カテゴリー「日本映画」の74件の記事

2017年9月 8日 (金)

コンサートの記(316) 原田知世35周年アニバーサリー・ツアー「音楽と私」 in 京都

2017年9月1日 左京区岡崎のロームシアター京都サウスホールにて

午後7時から、左京区岡崎のロームシアター京都サウスホールで、原田知世35周年アニバーサリー・ツアー「音楽と私」 in 京都 2017を聴く。今年7月に発売になった原田知世のデビュー35周年記念リメイクアルバムによるツアー公演の今日が初日である。

原田知世のコンサートに行くのは2度目、前回は大阪のなんばHatchでの公演であった。

休憩時間15分を挟む二部制であり、曲目はアルバム「音楽と私」に含まれるものが中心で、公演時間はアンコールも含めて2時間弱とそれほど長くない。

ステージ後方のスクリーンに映像が投影される演出がなされていたが、休憩中に公演主催者からのお詫びの言葉があった。2階席後方からは映像がよく見えないとのことであった。私は今日は2階席の2列目で聴いていたが、2階席後方からの角度を軽く計算するとおそらく映像はほとんど見えないと思われる。

映画「時をかける少女」の映像が映り、「音楽と私」の第1曲でもある同名曲でスタート。知世ちゃんがステージ下手から現れた瞬間、「可愛い!!」と声を上げる女性客が数名。原田知世も今年の11月で50歳なのだが、複数の人から「可愛い!!」と言われるアラフィフ女性というのも凄い。


松たか子もそうだが、「本業が女優である歌手」はトークも含めて商品という感じがする。今日も原田知世はお客さんから笑いを引き出すなどトークが巧みである。

ツアー初日ということもあってか、歌詞が飛ぶなどのミスがいくつかある。
キャンディーズの「年下の男の子」を振り付きで歌い、チャーミングでとても良かったのだが、思いっきり失敗してしまい(Bメロを歌うべきところをAメロで歌おうとしてしまった)、その時は流石に「あー! やっちゃったー!」という仕草を見せた。
トークでは、「皆さんが凄く温かく、凍り付くような場面があったりしましたが、皆さんが溶かしてくれた」と上手くまとめていた。女優だなあ。
音楽番組に出演した時の話や近況報告などもある。来年の春から始まる朝の連続ドラマに出演が決まったのだが、朝ドラの出演は二度目で、前回の「おひさま」では始まってから1週間ぐらいで死んでしまい、後は遺影という役だったため、今度はなるべく生き延びたいと言って笑いを取っていた。この夏には映画を撮っていたそうだが、詳細はまだ明かせないそうである。
今日の赤を貴重としたドレスは「ミュージックステーション」に出演した際にも来ていたものだが、「ミュージックステーション」に久しぶりに出演した時に思ったのは、「テレビでしか見たことのない人の中にいる」という事で、「デビューした頃には、『夜のヒットスタジオ』、『ベストテン』。『トップテン』なんかに出てたんですけど、制服のままスタジオに向かって衣装に着替えて本番」ということで「浮いてるなあ」と感じていたのだが、それは今もほとんど変わっていないと言ってまた笑いを取っていた。

本編ラストとなる「くちなしの丘」の前半部分では、原田知世のソロギター弾き語りがある。歌い始めてからすぐに止まってしまい、再スタートして今度はなんとか上手くいった。

アンコールは3曲。今日から9月ということで、竹内まりやの「September」が歌われ、ラストは「時をかける少女」のボサノバ風編曲(2007年版。ギター伴奏:伊藤ゴロー)で締められた。

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2017年7月26日 (水)

これまでに観た映画より(94) 「デルシネ エル・シュリケンVS新昆虫デスキート」

2017年6月5日 大阪・玉江橋のABCホールにて

午後7時から、大阪・玉江橋のABCホールで、後藤ひろひと監督の「デルシネ エル・シュリケンVS新昆虫デスキート」に参加する。

デルシネは、観客にエキストラとして参加して貰い、撮影を行った後で編集し、上映を行うというもの。つまり「出るシネマ」である。今月1日から、「エル・シュリケンVS新昆虫デスキート」の大阪上映は始まっており、今日は5日目、7回目の上映ととなる。

今日のゲストは、桜 稲垣早希、ゆりやんレトリィバァ、NMB48より川上礼奈(愛称は「れなぴょん」)、林萌々香(愛称は「モカ」)、古賀成美(愛称は「なる」)。
後藤ひろひとも今は吉本所属で、NMBもそうであるためオールよしもとなのであるが、やはりNMB48はアイドルということで、NMBのファンはノリが違うようだ。


まず後藤ひろひと監督の挨拶があり、ゲスト陣が登場して、早速撮影に入る。観客が3組に分けられ、ホール内、ホールロビー、屋外(ABCテラス)で撮影が行われる。私は屋外組で、後藤ひろひと監督自らの演出が行われる。といっても演技らしい演技をする必要はない。屋外組の撮影には早希ちゃんと古賀成美、そして主演のエル・シュリケン(若手漫才コンビの片割れである)が参加した。

早希ちゃんは今日は清楚な水色ワンピース姿である。ゆりやんレトリィバァも白いワンピースだったが、キャラ的に清楚にはならない。ゆりやんはそういう人ではないので。

ヒーローであるエル・シュリケンを励ますシーンで、後藤監督が、「早希ちゃん、そこでキスしてみようか」と提案。早希ちゃんも「30を過ぎたので大丈夫です」と快諾して、後藤監督に、「お、開き直ったな」と言われていた。

早希ちゃんと古賀成美は「売れない芸能人」という設定で路上ライブのシーンも撮った。

エンドクレジットタイトル用の撮影も行う(早希ちゃんの動きを全員が真似るというもの)。


編集を行っている間、ステージでは、ゆりやん、早希ちゃんによるお笑いネタと、NMB48のメンバー3人によるトークが行われる。


ゆりやんが行ったのは、淀川長治の物真似。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「シザーハンド」、「ターミネーター」を日曜洋画劇場で放送する時の解説の物真似である。「シザーハンド」は全てのネタバレを語ってしまうという設定である。ゆりやんが本当に映画好きで観察熱心だということがわかるネタであった。

早希ちゃんはアスカのコスプレで、「関西弁でアニメ」をやる。ちなみに、早希ちゃんが「関西以外の人」と聞くと、3人が手を挙げる。一人は岡山県の人、二人は共に愛知県から来ていたのだが(面識はない)、早希ちゃんが「愛知県。ということは名古屋弁ですか?」と聞くと一人は首肯し、一人は「三河弁」と答える。早希ちゃんは「どちらかが嘘を付いてますね」と言うが、名古屋弁(尾張弁)も三河弁も愛知県の方言である。愛知県内では尾張の人が三河の人を見下すという傾向があるようである。


NMBの3人によるトーク。まずは好きな映画の発表。川上礼奈は「ホームアローン」、林萌々香は「プラダを来た悪魔」、古賀成美は「時をかける少女」(アニメ版)を挙げる。
ただ、川上礼奈も林萌々香もテレビで放送されるたびに観てはいるものの、録画をして何遍も観るということはしていないようである。

続いて、「出てみたい映画のジャンル」。川上玲奈は「学園もの」、林萌々香は「青春ストーリー」、古賀成美は「時代劇」。
川上礼奈は、自称「うどんの国のお姫様」で、香川県丸亀市出身なのだが、NMBのメンバーから「つり目なのでいじめっ子っぽい」と言われるそうで、「いじめっ子役をやってみたい」そうである。私は丸亀には去年(2016年)、行ったのだが、つり目の女性が顕著に多いということは確認済みである。川上礼奈も典型的な丸亀女子の顔なのだと思われる。
林萌々香は「チアダン」を観たそうで、運動部や運動部のマネージャーの青春を描いた映画に出たいそうだ。
古賀成美は最初はどんな役をやりたいのか説明できなかったが、町娘役をやりたいそうである。


ゲストの二人(早希ちゃんは再びワンピースに着替えていた)も再び登場し、NMBのメンバーと共に客席2階席に移動して映画を鑑賞する。


第1作では正義のヒーローとだけしか知らされていなかったエル・シュリケンだが、この映画では普段はプロレスラーとして活躍していることがわかる。
脚本・監督:後藤ひろひと。出演:宮﨑香蓮、久保田悠来、板尾創路、エル・シュリケン、木村祐一、蛍原徹(雨上がり決死隊)、ほんこん、原西孝幸(FUJIWARA)、武藤敬司、辻よしなり、兵動大樹、ケンドーコバヤシ、桂三度、トータルテンボス、山崎静代(南海キャンディーズ)、藤崎マーケット、トレンディエンジェル、シソンヌ、森次晃嗣ほか。

西ゆりこ(宮﨑香蓮)は、幼い頃、テミス研究主任である父親の西博士(蛍原徹)と共に謎の怪物に襲われ、西博士は絶命するもゆりこはエル・シュリケンに助けられた。成長したゆりこは、テミス研究所に入り、東爽太(久保田悠来)と二人で運営を行っている。しかし、テミス研究所にはろくな仕事は入ってこず、お金がないので水まで止められそうになっている。
そんなある日、ゆりこは、子供の頃に助けて貰ったエル・シュリケンがプロレスの試合に出ていることを知る。
依頼人がやって来た。木村祐一(本人役で出演)である。最近、吉本の芸人のネタがつまらなくなってきているという。それには蜥蜴沢博士(板尾創路)が発明した脳の活動を制限する成分を持つ新昆虫デスキートの影響があり……。

沖縄国際映画祭のために作られた作品であり、堅苦しさは全くない純然たる娯楽映画である。観客参加の場面はなくても成立するようにはなっているが、「スクリーンに映ってみたい」という希望のある人にとっては良い思い出になるだろう。

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2017年2月20日 (月)

これまでに観た映画より(87) 「竜馬暗殺」

大分前に録画しておいた日本映画「竜馬暗殺」を観る。黒木和雄監督作品。1974年の映画である。脚本:清水邦夫&田辺泰志、音楽:松村禎三。出演:原田芳雄、石橋蓮司、松田優作、中川梨絵、桃井かおり、田村亮ほか。
16ミリモノクロ映像であり、トーキーであるが黒バックに白抜き文字で字幕が入るなど、活動写真を意識した作りになっている。

慶応三年十一月十三日から竜馬が暗殺される十一月十五日までの三日間を描くフィクション。

坂本竜馬(原田芳雄)が、近江屋の土蔵に移る場面から始まる。
中岡慎太郎(石橋蓮司)は、近江屋の娘の妙(桃井かおり)を寝取られた恨みから竜馬を斬ろうとしている。近江屋の土蔵に竜馬が潜伏先を移すように仕向けたのも土佐藩邸から遠ざけるためであった(これは事実とは異なり近江屋は土佐藩邸の目の前である)。
竜馬は寺田屋で幕吏二人を殺害したかどで指名手配されているのだが、人相書きを竜馬は「真情あふるる軽薄な顔をしちょる」と言う。「真情あふるる軽薄」というのは脚本を手がけた清水邦夫の出世作「真情あふるる軽薄さ」(蜷川幸雄演出の舞台)から取られた遊びである。

近江屋の土蔵に入るとき、竜馬は向かいの家の女、幡(中川梨絵)を見て惹かれる。その後、男と女の関係になる竜馬と幡だったが、幡は新撰組隊士の情婦であった。

幡の弟である右太(うた。松田優作)は薩摩藩士に頼まれて竜馬を暗殺するべく狙っている。

かくて、中岡慎太郎、右太、薩摩藩に狙われている竜馬は微妙なバランスの上で生きている。中岡慎太郎とも右太とも時には味方、時には敵だ。

「ええじゃないか」の喧噪が溢れるなか。竜馬は変装して中岡慎太郎を探しに出かける。途中で右太を捕まえ、変装させて、陸援隊士から迫られて窮地に陥っている中岡を連れ出し、中岡も変装させる。

そして運命の十一月十五日。風邪を引いた竜馬は土蔵から近江屋の母屋の2階に移る。竜馬は中岡に「幕府を倒すのは薩長に任せちょけ」と言った上で、「その上で薩長を討つ」と真意を打ち明けるのだった……。


原田芳雄の色気ある竜馬だけが語られることの多い映画だが、確かに原田芳雄の男くさくも色気満点の竜馬は魅力的である。ただ、薩長に幕府を討たせた上で薩長を討つと語る竜馬像はありそうでなかなかなかったものであり、新鮮に映る(史実ではないと思われるが)。

墓地でのロケが多いが、近江屋の裏手は寺町で墓地がたくさんあったという事実もあるが、生と死の近しさが暗示されているようでもある。

坂本竜馬は近眼という設定であるが、これは司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』で語られたフィクションである。竜馬の視力についてはわかっていないが、目が悪かったという証言はなく、庶民でも眼鏡を掛けることがさほど珍しくなかった時代だが、竜馬が眼鏡を持っていた形跡もない。また船を操る海援隊の隊長であったことから視力に問題はなかったのではないかと思われる。
また竜馬が二年前から革靴(ブーツ)を履いているという設定になっているが、有名な写真は写真館にあったブーツをたまたま履いて撮影したもので、日頃からブーツを愛用していたという事実はない。そもそも、身長が170cm以上はあった大男(当時の成人男性の平均身長は150cmちょっと)で目立つため、更に目立つブーツを履くような愚行はしない。

この映画では、刺客は中村半次郎(外波山文明)ら薩摩藩の手のものという設定になっている。薩摩を討つ計画が露見していたということである。

松村禎三のギターなどを中心としたジゴロな雰囲気の音楽も実に良い。

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2017年2月19日 (日)

これまでに観た映画より(86) 「渇き。」

DVDで日本映画「渇き。」を観る。中島哲也監督作品。原作:深町秋生(『果てしなき渇き』)。脚本には中島哲也の他に、自主制作映画の女王といわれた唯野未歩子(ただの・みあこ)が参加している。出演:役所広司、小松菜奈、妻夫木聡、清水尋也、黒沢あすか、二階堂ふみ、橋本愛、青木崇高、森川葵、高杉真宙、星野仁、派谷恵美(はたちや・めぐみ)、國村隼、オダギリジョー、中谷美紀ほか。2014年の作品。

2012年のクリスマスイブ。さいたま市内のコンビニで三人が刺殺される事件が起こる。元大宮北署の刑事で、今は警備会社に勤める藤島昭和(役所広司)は、たまたま現場の近くにいて現場の警備をしたため、取り調べを受ける。一方、今は別居している藤島の妻・桐子(黒沢あすか)から藤島に電話があり、娘の加奈子(小松菜奈)が行方不明だと知らされる。加奈子は成績優秀で誰にでも愛される子だったが、裏には別の顔を持っており……。

麻薬、売買春、児童ポルノなど過激な内容が盛り込まれているため、R-15指定となっている。

妻夫木聡が演じる藤島の後輩刑事・浅井はいつもヘラヘラとにやけており、あめ玉をしゃぶるという「サイコ」でアンソニー・パーキンスが演じていたノーマン・ベイツを想起させるようなところがある。

短いカットが矢継ぎ早に続くことで展開される作り。中島監督の「告白」を想起させるような狂騒シーンもある。

3年前の話と2012年の8月が何の脈略もなく絡み合って出てくる。加奈子は好きだった緒方(星野仁)が自殺したことで、喪失感を抱くのだが、葬儀の時に緒方に口づけするなど、異様な行動を起こしていた。その後、ボク(という役名。清水尋也)は加奈子を好きになって野球部を退部するが、そのことでいじめられるようになる。それでも加奈子はボクをかばってくれるが、実はそれは罠だった。

薬の幻覚の中のように、シャッフリングされた展開が続く。悪魔のような加奈子という女の子に翻弄される人々。彼女の行方は中学時代の担任である東理恵(あずま・りえ。中谷美紀)が握っていた。

バイオレンス映画であるが、狂気を抱えた藤島を演じる役所広司の怪演と、可憐な悪魔を演じる小松菜奈の演技が魅力的である。

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2017年2月 5日 (日)

楽興の時(13) ロームシアター京都オープン1周年記念イベント「Kyoto Gathering」

2017年1月31日 左京区岡崎の京都モダンテラスにて

午後6時から、ロームシアター京都パークパレス2階にある京都モダンテラスで、ロームシアター京都オープン1周年記念イベント「Kyoto Gathering」に参加する。写真、映画、音楽などの芸術を取り上げる催し。映画監督の林海象(京都造形芸術大学時代に見知った関係である)、女優の鶴田真由、DJ・作曲家&プロデューサーの沖野修也(おきの・しゅうや)らが参加する。バンド演奏は、Based on Kyoto.とNAOITO☆.Aの2組。


京都モダンテラスに入るのは初めてである。入ってすぐに林海象とバッタリ出会ったので挨拶。林さんは、「取材?」と聞く。取材ではないが、色々なものに接して取り入れようとしているのは事実である。林監督が「取材?」と聞いたのは、おそらく私が色々聞く性分だったからだと思われる。林監督にお目にかかるのは13年ぶりぐらいである。Facebookで繋がっているので、そう遠い感じはしなかったのだけれど。林監督は少し小さくなられたように見えた。林監督は元田中で「バー探偵」という店も経営されているのだが、私は酒が飲めないので行きようがない。

鶴田真由さんも普通にいる。舞台でお見かけした時には気がつかなかったのだが、小柄な方である。

芸術紹介のイベントなのだが、参加者は多くは賑やかに歓談しており、写真や映像をじっくり見ている人は余りいない。

沖野修也のDJタイムが1時間ほど続く。ジャズセッションの音楽が流れていたので、私もコードに合わせて口笛を吹いたりした。


午後7時過ぎから、まず、写真のイベントが行われる。スクリーンが降りており、そこに写真が投影される。
まずは、志津野雷(しづの・らい)による水の写真集『ON THE WATER』(青幻舎)からの映像。その他にバスク地方(フランスとスペインの境にある地域。著名な出身者にモーリス・ラヴェルなど)の男性などの写真もある。
 
鶴田真由は、「今日、新幹線で来たんですけど、富士山が見えたので、写真を撮ろうと思ったら(撮っている間に)すぐ終わってしまって」と言って、写真を撮る時も「撮るよりまず見る」ことが大切だというようなことを語っていた。
 
アラーキーこと荒木経惟の最新作も投影される。荒木経惟は近年は病気のため、自宅から出ることもままならないそうだが、自宅にオブジェを置いて、それを撮ることで活動を続けているという。


続いて映画のイベント。まず、鶴田真由が監督したドキュメンタリー映画の予告編3本が流される。それぞれ、日本の伝統工芸である染め物、石垣島の女性、アイヌの人々の姿を収めている。
鶴田真由は、「現代に生きることに慣れてしまって、他の部分が弱っているような気がする」と語る。ポール・ボウルズ原作、ベルナルド・ベルトリッチ監督の「シェルタリング・スカイ」にも繋がる考え方である。

林海象監督は、日本映画は京都が発祥の地であることを述べ、牧野省三が日本各地を巡回上映していたと語る。更に京都モダンテラスのある左京区岡崎について、「夜に来るところじゃない」と語る。左京区岡崎は白河上皇の時代に、京・白河と並び称された白河の地である。六勝寺という、6つの「勝」の寺の入る寺院がかつては建ち並んでいた。今でも岡崎は平安神宮を始めとする神道、金戒光明寺や真宗大谷派岡崎別院などの寺院、更には新宗教の施設も多い宗教地域でもある。
林監督によると、「今でも祇園の石塀小路なんかに行くと、新選組の幽霊が出るといわれている」と語る。ただ、「一番会いたい人って、もういない人じゃない」とも言う。野田秀樹の「パンドラの鐘」にも、「(亡くなった知り合いに会ったら、退きながら嫌悪の)おお! ではなくて(手を取って喜びの)おお!」だろうというセリフを書いている。映画の宗教的側面である。村上春樹もエッセイでそうしたことを書いている。なんだか人の意見ばかり引用しているようだけれど。
林監督は、下鴨神社で映写会も行っているという。「神様は映画知らないから(映画が出来たのは100年ちょっと前に過ぎないという意味)」ということで、映画を神事として奉納したのだという。下鴨神社の関係者も喜んで協力してくれたそうだ。

林監督の映画「BOLT」の予告編が流れた後で、同じく林監督による短編映画「GOOD YEAR」が上映される。上映時間は23分である。出演は、永瀬正敏と月船さららの二人。子役二人も登場するが重要な役ではない。2014年12月24日の山形が舞台。永瀬正敏演じる男は零細工場を営んでる。その工場には「幽霊が出る」という噂や「水槽には人魚がいる」などという噂がある。
品川ナンバーの車に乗った女(月船さらら)が、雪道でハンドルを取られ、零細工場のそばに突っ込む。男は女を助け、工場内に運ぶ。シューベルトの「アヴェ・マリア」の音に気づいて女は目覚める。女は自分の名前を「あべ・まりあ」だと告げる……。

林監督が、山形にある東北芸術工科大学(京都造形芸術大学の姉妹校)の教授を務めているということもあって、雪の山形で撮られた映画である。東北ということで東日本大震災にも触れている。

私が、ちょうど今取り組んでいる戯曲に少し重なる部分もある。
ラストはバンドタイム。ノリノリである。Based on Kyoto.もNAOITO☆.Aも変拍子の多い曲を奏でる(4分の4拍子の曲もある)。空いたスペースでは人々が踊り、一昔前のディスコ(クラブよりもディスコだろうな)のようになっていて楽しい。私も拍を取りながら動いた。

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2016年12月15日 (木)

武満徹 「乱」より

武満徹作曲による黒澤明監督作品「乱」の映画音楽。「乱」はシェイクスピアの「リア王」の翻案です。黒澤明は、予めラッシュフィルムにクラシック音楽をつけておき、「これによく似た音楽を書いてくれ」と注文することが多かったのですが、これもそのケースです。この映像には出て来ませんが、マーラーの交響曲第1番「巨人」第3楽章ほぼそのままの葬送行進曲が出てきたりします。そのことで武満は不満だったのですが、黒澤は武満が好きではなかったティンパニの多用を要求。出来上がった音楽をスタジオで試聴している際に薄笑みを浮かべている黒澤を見た武満は激昂。「あなたのような人とはもう二度と仕事はしない!」と言ってスタジオを飛び出し、関係は破綻しました。

話は変わりますが、「乱」のラストシーンに出てくる少年は、若き日の野村萬斎(野村武司)です。

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2016年12月12日 (月)

これまでに観た映画より(84) 「大鹿村騒動記」

DVDで日本映画「大鹿村騒動記」を観る。阪本順治監督作品。原案:延江浩。出演:原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、三國連太郎、冨浦智嗣(とみうら・さとし)、瑛太、小野武彦、でんでん、石橋蓮司ほか。主題歌:忌野清志郎「太陽の当たる場所」

原田芳雄の遺作となった映画である。

長野県にある実在の村、下伊那郡大鹿村が舞台である。大鹿村では、300年の伝統を誇る村歌舞伎が行われているのだが、出演者達が村人に扮して、歌舞伎の景清もの(「六千両後日文章」)を演じる。

長年に渡って景清を演じてきた風祭善(原田芳雄)。18年前、妻の貴子(大楠道代)と友人の治(岸部一徳)が駆け落ちして村から出て行って以来、善は一人者を貫いている。かつては鹿牧場を経営した善だが、今は「ディア・イーター」という、店名そのままの鹿料理の店を一人で営んでいる。そこに、雷音(らいおん)というキラキラネームの青年(冨浦智嗣)がアルバイトの面接にやって来て即日採用される。雷音が声が高くて華奢だが、実は性同一障害を抱えており、姿形は男だが、内面は女だ。

治と貴子が大鹿村に18年ぶりに帰ってくる。実は貴子は前頭葉が萎縮するという、アルツハイマーとは別の認知症になり、治は自分では支えきれないとして、夫である善に貴子を帰しに来たのだ。

大鹿村にはリニア新幹線が通る計画があり、村民達は推進派と賛成派に分かれて意見が衝突、景清ものの上演が危うくなる。

実は戦中には、男達が出征したため、景清ものは女歌舞伎として上演されており、貴子は畠山重忠の妻の道柴を演じていた。記憶に障害のある貴子だが、道柴のセリフは覚えている。

そんな中、台風23号の上陸による土砂崩れにより、女形として道柴を演じていたバス運転手の一平(佐藤浩市)が負傷。舞台に出られなくなる。そこで、村役場の総務課に勤める織井美江(松たか子)が貴子に道柴を演じさせれば、昔のことも思い出せるのではないかと提案し……。

大傑作というわけにはいかないが愛すべき映画である。
歌舞伎というと、男が女を演じるという倒錯があるのだが、性同一性障害を抱える雷音が郵便配達夫の寛治(瑛太)に恋をして、一応受け入れられたりという歌舞伎的要素が持ち込まれている。高麗屋のお嬢さんである松たか子は村歌舞伎に出演せず、大楠道代が舞台に上がるのだが、大楠道代の役名は字こそ違えど「たかこ」であり(松たか子の「たか子」は漢字で書くと「隆子」である)、転倒が見られる。松たか子の役名は美江だが愛称は「みっちゃん」で、やはり大楠道代と逆転している。
歌舞伎の手法はこのほかでも用いられている。

三國連太郎と佐藤浩市の親子が出ているが、同じシーンには出演していない。三國連太郎も佐藤浩市も出演している場面はさほど多くないのだが、共に重要な役割を担っている。

原田芳雄の見事な歌舞伎役者ぶりと、大楠道代の「可愛らしいおばあちゃん」ぶりも見事である。

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2016年12月 6日 (火)

これまでに観た映画より(83) 「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」

DVDで、アニメ映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」を観る。総監督:庵野秀明。実写(声優達が登場)なども挿入した凝った造りである。

神の子・イエスを殺したことで罪を負い、「行き詰まった」人類の歴史を終わらせ、新たなる人類(ニーチェがいうところの超人であろうか)の再生に賭けるゼーレにより、人類は終焉に至ろうとする。

終焉はLCL溶液のような、集合的無意識の海へと帰って行くことであり、自我を溶解させて「居心地の良い」胎内のようなものへの回帰である。そこでは、自分と他人は融合しており、全ては溶け合っていて、他者を傷つけることも他者から傷つけられることもない。

ただ、そうした「死」にもに似た甘い心境は否定される。「真心」=「真の心」でもって、人間は現状であっても想像力を持っていれば自己を否定することなく世界を再生させることが出来る。現実は「居心地が悪い」=「気持ち悪い」ものだが、そう感じられるということもまた生きているということの証なのである。死者は「気持ち悪い」と感じることすら出来ないのであるから。

結果的に、人類は肯定されており、人生は賛美される。「生きる」勇気を奮い立たせてくれるような、優れた映画であった。

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2016年10月25日 (火)

これまでに観た映画より(82) 「クヒオ大佐」

DVDで映画「クヒオ大佐」を観る。吉田大八監督作品。出演:堺雅人、松雪泰子、満島ひかり、中村優子、新井浩文、安藤サクラ、内野聖陽ほか。


実在の結婚詐欺師・クヒオ大佐(映画「カタクリ家の幸福」では忌野清志郎がクヒオ大佐をモデルにしたリチャード佐川を演じている)を主人公にしているがノンフィクションではなく、湾岸戦争の起こった1990年代初頭を舞台にしたオリジナルストーリーである。

現在、大河ドラマ「真田丸」で主演を張っている堺雅人がタイトルロールであるジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐(勿論、偽名である)を演じている。内野聖陽や新井浩文など「真田丸」に出演している俳優も脇を固めており、堺雅人(「真田丸」で真田幸村役)と内野聖陽(同じく徳川家康役)とが直接対決するシーンがこの映画にはある。もっとも、直接対決とはいえ、リアルな設定のシーンで行われるわけではないわけだが。

二部構成であるが一部はかなり短く、第二部が本編となる。第一部の主演が内野聖陽である。

実在したクヒオ大佐は生まれつき鼻が高かったかもしくは整形といわれているが、この映画ではなぜ鼻が高いのかは触れられていない。鼻だけ高い顔も変だし、いつもアメリカ海軍パイロットの制服や軍服姿というのも妙なのであるが、なぜ女達がクヒオ大佐に惹かれるのか、その心理が描かれている。彼女達は騙されていると薄々感づいており、忠告もされながら愛してくれる人を求めてクヒオ大佐に靡いてしまうのである。

妙ちきりんなクヒオ大佐と彼に心傾く女達。その姿は愚かしいが、それ故に人間というものが愛おしく感じられる作品でもある。カオスな展開もあり、生まれついての詐欺師であるクヒオ大佐の妄想のシーンなども入り込んで、登場人物のみならず映画も変な出来で特段優れた作品ではないのだが、楽しめる仕上がりにはなっている。インテリ役が似合う堺雅人が、英語が出来ないのにアメリカ人であると嘘をついて窮地に陥る間抜けな詐欺師に扮し、イケイケ系やキャリアウーマン役の多い松雪泰子が奥手の女性を演じるなど、パブリックイメージとは真逆の役に臨んでいるのも面白い。

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2016年10月17日 (月)

これまでに観た映画より(81) 「おと・な・り」

レンタルDVDで日本映画「おと・な・り」を観る。2009年の作品。熊澤尚人監督作品。ジャニーズ事務所が制作に協力しており、エグゼクティブ・プロデューサーとしてSMAP解散騒動で有名になった藤島ジュリーK.の名がクレジットされている。出演:岡田准一、麻生久美子、谷村美月、岡田義徳、池内博之、市川実日子、郭智博、とよた真帆、森本レオ、平田満ほか。

物音や声、音楽などの聴覚による繋がりを描いた大人のためのファンタジーである。現実的には「絶対に」と断言しても良いほどあり得ない設定で描かれているのだが、深層やメタレベルで感じると微笑ましく思える秀作である。麻生久美子演じる登川七緒はシベリウスを聴き、物語の鍵となるはっぴいえんどの「風をあつめて」を歌詞を完全に記憶して歌えるなど、女性としては極度にスタイリッシュ、更にいうと「実在感が乏しい」のであるが、これは意図的に浮き世離れしたキャラクター造形がなされたものだと思われる。実際に劇中に「リアリティ」について問われる場面がある。

東京にある瀟洒だが古くて壁の薄いアパートが舞台。ファッション誌担当のカメラマンをしている野島聡(岡田准一)と花屋で働く登川七緒は隣人である。聡はフランス語の独習をしている七緒の声に、七緒は聡がコーヒー豆を挽く音に惹かれているのだが、二人とも手痛い失恋の経験があり、異性に対しては奥手で、お隣さんで且つ惹かれるものがあるのに顔を合わせようとはしない。また七緒は「風をあつめて」を好んで歌っており、聡の撮影事務所の同僚である平川由加里(市川実日子)から「鼻歌お姉さん」と呼ばれている。

聡はカリスマモデルで俳優のSHINGO(池内博之)のソロ写真集のカメラマンを務めたことで業界内で名を挙げるが、内心では風景写真家として成功することを望んでおり、ファッションモデルの撮影は意に染まぬ仕事で、カナダに渡って風景写真家としての足がかりを作る計画を立てていた。そんな折り、SHINGOが失踪する。SHINGOの彼女である関西弁の上田茜(谷村美月)はSHINGOがいると思って聡の部屋を訪ね、SHINGOがいないとわかっても「SHINGOを待つ」と言って聡の部屋に住み着いてしまう。

七緒は花屋で働きながらフラワーデザインの資格を取るべく勉強しており、また近くフランスに留学する予定でフランスの独習を続けている。基本的には善良な性格なのだが、プロ意識や美意識はかなり高い。
七緒がよく立ち寄るコンビニの店員、氷室(岡田義徳)が七緒に接近する。だが、氷室には恋心とは別の意図があった。

「音」に焦点を当ててリアルを逆照射する映画であり、現実的な意味での蓋然性に関しては意図的に下げられている。そのためファンタジーと捉えられるのであるが、夢だらけの物語ではなく、シリアスな要素も数多く取り入れられている。「音」に代表される間接描写が多く、使い方もお洒落且つ上手い。
設定に関してはリアリズムの手法は採られていないが、心の動きに描き方に関しては説得力があり、見応えのある映画であった。

1日に最低2本は映画を観るなど勉強家でストイックな岡田准一と、天才肌の女優である麻生久美子の組み合わせも実に良い。

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