カテゴリー「アニメ・コミック」の18件の記事

2019年1月21日 (月)

観劇感想精選(284) 渡辺徹&水野美紀主演「ゲゲゲの女房」

2011年10月28日 大阪府貝塚市のコスモスシアター大ホールにて観劇

午後6時30分から、大阪府貝塚市にあるコスモスシアター大ホールで、舞台「ゲゲゲの女房」を観る。朝の連続テレビ小説久々の快作として話題になり、映画化もされた、武良布枝(むら・ぬのえ。水木しげる=武良茂の奥さんである)の自伝『ゲゲゲの女房』の舞台化である。


京都から貝塚までは実はかなり距離がある。貝塚市は大阪の中でも泉南という地域、現在の大阪府の南部に当たる旧和泉国の中でも南部にある。南北に長い都市だが、南端は和歌山県と接しているという場所である。すぐ北にあるのが、だんじり祭で有名な岸和田市だ。


さて、舞台「ゲゲゲの女房」は、武良布枝の原作を、東憲司(ひがし・けんじ)の脚本・演出・美術で舞台化したもの。出演:水野美紀、渡辺徹、梅垣義明、篠田光亮(しのだ・みつよし)、大和田獏ほか。今月は大和田獏のお嬢さんである大和田美帆の舞台(「キネマの天地」)も観ているので親娘の演技を同じ月に観ることになる。

東憲司は、「どこかで見たことのある名前だぞ」という認識しかなかったが、「ゲゲゲの女房」が始まってからすぐに、「ああ『夜は短し歩けよ乙女』の人だ」とわかる。舞台転換の技法がそのままだったからである。劇の内容がとても良かったので、幕間にパンフレットを購入して(余程良い劇でないと私はパンフレットは買わない)確認したところ果たしてそうであった。

舞台「ゲゲゲの女房」は笑いの要素もあるものの基本的にシリアスな内容である。劇としての完成度は極めて高いが、実は水木しげる夫妻を演じる渡辺徹と水野美紀を除く、大和田獏や梅垣義明という上手い役者は人生の敗北者を演じている。彼らは価値転換、現代文明の洗礼の犠牲者である。人生では一応成功者のように見える男を演じている篠田光亮も、ある理由で敗北者だということがわかる。水木しげる夫妻も劇の前半では苦難の道を歩んでおり、後半になっても社会の価値観に逆らって生きることの難しさが前面に出されている。人生の成功者は全て端役扱いである。

劇としても「素晴らしい」の一言であるが、それ以上に、現代の資本主義や新自由主義などへのアンチテーゼを示しており、更には価値観とは何かという問いかけで観るものを揺さぶり、そして芸術論、芸術家論として観ることも可能という奥行きのある芝居である。貝塚まで観に行った価値があったどころか大量のおつりまで貰えた気分だ。

水野美紀も渡辺徹も色々言われる人だが、今日の演技は実に細やかで丁寧な名人クラスのもので、掛け値なしの名優である。コスモスシアター大ホールは名前の通り、空間が大きいので耳の横にマイクを付け、PAを使っての演技であったが、負担は増すことにはなるが、PAなしでも全員セリフをホール一杯に響かせることが出来るのではないだろうか。こうした優れた俳優こそきちんと評価されるべきだと思う。この公演は渡辺徹の水木しげる(劇中の本名は村野しげる)と水野美紀の村野布子(武良布枝にあたる)だから成功したのである。

現代の社会は一握りの成功者と圧倒的多数の敗北者から成り立っている。だから「ゲゲゲの女房」のような社会の敗北者や犠牲者達に焦点をあてた舞台はもっと観られてしかるべきで、再演を希望したくなる。大阪公演も貝塚で一日だけということではなく、シアター・ドラマシティで一週間やってもいい。それぐらいの価値はある芝居である。

太宰治の書いた文章がこの劇にピッタリなので、最後に記しておく。「いまの世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です」(『斜陽』より)

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2018年12月26日 (水)

コンサートの記(478) 園田隆一郎指揮 京都市交響楽団 オーケストラ・ディスカバリー2018 「Bravo!オーケストラ」第3回「ファンタジック!オーケストラ」

2018年12月23日 京都コンサートホールにて

京都コンサートホールでオーケストラ・ディスカバリー2018「Bravo!オーケストラ」第3回「ファンタジック!オーケストラ」を聴く。午後2時30分開演。今日の指揮者は園田隆一郎。

ロビーでプレイベントがあり、園田隆一郎と京響の楽団員達が、ちびっ子からの質問に答える。質問は事前に募集し、スタッフが選んだものをシニアマネージャーの柴田さんが読み上げる。

京響の出演者は、泉原隆志(ヴァイオリン)、上野博昭(フルート)、小谷口直子(クラリネット)、ハラルド・ナエス(トランペット)、宅間斉(たくま・ひとし。打楽器)、松村衣里(まつむら・えり。ハープ)。

小谷口直子が、「小さいお友達、こんにちは! 聞こえないな。こんにちは! 大きなお友達もこんにちは!」とクラリネットのおば……、じゃなかったお姉さん風の口調で挨拶をしていたりする。

泉原隆志は、7歳と5歳のお子さんがいらっしゃるそうだが、子ども達が出場しているサッカーの試合などを観戦しているのが、「至福の時」だと述べていた。
上野博昭は、料理が趣味だという。
ハラルド・ナエスは多趣味で、車やラジコンなども好きだという。

「いつも何時間ぐらい練習してるんですか?」という質問には、上野博昭が、「全体の練習が午前10時半から4時頃まであるので、それがある日は、それほど練習出来ないです。長くても3時間くらい」と答えるが、小谷口直子は、「私は多分、上野さんより長く練習していると思います。何時間練習すれば良いというものではなく、プロの演奏家というのは出来るまでやらなければいけないと思ってます。なので私はイライラいながら長く練習してます。すぐ出来ちゃう人は短くていいと思うんですけど」と語っていた。

宅間斉は、「打楽器の場合は練習に困る」と言っており、自宅に置けない打楽器が多いので、「練習場で練習するようにしてます」と答えていた。

「旅先での練習はどうしているんですか?」という質問には、ハラルド・ナエスと泉原隆志がミュートをつけた演奏をやってみせる。トランペット場合はマウスだけで吹く練習をすることがあるそうだ。ホテルでは大きな音は立てられないため、ヴァイオリンも一番強いミュートを使って練習するそうである。

園田隆一郎には、「どうやったら指揮者になれるんですか?」という質問があり、「ピアノやヴァイオリンなんかは、3歳からやってます、6歳からやってますという方がいらっしゃると思いますが、6歳で指揮をやってますという方はいらっしゃらないだろうし、いると困る。人間性に問題が出る可能性がある」ということで、「音楽大学に指揮科というものが一応あるので、そこに入って勉強するのが良いと思います。というより、それ以前にはやらない方がいいと思います。自分がやっている楽器を極めて、それから指揮をどうしてもやりたいと思っても遅くない」
「指揮棒を使う時と使わない時の違いは?」という質問には、「使う時、使わない時というより、指揮棒を使う人と使わない人がいると思います。僕はいつも使います。大きいホールでやる時、あるいはオペラなんかでは白くて細いものが動いてた方が見やすい」と語っていた。


曲目は、前半が、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」から「花のワルツ」、フンパーディンクの歌劇「ヘンゼルとグレーテル」序曲、ルロイ・アンダーソンの「舞踏会の美女」、ロジャースの「サウンド・オブ・ミュージック」から「エーデルワイス」「サウンド・オブ・ミュージック」「ドレミの歌」(合唱:京都市少年合唱団)、後半がオーケストラ・ライブ演奏によるアニメーション・フィルムの上映で「スノーマン」(作曲:ハワード・ブレイク)。

「スノーマン」の上映があるということで、ステージ後方に巨大スクリーンが下りており、前の席のお客さんから映像が見えないと困るというので、オーケストラも奥の方に詰めて配置、ステージも平らになっている。


まずはチャイコフスキーの「くるみ割り人形」より「花のワルツ」。「くるみ割り人形」は、クリスマスが舞台になっているということで、この時期によく演奏される。
園田隆一郎はこの手の音楽はお手の物である。
今日は舞台を平らにしているため、やはり音が上に行く感じはある。音響的には今日はいまいちのようだ。

演奏終了後に園田は、「この方達にコンサートを仕切っていただきましょう。がレッジ-セールのお二人です」と紹介。出てきたゴリは、「俺らコンサート仕切るの無理です」と言う。
ゴリは、「川田からの質問なんですけど、園田さん、(コンサートマスターとフォアシュピーラーの)お二人としか握手しないのは?」と聞く。今日のコンサートマスターは泉原隆志、フォアシュピーラーは尾﨑平である。園田は、「いつものことなので」「みんなそうなので気にしたことない」「心は全員とやっているつもりで」と述べる。
ゴリは、「言ってみれば、この方(泉原)がボス、リーダーで、こちら(尾﨑)がサブリーダー」と語る。コンサートマスターはドイツでの言い方で、英語圏では「リーダー」と言うのが普通である。川田は、「人間関係が悪いのかと思いました」

「花のワルツ」に関しては、ゴリが「CMで聞いたことあります」と言い、園田も「僕が子どもの頃、車のCMで流れてました」と語る。それから、「今、丁度、映画でやってます」と園田が言い、ゴリが客席に「観たっていう人」と聞くが数名しか手が上がらず、ゴリは「これは、観てない方が多いか、四十肩の方が多いか」


フンパーディンクの歌劇「ヘンゼルとグレーテル」序曲。歌劇「ヘンゼルとグレーテル」も西洋ではクリスマスの上演が慣習化している作品である。
ゴリが、「ヘンゼルとグレーテルという兄妹が、森の中に行ったら、お菓子の家があるのを発見します。ですが、なんとあろうことかお菓子の家は魔女の家で、捕まって食べられそうになったところを、二人で作戦を練って、魔女を釜に落として焼いて、って残酷ですね」と内容を説明する。
色彩感豊かな精緻で優れた演奏である。

演奏終了後、川田が「映像が見えました。内容想像してたら魔女が迫っているところわかりました」と言い、ゴリも「音と想像で映像が」と語る。


ルロイ・アンダーソンの「舞踏会の美女」。園田は、「小学校の音楽の時間に、ベートーヴェンとかモーツァルトとかバッハとか、シューベルトも紹介されるかな? ヨーロッパの作曲家、だいたい200年ぐらい前の人を教わって、アメリカはその時代、有名な作曲家はいませんが、100年ぐらい前になると、アンダーソンとかバーンスタインとか有名な人が出てきます」と紹介。ゴリに「舞踏会というとヨーロッパのイメージがありますが、園田さん、舞踏会って行かれたことあります?」と聞かれた園田は、「イタリアに15年ぐらい住んでましたが、イタリアでは舞踏会はあんまりやらない。ウィーンとか北の方でよくやられてます」と話す。
舞踏会は、寒い冬を乗り切るため、体を寄せ合って温め合うことを目的としているという説もある。
ゴリは、「でも日本人じゃ恥ずかしいですよね」と言い、園田に聞くと、「私は無理です」と断言で返ってきたため、「でも断ると失礼なんでしょ?」と続けたが、「私は断るのが精一杯」と返される。

「舞踏会の美女」は、藤岡幸夫と関西フィルハーモニー管弦楽団がテーマ音楽のように使っており、藤岡が司会を務める「エンター・ザ・ミュージック」でもオープニングテーマとなっている。京都市交響楽団の明るめの音色はアメリカ音楽に合っている。
演奏終了後に、園田は、「ヨーロッパとは違ったアメリカ的な華やかさ」とルロイ・アンダーソンの作風を評する。


ロジャースの「サウンド・オブ・ミュージック」には、京都市少年合唱団の団員が参加する。小学校3年生から中学校3年生まで入団可能であり、今日は小学校4年生から中学校3年生までのメンバーが登場する。身長180㎝の男子がいるのだが、中学校2年生であり、「君、中3じゃないの?」とゴリに言われる。入団テストでは、課題曲と自由曲を歌うのだが、自由曲は映画音楽などを選ぶ人が多いようだ。ゴリは、「B'zとか歌う人はいないんだ?」と聞いて、身長180㎝の男の子に、「いないです!」と即答されていた。

今時の子ということで、名前も今時であり、メンバー表を見ると、瑠月(るる)という女の子がいたり、「風凜(ふうりん)」という名の子がいたり、「瑚琳(こりん)」という子もいるが、両親が小倉優子かコリン・デイヴィスのファンなのだろか? 「織温(おりおん)」という子もいるが、男の子だよね? 「真心子(まみこ)」「心音(みお)」「奏心(かなみ)」など、「心」と書いて「み」と読ませる名前も目立つが、漢字から察するに「心音」さんと「奏心」さんは、ご両親が音楽家か音楽好きである。

中央通路で、京都市少年合唱団の津幡泰子(つばた・やすこ)が指揮をする。

「エーデルワイス」には、ギターとして猪居亜美が参加するのがさりげなく豪華である。

日本語での歌唱。やはり少年合唱団の声は心に響く。「ドレミの歌」ではラストで皆が手を繋ぎ、ポーズを決め、客席から拍手喝采。鳴り止まないため、ゴリに、「この拍手、あと2時間続きます」と言われる。更にゴリから「感動した!」「最後良いね!」「男女で手を繋ぐのが、俺らフォークダンスの時」などと言われていた。


後半、サイレントアニメーション映画「スノーマン」の上映。上映時間は26分である。ボーイソプラノとして、京都市少年合唱団の団員である北岸慶が参加する。
原作:レイモンド・ブルッグス、監督:ダイアン・ジャクソン、音楽:ハワード・ブレイク。

ガレッジセールの二人も、中央通路のすぐ後ろの席に座って映画を観る。ゴリの隣に座った若い女性はマネージャーさんだと思われる。

老年に達している父親(総入れ歯である)とまだ若い母親の間に生まれた少年が、ある雪の日にスノーマン(雪だるま)を作る。その日の夜、真夜中過ぎに目覚めた少年は、スノーマンが動き出すのを目撃、一緒に遊び、部屋の中で踊ったりしたりして楽しんだ後、外に出てバイクに二人乗りして(多分、スノーマンは無免許運転)から、北極を目指して旅立ち、その後、スノーマンの国で本物のサンタクロースと出会う。幸福感に満ちて帰途に就き、眠りに落ちた少年だったのだが……。

佐竹裕介が弾くピアノでスタート。アニメーションに合わせての演奏ということでかなり難しそうである。灯りをつけたり消したりも音楽で行うため、難度が高いが、園田と京響はクリアしていく。

スノーマンと少年が空を飛ぶシーンで、ボーイソプラノが入る。

演奏終了後、ステージに戻ったゴリから園田は「いかに大変だったか、汗の量を見てわかります。サウナ帰りじゃないですか」と言われる。
園田は、「オペラとかバレエとか相手が人間なので、1秒ぐらいずれても合わせてくれるじゃないですか。ただ相手が機械なので、いい勉強になりました」と語る。

ゴリは、ボーイソプラノ独唱の北岸慶に、「次の消臭力のCMに出るのは君だよ」と言っていた。


アンコール演奏は、アンダーソンの「そり滑り」。ノリは万全ではなかったかも知れないが、よく整った演奏であった。



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2018年12月 5日 (水)

これまでに観た映画より(111) 「ペルセポリス」

DVDでフランスのアニメーション映画「ペルセポリス」を観る。テヘラン生まれでパリ在住のマルジャン・サトラビの半自伝的作品。監督:ヴァンサン・パルノー&マルジャン・サトラビ。

イランのテヘランに生まれたマルジャン。時代は国の王制が廃されて共和制に移行しようという時だった。その後、共産主義者の粛正があり、イラン・イラク戦争が始まる。マルジャンは戦災を恐れた両親によってウィーンに留学させられる。しかし、マルジャンはそこで居場所を発見出来なかった……。

イランの近現代史を知る上でも興味深い映画。マルジャンとマルジャンの祖母が「ゴジラ」を映画館で観るシーンがあり、日本との接点が見つかるのも面白い。

それにしても、映画に描かれる粛正の多いこと。戦後の平和な日本から見ると、イランという国は同じ時代に壮絶な歴史を辿っていることがわかる。そういう国で生まれ育つというのはどういうことなのだろうか。国家と国民、政治や風習と市民というテーマについても深く考えさせられる作品であった。

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2018年9月24日 (月)

2346月日(2) KYOTO CMEX10周年記念講演会 角川歴彦&荒俣宏

2018年9月14日 ホテルグランヴィア京都・古今(こきん)の間にて

午後3時30分から、京都駅ビルの一角を占めるホテルグランヴィア京都で、京都商工会議所主催のKYOTO CMEX10周年記念講演会に参加する。
KADOKAWAの取締役会長である角川歴彦と作家の荒俣宏の講演がある。

角川歴彦の講演は、「コンテンツの価値の劇的変化」と題されたものである。

21世紀に入ったばかりの頃、角川は当時のマイクロソフトの社長から「4スクリーンのイノベーションが起こる」と聞かされる。当時はなんのことか想像出来なかったそうだが、スマートフォン、パソコン、ダブレット、テレビの4つのスクリーンにより革命のことで、今ではこれらは定着した。当時はまだスマートフォンやタブレットは存在しない頃で、マイクロソフト社はその頃からそれらの登場を予見していたことになる。

これら4つのスクリーンの時代に覇権を争うのは、GAFAという4つの企業である。Google、Apple、Facebook、Amazonの4社だ。

これに動画配信で軌道に乗ったNetflixが加わる。これらの会社は、コミュニケーション、コミュニティ、メディア、コンテンツの4つを駆使して世界を拡げる。また、コミュニケーションがコミュニティを生み、コミュニティからはメディアやコンテンツが生まれるといった具合に相関関係がある。
Appleは、動画には自社が認めたコンテンツしか載せないという姿勢を見せており、「中国のようなところのある会社」だと角川は言う。
一方、Amazonは、提携する多くの会社が倒産に追い込まれている。ボーダーズ、トイザらス、タワーレコードなどで、これらの企業は顧客データがAmazonに使われたことで倒産しており、Amazonとの提携は「悪魔の契約」とも呼ばれているという。だが、Amazonの影響力は多大で無視出来ないため、KADOKAWAもAmazonと直接提携関係を結んでいるそうだ。KADOKAWAがAmazonと直接提携したことで、角川も散々に言われたことがあるという。

そして、イギリスのダ・ゾーンがJリーグの放映権を2100億で円買ったことから、日本のコンテンツが海外から重視されるようになったことがわかったという。ダ・ゾーンはスカイパーフェクTVの何倍もの金額を提示して、コンテンツをものにしているのである。
そして、動画配信を手掛けてきた企業が自社で映像コンテンツを作成するようになってきている。Netflixは映像コンテンツの制作に8500億円を掛け、Amazonは5000億円を計上。
中国のテンセントという企業は自社のゲーム利用者が全世界に1億3000万人いるという。コンテンツ作成にこれだけの金を使われ、利用者数を確保されたのでは、日本の企業には全く勝ち目はない。

更に映像関連会社の合併や買収も目立つ。ディズニーはFOXを7兆8千億円で買収。FOXのこれまで制作した全ての映像を使用する権利を得たため、その影響力は計り知れない。それはディズニーはFOXの全ての映像には7兆8千億をつける価値があると認定したことでもある。
AT&Tはtimeワーナーと合併。AT&Tは電話の会社であり、日本で例えるとNTTが映画会社と合併したようなものである。Webコンテンツにおける勝利を目指したものだろう。

日本のコンテンツに目を向けると、アニメ映画「君の名は。」は世界125カ国で公開、東野圭吾の小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は中国で日本以上に売れ、バーチャルYouTuberキズナアイは北欧でヒット。crunchyrollという日本のアニメ・ドラマ・漫画配信サービスはワーナーの傘下に入ることになったという。

また、出版は不況で右肩下がりが続いているが、日本映画は逆に絶好調である。大半はアニメ映画の急成長によるものだが、日本のコンテンツ価値は高まっており、キャラクターを輸出することで勝負が可能な状況だそうである。

続いて、荒俣宏と角川歴彦による対談「日本のコンテンツが世界に広がる~妖怪からみるクールジャパン~」が行われる。

角川が、最近、ライトノベルで「異世界もの」というジャンルが流行っているという話をする。ライトノベルではないとした上で、宮部みゆきの小説が典型的な異世界ものの系譜にあるとする。

荒俣は、「化ける」が日本社会のキーワードであるとする。野球などで「大化け」という言葉は使われる。日本では変わるのが当たり前だと思われているが、日本以外ではそうとは限らない。妖怪などの「化ける」文化が最も良く残っているのが日本だそうである。

日本人の文化根源をたどっていくと、縄文人は山奥に住んでいて、そのため長野県の奥部などから縄文土器などが出てくるという。なんで縄文人は長野の山奥にいたのだろうと疑問に思った荒俣は、長野まで縄文土器の発掘に出かけたことがあるそうだ、行ってみたら「縄文人がここにいて当然」だと思ったそうで、「山があって川があって色々なものがある。逃げようと思えば逃げられる」と、縄文時代の文化に適した環境だったそうだ。さて、縄文時代の終わりに里人が出て、徐々に両者に関わりが発生するようになる。里人を代表する大和朝廷が、縄文人のいる山へと進出するようになるのだが、縄文人は「刃向かってこない。穏やか」な人たちであり和の精神があった。そこで融和政策が行われるようになる。
その中で、「タブーを犯さない」「変化(へんげ)する」ということが重要になる。タブーについては、「鶴の恩返し」が典型だそうで、「なんでもしてあげますけど、機を織ってるところは覗かないで下さい」と求め、そのタブーを犯してなにもかも失うことになる。

「変化(へんげ)」に関しては、貨幣の「貨」自体に「化」という字が入っており、貝の直接交換のシステムからリアリティーをなくした貨幣に化けていくという過程があるそうだ。

京都はヘンゲの話に事欠かない場所であるが、土蜘蛛と酒呑童子が典型的な例であり、山奥で京の都へのアンチテーゼを唱える人たちが滅ぶ姿がそこにはあるという。
平安末期。それまでの妖怪を陰陽道で封じ込めていた時代が終わり、武士が妖怪を退治する時代になる。土蜘蛛や酒呑童子の退治でも武士が活躍する。力と力で対峙するようになるのだ。

荒俣や角川が少年だった時代にはファンタジーは抑圧されていた。ファンタジーは教育上良くないとされ、漫画が学校内に持ち込み禁止になったりしていたそうだ。私が子供だった頃にも、教科書に「マンガを読むのは悪いか」という教材が載っていたことを覚えている。
荒俣はファンタジーや漫画への抑制の最前線で戦った人物であり、文化的な多様性や豊かさの擁護者でもあった。

日本のゲームについてであるが、角川はこれも内容が良いんだか悪いんだかわからないものであり、そういう意味ではヘンゲの特徴を持っているとする。

また、日本のSF映画の傑作である「ゴジラ」もいわば怨霊を描いたものであり、荒俣によると、ある勢力が権力と和解したか否かでその後の扱いがわかれるという。例えば、鴨氏は元々は奈良の葛城の豪族であり、京都に出て賀茂神社に祀られるようになるが、一方で、土蜘蛛は和解しなかったがために滅ぼされ、化け物になっている。出自自体は大して違わないのに、現在の扱いは180度違う面白さがあると述べた。

また、日本を代表する怨霊として平将門と菅原道真がおり、平将門については荒俣はもう『帝都物語』で書いた。そこで、角川は菅原道真の怨霊を題材にした小説を荒俣に書くように勧めるが、荒俣は「書いてもいいのですが、自分はもう2、3年しか生きられないと思っているので」他のことに時間を使いたいという希望があるそうである。



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2018年8月28日 (火)

西城秀樹 「走れ正直者」

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2018年8月19日 (日)

アクラム・カーン振付「Chotto Desh/チョット・デッシュ」

2018年8月12日 左京区岡崎のロームシアター京都ノースホールにて

午後3時からロームシアター京都ノースホールで、アクラム・カーン振付のダンス公演「Chotto Desh/チョット・デッシュ」を観る。

アクラム・カーンは1974年、ロンドン生まれの世界的振付家。父親はバングラデシュ人、母親はフィリピン人である。幼少期からインドの伝統舞踏であるカタックを学び、大学ではコンテンポラリーダンスと作品創作を専攻。2000年にアクラム・カーン・カンパニーを設立し、高い評価を得るようになる。2012年のロンドンオリンピックの開会式の振付も担当しているそうだ。

ダンサー1人による作品。無料パンフレットやチケットには、デニス・アラマノスまたはニコラス・リッチーニとクレジットされているが、今日はデニス・アラマノスのソロである。

今回は、子供も大人もロームシアター京都を楽しもうというイベントであるプレイ!シアター in Summerのプレ公演という位置づけであり、子供でも楽しめるよう特別に作成した日本語吹き替え版による上演が行われる。声の出演は、Masayo Mimura、Akira Koieyama、Meg Kubota、Lilian Carter。

「チョット・デッシュ」は、ベンガル語で「小さな祖国」という意味。アクラム・カーンのソロ作品である「デッシュ」を元に生まれており、カーン自身の自伝的要素を入れた作品である。「チョット・デッシュ」への翻案はスー・バックマスターが手掛けている。音楽は、Jocelyn Pookの作曲。ミニマルミュージック系の作風である。

アクラム・カーン(デニス・アラマノス)のスマートフォンに異常があったことから話は始まる。カスタマーサポートに電話をしたのだが、担当として出たのは12歳の女の子。混乱するカーンは、幼き日に毎年訪れていたバングラデシュの街を彷徨う。そして昔語りが始まる。

アクラム・カーンの父親は腕のいい料理人であり、息子のアクラムにも料理人になることを望んでいた。坊主頭のデニス・アラマノスは頭頂部に墨で目と口を書き入れ、アクラムの父親に見立てる。

落ち着きのない子どもだったアクラムは、祖母が読んでくれる絵本「ハニーハンター」が好きだった。舞台の背後に紗幕が降りているが、そこにアニメーションが投影される。飢饉の年に、父親から止められたにも関わらず蜂蜜を取りに行ってしまった男の子の話だ。船に乗り、木に登り、蝶を追う。やがて蜂の巣から蜜を取り出すことに成功した男の子だが木のてっぺんから墜落してしまい……。

16歳になったアクラムに父親は料理の仕事を手伝うように何度も言うのだが、アクラムは聞き入れない。アクラムは料理人ではなくダンサーになりたかったのだ。

父親と息子の関係についてはよくあるもので、特に目新しいところはないのだが、祖母が教えてくれた冒険譚には胸がワクワクする。私も幼い頃は冒険話が大好きで、映画版の「ドラえもん」を毎年楽しみにしていたり、コナン・ドイルの「失われた世界(ロスト・ワールド)」に心ときめかせていたりした。今の子供もそうだろう。

子供には希望と夢を、大人ノスタルジックな感情を与えてくれる名編である。



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2018年7月15日 (日)

アニメ「フランダースの犬」オープニングタイトル

舞台はベルギー・フランドル(フランダース)地方。ウィーダ(イギリス人)の原作。

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2018年3月16日 (金)

観劇感想精選(233) 「プルートゥ PLUTO」2018大阪

2018年3月12日 森ノ宮ピロティホールにて

午後7時から、森ノ宮ピロティホールで「プルートゥ PLUTO」を観る。原案:手塚治虫、原作:浦沢直樹、上演台本:谷賢一、演出&振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ。出演:森山未來、土屋太鳳、大東駿介、吉見一豊、吹越満、柄本明。ダンサーズ:上月一臣、大植真太郎、池島優(まさる)、大宮大奨(だいすけ)、渋谷亘宏(しぶや・のぶひろ)、AYUMI、湯浅永麻(えま)、森井淳、笹本龍史(りょうじ)。監修:手塚眞。プロデュース:長崎尚史。

手塚治虫の「鉄腕アトム」と「史上最大のロボット」を浦沢直樹と長崎尚史がリメイクした漫画「プル-トウ PLUTO」を原作とした舞台。
演出と振付を担当したシディ・ラルビ・シェルカウイは、ベルギー出身の演出家兼振付家兼ダンサーである。1976年、アントワープ生まれ。父はモロッコ人、母はベルギー人である。アラン・プラテル・バレエ団在籍中の2000年に振付家としてデビュー。幼い頃から日本のマンガとアニメのファンであり、2011年には手塚治虫の生涯を描いた「テ ヅカ TeZukA」の演出も手掛けている。「プルートゥ」は2015年に初演、今回は再演となるが1月の東京公演の後、2月にヨーロッパでの公演が行われており、大阪での上演は凱旋公演となる。

人間とロボットが共存する近未来が舞台。第39次中央アジア紛争から5年が経っていた。戦場での平和維持活動も行った7体の最先進ロボットのうち5体が立て続けに殺害されるという事件が起こる。残るは2体、ユーロポールの特別捜査員であるゲジヒト(大東駿介)と日本の少年ロボット・アトム(森山未來)である。事件を知ったゲジヒトは日本に向かうことにする。ゲジヒトの妻であるヘレナ(やはりロボットである。演じるのは土屋太鳳)は日本に旅行に行きたいという願いを持つが、申請を行ったところ、奇妙な事実に行き当たる。
天馬博士(柄本明)に作られたアトムであるが、元々は博士の息子で事故死したトビオの再生ロボットとして作られたのだが、トビオとはまるで異なるために捨てられてしまい、お茶の水博士(吉見一豊)に引き取られる。お茶の水博士はアトムの妹ロボットしてウラン(土屋太鳳二役)を作っていた。ある日、ウランは道端に倒れていた男(池島優)と出会う。男は花畑の抽象画を描く……。

第39次中央アジア戦争では、トラキア合衆国のアレクサンダー大統領が「ペルシャ王国が大量破壊ロボット兵器を隠し持っている」として侵攻するという設定なのだが、これはイラク戦争そのものである。結局、大量破壊ロボット兵器は発見されず、大義なき戦いとなったのだが、その責任を取る者はいなかった。それに端を発するペルシャ王国側の復讐、更にアレクサンダー大統領(渋谷亘宏)を操る人工知能Dr.ルーズベルト(声を演じるのは吉見一豊。テディベアの格好をしている)によるロボット帝国の野望などが入り交じり壮大な陰謀劇が展開されるが、ラストでは憎しみの連鎖ではなく「砂漠を花で埋め尽くす」ような平和と愛が謳われる。

振付家でもあるシディ・ラルビ・シェルカウイの演出ということで、ダンスが効果的に用いられる。9人の本職のダンサーに加え、森山未來と土屋太鳳という日本の若手俳優の中でトップクラスのダンススキルと身体能力を誇るコンビが配され、華麗なダンスが繰り広げられる。俳優より先にダンサーとして頭角を現した森山未來のダンスが見事なのは勿論だが、日本女子体育大学舞踊学専攻出身の土屋太鳳のダンスも秀逸。土屋太鳳は初舞台であるが、大人の女性であるヘレナと少女ロボットのウランを見事に演じ分け、想像以上の演技力を示した。流石、若くして認められただけのことはある。新しい才能の誕生を歓迎したい。

ダンスの他に浦沢直樹の原画の投影、影絵、パペットなど様々な表現が試みられた舞台であり、若手とベテランの俳優陣が四つに組んだ見事な展開。終演後はオールスタンディングとなった。



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2017年11月 6日 (月)

笑いの林(96) 大阪文化芸術フェス2017「劇団アニメ座 ~逆襲のアニメ座~」

2017年10月26日 よしもと西梅田劇場にて観劇

午後7時から、よしもと西梅田劇場で、大阪文化芸術フェス2017「劇団アニメ座 ~逆襲のアニメ座~」を観る。

先月末にオープンしたばかりのよしもと西梅田劇場。大阪中央郵便局の跡地にある西梅田スクエアの西端に建てられた仮設劇場である。噂には聞いていたが本当にテント小屋のような感じで、防音のための施工はなされておらず、すぐそこが大阪駅ということで劇場の中にJR列車の走る音が絶えず入ってくる。

出演:若井おさむ(座長)、天津・向清太朗、桜 稲垣早希、R藤本(今回は脚本も担当)、キャベツ確認中、こりゃめでてーな・伊藤、セブン by セブン・玉城、スタジオカドタ、ぬまっち(松竹芸能)、がっき~、堀川絵美、虹。特別出演:小澤亜李(おざわ・あり。声優)、千本木彩花(せんぼんぎ・さやか。声優)。

弱小芸能プロダクションのアニメ座エンターテイメントが舞台。向清太朗がマネージャーを務め、アニメ芸人数名が所属しているだけの事務所である。ただでさえ仕事が少ないのに、このところ仕事がパッタリと絶えてしまった。所属芸人であったベジータ(R藤本)が大手プロダクション、ネオ・アニメーション・ジ・オリジン(ネオジオ)に引き抜かれ、ネオジオのシャア芸人・ぬまっちと共にアニメ座エンターテイメントの妨害をしているのが原因のようである。
悪いことに、カイジ芸人のこりゃめでてーな・伊藤が一千万の借金を背負ってしまう。来週、近くでニュースターオーディションという新人のためのオーディションがあり、優勝賞金が一千万だと知ったアニメ座エンターテイメントの所属芸人は、賞金目当てでニュースターオーディションに参加する。

まず若井おさむによる影アナでスタート。天津・向のセリフは大半が説明台詞であり、彼が狂言回し役を務める。
劇団とはいっても、お笑いの演目では「コーナー」に入る場面が多くあり、堀川絵美(高橋真梨子の「for you...」を歌う)とこりゃめでてーな・伊藤(田原俊彦の「抱きしめてTonight」を歌真似入りで歌う)による歌合戦、がっき~&セブン by セブン・玉城VSキャベツ確認中による演技対決、早希ちゃんとスタジオカドタによる「インテリ対決」、全員参加による「声優対決」などがある。

インテリ対決であるが、お勉強が苦手な早希ちゃんとスタジオカドタによる対決であるため(早希ちゃんは「インテリ」を「インターナショナルなテリーマン」だと思っているようである)珍答続出。
答えをフリップに書いて出すクイズ対決なのだが、「安土桃山時代に茶道を完成させた人物は誰?」という問い(答えは千利休)に早希ちゃんは「茶々」と回答。「茶道」も「ちゃどう」と読んでいた。スタジオカドタは「千ノ里丸」と回答。「せんのりきゅう」という音はあっていたようだが、なぜか「九」に一画入れて「丸」にしてしまったようである。

「現在の大相撲4人の横綱のうち3人の名前を書きなさい」というクイズ。スタジオカドタは「横綱は世界に一人しかいないんじゃないのか?」と頓珍漢なことを言う。スタジオカドタは「白龍(はくりゅう)」「白砲(はくほう)」「山大国(やまたいこく)」と書いて正解ゼロ。早希ちゃんも「場ゑ戸(元大関の把瑠都のことのようだ。もう引退してるし、そもそも横綱にはなっていない)」「白方龍(はくほうりゅう)」「米二式(こめにしき)」という滅茶苦茶な回答であった。

最後は英訳問題。「彼は働いていないどころか仕事を探してもいない」という、「not but構文」を用いる問題なのだが、早希ちゃんは「英語で答えるんですか?」と珍発言。二人とも「not but構文」は知らず、早希ちゃんは「He bijines(businessのことのようだ) not job,not job,not job」と“not”を繰り返すだけの文章。スタジオカドタは長く書いたが、英語の体をなしているところがほとんどなく、やはりというかなんというか、二人とも正解を一つも出せずに終わった。


声優の二人は、オーディションの審査員という設定で登場。芸人達の芸を見る。声優対決では、芸人書いたセリフを読み上げてもいた。小澤亜李のことを向は「言葉が荒れてる」と言っていたが、結構な毒舌で、それも悪意があるのではなく、普通にしていても言葉がきつくなってしまうようで、近くにいると困るタイプかも知れない。

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2017年2月 4日 (土)

観劇感想精選(198) ミュージカル「わたしは真悟」

2016年12月23日 ロームシアター京都メインホールにて観劇

午後6時から、ロームシアター京都メインホールで、ミュージカル「わたしは真悟」を観る。



ミュージカル「わたしは真悟」は、楳図かずおのマンガをミュージカル化したもの。高畑充希と門脇麦のダブル主演である。演出&振付は、フィリップ・ドゥクフレ。ドゥクフレは、アルベールオリンピックの開会式と閉会式の演出を担当した人物であり、シルク・ドゥ・ソレイユのミュージカルの演出も手掛けている。ということで、アクロバティックな能力が要求されたり、高いところに昇ったり、巨大ブランコを漕いだりと、身体能力も求められる。高所恐怖症だったりしたらまずキャスティングされない。

脚本:谷賢一。出演は、高畑充希と門脇麦の他に、大原櫻子、小関裕太、成河(ソン・ハ)等。作曲:トクマルシューゴ&阿部海太朗。作詞:青葉市子。振付&美術:エリック・マルタン、演出協力:白井晃。白井晃は、来年5月にサウスホールでドイツの劇作家の作品を演出する予定である。


今日は1バルコニー席の下手側で鑑賞。この席はかなり酷い。壁を背にした3列目であり、椅子が高めに置かれていて、足を浮かせて足置きに乗せないといけない。長い時間、この状態では苦しいのだが、更にステージを見るには体を捻る必要がある。完全に設計の失敗である。京都というのはまともな施設を造ろうとすると何かと横槍が入るところである。バルコニー席も本来なら2列で一杯一杯のはずなのだが、2000席に拘ったためにかなり無理矢理押し込められた感じである。



333メートルの鉄塔(東京タワー)のてっぺんに、マリン(本名は山本真鈴。演じるのは高畑充希)とサトル(本名は近藤悟。演じるのは門脇麦)が登っているのが発見され、地上で一騒動起きる。マリンは、「今が人生で一番素敵な瞬間なのかも知れないね」と語り、「大人になったら別の生き物になっちゃうんだよ」という風なことも言う。楳図かずおの原作だけに、こうしたイノセンスの要素がかなり濃い。

産業用アームロボットが暴走する。人々はロボットを「壊せ!」と叫び、ロボットがある女を殺したのを確認すると「死んだ」と口々に言う。ロボットの人格(成河)は、「こうして私は生まれた、といいます」と語り始める。ロボットの人格は、人格のコアな部分は希薄であると同時に、全世界の機械と動植物に働きかける神のような力を持つため、客観性と神の視座を合わせ持つことを意味する、「~といいます」という伝聞系の言葉を多用する。

ロボットの人格は、「初めに言葉ありき」と聖書の言葉を引用した後で、「しかし私は意識を持つ前に言葉を持ってしまったといいます」と言い、なぜそういうことになったのかを探ろうとする。

実は、マリンと町工場の息子であるサトルが、工場の社会科見学を機に小学6年生の夏休みに恋に落ちて、この産業用アームロボットに二人の情報を始めとするあらゆる情報を打ち込んだのだ。ロボットの人格は、マリンとサトルを両親と認識し、それぞれの名前から一時ずつ取って、自らを真悟と名乗る。周囲の人々は真悟を怖れるが、サトルの同級生のしずか(大原櫻子)だけは真悟を守ろうとする。

外交官の娘であるマリンは夏休みが終わったら家族でロンドンに渡ることになっていたのだ。マリンはサトルにそれを言い出せない。二人で結婚するにはどうすればいいのか。子供を作るにはどうしたらいいのか。「333のテッペン」にその答えが隠されているようである。

ロンドンに渡ったマリンは、自身がなぜか病院にいることに気づく。記憶はほぼ失っていた。サトルという名前は覚えていたが、それが誰なのかは思い出せない。
イギリスでは日本人と日本人排斥運動が起こっていた。ロビンという青年(小関裕太)がマリンを連れ出す。ロビンはマリンを連れ出し、地下室に監禁した上、「外では戦争が起こっており、核爆弾が使用された」と嘘をついて、マリンと強引に結婚しようとする。マリンも日本人も見下された存在だった。日本人は「技術はあるが独創性がない」「金はあるが美意識はない」と侮られていた。

一方、サトルも電気店の店頭でパソコン(まだPC98である)をいじっている時に、真悟が暴走していることを懸念した三人の黒服の男取り囲まれていた。真悟には日本人全ての情報が入っている(一瞬だが、モニターに「ウメヅカズオ」という名が映るのを確認することが出来る)。汚れた大人達は真悟を怖れたのだ。
真悟は両親を守ると同時に、二人の間に愛があったことを伝えようとする。


イノセントな愛の物語である。バタイユ的愛と書いてもいいだろうが、12歳の少年少女なので、そこまでには達していないだろう。子供から大人へと移り変わろうとするほんの一瞬に感じる「子供であったことの尊さ」を上手くすくい取ってるように感じた。

高畑充希も門脇麦も微妙な年齢の少女と少年を演じていたが共に好演。歌唱力も万全で、高畑充希はファルセットの多用や、主旋律の後で対旋律に回るという成河とのデュオなど、難しいナンバーを振られていたがそつなくこなした。

予想以上の健闘だったのが大原櫻子。子供子供した子供を演じるのはそう簡単ではないはずだが、上手く少女らしさを出した演技をしていたように思う。彼女は二世タレントなので筋も良いのだろう(二世タレントだから必ずしもセンスを受け継ぐというわけではないのはご承知の通りであるが)。


ドゥクフレの演出は、モニターや背後のスクリーンに投影される映像を多用したもの。ステージを目一杯使っているが、ロームシアター京都メインホールはこの演出をするにはキャパが大きすぎるように感じた。

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