カテゴリー「おすすめCD(ポピュラー)」の45件の記事

2008年10月25日 (土)

柴田淳 『ひとり』

「しばじゅん」こと柴田淳の発表したアルバムの中でも最も内省的な1枚、サードアルバム『ひとり』(ドリーミュージック)。
しばじゅんさんは1976年生まれ、私は1974年生まれで2歳違いです。正確な世代区分でいうと微妙に異なったりしますが、同世代といっていいでしょう。『ひとり』には「我らの世代の歌」ともいうべき痛切さをもった楽曲が並んでいます。

柴田淳 『ひとり』 アルバムタイトルからして『ひとり』ですが、「未成年」や「今夜、君の声が聞きたい」など壮絶なまでの孤独感が伝わってくる曲があり、“あなたの信じてるもの、それで私は壊されてしまったの”“こんな私責められない日が来るから”いった歌詞の出てくる「虹」、幸せな時代の思い出からの急転直下と偽りの幸せの告白が痛々しい「あなたとの日々」、元カレへの決別を歌う「コンビニ」、“私がひとりぼっちになって引退を余儀なくされそうになった時があった”というしばじゅんさんの告白を裏付けるような「ひとり歩き」など、人間の内面を突く曲が、これでもかとばかりに並んでいます。

中でも「今夜、君の声が聞きたい」は我々の世代の感情のど真ん中を突く直球で、1970年代生まれの人は必聴といっても過言ではありません。

柴田淳/ひとり

柴田 淳 - ひとり

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2008年9月16日 (火)

柴田淳 シングル「愛をする人 Orochi's Theme」

ブログパーツでも宣伝している、「しばじゅん」こと柴田淳のニューシングル「愛をする人 Orochi's Theme」。映画「おろち」の主題歌として、しばじゅんさんが書き下ろした曲で、曲自体は先に発売されたアルバム『親愛なる君に』にも収録されていましたが、シングルには実際に映画「おろち」のラストに流れるバージョン違いのものが収められています。

柴田淳 シングル「愛をする人 Orochi's Theme」 シングルバージョンはシンプルなピアノ伴奏によって始まりますが、ストリングス、ギターなどが加わって徐々に盛り上がっていくという編曲。心の乱れ(情念?)を表すようなピアノとストリングスの動きが印象的な仕上がりになっています。

カップリングされた「お父さんより。」は、実家を出て行く娘を持つ父親の複雑な心境を唄った歌。しばじゅんさんのアルバム『わたし』に「一人暮らし」という、一人暮らしを始める娘と母親の気持ちを唄った歌がありますが、それと一対を成しているような曲です。
しばじゅんさんのピアノ弾き語りによる、7分を超える曲。

私には妹が一人いますが、送り出すときはこのような心境になるのだろうな、と思いますね。

柴田淳/愛をする人: Orochi’s Theme (+dvd)(Ltd)

愛をする人−Orochi’s Theme [CD+DVD]<初回限定盤/特典付>

柴田淳/愛をする人: Orochi’s Theme

愛をする人−Orochi’s Theme<通常盤/特典付>

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2008年8月27日 (水)

徳永英明 『SINGLES BEST』

徳永英明のシングル曲を集めたアルバム『徳永英明 SINGLES BEST』(ユニバーサル・シグマ)。デビュー曲「レイニーブルー」から最新シングル「愛が哀しいから」まで、全28曲を収録した2枚組CD。

徳永英明 『SINGLES BEST』徳永英明のオリジナルシングルだけを集めたTypeA(左のジャケット写真がそれです)、「VOCALIT」からの3曲も収録したTypeB、オリジナルシングルにビデオクリップの入ったDVDがついたTypeCの3種類での発売です。ジャケットも別々のものが用いられているので、それも含めてお好みのものをチョイス出来ます。

作詞は徳永を含めて複数の人物が、作曲は大半を徳永英明が手掛けていますが、徳永の年齢と時代の移り変わりがよく出ており、ラヴソングばかりの最初期(「レイニーブルー」、「輝きながら…」、「風のエオリア」、「最後の言い訳」、「恋人」など)、社会的なメッセージも含む次の時代(「壊れかけのRadio」、「Wednesday Moon」、「Love Is All」など)、よりナチュラルな歌詞とメロディーが奥行きと立体感を増した最近と、徳永の成熟を知る上でも興味深いアルバムです。

徳永英明/Singles Best: Type A (Ltd)

 

徳永英明/Singles Best: Type B (Ltd)

 

徳永英明/Singles Best: Type C (+dvd)(Ltd)

SINGLES BEST<通常価格盤>

?永英明 - SINGLES BEST (29 TRACKS VERSION)

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2008年8月12日 (火)

YMO 『浮気なぼくら』

もう解散することを決めたYMOが「かわいいおじさん路線」を一度やってみようということで作ったポップなアルバム『浮気なぼくら』。オリコンのシングルチャート1位を目指して作られた「君に、胸キュン(浮気なバカンス)」(松田聖子の「ガラスの林檎」に阻まれて2位どまり。ちなみに「ガラスの林檎」の作曲はYMOの細野晴臣である)を含む歌アルバムです。

YMO 『浮気なぼくら』 「君に、胸キュン」以外の曲を集めたインストアルバムも作られましたが、最新盤は2枚組で、本編とインスト版の両方が収められています。

『浮気なぼくら』に収録された曲で私が好きなのは、「邂逅」と「音楽」。いずれも坂本龍一が作った曲です。
「音楽」は坂本が娘である坂本美雨のために作った曲。歌詞で現代音楽の様々な手法を紹介し、坂本美雨に向かって、一緒に歌える日を待っているという一種のメッセージソングでもあります。

「邂逅」は、“今までの僕さよなら”というタイトルとは正反対のフレーズが印象的な作品。今までの自分とさよならして新たなことや人と邂逅するという、YMOのラストに相応しい内容が盛り込まれていると見ることも出来ます。

本人達がお気楽指向で作ったアルバムなので、本格的なポップスが好きな人には向いていないかも知れませんが、楽しい一枚であることは間違いありません。

YMO/浮気なぼくら & インストゥルメンタル

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2008年8月11日 (月)

マーティ・フリードマン 「music for speeding」

元メガデスのギタリストで、現在は日本に住んで音楽活動を行っているマーティ・フリードマンのCDを紹介します。

マーティ・フリードマン 「music for speeding」 2002年に発表された「music for speeding」(ユニバーサル)。

2002年というとマーティが日本に移住する年。レコーディングはアメリカで行われていますが、マーティの自筆による日本語メッセージ(漢字、ひらがな、片仮名を自在に使っています)がライナーノーツに記されています。

メタルスタイルによるインストゥルメンタルアルバムということで重厚で攻撃的ではありますが、メロディーラインは美しく、時にセクシーですらあり、マーティのロマンティックな資質が窺われます。日本盤のみマスネの「タイスの瞑想曲」のメタル版編曲入り。アメリカのミュージシャンはクラシック音楽もよく研究していますが、演奏にそれを直接生かすことは邪道とされているようで、「タイスの瞑想曲」が日本盤のみのボーナストラックとして入っているのはそのことと関係があるのかも知れません。アメリカ音楽界のそうした堅苦しさから逃れるためにマーティは日本に来たのでしょう。

Marty Friedman/Music For Speeding

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2008年8月 1日 (金)

湯川潮音 「灰色とわたし」

湯川潮音のセカンドアルバム「灰色とわたし」(EMI)を紹介します。

湯川潮音 「灰色とわたし」 湯川潮音は1983年生まれのシンガーソングライター。ペ・ドゥナ、香椎由宇らが主演した映画「リンダ リンダ リンダ」で、脇役でありながら途轍もなく歌の上手い女の子が登場しますが、その子を演じていたのが湯川潮音です。

東京少年少女合唱団出身の湯川潮音。メジャー第1弾で実質的なデビューアルバムである「湯川潮音」では高音をセーブしていましたが、本作「灰色とわたし」では、伸びやかで涼風のような美声を聴かせてくれます。

サウンドもギターを中心にアコースティックなものを追求。これも湯川の美声を一層引き立てています。

声自体の魅力だけでも勝負できる数少ない女性シンガー、湯川潮音の会心作です。

湯川潮音/灰色とわたし

湯川潮音 - 灰色とわたし

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2008年7月23日 (水)

サキタハヂメ 『MUSICAL SAW SONGS"S"』

ミュージカルソウ奏者、サキタハヂメのデビューアルバム『MUSICAL SAW SONGS"S"』紹介します(Napsack Records/MUSIC KAB)。

サキタハヂメ 『MUSICAL SAW SONGS サキタハヂメは大阪出身。91年に都家歌六の弾くミュージカルソウに魅せられて、独学でミュージカルソウを学び、アメリカのミュージカルソウ・フェスティバルで2度優勝するなど、ミュージカルソウ奏者として確固たる地位を築きました。新谷キヨシと組んだ音楽ユニット「はじめにきよし」のメンバーとしても活躍中。

ミュージカルソウというのは、西洋ノコギリ(ソウ ソー SAW)を弦楽器様の弦で弾いて音を出すというもの。
サキタハヂメの奏でるミュージカルソウはグラスハープのような澄んだ音を出します。

サキタのオリジナル曲である、「光のさす方へ」、「SAW FUNNY RUG」、「VIOLA」、「TOMORROE」の4曲と、ハチャトゥリアンの「ガイーヌ」より“剣の舞”、ヘンデルのアリア「私を泣かせて下さい」を編曲した「楽園」、フランス民謡「きらきら星」、服部良一の「蘇州夜曲」、小松なお子の「Flower Wind」、アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌(ダニー・ボーイ)」を収録。

サキタハヂメの奏でる澄んだミュージカルソウで「蘇州夜曲」を聴いていると、水晶玉に閉じ込められた蘇州の街が見えるような、ファンタスティックな気分になります。

また、ミュージカルソウをバチで叩いて弾いた「きらきら星」のユーモアセンスもなかなか。

サキタハヂメ/Musical Saw Songs: S

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2008年7月 9日 (水)

MIKO 「Parade」

光武理絵による一人ユニット、MIKOのファーストアルバム「Parade」を紹介します。PLOPレーベルからの発売。

Miko 「Parade」 MIKOこと光武理絵に関する情報は、大阪生まれで横浜在住、幼少時からピアノを学び、高校時代にギターを始め、最近、コンピューターによる音楽作りを始めたということ以外はほとんどわからず、「MIKO」、「Miko」、「miko」のどれが正式表記なのかもはっきりしませんが、坂本龍一も才能を認めたアーティストであるとのこと。

Mikoのサイト http://www.mikohere.com/ 

Mikoのマイスペース  http://www.myspace.com/mikohome

ファーストアルバムである「Parade」では、ヴォーカル、エレキギター、アコースティックギター、ピアノ、シンセサイザー、コンピューター打ち込みを全て一人で行っており、Mikoの多才ぶりが示されています。

アンビエント系のサウンド、ウィスパーボイス、たゆたうような音楽作りなど、いかにも教授が好みそうな音楽世界が展開されていますが、全てを一人でこなすほどの力量がありながら、良い意味で力の抜けた音楽が実に心地良く、ヒーリングムードにも満ちています。

Miko (Jp)/Parade

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2008年6月26日 (木)

遊佐未森 『スヰート檸檬』

大正時代と昭和初期の歌謡曲をカバーしたアルバム『檸檬』(EMI)に続く、遊佐未森のカバーアルバム第2弾『スヰート檸檬』(ヤマハ・ミュージック)。

『スヰート檸檬』は『檸檬』の続編というべきアルバムで、昭和時代の流行歌を遊佐がカバーしています。

遊佐未森 『スヰート檸檬』 収録曲は、「モン・パリ」、「銀座カンカン娘」、「港の見える丘」、「ゆらりろの唄」、「青春サイクリング」、「憧れは馬車に乗って」、「アルプスの牧場」、「上総」、「花言葉の唄」、「憧れのハワイ航路」の全10曲。

昔懐かしい、といっても私がリアルタイムで聴いたことのある流行歌は入っていないのですが、名曲の数々を未森さんの涼しげな声で楽しめるのが最大のポイント。アレンジも往時のものを追求しており、却って新鮮に聞こえます。その中にあって、未森さん自身に声によるバックコーラスアレンジは21世紀的で、古くさい要素を一掃しています。
『檸檬』に比べると収録曲の全体的な知名度が低め(それでも有名曲揃いですが)なのが弱点ではありますが、日本の歌謡曲を語るには、まず必聴のアルバムでしょう。

遊佐未森/スヰート檸檬

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2008年6月18日 (水)

柴田淳 『親愛なる君へ』

「しばじゅん」こと柴田淳のニューアルバム『親愛なる君へ』(ビクター・エンタテインメント)。シングル「カラフル」、「ふたり」の2曲を含む全10曲が収録されています。

柴田淳 『親愛なる君へ』 彼女が38℃の熱を出した時に作ったピアノ曲のタイトルが「38.0℃」がだったり(ソフトペダルを踏み続けて弾いたような繊細な曲調。熱でボーッとした状態を表現しているとみることも出来る)と、ユーモアも発揮されていますが、「椿」や「十数えて」などタイトルや歌詞、アレンジに日本的な情趣が感じられるものが含まれていたり、彼女の声の魅力である高音の冴えではなく、敢えて低めの張った声で勝負している曲があったりと、意欲的な挑戦も目立ちます。アメリカ南部の酒場で歌うのが似合うような、ジャジーな雰囲気を持つ「メロディ」というナンバーも聴き物。

柴田淳/親愛なる君へ

柴田 淳 - 親愛なる君へ

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2008年5月31日 (土)

柴田淳 シングル「ふたり」

blogパーツでも紹介している柴田淳のニューシングル「ふたり」(ビクター・エンタテインメント)。

柴田淳 「ふたり」 私も購入したので(宣伝しておいて購入しないというのはなしですので)紹介します。

「ふたり」は、希望と不安、縮めたい距離と保ちたい関係、求める心と求めきれない心といったアンビバレントな揺らぎが感じられる歌詞と、シンプルなピアノ伴奏、柴田淳のしっとりとした歌声が三位一体(というほど大袈裟ではないかも知れませんが)となって、リスナーの心を優しく掻き乱します。

優しく掻き乱すとはどういうことか、実感したいなら曲を聴いてみることをお薦めします。実感出来るはずです。

柴田淳/ふたり

Jun Shibata - ふたり - Single

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2008年5月14日 (水)

坂本龍一 『1996』

坂本龍一のアルバム『1996』を紹介します。タイトル通り1996年に発表されたアルバムで、それまでに坂本が発表した作品をピアノ三重奏の形で演奏しています。

坂本龍一 『1996』 「ラスト・エンペラー」より“メインテーマ”と“Rain”、映画『バベル』でも用いられた「美貌の青空」(『NEO GEO』より)、「戦場のメリークリスマス」、「シェルタリング・スカイ」、「嵐が丘」、「リトル・ブッダ」、「ハイヒール」などの映画音楽の他、オリジナル曲である「1919」(レーニンの演説入り)、「Before Long」、「青猫のトルソ」、「ゴリラがバナナをくれる日」、「A Tribute to N.J.P.」などを収録。

坂本の奏でるピアノは抒情的であり、ヴァイオリンとチェロがそれに彩りを添えたり、主旋律を交代で奏でるという形の編曲が主ですが、曲によっては、弦楽器が現代音楽しているものもあり、若い頃は現代音楽の作曲家を目指していた坂本の原点を知ることの出来るアルバムでもあります。

坂本龍一/1996

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2008年5月10日 (土)

ザ・コアーズ 「DREAMS ドリームス:アルティメット・コアーズ・コレクション」

1990年代に一大旋風を巻き起こしたアイリッシュ・ポップ(アイルランドのポップス)。コアー家の四兄妹によって結成されたザ・コアーズも、アイリッシュ・ポップ隆盛の一翼を担った名バンドです。
そんなザ・コアーズの2枚目のベストアルバムが「DREAMS ドリームス:アルティメット・コアーズ・コレクション」(アトランティック・レコーズ)。

ザ・コアーズ 「DREAMS ドリームス:アルティメット・コアーズ・コレクション」 全20曲を収録。ほぼ全ての曲が他のアルバムにも収録されていますが、リミックスバージョンなど、このアルバムでしか聴けないものも多く含まれています。

キャッチーなメロディーの曲が並んでおり、タイトルにもなった「ドリームス」、イ・ウンジュがカバーした「Only When I Sleep(夢の中で抱きしめて)」、「夢を見るだけ」といった夢シリーズは特に秀逸。

フィドル、ティン・ホイッスルなど、アイルランドのトラディショナル音楽にはおなじみの楽器が用いられており、また全世界に影響与えたアイリッシュ・ポップ独特の発声法(香港のフェイ・ウォンや日本の安藤裕子らも強い影響を受けている)の美しさを楽しむことも出来ます。

なお、歌詞と日本語対訳がついていますが、日本語訳は直訳風で、解釈がなされていないため、英語を自分で訳さないと楽しめない曲も含まれているのが難点です。

Corrs/Dreams: Corrs Collection

The Corrs

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2008年4月24日 (木)

俺は最高の国に生まれたんじゃなかったのか ブルース・スプリングスティーン 『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』

アメリカのロックシンガー、ブルース・スプリングスティーンが1984年に発表したアルバム『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)を紹介します。

ブルース・スプリングスティーン 『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』 ブルース・スプリングスティーンは1949年生まれ。アメリカの労働者階級出身者の代弁者ともいうべきロックシンガーです。彼がアメリカ最高のロックミュージシャンの一人という名声を完全に勝ち得たのは本作『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』においてでした。

表題作でもある「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」は、おそらくアメリカ史上初めてベトナム帰還兵のことを歌った歌。
戦いたくもないのに、労働者階級出身者だったが故に真っ先に戦場に送られ、帰国したら帰国したで居場所がないという絶望を歌ったものでした。

しかし、この曲が発表された1984年はロサンゼルス・オリンピック開催の年であり、スプリングスティーンが突きつけたメッセージは、祝祭ムードによって完全に誤解されてしまいます。人々は音楽の意味を理解しようとせず、気分だけを受けいれたのでした。

「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」のサビの部分だけが熱狂的に迎え入れられ、ベトナム帰還兵の歌が何故か愛国の歌として受けいれられてしまいます。もうアメリカ人は自分達のことを客観的に見つめる目を失っていたのでした。

『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』に収録された曲はいずれも深刻なメッセージがキャッチーなメロディーに乗せられていますが、人々はメッセージを楽曲から切り離してムードだけを楽しもうとしたのでしょうか。とにかく、すでにアメリカが抱える闇がここまで来てしまっていたということを期せずして世界中に知らせるアルバムにこの『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』はなってしまったということになります。

以後、スプリングスティーンは、内容よりも気分が支配的になってしまったアメリカと再度対峙していくことを余儀なくされました。

スプリングスティーンの音楽も優れたものですが、時代の証言としても貴重な一枚です。

Bruce Springsteen/Born In The Usa

Bruce Springsteen

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2008年4月11日 (金)

遊佐未森 『休暇小屋』

遊佐未森のアルバム『休暇小屋』(ヤマハ・ミュージック)を紹介します。

遊佐未森 「休暇小屋」 表題作である「休暇小屋」のほか、NHKみんなのうたで流れた「クロ」、カシオペア座のことを指す「冬の日のW」(アンジェラ・アキによる英語ナレーション入り)、ほぼ全編英語詞の「faraway」(日本語の詞が数小節入る)、ピアノ曲「エニシダ通り」、ピアノメインの「コハク」、ピアノ五重奏曲のスタイルを取る「あやとり」などを収録。

全曲、遊佐未森の作詞&作曲です。ピアノも全て未森さんの演奏。

浮遊感と癒しに満ちた遊佐のメロディーと声が魅力。

遊佐の書く歌詞はアルバムによって傾向が異なりますが、このアルバムではエッセイにより近い、明るさと生活感に満ちた親しみやすいものが中心になっています。

遊佐未森/休暇小屋

遊佐未森

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2008年3月13日 (木)

物語性豊かな歌詞と意欲的なメロディーの世界 柴田淳 『月夜の雨』

柴田淳通算5枚目のアルバム『月夜の雨』。ビクター・エンタテインメント移籍後のアルバム第1弾です。

柴田淳 『月夜の雨』 しばじゅんさんこと柴田淳の魅力は物語性豊かな歌詞と、予想を適度に裏切るメロディー進行。普通なら「もう下げるかな」というパターンのところで逆に音を上げたりします。しばじゅんさんはモーツァルトが嫌いだそうですが、モーツァルトの時代のように、音楽の冒険がしにくかった時代の音楽(古典派)が嫌いというのは彼女の作風からいって肯けます。

スキャットによる「プロローグ」に始まり、それを受ける第1曲「青の時間」の怖ろしく後ろ向きな歌詞、振られる女を歌った「HIROMI」の繊細さ、「涙ごはん」の愛らしさと不安の同居、卒業シーズンにピッタリの「花吹雪」、大人のムードに溢れる「真夜中のチョコレート」、ブラックコメディー(?)王子様シリーズ第3弾「つまおうじ」、愛を求める女心とそれをわからない男へのもどかしさを歌う「人魚の声」、文学的といってもいい歌詞を持つ「紅蓮の月」、切なさ一杯の「君が思えば…」、しばじゅんさんの私小説的世界(?)「私の物語」など、全曲がシングル作品としても通用するクオリティの高い一枚です。

柴田淳/月夜の雨

柴田 淳

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2008年3月12日 (水)

追悼・上田現 元ちとせ 『ハイヌミカゼ』&『ノマド・ソウル』

シンガーソングライター、音楽プロデューサーの上田現氏が肺がんのため47歳で死去。
ということで、上田現が手掛けた最も有名なアーティストである元ちとせのアルバムを2枚紹介します。

元ちとせ 『ハイヌミカゼ』 まずは、上田現、元ちとせを共にメジャーにした「ワダツミの木」を収めた『ハイヌミカゼ』(エピック)。上田が作詞・作曲。編曲を手掛けた「ワダツミの木」は、元ちとせが奄美大島出身ということもあり、南国の伝説風のストーリーを持った作品です。

『ハイヌミカゼ』には他にも「君ヲ想フ」、タイトル曲でもある「ハイヌミカゼ」(作詞作曲編曲:上田現)なども収録。日本レコード大賞ベストアルバム賞受賞作。

元ちとせ/ハイヌミカゼ

元ちとせ 『ノマド・ソウル』 『ノマド・ソウル』(エピック)には上田現の作詞・作曲・編曲による「千の夜と千の昼」が収められています。この曲はCM曲としてブレイクしています。

このアルバムでは他に、「トライアングル」の作詞・作曲・編曲、「月齢17.4」の作詞・作曲・編曲、「ウルガの丘」の編曲も上田が手掛けています(「ウルガの丘」の作詞・作曲は松任谷由実)。

元ちとせ/ノマド ソウル(Hyb)

上田現のことばかり語っているのも何なので、元ちとせについても書いておきます。
鹿児島県の奄美大島に生まれ育った、ご存じ元ちとせは、島唄ともいわれる奄美民謡を子供の頃から歌って育ったということもあり、独特の発声によるスケールの大きな表現が特徴。彼女の歌い方には、人々だけに向かってというよりも、自然を含めた全世界に対して発信しているような印象を受けることがあります。独特の空気の振るわせ方がそういうイメージを生み出しているのでしょうか。

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2008年3月11日 (火)

夏川りみ 「沖縄の風」

石垣島出身の夏川りみ。そんな夏川りみが、沖縄の歌を沖縄の言葉(ウチナーグチ)で歌ったアルバム「沖縄の風」(ビクター・エンタテインメント)。ウチナーグチとはいえ、本土の言葉(ヤマトグチ)とは少し異なるだけのものが多いのでそのまま聴いて楽しめます。ライナーノーツにはヤマトグチ対訳付き。

夏川りみ 「沖縄の風」 コンサートでおなじみの「童神」(ヤマトグチバージョン)や「島々清しゃ(しまじまかいしゃ)」、「ファムレウタ(子守唄)」、「芭蕉布」、そして夏川りみの出世作である「涙そうそう」も収録。

南の島々の風と空気と潮の匂いを運んでくるような、夏川の表情豊かな声と、サウンドが印象的です。

夏川りみ/沖縄の風 (Ltd)

夏川りみ

夏川りみ

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2008年2月27日 (水)

mama!milk 「Gala de Caras」

アコーディオンの生駒祐子とウッドベースの清水恒輔によるインストゥルメンタル・デュオ、mama!milk。日本は勿論、海外でも数多くのツアーをこなしている二人のオリジナル・サード・アルバムが「Gala de Caras」です。RAFTMUSICレーベル。

mama!milk 「Gala de Caras」 音楽の乗って世界中を旅するような趣のあるmama!milkの音楽。このアルバムでも、スペイン風の楽曲、タンゴ、ワルツなど、様々な音楽が奏でられており、異国情緒溢れる、イメージ喚起力豊かな世界が拡がっています。

表はCD、裏面はDVD使用であり、DVDディスクには林海象監督によるイメージ映像が収録されています。

mama!milkはライブツアー活動が中心で、CDも他のミュージシャンとのコラボレーションアルバムが多く、この「Gala de Caras」は最新のオリジナルアルバムですが、2003年の発売であり、新作の発表も待たれるところです。

Mama Milk/Gala De Caras

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2008年2月24日 (日)

YMO 「BGM」

「Yellow Magic Orchestra」、「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」で、ピコピコ電子音によるお気楽な音楽を発表してきたYMO(Yellow Magic Orchestra)が突如として路線変更した重厚なアルバム「BGM」。重い内容のアルバムに「BGM」というタイトルをつけてしまうのもアイロニカルというか、いかにもYMO的です。

YMO 「BGM」 「BGM」制作期には、メンバーの坂本龍一が精神的に苦しい状態で、よく意識的なサボタージュを行っていたそうで、スタジオに三人が揃うということも少なくなっていきます。

細野晴臣は、「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」的なものを続けるのではなく、本気を出してラディカルなものを作ろうということで、「ファン切り離し」をコンセプトとし、シンセサイザーの音もチープなものではなく、本格的な電子音楽的なものを求めていきます。

高橋幸宏の力強いドラムが印象的な「U・T」(YMOの三人によるギャグ的コメント入り)、ミニマル・ミュージックの影響を受けた「ハッピー・エンド」(作曲:坂本龍一。タイトルは細野晴臣が所属していたバンド、“はっぴいえんど”に由来。「YMOはもう終わりでいいんじゃない」という隠れたメッセージと細野への嫌がらせの意味があったと坂本はのちに語っている)、細野晴臣による本格的インストゥルメンタル「マス」、細野晴臣と高橋幸宏の二人だけで作り、のちに坂本に「ぼく(坂本)は、このトラッキングに参加してないんですよ。悲哀っすねえ」(アルバム「UCYMO」ライブノーツより)といわれることになる「CUE」、耳の錯覚を利用した無限音階が面白い「来るべきもの」など、ポピュラリティーを意識しない作品が並びます。

ポピュラリティーを意識しないということで、「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」がミリオンセールスとなったYMOも、この「BGM」は30万枚の売り上げしか記録できませんでした。しかし完成度は高く、今もYMOの最高傑作に挙げる人の多いアルバムです。

YMO  Bgm

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