、小田拓也(ヴィオラ)、中野志麻(第1ヴァイオリン)と中野陽一郎(ファゴット)の中野夫妻、片山千津子(第2ヴァイオリン)、渡邊正和(チェロ)、出原修司(コントラバス)、筒井祥夫(クラリネット)、ハラルド・ナエス(トランペット)、中山航介(ドラムス&パーカッション)。小田拓也が全曲編曲を手掛ける。

曲目は、ハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」より“ワルツ”、リストの「愛の夢」第3番、フォーレの「シチリアーノ」、ドヴォルザークの「ユーモレスク」、ワルトトイフェルの「スケーターズ・ワルツ」、モンティの「チャルダッシュ」、ロシア民謡「黒い瞳」、ロシア民謡「二つのギター」、サン=サーンスの「死の舞踏」、ピアソラの「ブエノスアイレスの冬」

ヴィオラ&編曲の小田拓也が曲間にマイクを手にMCを担当する。今回の演奏会はチケット完売だそうである。小田拓也が「我々の演奏を聴くの初めてという方」と聞き、数人が手を挙げる。小田は「リフレッシュな方々」と言った後で、「間違えました。フレッシュな方々」と言い直す。
小田によると、京都市交響楽団は、今日は午前中と午後一に「小学生の音楽鑑賞教室」(高関健指揮)の本番があったそうで、京都しんふぉにえったのメンバー達がこれが今日3回目の公演であり、結構疲れているらしい。

ハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」より“ワルツ”はフルオーケストラで聴かないと迫力やメリハリに欠けるため、同じ事を繰り返しているだけの曲に聞こえてしまうのが難点である。

リストの「愛の夢」第3番はまずクラリネットの筒井祥夫が活躍して主旋律を奏でていく。ピアノの原曲に比べてかなり柔らかい印象を受ける。
ハチャトゥリアンとリストは浅田真央がプログラムの音楽に選んだため冬のイメージがあるとして選んだそうである。

フォーレの「シチリアーノ」は京都アニメーション制作の「氷菓」というアニメで用いられたそうで、ドヴォルザークの「ユーモレスク」は映画「タイタニック」でタイタニック号が氷山にぶつかって沈んでいく時に流れていた音楽だそうである。「ユモレスク」は変ト長調に直したものが演奏された。

モンティの「チャルダッシュ」は、ヴァイオリンとトランペットのため二重協奏曲風に編曲されており、小田は「ヴァイオリンとトランペットが対決するかのように書かれております。先に言っておかないと、『この人達は何をやってるんだろう?』となる可能性がある」と事前に解説していた。中野志麻とハラルド・ナエスのソロ。二人とも巧者であり、聴き応えがあった。
演奏終了後に小田が中野志麻とハラルド・ナエスにインタビュー。中野志麻は、「ヴァイオリンをやって何十年と経つんですけど、トランペットと一緒にやるのは初めてだったので楽しかった」と言って、小田に「模範的な回答ありがとうございます」と言われていた。ナエスも「とっても楽しかった」と答えていた。

ロシア民謡「二つのギター」について小田は、「ヴァイオリンには、無理矢理というわけではないんですが、ギターを弾くような演奏をして貰います。『こんな綺麗な女性達にこんなことさせるなんて!』と思われちゃうかも知れませんけど」と解説。予想通り、中野志麻と片山千津子のヴァイオリン奏者二人はピッチカート奏法を行う。
ちなみに、ロシア民謡2曲は、「ロシアというと寒い国」ということで選ばれたそうである。

サン=サーンスの「死の舞踏」。骸骨の踊りを描いた曲であり、「骸骨というとお墓。お墓は寒い」という連想でのセレクト。原曲では木琴が活躍するのだが、今回の編曲では主旋律は主に第1ヴァイオリンとクラリネットが担当した。とはいえ、やっぱり木管の方が骸骨のカリカチュアという感じはする。

ピアソラの「ブエノスアイレスの冬」。京都しんふぉにえったのメンバーはピアソラをリスペクトしているそうで、思い入れたっぷりの演奏が聴かれた。

アンコール演奏は、ピアソラの「リベルタンゴ」。20年ほど前にチェリストのヨーヨー・マがサントリーウィスキーのCMで演奏して有名になった曲であり、小田の編曲でも歌い出しは渡邊正和手掛けるチェロが奏でるものになっていた。

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