音楽とはかくも怖ろしいもの ヘルベルト・ケーゲル指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団 ビゼー「アルルの女」「子供の遊び」「カルメン」
「音楽とは素晴らしいものだが、それを職業にしようというのは怖ろしいことである」(ジョルジュ・ビゼー)
ビゼーのこの言葉は、彼が作曲家として生前に評価を得ることが出来なかったことに由来しています。ビゼーというのもまた不幸な人で、オペラ史上最高の有名作である「カルメン」の作曲家でありながら、その「カルメン」の初演は無残なまでの失敗。
その原因は、スペイン情緒を多く取り入れた音楽に聴衆が戸惑ったことと、主人公が貧しい労働者階級の女であることが不評を買ったとされています。「カルメン」の初演時の批評が残っており、中には「舞台上で殺人を繰り広げるなどなんて不謹慎だ」という、「お前はアホか」と言いたくなるような勘違い批評があることはかなり有名ですが、その他にも「旋律がない」「深みがない」「音楽的価値が皆無」という今から見ると首をかしげたくなるような批評に満ち溢れています。「カルメン」は再演では大成功しますが、その時にはビゼーは病気ですでに世を去っており、結局、彼自身が成功の美酒に酔うことはありませんでした。
そのビゼーの作品を指揮しているヘルベルト・ケーゲル。この人も不幸な人です。
声楽家としての才能をまず見出されたケーゲルですが、児童合唱団などに属するには年齢制限にひっかったため、ピアニストを目指し、それも第二次大戦に兵隊として参加した際に手を負傷したため叶わず、指揮者になりますが、指揮者として最も必要な資質である人心掌握術にケーゲルは長けてはいませんでした。このCDで演奏しているドレスデン・フィルハーモニーとも後に険悪な関係に陥ります。
そんな不幸な音楽家同士の組み合わせによる演奏。これが異様な演奏になっています。
ケーゲルの指揮するドレスデン・フィルは完璧なアンサンブルを聴かせますが、余りに完璧すぎるため、聴いているうちに怖くなってくるほどです。また音も非常に美しいのですが、楽器が鳴らしているのに人間の声に聞こえるような「この世ならぬ」と形容したくなるような美しさに満ちた表情を見せる瞬間が何度もあります。
「アルルの女」は劇付随音楽、「子供の遊び」はタイトルからもわかるとおり愛らしさを追求した作品、「カルメン」はオペラのための音楽で、いずれもエンターテインメント指向の音楽のはずですが、ケーゲルの指揮すると楽しさは余り感じられず、逆に「彼岸の響き」のようなゾッとする音楽に触れることになります。
拳銃で頭を撃ち抜いて自殺するという、壮絶な最期から、「狂気の名指揮者」として再評価が進むケーゲル。しかし、狂気を剥き出しにするタイプの指揮者ではなかったため、残された音盤の全てに狂気が刻印されているわけではありません。しかしながら、このビゼー作品集だけは誰もがその特殊性を聞き分けることの出来る得意な音盤です。
音楽とは実は怖ろしいものです。その怖ろしさを知りたくない人は、このCDは聴かないで下さい。
ビゼー/L’arlesienne Suites.1 2 Jeux D’enfants Carmen Prelude: Kegel / Dresden.po
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1548年創設という途轍もなく長い歴史を誇るオーケストラ、シュターツカペレ・ドレスデン。ブロムシュテットは1975年から1985年までシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者を務めていますが、シェフをちょくちょく変える傾向のあるシュターツカペレ・ドレスデンのトップに君臨した指揮者としては10年は長い方です。
今日紹介するCDも放送用音源からCD化されたもの。
アルヴォ・ペルトは、1935年エストニア生まれ。初期は当時の流行にならって前衛的な作品を書いていましたが、次第に独自の路線を歩むようになり、ロシア正教に改宗してからは宗教的崇高さを目指したとも思える美しい作品を作っていきます。癒しのムードに満ちた作品の数々は1990年代に一世を風靡しました。
1975年の録音ですが、旧ソ連は軍事や宇宙開発競争に力を入れすぎたためか、音楽大国でもありながら、録音技術は貧弱で当盤も録音に関しては満足のいくものではありません。
現代音楽の解釈者として定評のあったルネ・レイボヴィッツが何故かリーダーズ・ダイジェストに録音した「ベートーヴェン交響曲全集」。初心者向けということもあってか、普通はベートーヴェンの交響曲全集などには入っていない「アテネの廃墟より“トルコ行進曲”」なども収録されています。
生前、「ポール・マッカートニーのような作曲家になりたい」と話していた武満徹。しかし、武満は何よりも「響き」の作曲家であり、メロディーメーカーとして評価を受けることは結局ありませんでした。
カラヤン&ベルリン・フィルの最大の特徴はサウンドの威力、最大の美点は耽美的ともいうべき磨き抜かれたサウンドですが、チャイコフスキーの「悲愴」はそのいずれにおいても、このコンビの実力を示すのに最も適した曲でした。
ブラームスというとどうしても、「暗い」「重い」というイメージがありますが、メカニックに優れたスコットランド室内管弦楽団を振ったマッケラスは、そうしたブラームスに対する先入観を覆す鮮やかな演奏を繰り広げています。
今日紹介するのはラウタヴァーラの比較的初期の作品を集めたCDで、鳥とオーケストラのための協奏曲「カントゥス・アークティクス」、ピアノ協奏曲第1番、交響曲第3番を収録。


その初演者にして、のちに曲を献呈されたムラヴィンスキーによる交響曲第8番。ソ連で録音されたものが、のちに西側ではオランダのフィリップス・レーベルから出ましたが、フィリップス盤は長らく廃盤となっています。そこでタワーレコードが独自に出したのが上のCD。
1984年に第1回キリル・コンドラシン国際指揮者コンクールに優勝し、そのダイナミックな指揮姿と、強烈なエネルギーを放射する音楽作りで世界的な注目を浴びつつあった広上淳一がデビュー録音に選んだのはレスピーギの「ローマ三部作」。音楽史上屈指の華麗なオーケストレーションを誇る曲ですが、それだけに過去の名盤も多い三部作を、それも東京でも上位とは目されていない日本フィルハーモニー交響楽団(日フィル)を指揮して録音するというのはかなりの勇気がいることだと思われますが、そこはさすが広上というべきか、30代前半の指揮者が日本のオーケストラを指揮して録音したとは思えない、華麗な音絵巻を広げていきます。
ショスタコーヴィチの交響曲第10番は1985年の録音、ラトルが30歳を迎える年に行われました。この録音が行われた当時、「ショスタコーヴィチの交響曲第10番といえばカラヤン」といわれるほど、カラヤン盤のイメージが強力だったのですが、そこに若きラトルが登場したということで、カラヤンとラトルどちらが上なのかと雑誌上で話題になったりもしています。ショスタコーヴィチの交響曲が盛んに録音されるようになった現在では少し影が薄くなった印象は否めませんが、それでもラトルの若き日の記録として重要なCDです。

収録曲は、ジョン・ウィリアムズ作曲「レイダース 失われたアーク」のメインテーマ、ダニー・エルフマンの「スパイダーマン」のテーマ、ジョン・ウィリアムズの「シンドラーのリスト」のテーマ、ヴァンゲリス作曲の「炎のランナー」、「007」より“ジェームズ・ボンドのテーマ”、ジェームズ・ホーナー作曲「タイタニック」のメインテーマ、アラン・シルヴェストリの「フォレスト・ガンプ」組曲、ジョン・バリーの「ダンス・ウィズ・ウルヴス」、ジョン・ウィリアムズ作曲「ハリー・ポッターと賢者の石」組曲など。
「ペール・ギュント」組曲第1番と第2番、演奏会用序曲「秋に」、「交響的舞曲集」を収録。2000年にバーミンガムのシンフォニー・ホールで録音されました。
ムーティの指揮は極めてドラマティックですが、時に威圧的でもあり、好悪を分かちそうではありますが、世界最高レベルとされるスウェーデン放送合唱団とスウェーデン室内合唱団の晴朗なアンサンブルは抜群で、合唱に関しては数多いモーツァルトの「レクイエム」の録音の中でもトップを争うものと思われます。
歌劇「さまよえるオランダ人」序曲、歌劇「タンホイザー」序曲、歌劇「ローエングリン」第1幕前奏曲、歌劇「ローエングリン」第3幕前奏曲、楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲、楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死の全6曲を収録。
1968年のプラハの春で、西側に亡命したアンチェル。亡命直前に、やはりチェコ・フィルを指揮した「わが祖国」のライヴ盤(こちらは音楽祭の方の「プラハの春」での収録)が最近になって出たようですが、アンチェルとチェコ・フィルの「わが祖国」といえばやはりこの1963年盤。名盤中の名盤として知られています。
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