カテゴリー「フランス」の44件の記事

2019年3月24日 (日)

コンサートの記(533) 矢崎彦太郎指揮 大阪交響楽団第180回定期演奏会

2013年10月18日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、ザ・シンフォニーホールで大阪交響楽団の第180回定期演奏会を聴く。今日の指揮者はフランスものの日本におけるスペシャリスト矢崎彦太郎。

オール・ドビュッシー・プログラム。「牧神の午後への前奏曲」、「ピアノと管弦楽のための幻想曲」(ピアノ独奏:児玉麻里)、バレエ音楽「遊戯」、交響詩「海」~3つの交響的スケッチ、という演目。「牧神の午後への前奏曲」、交響詩「海」以外は滅多に演奏されない曲である。楽譜は「牧神の午後への前奏曲」がジョベール版、他の3曲はデュラン新全集版を使用している。

今日は3階ステージ上手上方の席。補助席で、一つ前の普通の席は1000円高いはずだが、誰も座っていない。
在阪4つのプロオーケストラの中で、唯一自前の練習所を持っていない大阪交響楽団。本拠地は大阪府堺市であるが、元々私営の楽団だけあって、堺市からの補助も受けにくいのであろう。練習会場は演奏会毎に異なり、演劇でいう稽古場ジプシーのような状態だという。

「牧神の午後への前奏曲」。指揮者の矢崎はこの曲だけノンタクトで振った。あっさりした音を持つ大阪交響楽団であるが、矢崎が指揮すると洒落っ気のある音色に変わる。ハーモニーの作り方も美しく、いかにもドビュッシーらしい、たおやかな演奏になった。
「ピアノと管弦楽のための幻想曲」。この曲は「ドビュッシー管弦楽曲全集」のCDにも入っていないことが多い珍しいもの。ピアノの児玉麻里は同じくピアニストの児玉桃の実姉であり、日系アメリカ人の指揮者であるケント・ナガノ夫人でもある。
背中の大きく開いた、オレンジのロングドレスで登場した児玉麻里は、それこそ真珠を転がすような、まろやかで輝かしいピアノを奏でる。矢崎指揮の大阪響もエスプリに富んだ伴奏を聴かせる。


後半。バレエ音楽「遊戯」。CDにはよく収録されている曲だが、実演で聴く機会は稀である。和声の築き方がドビュッシーならではであり、響きの美しさを楽しむ曲である。メロディーなどは特に印象に残るものはなく、そこが演奏会のプログラムに余り載らない理由であろう。矢崎と大阪響は神秘的且つ美的なハーモニーを構築していた。

メインの交響詩「海」~3つの交響的素描。標題交響曲と呼んでも差し支えない構造を持つ作品であるが、ドビュッシーはこの曲を敢えて交響曲とは名付けなかった。矢崎は弦には繊細なエスプリ・クルトワを求める一方で管には思いっ切り吹くというエスプリ・ゴーロワを要求。パリ在住が長い矢崎ならではの解釈である。だからといって野放図に強く吹かせる訳ではなく、音のバランス感覚にも長けている。
個性がないのが個性ともいうべき大阪交響楽団であるが、今日の演奏会では矢崎の求めるフランス的な色彩に的確に反応していた。「海」も緩急強弱ともに自在の演奏であり、優れた出来を示す。

演奏終了後、矢崎はオーケストラメンバーを立たせようとするが、大阪響のメンバーは矢崎に敬意を表して立とうとしない。矢崎一人が拍手を受ける。
矢崎は再びオーケストラメンバーを立たせようとするが、楽団員はまだ拍手を送り続けているので、コンサートマスターの手を取って立たせ、ここでようやく楽団員全員が立ち上がって、客席からの喝采を受けた。

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2019年2月24日 (日)

美術回廊(24) 兵庫県立美術館 「奇跡のクラーク・コレクション ルノワールとフランス絵画の傑作」

2013年7月5日 神戸・岩屋の兵庫県立美術館にて

阪神電鉄元町駅から、阪神電車普通電車に乗り、岩屋駅で下りて、兵庫県立美術館に向かう。現在、「奇跡のクラーク・コレクション ルノワールとフランス絵画の傑作」という展示会が行われており、米マサチューセッツ州ウィリアムズタウンにあるクラーク美術館所蔵のフランス絵画が展示されている。ほぼ全てが日本初公開となる作品であるという。

タイトルにもなっているルノワールの他に、クロード・モネ、ドガ、ルノー、ロートレックなどの画が飾られている。

ルノーの画は色彩は暗いが、立体感が見事である。

クロード・モネ(マネというよく似た苗字の画家がいたので、モネは必ず、クロード・モネと署名した)の画はタッチが淡く、光と影が同居するタッチが独特である。

ドガの画は、画面から音が聞こえてきそうな臨場感がある。

ピエール=オーギュスト・ルノワール(息子二人が有名人なのでフルネームで書いた)の人物画は外見の描写も勿論巧みだが、それよりモデルの性格や内面が滲み出るような描き方が特徴。日本製の団扇を持った少女を描いたタイトルもそのままずばりの「うちわをもつ少女」という作品は、ラ・ジャポニズムを代表する絵画である。
「テレーズ・ベラール」という少女を描いた画は、彼女の内気な内面がはっきりとわかるように描かれており、「巧い」の一言に尽きる。

ルノワールの風景画は、印象派の特徴である強くて淡い光を描写したもので、この世ではない理想郷が画の中に拡がっているかのようだ。また「日没」という画は印象派の手法が最も顕著に出ている作品で、ここまで行くとポスト印象派という印象を受ける。

貴族階級に生まれながら、足が不自由であり、36歳で若死にしたロートレックの画は2枚だけだが、いずれも陰鬱な雰囲気を醸し出している女性の画で、作者の早世を暗示しているかのようだ。

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2018年12月22日 (土)

コンサートの記(474) 広上淳一指揮京都市交響楽団第530回定期演奏会

2009年11月28日 京都コンサートホールにて

午後2時30分開演の京都市交響楽団第530回定期演奏会に接する。今日の指揮は常任指揮者の広上淳一。京都コンサートホールは満員の盛況である。

曲目は、モーツァルトの「魔笛」序曲、ベートーヴェンの三重協奏曲(ヴァイオリン:堀米ゆず子、チェロ:宮田大、ピアノ:アブデル・ラーマン・エル=バシャ)、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(オルガン:桑山彩子)。

午後2時10分から広上によるプレトークがある。眼鏡をかけて登場した広上は来シーズンのコンサートプログラムが決まったことを告げたが、「12月18日に正式に発表になるので、その前に発表してしまうとお楽しみが減ってしまう」ということで、内容は公表されなかった。
今日の演奏会の曲目についての話となり、ヴァイオリンの堀米ゆず子やオルガンの桑山彩子もステージに呼ばれて話す。ベートーヴェンの三重協奏曲のヴァイオリンパートは梯子を登るように難しいと堀米談。


モーツァルトの「魔笛」序曲。広上が振ると京響はまろやかな響きを出す。推進力もあって良い演奏だ。


続いてベートーヴェンの三重協奏曲。

今月、ロストロポーヴィチ・コンクールで優勝を勝ち取ったばかりの宮田大のチェロは実に滑らか。堀米のヴァイオリンは陽光を浴びたような明るい音を出し、エル=バシャの立体感のあるピアノも印象的である。
広上指揮の京響は燃焼度の高い音を出して、これも印象深かった。


サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」。

冒頭は実に繊細。主部に入るとあらゆる音が鮮明に聞こえる。弦は時に透明で時に色彩豊か、金管は輝かしい。洒落た味わいにも富んでいて、これは間違いなく国際クラスで通用する演奏となった。桑山の奏でるオルガンも朗々と鳴り、広上の体全体から音楽が放射されたかのようなクライマックスの高揚感は言葉では表現出来ないほどである。

演奏終了後の盛んな拍手の後で広上がスピーチ。「京響はオーケストラ道の王道を歩みつつあり、白鵬のように連勝していきたい」とのこと。更に「一曲プレゼントします」ということで、グリーグの「過ぎた春」が演奏された。

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2018年12月 1日 (土)

コンサートの記(458) ドビュッシー没後100年スペシャル・シリーズ 光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー 第3回「ドビュッシーが見た風景」 パスカル・ロジェ・ピアノ・リサイタル

2018年11月23日 京都コンサートホール小ホール・アンサンブルホールムラタにて

午後2時から、京都コンサートホール小ホール・アンサンブルホールムラタで、ドビュッシー没後100年スペシャル・シリーズ 光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー第3回「ドビュッシーが見た風景」パスカル・ロジェ ピアノ・リサイタルを聴く。

レクチャーとコンサートによるスペシャル・シリーズ 光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー。今日は、午後1時20分から鶴園紫磯子(つるぞの・しきこ)によるプレトーク「ドビュッシーが愛した画家たち~ターナー、モネそして北斎」が20分ほどあり、その後にパスカル・ロフェのピアノ演奏がある。

スクリーンにターナーやモネ、北斎の絵画が投影され、それらを鶴園が解説していく。印象派に大きな影響を与えたイギリスの画家、ターナー。初期のターナー作品は輪郭のはっきりしたものだが、晩年になるにつれて光度が増し、描写というよりも光の印象を表したものへと変わっていく、これに影響を受けたのがクロード・モネで、モネも最初の内はコントラストのはっきりした絵を描いていたのだが、次第に輪郭がおぼろになっていく。ドビュッシーはモネの絵を愛し、影響を受けたとされるが、どの程度なのかは推測に任せるしかない。モネが多大な影響を受けたもう一人の画家、葛飾北斎。有名な「神奈川沖浪裏」は、ドビュッシーの「海」の表紙にも用いられている。北斎もリアリズムの画家ではなく、イメージを強固に打ち出している。そこに通底するのは反リアリズムであり、これが音楽に於いても重要な潮流となっていく。


パスカル・ロジェのピアノ・リサイタル。曲目は、ドビュッシーの「前奏曲」第1集と第2集である。

フランスを代表するピアニストとして日本でも知名度の高いパスカル・ロジェ。以前は英DECCAレーベルのフランスピアノ音楽をほぼ一人で背負って立っていた。ドビュッシー、ラヴェル、サティ、プーランクなどのピアノ曲のほぼ全てをレコーディングしている。
パリの音楽一家に生まれ、パリ国立高等音楽院を首席で卒業。その後、J・カッチェンに師事。1971年のロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門で優勝している。2014年のジュネーヴ国際音楽コンクールのピアノ部門では審査委員長も務めた。


フランス人らしいシャープなピアノを持ち味とするロジェ。ドビュッシーの前奏曲でもまず何よりも音楽の核になる部分を見つけ出し、十指で的確に捉えていくような演奏を行う。ドビュッシーの前奏曲は、1曲を除いて全てに象徴的なタイトルが付いているが、そうしたイメージに左右される前にまず音楽的に重要な要素を取り出して堅実に築き上げた音響自体に作品を語らせていく。物語的というより真に詩的ピアニズムであるともいえる。
余計なものを削ぎ落として核を取り出すのであるが、音楽が細くなることはなく、むしろ線は太く男性的である。長年に渡ってフランスのピアノ音楽と向き合って来たロジェだからこそ可能な至芸といえるだろう。


アンコールは2曲。いずれもドビュッシー作品で、まずは「喜びの島」が豊かな色彩によって歌われる。
最後は、「ベルガマスク組曲」より“月の光”。ロジェだけに構築感を優先させた音楽になるだろうと思いきや、思いのほか物語性豊かな演奏で、耳に馴染みやすい演奏であった。音も煌びやかで親しみやすい。

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2018年11月 8日 (木)

フランシス・レイ 「ある愛の詩」

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2018年10月31日 (水)

コンサートの記(447) パスカル・ロフェ指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団第522回定期演奏会

2018年10月26日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時から大阪・中之島のフェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第522回定期演奏会を聴く。今日の指揮者はフランス出身のパスカル・ロフェ。

日本のオーケストラへの客演も多いパスカル・ロフェ。現在はフランス国立ロワール管弦楽団の音楽監督である。パリ国立音楽院を卒業後の1988年にブザンソン国際指揮者コンクールで2位入賞。1992年からはアンサンブル・アンテルコンタンポランの指揮者として活躍。ピエール・ブーレーズの影響からなのかノンタクトで指揮する。経歴からわかる通り現代音楽の演奏を得意としており、NHK交響楽団の京都公演でチャイコフスキーの交響曲第4番を指揮した時には現代音楽仕込みの明晰なアプローチによってチャイコフスキーの苦悩を炙り出す名演を繰り広げている。


曲目は、フォーレの「レクイエム」(1893/1984 ラター版)とストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」全曲(1910年原典版) 。


フォーレの「レクイエム」は人気曲であり、大阪フィルは今年の夏に大友直人の指揮で演奏したばかりであるが、重複を避けるためか、イギリスの指揮者で宗教音楽の作曲家としても知られるジョン・ラターがフォーレの第2稿をまとめたラター版の楽譜を用いての演奏となる。
フォーレの「レクイエム」は元々はフォーレが両親を悼むための私的な楽曲として作られている。その後にフォーレ自身が手を加えた第2稿が完成。今回はこれを基にした楽譜で演奏される。
今日一般的に演奏されるのはその後に改訂された第3稿である。フォーレ自身はこの改訂に乗り気ではなく、作業も弟子のジャン・ロジェ=デュカスに任せている。第3稿は1900年のパリ万博で初演されている。というより、パリ万博で披露するために校訂されたのであろう。

まだ大阪フィルがザ・シンフォニーホールを定期演奏会の会場にしていた頃、大植英次指揮の演奏会の前半のプログラムがフォーレの「レクイエム」だったのだが、開演直前に大植英次がドクターストップによって緊急降板となり、合唱指揮者である三浦宣明が急遽代役を務めたことがあった。大フィルによるフォーレの「レクイエム」を聴くのはそれ以来である。

ラター版は第2稿に基づいているが、フォーレの自筆譜が散逸してしまったため、ラターが研究によって復元している。弦楽はヴァイオリンがなく、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの編成。通常、ヴァイオリンが陣取る舞台下手側にヴィオラが並び、コンサートマスター(でいいのかな?)はヴィオラの井野邉大輔。今日の演奏会全体のコンサートマスターである田野倉雅秋は、この曲ではヴァイオリンソロとして「サンクトゥス」と「イン・バラディスム」で演奏に加わる。田野倉はヴィオラ陣の背後に控え、「サンクトゥス」ではその場で立って、「イン・バラディスム」では更に後ろ、ハープの横に下がって演奏した。歌手の配置も独特で、バリトン独唱の萩原潤は指揮台の上手横だが、ソプラノ独唱の市原愛は、下手側、田野倉の最初の持ち場の一つ後ろに座って出番を待つ。

管楽器の編成も特殊で、金管は普通だが、木管のフルート、オーボエ、クラリネットといった花形は出番なしでファゴットのみが登場する。

ロフェは音の輪郭をクッキリと浮かび上がらせた立体的な音響を築く。やはりロフェという指揮者は相当な実力の持ち主のようである。

ホワイエで行われたプレトークで、大阪フィルハーモニー交響楽団事務局次長の福山さんが語っていたが、フォーレの意図をロフェに聴いたところ、「合唱を生かすために高音の楽器を除いたのだろう」という答えが返ってきたそうだが、実際に耳にすると音色が渋く、普段聴いている第3稿とはかなり印象が異なる。大阪フィルはドイツ的な低弦の強さが売りの一つだが、この印象は大フィルだからではないだろう。フォーレがイメージした元々の響きが渋めのものだったのだと思われる。一般にフォーレというとノーブル、ザ・フレンチテイストの音楽家で、「レクイエム」はその中でもフランス的というイメージがあるが、それはフォーレが乗り気でなかった第3稿によって作られたものだったようだ。異国からの来訪者が集うパリ万博でのお披露目ということで、意図的にフランス的な響きが加えられたのだろう。作曲者が望まない形が後世に残ってしまうというのは良くあることである。

ソプラノは最も有名な「ピエ・イエス」が唯一の出番なのだが、市原愛の歌唱は歌い出しの音程が不安定であった。1曲勝負であるため後で取り返せないのがこの曲の怖いところである。

大阪フィルハーモニー合唱団の水準は高い。


ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」全曲(1910年原典版)。演奏会用に編まれたものや組曲版が演奏されることが多いが、今回はパリ・オペラ座で初演された時のバレエ全曲の演奏である。とはいえ、初めて生で聴いた「火の鳥」の演奏も全曲版だった記憶がある。1994年の春に、千葉県文化会館で行われた東京交響楽団のマチネーの演奏会。指揮は秋山和慶で、その時は朗読付きの上演であり、ナレーションを裕木奈江が務めていた。当時、東京交響楽団は「ぴあ」での表示をTOKYO SYMPHONYにしていたんだっけ。懐かしい。

「火の鳥」でもロフェは、優れた聴覚バランスと巧みな音楽設計を生かした秀演を描く。冒頭の金管のソロが散らかった感じだったのは残念だが、ソロでは今一つでも合奏になると力を発揮するのが日本のオーケストラの良さで、その後は安定、輝かしい音を出す。
弦楽は最初から最後まで煌めきのあるマジカルな音色を奏でる。ここぞという時の力強さは大フィルの真骨頂だ。

今回が大フィルとの3回目の共演となるパスカル・ロフェ。もっと聴きたくなる指揮者である。京響にも客演して欲しい。


 

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2018年10月29日 (月)

コンサートの記(446) 「時の響」2018楽日 アンサンブルホールムラタ第3部 京都フィルハーモニー室内合奏団×辻仁成 「動物の謝肉祭」

2018年10月21日 京都コンサートホール小ホール・アンサンブルホールムラタにて

「時の響」2018楽日。午後4時から、京都コンサートホール小ホール アンサンブルホールムラタ(通称:ムラタホール)で行われる第3部コンサートを聴く。大ホールでは第3部の演奏会は行われないので、これが「時の響」2018最後の催しとなる。

出演は、京都フィルハーモニー室内合奏団。語りは辻仁成(つじ・ひとなり)。辻仁成は、昨日今日とムラタホールに出演。ギター弾き語りなども行ったようだ(ミュージシャンの時は「つじ・じんせい」名義である)。
司会を舞台俳優の福山俊朗が務める。

曲目は、フォーレの「パヴァーヌ」、ドビュッシーの「ゴリウォーグのケークウォーク」と「夢」(いずれも室内オーケストラ編曲版)、ラモーの「タンブーラン」、サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」朗読付き(台本&朗読:辻仁成)。


フォーレの「パヴァーヌ」。人気曲である。京都フィルハーモニー室内合奏団も典雅さを意識した演奏を行う。

ドビュッシーの「ゴリウォーグのケークウォーク」と「夢」は、いずれもピアノ曲を室内オーケストラ用に編曲したものの演奏。編成にピアノは含まれていない。
ピアノ向けの曲なので、室内オーケストラで演奏すると音が滑らかすぎて流れやすくなるようだが、なかなか聴かせる演奏になっていたように思う。


ラモーの「タンブーラン」は、太鼓とタンバリンが活躍。弦楽はピリオド不採用であったが、古楽の雰囲気を良く表したものになっていた。


メインであるサン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」。朗読を担当する辻仁成が、この日のために書き下ろしたオリジナルテキスト版を自ら初演する。

辻仁成で京都というと、「やっと会えたね」という言葉がよく知られているが、それももう過去のこととなった。

その後、中性を意識したスタイルへと変わった辻仁成。今日もそんな感じである。

辻仁成はまずミュージシャンとしてデビューし、その後に詩人として文壇に登場。小説家に進んだのはその後である。

辻が書いたテキストは、小説家・辻仁成よりも詩人・辻仁成の要素を強く出したものである。動物たちの集まったカーニバルの日の夜明けから日没までを舞台に、「人生」をテーマとした語りが行われる。
辻は、京フィルの団員や客席を笑わせることを第一としているようだが、慣れていないということもあって空回りする時もある。他は冗談音楽だから良いのだけれど、「白鳥」の時にテーマを歌うのは流石にやり過ぎである。チェロの旋律美を楽しみにしていた人もいるだろうし。
ともあれ、ラストは「悩みのない動物=人間の本能的部分」の礼賛で締め、メッセージにはなかなか良いものがあったように思う。

京フィルの演奏のレベルもなかなか。
ピアノは佐竹裕介と笹まり恵の二人が担当したのだが、「ピアニスト」では二人とも楽譜も満足に読めないレベルのピアノ初心者演技入りでたどたどしく弾き、かなりの効果を上げていた。サン=サーンスもこうしたものを望んでいただろう。

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2018年10月28日 (日)

コンサートの記(445) 「時の響」2018楽日 大ホール第2部 広上淳一指揮京都市交響楽団 広上淳一リクエスツ「思いをはせた『西洋』の音楽文化」

2018年10月21日 京都コンサートホールにて

京都コンサートホールで行われている「時の響」2018の楽日。大ホールでの第2部は、広上淳一リクエスツ「思いをはせた『西洋』の音楽文化」というタイトルのコンサート。日本の幕末明治維新期に初演された曲2曲を並べる。広上淳一指揮京都市交響楽団の演奏。司会も引き続き慶元まさ美が務める。午後2時開演。

演目は、岸田繁の「ほんの小さな出来事のためのファンファーレ」(管弦楽版)、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編曲)


まず、くるりの岸田繁の新曲が演奏される。昨日、同曲の吹奏楽版が西村友指揮オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラによって初演され、今日は管弦楽版の初演である。

「大脱走」のテーマを連想させる作品。広上も楽しげな音響を築く。
演奏終了後、広上は客席の方に向かって「作曲者の岸田さん、いらっしゃいますか?」と聞き、岸田繁が立ち上がって拍手を受けた。


ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。京響首席フルート奏者の上野博昭の妙技が披露される。
広上は見通しの良いクリアな音作りと、おぼろげでアンニュイな雰囲気の両方を上手く出し、理想的なドビュッシー演奏となった。


ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」。演奏前に、慶元が、「『プロムナード』が流れる時に、スクリーンに京都市内各所の今と昔の映像が流れます」と説明。三条大橋、新京極、堀川通、四条通、烏丸通、八坂の塔(法観寺)、大原道(鯖街道)などの現在と1910年代の映像が対比される形で投影された。八坂の塔だけは東山に近く景観保存がなされているため今とほとんど変わらない。

演奏は素晴らしい。ハラルド・ナエスの吹く冒頭のトランペットから抜群の造形美を誇り、美しさとパワーの両方を兼ね備えた演奏が繰り広げられる。

広上指揮京都市交響楽団の演奏による「展覧会の絵」は以前にも聴いたことがあるが、より引き締まりつつも柔軟性のある演奏が行えるようになっている。
ラストの「キエフの大門」の迫力も圧倒的。小柄な広上が京響から豊かなスケールを引き出すのも面白い。小さなものが大きな力を生み出す様は、視覚的にも効果的だ。



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2018年10月26日 (金)

コンサートの記(443) 「時の響」2018初日 大ホール第3部 松尾葉子指揮オーケストラ・アンサンブル金沢 岸田繁リクエスツ「フランス音楽」

2018年10月20日 京都コンサートホールにて

「時の響」2018初日、大ホールでの第3部、岸田繁リクエスツ「フランス音楽」を聴く。演奏は第2部に引き続き松尾葉子指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢が行う。クラシック音楽愛好家としても知られる、くるりの岸田繁が選んだフレンチクラシックの演奏。

曲目は、ビゼーの「アルルの女」第1組曲、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」(ヴァイオリン独奏:坂口昌優)、ラヴェルの「クープランの墓」より“リゴードン”。


ビゼーの「アルルの女」第1組曲での迫力や熱狂、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」の抒情美などいずれも見事である。

「亡き王女のためのパヴァーヌ」を演奏終了後、松尾はマイクを手にスピーチを行う。「フランス音楽って(他の国の音楽と)どこが違うですか?」と聞かれることがあるそうだが、フランス人は最後まで説明するのを嫌うそうで、「亡き王女のためのパヴァーヌ」もタイトルからしてもそうだが、聴き手の想像に委ねられているという。松尾は、フランス映画「太陽がいっぱい」のラストを相手に委ねる例として挙げていた(「太陽がいっぱい」では、主人公のリプレーが今後どうなるのかは具体的に描かれていないが、画面に映ったあるものでその後が予想出来るようになっている)。


サン=サーンスの「序奏とロンド、カプリチオーソ」。ソリストの坂口昌優(さかぐち・まゆ)は、桐朋女子高校音楽科、桐朋学園大学を経て、同大学研究科を修了。2008年より文化庁新進芸術家海外研修員としてブリュッセル王立音楽院に留学し、2011年に帰国。
ナポリで行われた第14回アルベルト・クルチ国際ヴァイオリンコンクールでは第2位に入っている。

短い曲であるが、坂口は高音の切れが印象的な演奏を聴かせた。


松尾のスピーチ。フランス語は単語数が多く、後ろから修飾している言葉であるため、フランス人はみな早口だそうである。松尾もそれに影響されて早口になったそうでだが、早口なフランス人が描かれた曲として、ラヴェルの「クープランの墓」から“リドーゴン”が演奏される。すっきりとした都会的な演奏であった。



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コンサートの記(442) 「時の響」2018初日 大ホール第2部 羽田美智子×松尾葉子×オーケストラ・アンサンブル金沢 プロコフィエフ 「ピーターと狼」朗読付き公演ほか

2018年10月20日 京都コンサートホールにて

京都コンサートホールで行われる「時の響」2018初日。
今日は午後3時開演の大ホール第2部「親子で楽しむ『朗読』付きコンサート」から聴く。出演は、松尾葉子指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢。朗読:羽田美智子。

曲目は、ラヴェルの「マ・メール・ロア」より3曲とプロコフィエフの「ピーターと狼」


日本における女性指揮者の草分け的存在である松尾葉子。1982年のブザンソン国際指揮者コンクールで、コンクール史上初の女性覇者となる。日本人としても小澤征爾に次ぐ二人目の優勝者であった。
教育者としても著名で、30年に渡って東京藝術大学指揮科教官を務め、芸大出身の中堅から若手の指揮者のほとんどは松尾の弟子である。現在は愛知県立芸術大学客員教授、セントラル愛知交響楽団特別客演指揮者の座にある。


日本初のプロの常設室内管弦楽団として組織されたオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)。今や日本を代表する音楽団体の一つである。幼少期を金沢で過ごしたこともある岩城宏之を音楽監督として発足し、2代目の井上道義時代を経て現在はマルク・ミンコフスキが芸術監督を務めている。
日本で最も外国籍楽団員の割合の多いプロオーケストラとしても知られ、今日は第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのトップが白人である。

ドイツ式の現代配置での演奏であるが、ホルンが上手に来るなど、独自色が強い。


ラヴェルの「マ・メール・ロア」。雅やかでしなやかなアンサンブルが印象的。彩りも鮮やかであり、日本における理想的なラヴェルが聴ける。


プロコフィエフの「ピーターと狼」朗読付き上演。
羽田美智子は、今日は第1部のオオサカ・シオン・ウインド・オーケストラのオープニングMCと務め、第2部では朗読担当として参加する。

羽田美智子は、子どもの頃はピアニストになるのが夢で、小学校の卒業文集には「ピアニストになって大きなホールで演奏する」と書いたそうだが、大人になるに連れて「あのレベルまで行くのは難しい」と気づき、演技の道に進んだそうだ。
以前、ドラマでヴァイオリニストの役をしたことがあり、ホールで弾く真似だけしたことがあったそうだが、音楽会の本番に出演者として参加するのは初めてであり、「夢が叶った」と嬉しそうに語った。

羽田美智子の朗読は明るめの声で行われ、親しみやすい。そのためプロ女優の凄みは感じないが、「ピーターを狼」ということもあり、これで良いと思う。今は「ピーターと狼」の朗読にこれといったものはないので、色々な人に挑戦して貰いたいとも思っている。小澤征爾が朗読を務めたCDはあるが、小澤さんは朗読は素人なのでね。

松尾葉子指揮のOEKは温かみのある愛らしい演奏を行った。


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