カテゴリー「映画」の69件の記事

2009年5月19日 (火)

これまでに観た映画より(43) 「鴨川ホルモー」

2009年5月1日 MOVIX京都にて

映画「鴨川ホルモー」を観る。MOVIX京都にて午後5時40分の回。

万城目学の原作は読んでいて、なかなか面白かった。20年後も読まれているかというと、正直、その可能性は低いと思うけれど。

監督:本木克英、脚本:経塚丸雄、音楽:周防義和、振付:パパイヤ鈴木。

出演は、山田孝之、栗山千明、濱田岳、石田卓也、芦名星、斎藤祥太、斎藤慶太、渡辺豪太、藤間宇宙、荒川良々、佐藤めぐみ、甲本雅裕、石橋蓮司ほか。

京都大学、龍谷大学、立命館大学、京都産業大学の学生が、「オニ」と呼ばれる式神を操って戦いを繰り広げるという、奇想天外なストーリー。
万城目学の原作では、それに青春小説の要素も加わるが、映画ではその要素は後退している。

オニは当然ながらCGを駆使していて効果的。視覚面でオニ達のバトルを楽しめるのがいい。脚本、演出ともに良く出来ていて、エンターテイメントとしては上質。

ただ、先に書いたように、青春小説的な要素ももう少し加えて欲しかった。原作ではもっと切ない部分もあったのだが。

京都市内各所でロケーションが行われているが、私も京都に何年も住んでいるので、どこで撮影されたのか全てわかった。それはいいのだが、ロケ場所が離れすぎている場合、「そこからそこには行かない」だろうという余計なことまでわかってしまう。

ちなみに、「鴨川ホルモー」は舞台化もされ、石田卓也と芦名星は連投する。映画では芦屋役だった石田卓也が舞台では主人公の安倍を演じ、芦名星は映画と同じく早良京子を演る。

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2009年5月 7日 (木)

街の想い出(25) 千葉その3 千葉劇場

街の想い出 千葉劇場

千葉市中央区中央3丁目にある映画館、千葉劇場。前身は本当に劇場でしたが、戦後に映画館になりました。
私が10代の頃は2階席のある比較的大きな映画館でしたが、内部はオンボロでした。1995年にいったん取り壊され、その後、ミニシアターとして復活しています。

以前の千葉劇場で上映された映画で一番記憶に残っているのは、高校生の時に観た、オリバー・ストーン監督、ケビン・コスナー主演の「JFK」。ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ大統領暗殺の闇に迫る作品で、当時、大きな話題を呼びました。今ではJFKというと、阪神タイガースの抑え陣のことですね。

ミニシアターになってからの千葉劇場にも何度か通っていますが、正月に映画を見に行った際、何故か暖房が効いていなくて館内が酷く寒かったのを憶えています。

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2009年4月27日 (月)

これまでに観た映画より(42) 「転校生 さよなら あなた」

DVDで日本映画「転校生 さよなら あなた」を観る。大林宣彦監督作品。大林宣彦が監督した「転校生」の自作リメイクである。ただ、ストーリーは異なる。

男女が入れ替わってしまうお馴染みの物語。

主演:蓮佛美沙子、森田直幸。出演:清水美砂、古手川祐子、石田ひかり、田口トモロヲ、窪塚俊介、寺島咲ほか。

コロコロ切り替わるカメラワーク、わざと斜めに傾けたアングル、、間を詰めたセリフ、抒情的な音楽など、独特の味わいのある青春ファンタージーコメディー。

主演の二人が良いのはもちろんだが、斎藤一夫(森田直幸)の母親役の清水美砂が良い味を出している。清水美砂がもっと若い頃にコメディーをやっているのを観てみたかった。彼女ならいいコメディエンヌになれたと思うのに、惜しいな。

蓮佛美沙子の歌も巧いというレベルにはないけれど、可憐で、弾き語りの場面などは観ていて甘酸っぱい気持ちになった。こういう映画は、たまに観るなら本当に良い。

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2009年3月17日 (火)

これまでに観た映画より(41) 「風花」

DVDで日本映画「風花」を観る。小泉今日子、浅野忠信主演のロードムービー。監督:相米慎二。これが相米監督の遺作となった。出演は、柄本明、香山美子、小日向文世、麻生久美子、鶴見辰吾ほか。
2000年の作品。

私はロードショー時に東京・渋谷のシネアミューズで「風花」を観ている。展開が淡々としているので、当時は「長いなあ」という印象を受けたのだが、今になって見返してみると、長いという感じは受けず、面白く感じる。こちらも年を取ったので、ロードショー公開当時はわからなかったこと、──演技的にも、ストーリー的にも演出的にも──がはっきりわかるようになった。年は取るものだ。

相米演出の代名詞ともいうべき長回しなどは、今だからその本当の凄さがわかる。
生きることをテーマにした映画が相米監督の遺作になったというのも象徴的である。

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2009年3月 1日 (日)

これまでに観た映画より(40) 「害虫」

DVDで映画「害虫」を観る。宮﨑あおい初単独主演作。塩田明彦監督作品。2002年公開。出演は宮﨑あおい、蒼井優、りょう、田辺誠一、伊勢谷友介、天宮良、大森南朋、沢木哲ほか。

中学1年生の北サチ子(宮﨑あおい)は精神的に不安定なところのある母親(りょう)と二人暮らし。登校拒否をしており、当たり屋や万引きなどをしているタカオという少年(沢木哲)や、精神薄弱の中年キュウゾウらと街で過ごしている。
実はサチ子は小学6年生の時に担任の教師だった緒方(田辺誠一)と恋をしてしまい、緒方は責任を取って教師を辞めていた…。

セリフを徹底して抑え、不安定なアングルを多用するなど、いかにも単館向け映画という趣を持つ映画。かなり陰惨な内容で、ラストも救いがないのだが、淡々とした描き方をしているためか暗い感じは余り受けない。

文化祭のフォークダンスや学内合唱コンクールのシーンは私も往時を思い出して甘酸っぱい気持ちになった。

主演の宮﨑あおいは、撮影当時、15歳か16歳。顔はまだ子供だし、メイキング映像を見ていても子供っぽいのだが、ロケの場面で、撮影開始の直前まで子供じみたギャグを言っていったのに、スタートの声が掛かると同時に女優の顔になってしまうのが凄い。

「害虫」はフランス・ナント三大陸映画祭で審査員特別賞を獲得。また宮﨑あおいは主演女優賞を受賞した。

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2009年2月 4日 (水)

これまでに観た映画より(39) 「ベルリン・天使の詩」

DVDで映画「ベルリン・天使の詩」を観る。ヴィム・ヴェンダース監督の代表作。西ドイツ&フランス合作。出演、ブルーノ・ガンツ、ソルヴェイグ・ドマルタン、オットー・ザンダー、クルト・ボワ、ピーター・フォークほか。 現在、認知症であることがわかったピーター・フォークがピーター・フォーク本人役で出演している。しかもピーター・フォーク自身が実は……という展開がある。

1987年、西ベルリン。天使のダニエル(ブルーノ・ガンツ)は、同じく天使のカシエル(オットー・ザンダー)とともに西ベルリンにいる。天使は様々な人の心の声を聴くことが出来る。人々は悩み、絶望し、苦しんでいる。

ダニエルは、サーカスでアクロバットを演じているマリオン(ソルヴェイグ・ドマルタン)に恋をする。マリオンが出演しているサーカスは、金が払えないということで、その日の演目を最後に解散することになった。マリオンは、またウェイトレスに戻るのかと嘆く……。

悩み多き人間世界にあって、天使が人間になろうと決める物語。天使は人間がこの世に現れる前から存在していて、悠久の時を知っているが、人間としての新しい歴史はこれから築き始める。これまでの長大な時間と、これからの未知の時間が同等に置かれることで、人間の生の時間の充実が示されている。

この映画は、小津安二郎、フランソワ・トリュフォー、アンドレイ・タルコフスキーへの賛辞で締めくくられる。

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2008年11月28日 (金)

これまでに観た映画より(38) 「アマンドラ!希望の歌」

DVDでドキュメンタリー映画「アマンドラ!希望の歌」を観る。2002年の映画、南アフリカ・アメリカ合作。リー・ハーシュ監督作品。
南アフリカのアパルトヘイトを題材にした作品である。

主題になっているのは、「人種差別」そして「音楽」と「革命」。

アパルトヘイトにより隔離された黒人達は、陽気なメロディーを持つ過激な歌詞で白人への対抗心を高めていく。

そして、世界史上初の「音楽による革命」が起こるのである。

深刻なテーマであるが、陽気な旋律を持つ歌が次々に出てくるためか陰気な感じはない。かつての悲劇を乗り越えたパワーが感じられ、観ている方も勇気づけられる。

そしてここに描かれていることは、決して他人事ではないため、私の心に切実に訴えてくるものがある。現状を覆すには暴力や権力よりも効果的な方法があるのだ。

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2008年11月24日 (月)

これまでに観た映画より(37) 北野武監督「座頭市」

DVDで北野武監督の「座頭市」を観る。出演は、ビートたけし、浅野忠信、柄本明、岸部一徳、夏川結衣、大楠道代、ガダルカナル・タカほか。
音楽的リズムを随所に取り入れ、最後はタップダンスで終わるという異色の時代劇。これまで地上波でも2回ほど放送されている。

「口縄の親分」の正体が早くにわかってしまうが、それはサスペンスを盛り上げるためにあえてそうしているのだろう。顔は出ないが、声と雰囲気ですぐにわかる。
血が飛び散る残酷時代劇のため、R15指定となっている。

病身の妻(夏川結衣)のためにやむを得ずヤクザの用心棒となる服部源之助(浅野忠信)の悲哀が出ているが、例えば「SF サムライ・フィクション」に出てくる風祭蘭之介(布袋寅泰)などに比べると人物造形が浅いかな、とも思う。夏川結衣にももっと見せ場を与えて欲しかった。
とはいえ、エンターテイメントと割り切るなら十分にハイレベル。物語も面白い。

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2008年11月16日 (日)

これまでに観た映画より(36) 「ロボコン」

DVDで映画「ロボコン」を観る。長澤まさみの映画初主演作。ロードショー当時かなり話題になった映画である。「さよならみどりちゃん」の古厩智之脚本・監督作品。出演は長澤まさみのほか、鈴木一真、小栗旬、伊藤淳史、塚本高史、荒川良々、須藤理彩、うじきつよし等。水野真紀も写真のみで出演している。
残念ながら、その後、他の事件でも有名になってしまう国立徳山工業高等専門学校が舞台。

ロボコンはロボットコンテストのことで、ロボットを使ってボックスを積む陣取りゲームのようなもの。高専生のロボット甲子園とでもいうべきもので、毎年NHKが深夜にその模様を録画中継している。「トリック」でブレークしたばかりの仲間由紀恵が司会を務めていたこともあった。

機械好きの父親(うじきつよし)の影響で高専に入ったはいいものの、入った途端にやる気をなくしてしまい、赤点続きで居残り補習を受けることになった里美(長澤まさみ)。しかし、居残り補習の代わりにロボコンに出場すれば単位を上げるという図師先生(鈴木一真)の提案で、徳山高専第二ロボット部に参加、操縦士(リモートコントロール)役でロボコンに出場する。

第二ロボット部は第一ロボット部に馴染めない人達が作ったいわば落ちこぼれ組。中国地方予選で第二ロボット部は初戦で敗退。しかし多くのボックスを一度に積むロボット構造が評価され、特別推薦で全国大会に出場することになる。第二ロボット部のメンバーは、天才的な理系の頭脳を持ちながら他人の感情に余りにも疎い航一(小栗旬)、部長でありながら使いっ走り根性が抜けない四谷(伊藤淳史)、能力は高いのに根気が続かずサボってばかりの竹内(塚本高史)など、一癖ある人ばかり。ロボットに対する情熱はあるのだが、勝ちたいという気力に欠けており、里美は歯がゆい気持ちでいっぱいになる…。

周防正行監督の「シコふんじゃった。」、矢口史靖監督の一連の作品などに通ずるところのある映画。

落ちこぼれの学生が、学業以外の活動で単位を貰おうとするところなどは「シコふんじゃった。」そっくりである。
ただ、勝ちたいという気持ちが大切なのは当然として、勝つばかりが人生の喜びではないというところも教えてくれる。ブラスバンドが自分のチームをコンバットマーチで応援し、敗れると相手(里美のいる徳山高専)を「蘇州夜曲」で讃えるシーンなどは爽やかな感動を呼ぶ。

ロボコンを通じて高専生達が人間的に成長していく様が爽快である。
長澤まさみの可愛いだけではない飄々としたところのある演技も印象的であり、ストーリー展開がオリジナリティに欠けるところや地味さはあるものの、優れた青春映画として多くの人に薦めたくなる一本であった。

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2008年11月 1日 (土)

映画「レッドクリフ」 5人の男診断

映画「レッドクリフ」のYahoo!映画サイトに性格診断ページが登場しました。

現在公開中なのは、5人の英雄の誰に性格が近いかを診断する「5人の男」

http://event.movies.yahoo.co.jp/theater/redcliff/gonin/

私の結果は、「孔明」(演じるのは金城武)。予想通りだった。

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2008年9月19日 (金)

笹野高史 『待機晩成』

副題は「日本一の脇役が語る人生の美学」。オンシアター自由劇場出身で、その後、商業演劇、映画にテレビ、ついには歌舞伎にまで出演してしまった俳優、笹野高史の著書『待機晩成』(ぴあ)を紹介します。

笹野が高校生の頃に、いとこがやった占いで「高っちゃんはね、大器晩成型」といわれ、しかし笹野曰く「大器じゃなくて待機していただけ」で晩成したというのがタイトルの由来です。

笹野高史 『待機晩成』 兵庫県の淡路島に、造り酒屋の四男坊として生まれた笹野高史。子供の頃は「笹野のぼん」などと呼ばれたそうですが、幼い頃に両親が死去し、以後は親戚の家を頼って、男兄弟四人で支え合って育ちます。そんな笹野少年の夢は映画俳優になること。しかし、決して男前とはいえない笹野少年は人前では「映画俳優になりたい」とは口に出来ませんでした。そんな笹野少年の心の支えだったのが、男前でないのに映画の主役を張っていた渥美清。

この本では、笹野高史が、上京して自由劇場の演劇に触れ、1年本ほどの舟乗り生活を経て、串田和美に呼ばれて自由劇場に戻り、10年間、自由劇場の役者として活躍した後(自由劇場にいるのは修行期間に相当する10年間と、本人もなぜかはわからないが決めていたそうです)、商業演劇に移り、それから映画で憧れの渥美清と共演するようになる様が、笹野らしく淡々としたタッチで書かれています。

渥美清との付き合いの他にも、自由劇場時代に出会った柄本明の話、映画「武士の一分」で共演した木村拓哉の話など、演劇ファン、映画ファンならずとも面白い話も収録。

「自分は主役の器ではないけれど……」と思いつつ、映画や演劇の世界に憧れている若い人にも是非読んで貰いたい本です。

笹野高史 『待機晩成』(ぴあ) 紀伊國屋書店BookWeb

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2008年9月12日 (金)

これまでに観た映画より(35) 「セプテンバー11」

DVDで映画「セプテンバー11」を観る。2002年の作品。世界11カ国の映画監督が、2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロ(9・11)を題材にして作った、それぞれ11分9秒01の長さのショートフィルムが連続して上映されるというオムニバス作品。日本からは今村昌平監督が参加。本作品が今村昌平の遺作となった。
参加した国は上映順に、イラン、フランス、エジプト、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルキナファソ、イギリス、メキシコ、イスラエル、インド、アメリカ、日本。
9・11発生直後にアメリカで起こった、平和ソング放送規制への反抗からか、表現の自由をテーマにしており、作風の統一は一切見られない。

DVD「セプテンバー11」 当然、シリアスな作品が多い。
メキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督(代表作「バベル」)は、真っ暗の画面を使って、呪文のような声と音楽で独特の雰囲気を作り出し、時折衝撃音を入れている。この衝撃音が何を意味するのかは作品の途中でわかり、ラストのメッセージで、何故、暗闇のままの映像を用いていたのかが明かされる仕掛けになっている。

イギリスのケン・ローチ監督は、チリで起こったクーデターを題材にしている。1970年、民主的な選挙により、チリに共産主義政権が誕生する。しかし共産主義を怖れていたアメリカが内政干渉。アメリカは更にチリ国内の反共勢力を支援、クーデターを起こさせる。
1973年9月11日、CIAの支援を受けたピノチェトが蜂起する。共産政権の大統領であったアジェンデは大統領官邸内に籠もって抗戦、戦死した。
赤狩りを逃れ、ロンドンで暮らす男性(ウラジミール・ヴェガが演じる)を主人公として、アメリカの「正義」に疑問を投げかけ、全ての犠牲者を追悼するという深く苦い味わいのある作品に仕上げている。

シリアスな作品が続く中で、ブルキナファソのイドリッサ・ウエドラエゴ監督は、ブルキナファソの田舎町に現れたビンラディンに似たアラブ系男性を巡るコミカルなムービーを作っている。

今村昌平監督の作品は独特。他の監督が、倒壊する世界貿易センターの映像や、9月11日という日付を使っているのに、今村監督はそうしたものを一切使わずに戦争の狂気を描き出す。舞台はアジア・太平洋戦争終結直後の日本の寒村。戦争から帰還した男(田口トモロヲ)は、すでに発狂しており、自分が蛇だと思いこんで地を這い、ネズミを丸呑みにしたりする。
出演者は豪華。田口トモロヲ、麻生久美子、柄本明、倍賞美津子、丹波哲郎、市原悦子のほか、緒方拳がナレーションを担当し、出演もする。
役所広司もワンシーンだけ出ているが、後ろの方にただいるだけでセリフは全くなし。カメオ出演のようなものとはいえ、贅沢な使い方である。

Movie/セプテンバー 11

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2008年8月29日 (金)

これまでに観た映画より(34) 「リンダ リンダ リンダ」

DVDで日本映画「リンダ リンダ リンダ」を観る。タイトルはザ・ブルーハーツの名曲「リンダ リンダ」から取られている。

何故か、「子猫をお願い」の韓国人女優、ペ・ドゥナ主演の学園ドラマ。主演は他に、香椎由宇、前田亜季ほか。元ザ・ブルーハーツのボーカル、甲本ヒロトの実弟で、俳優の甲本雅裕(元・東京サンシャインボーイズ)も教師役として出演している。山下敦弘監督作品。
前橋や高崎といった群馬県でロケが行われた映画である。

田舎にある芝崎高校の学園祭。出演予定だった女の子バンドだが、トラブルがあり、崩壊寸前の状態にある。響子(前田亜季)は恵(けい。香椎由宇)や望(関根史織)らとバンド再結成を目論む。曲目はザ・ブルーハーツに決定。しかしボーカルがいない。そこで、たまたま通りかかった、韓国からの留学生、ソン(ペ・ドゥナ)をボーカルの起用するのだった…。

ジャズを題材にした「スウィング・ガールズ」に少し似たところがあるが、「スウィング・ガールズ」がずぶの素人が成長していく過程を描いたのに対し、「リンダ リンダ リンダ」は基礎は出来ている女の子達の話であり、それだけに音楽的上達よりも女の子同士の友情に重点が置かれている(とはいえ、例によって、テクニカルタームでいう「妨害」はあり、ここだけは「スウィング・ガールズ」にそっくりである)。

俳優陣はしっかりした演技を見せる。ペ・ドゥナのポニーテールが似合っていないのと、前田亜季がしばらく見ない間に佐藤仁美のようになっていたのが気になるが、物語には影響していない。

ラストのステージのシーンはノリノリでここだけでも見る価値はある。だが、夢のシーンは本当に必要だったのかどうか。

ちなみに同級生を演じてはいるが、最年長のペ・ドゥナ(撮影当時25歳)と最年少の香椎由宇(撮影当時17歳)の年の差は8歳もある。

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2008年8月25日 (月)

これまでに観た映画より(33) 「危険な関係」

DVDでアメリカ映画「危険な関係」を観る。ラクロの小説の映画化。スティーヴン・フリアーズ監督作品。出演、グレン・クローズ、ジョン・マルコヴィチ、ミシェル・ファイファー、キアヌ・リーブス、ユマ・サーマンほか。

パリとその周辺が舞台。フランス革命前夜の貴族達の堕落した生活が描かれる。貴族達はとにかくすることがないので、愛欲のゲームに励んでいる。こんなことをしていたのでは、そりゃ革命も起こされるよな。

メルトイユ侯爵夫人(グレン・クローズ)は、恋人のバスティード伯爵が結婚すると知り、かつて彼女の恋人であり、パリ一のドン・ファンであるバルモン子爵(ジョン・マルコヴィチ)に密かな陰謀を打ち明ける。バスティード伯爵の結婚相手と噂されるセシル(ユマ・サーマン)と関係を持って、バスティード伯爵に恥をかかせようというのだ……。

メルトイユ侯爵夫人とバルモン子爵の、それぞれの寝起きの場面から映画は始まり、二人が運命共同体であることが象徴される。そして映画は、メルトイユ伯爵夫人が泣きながら化粧を落とすという、これまた象徴的な場面で終わる。

心理小説を原作としているだけあって、登場人物の心理攻防戦の描き方が巧みである。バルモンは、相手が相手自身の美質だと思い込んでいるところにつけ込み、また、相手が言葉では拒絶しながら受けいれる姿勢を見せているのがわかっているのに、相手の言葉通りに拒絶を受けいれて相手を焦らせてみせる。

メルトイユ伯爵夫人とバルモン子爵が相似形を成しているように、トゥルベール夫人(ミシェル・ファイファー)とセシルも相似形を成している。トゥルベール夫人は熱心なキリスト教信者であり、セシルは最近まで修道院にいた。
ただ、セシルが経験と共に知性も少々足りない(壷に鍵を落としたセシルは、壷をひっくり返すという発想が出来ず、入るはずのない壷の口に手を突っ込んでいる。バルモンはセシルの知性を最初から見抜いているようで、彼女には早口でまくし立てて考える余裕を与えなかったりする)のに対し、トゥルベール夫人はバルモンの手練手管に翻弄されながら、敬虔さを保とうとする知性の持ち主であり、これが愛欲をゲームとしか考えていないバルモンの感情を狂わせることになる。

俳優達の表情の演技の細かさが特筆事項。それも単なる表情の演技に留まらない。最初に人をあざ笑いながら、当人と会った瞬間に聖女のような顔をしてみるメルトイユ伯爵夫人のあざとさに、見る者は笑ってしまうのだが、二度目に同じ表情をメルトイユ伯爵夫人がした時に人々が見るのはメルトイユ伯爵夫人の悲しさなのである。

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2008年8月16日 (土)

これまでに観た映画より(32) 「赤目四十八瀧心中未遂」

DVDで映画「赤目四十八瀧心中未遂」を観る。車谷長吉(くるまたに・ちょうきつ)の小説の映画化。

現代では数少なくなった私小説の書き手、車谷長吉の作品を映画化するのは難しいと思うが、この作品は原作とは別の力で勝負している。

林海象プロデュース、荒戸源次郎監督作品。出演は、寺島しのぶ、大西滝次郎、大楠道代、内田裕也、大森南朋、新井浩文、麿赤児ほか。

袋小路のような尼崎、主人公の「この世界に受け入れられない疎外感」の映像による表現には限界はあるものの工夫は見られる。

それよりも、この映画では、あや(綾)ちゃん(寺島しのぶ)の「誘う女」、「死神」的色彩が原作よりも遙かに濃く出ている。

主人公の生島が綾の後をつける場面、生島が海岸から戻るときに隧道に入るのだがそこが黄泉への入り口に見える場面、赤目で生島が綾の先を歩いていて、綾が着いてきているのかと、ふと立ち止まる『オルフェウス』を思わせる場面、また、赤目四十八瀧が幻想的でありながら黄泉路をなぞっているところ、また、全てが幻覚であったかのようにも取れるラストなど、「死」的なイメージの連鎖がある。

その「死」的な毒を感じられるかどうかが、この映画に対する好悪を分かつように思う。
主人公・生島を演じる大西滝次郎は、これが映画初出演となる新人だが、モノローグやナレーションが弱い。ダイアローグでは決して上手くない演技も朴訥さとして生きるが、一人語りでは経験の乏しさが如実に出てしまっている。

寺島しのぶは何だかんだといわれるが良い。原作に惚れ込んで自ら綾役を申し出たというだけのことはある。

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2008年7月26日 (土)

これまでに観た映画より(31) 「4人の食卓」

DVDで韓国映画「4人の食卓」を観る。「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョン主演のサイキック・ホラー。亡霊が現れたり、DVがあったり、飛び降り自殺や、小さな子供がバックしてきたトレーラーのタイヤに押しつぶされるなどショッキングな場面も多い。

中田秀夫監督や黒沢清監督、森田芳光監督の映画に作風が似ているがあるいは参考にしたのだろうか。うずまき模様は多分、アルフレッド・ヒッチコック監督の「めまい」へのオマージュだろう。

脚本は非常に良く練られている。主人公達が持つ心の暗部。それへの恐怖が絶妙に表現されている。

脚本・監督は韓国の新進女性画監督、イ・スヨン。
チョン・ジヒョンは「猟奇的な彼女」とは180度違う、心に闇を抱えた女性を全編ノーメイクで演じている。

チョン・ジヒョン演じるヨンの住むマンションの1階の広くて柱の林立する空間など、撮影場所の選び方も上手いと思う。

若干、演出よりも脚本が勝った感じがするが(例えば、母親が持つ「子供に喰い殺されるかも知れないという恐怖」や、それとは逆に子供が持つ「母乳を飲むことで母親から栄養を奪って殺してしまうかも知れないという恐怖」はまんまフロイトであり、理屈が強いように思う)良い作品だ。ショッキングな像で見るものを怖がらせるタイプのホラーではなく、心にじんわり染み込んでくるタイプの怖さを持つ映画。

ヨンは霊媒の能力の持ち主なのだが、もしも実際は単にナルコレプシーによる妄想癖を持つだけなのだとしたら、あるいはそちらの方が怖いかも知れない。どこまでが本当でどこまでが嘘なのか。あるいは本当よりも嘘の方が人間には重要なのかも知れないけれども。

他者から理解されない孤独感や、自らの存在によって他者が不幸になっていくのではという罪の意識が痛々しいほど良く出ている。
他者への愛情とそれに報いて貰えない憎しみ、それが「自分に問題があるのでは?」という自分への懐疑や憎しみへとフィードバックしていく。そしてその思いがまた他者へと…。どこまでいっても答えの出ない螺旋階段のような自意識の葛藤。あるいは劇中に出てくる渦巻き模様はそのメタファーなのか?

知ることは幸福なことなのかという問いかけがある。何度も繰り返されたテーマではあるがやはり考えさせられる。
ホラーではあるが、悲しい、この上なく悲しい人間ドラマがきちんと描き込まれており、好印象を持った。

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2008年7月19日 (土)

これまでに観た映画より(30) アルフレッド・ヒッチコック監督作品 「汚名」

DVDでアルフレッド・ヒッチコック監督作品「汚名」を観る。ケイリー・グラント&イングリット・バーグマン主演。
ブラジルのリオデジャネイロを舞台に繰り広げられる諜報活動もの&恋愛もの。

アリシア(イングリット・バーグマン)の父親が逮捕された。長年アメリカでドイツの諜報員として活躍したのだ。懲役20年を言い渡される。

気晴らしのために自宅でパーティーを開くアリシア。そのパーティーに見知らぬ男が呼ばれていた。男の名はデブリン(ケイリー・グラント)。男前のデブリンに惚れるアリシアであったが、実はデブリンは警察の人間であり、リオデジャネイロで活動してるナチスドイツの残党をアリシアにスパイさせようと目論んでいたのだった…。

おなじみヒッチコックシャドー(濃く長い影)や、毒の入ったコーヒーカップをクローズアップで追い続けたり、ナチスドイツの残党・セバスチャンがウラニウムを隠しているワイン保管庫での二人の活動と、またその活動を行ったのがパーティーの日であり、客に出すワインが足りなくなって、セバスチャンとワイン係が保管庫までやって来る過程を同時進行で映したりと、スリルを煽る手法のお手本のような名演出が次々に繰り出され、そのことに感心する。今更いうまでもないことだがヒッチコックは凄い。

例によって、呆れるほど惚れっぽい男女の登場にはつい笑ってしまうのだが、これも当時のハリウッドの甘口路線の王道だ。

高校時代に私はヒッチコック映画を集中して観た。だからヒッチコックの作品を観ると自然に青春の匂いを思い出す。懐かしい。

ところで、「汚名」に主演した、「天下の二枚目」ケイリー・グラントも、「20世紀最高の美女」イングリット・バーグマンも幼少期や晩年は決して幸福ではなかった。そういうハリウッドスターは多いが、この二人はその典型ともいうべき人生を送っている。

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2008年7月18日 (金)

これまでに観た映画より(29) 「花よりもなほ」

DVDで日本映画「花よりもなほ」を観る。原案・脚本・監督:是枝裕和。主演:岡田准一、出演は、宮沢りえ、田畑智子、香川照之、古田新太、國村準、加瀬亮、上島竜兵、夏川結衣、木村祐一、原田芳雄、寺島進、浅野忠信ほか。

頃は元禄、松の廊下での刃傷騒ぎのあった直後、松本藩士・青木宗左右衛門(岡田准一)は、父の仇を討つべく、江戸のボロ長屋に三年間潜伏を続けて、仇の行方を追っている。だが、実は仇である金沢十兵衛(浅野忠信)はすでに見つかっていた。しかし、宗左右衛門は剣の腕の弱さと生来の優しさから、今は後家と契りを結びんで実子でない子を養っている金沢を討つことが出来ないでいる。

一方、主君の仇を討つべく、赤穂浪士達は、宗左右衛門の住む長屋に潜む小野寺十内(原田芳雄)らのもとに詰めかけていた……。

仇討ちをテーマにしながら、散ることよりも生かすことの大切さを伝える痛快な作品である。「散る」のは確かに格好いいけれども、格好付けようとした格好良さであり、人間として(見栄えはしないが)本当に格好良いのは、生かすこと、生きることであるとする訴えが爽快である。

これは傑作だ。

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2008年7月11日 (金)

これまでに観た映画より(28) 「リトル・ダンサー」

DVDでイギリス映画「リトル・ダンサー」を観る。2000年制作。スティーヴン・ダルドリー監督作品。

1984年、イギリス北部の炭坑の町。11歳のビリー・エリオットはボクシングをやっているが、彼にはやる気がない。そんなある日、工事のため下の階でやっていたバレエレッスンをボクシングをやっている体育館の脇でやることになる。もともとダンスのとりこだったビリーはレッスンを見ているうちにバレエに次第に惹かれていくのであった。しかし炭坑の町だけに父親は、「男らしくない」と強硬に反対し……。

ビリー・エリオットの成長を描く爽快な一編である。観ていてワクワクする。ここにはドラマがある。現代人はドラマを好まなくなったなどと、利いた風に人は言うけれど、そんなわけがないことがこの映画を見ればわかると思う。
映像の美しさも特筆事項。そして、無惨な炭坑の町をきちんと描くという社会的な部分も決して忘れていない。見応えのある作品である。

原題は「ビリー・エリオット」。その名の通り、バレエを描くと言うよりも、むしろビリーという少年をきちんと描いている。家族の愛の強さと大切さもちゃんと教えてくれる。
6歳でダンスを始め、2000倍のオーディションを勝ち抜いた、ビリー役のジェイミー・ベル(1986年生まれ)の見事なダンスにも瞠目。観て絶対に損はしない一本である。

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2008年7月 5日 (土)

これまでに観た映画より(27) 「蒲田行進曲」

DVDで日本映画「蒲田行進曲」を観る。階段落ちのシーンで知られる作品である。原作&脚本:つかこうへい、監督:深作欣二。出演は、松坂慶子、風間杜夫、平田満、原田大二郎、蟹江敬三、石丸謙次郎、萩原流行ほか。JACの千葉真一、真田広之、志保美悦子が本人役で友情出演している。

「蒲田行進曲」というタイトルなのに舞台は京都。松竹映画なのに、東映京都撮影所を中心に繰り広げられる物語で、監督も東映の深作欣二というひねくれた作品である。

スターだが、実生活では女ったらしの駄目男、「銀ちゃん」こと倉岡銀四郎(風間杜夫)、大部屋俳優の「ヤス」こと村岡安次(平田満)、かつては映画女優だったが今は全く売れていない小夏(松坂慶子)。普通の人生からは完全にはみ出てしまっている人が織りなす人情劇、というのもひねくれている。

くさい芝居が売り物の銀ちゃんだが、銀ちゃん役の風間杜夫を始め、出演者全員がくさい芝居をする。というより、くさい芝居でないと観ていられないし面白くない映画だろう。そういう映画もある。

笑えるシーンはたくさんあるが、基本的には人間ドラマ。今はもう時代遅れな気もするけど泣かせるねえ。私は泣かなかったけれど。
笑いを武器に、アングラ演劇第二世代を独走した、つかこうへいは、「私はコメディなどというゲスなものを書いたことは一度もありません」と語っているが、本音だろう。この映画を観てもそれはうなずける。

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2008年6月27日 (金)

「みかんのたいきょく」

1982年、私が11月には8歳になるその年に、テレビで「みかんのたいきょく」というタイトルの映画のCMが流れていました。7歳か8歳だったので、「みかん」というと「蜜柑」しか思い浮かべることが出来ず、CMの中に蜜柑が出てこないことを不思議に思ったのを憶えています。

小学校も高学年になると、「未完」という言葉を知るようになりますので、「みかん」とは「未完」のことだと察しがつきました。シューベルトの未完成交響曲のことも知るようになったので、あのとき見た「みかんのたいきょく」とは「未完の大曲」のことなんだと思い、そのまま数年が経ちました。

19歳のある日、ぴあから出た日本映画に関するデータ集を読んでいて、そこで初めて私は、「みかんのたいきょく」の正体が「未完の対局」であったことを知ることになります。まさか碁と将棋の映画であったとは、その時まで思いつきもしませんでした。

「未完の対局」は日中合作映画で、ロードショー時の評価はかなり高かったそうですが、日中合作ということで利権の問題もあるのか、DVDもまだ出ていないという状態です。今すぐに観てみたいとは思いませんが、いずれ観てみたい映画の一本です。

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2008年6月24日 (火)

これまでに観た映画より(26) 「欲望という名の電車」

DVDでハリウッド映画「欲望という名の電車」ディレクターズカット版を観る。テネシー・ウィリアムズ原作・脚色・脚本、エリア・カザン監督作品。出演は、ヴィヴィアン・リー、マーロン・ブランドほか。

テネシー・ウィリアムズの名作戯曲の映画化である。演劇界出身で、舞台「欲望という名の電車」の演出を手がけたこともあるエリア・カザンが、ロンドンで主役のブランチ・デュボアを演じたことのあるヴィヴィアン・リーを映画版の主役に抜擢し、他の出演者は自らが演出したニューヨークの舞台に出ていた俳優をそのままスクリーンに登場させている。

「風と共に去りぬ」で有名なヴィヴィアン・リーは、演技にややムラが感じられるが、狂乱の場の演技は流石である。若きマーロン・ブランドのギラギラとした輝きを放つ演技も見物である。狂気の表出の演出には古さを感じるが、世評通り必見の名画である。

映画「欲望という名の電車」は検閲により、原作にある同性愛の下りの許可が下りなかった上、不道徳だとして他の場面も大幅に切り刻まれたが、このDVDではカットされた部分を含めて全て観ることが出来る。しかしカットされて牙を抜かれた格好となったにもかかわらず、映画「欲望という名の電車」は封切り当初、批評家から「スクリーンに乗せるべき題材ではない」などと酷評されたという。

映画が完成した翌年、共産主義者ではないかとの疑いを受けたエリア・カザン監督は、身の潔白を証明するために、赤狩りに積極的に協力。これによりカザンはのちにハリウッドから総スカンを食うことになるのだが、「欲望という名の電車」の件といい、赤狩りといい、当時のアメリカがいかにファナティックであったかを示す話である。

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2008年6月22日 (日)

『蟹工船』と『戦艦ポチョムキン』

プロレタリア文学の最高峰であり、最近再び注目を浴びている小林多喜二の『蟹工船』。カムチャッカ(作品中ではカムサツカ)沖で蟹漁を行うオンボロ工場船における労働者の悲惨としかいいようのない待遇と、上官(特に浅川監督)の人を人とも思わない非人間性を渾身の筆で描き抜いた作品です。

小林多喜二 『「蟹工船」「一九二八・三・一五」』(岩波文庫) 蟹工船には即戦力になるよう、農村から学のある真面目な若者を労働者として雇っていましたが、若者は学があるために「ストライキ」なるものを漁夫に教え、広め、船員達はストライキを敢行。一応の成功を見ます。しかし……。

岩波文庫に併録されている「一九二八・三・一五」では、共産主義のために活動している個々や団体に焦点を当てて書いた小林多喜二ですが、「蟹工船」は、それとは真逆の群衆劇であり、労働者側の個々の個性がなるべく目立たないように工夫されています。

附記という形で語られるストライキの顛末が楽天的に過ぎるのではないかという弱点はありますが、執筆当時25歳だった小林多喜二としては会心の出来だったと思われます。資本家のみならず、帝国主義の軍隊、全体主義の大日本帝国の国策、更には「献上品」の蟹という形で出てくるトップへの批判など、相当の勇気を持って書かれた作品であり、視野の広さという点において、私小説的なものから抜け出せなかったそれまでのプロレタリア文学から一歩進んだ小説であるといっていいでしょう。

『蟹工船』とよく似た設定を持った映画として多くの人が思い浮かべるのが、世界映画史上屈指の名作として知られる『戦艦ポチョムキン』。実際にあった事件を基にして作られた映画であり、監督は「モンタージュ理論」の完成者として知られるセルゲイ・エイゼンシュタイン。1925年のサイレント作品ですが、本国であるソビエトでも検閲に次ぐ検閲で満足に上映されないという状態でした。日本で上映されたのは第二次大戦が終わってから。ということで、設定は似ていますが、小林多喜二が『蟹工船』のモデルとしたという事実はありません。

DVD『戦艦ポチョムキン』 しかしエイゼンシュタインもソ連のプロレタリア芸術協会の会員であり、世界中で資本階級と労働者階級の軋轢が露見しつつある時代であったということもあり、『蟹工船』と『戦艦ポチョムキン』のシンクロニシティは必然として起こったと見ることも出来ます。

『戦艦ポチョムキン』は、1905年に起こった「ポチョムキンの反乱」を題材として撮られた映画であり、ウジのわいた肉を食べさせられるなどした水兵達が不満を爆発させ、ストライキを決行。上官達は水兵達を抑えつけようとし、銃殺までしようとしますが、最後は水兵側が勝利。
映画のラストでも水兵の勝利が描かれていますが、これは史実ではなく、実際は、反乱を起こした水兵達は死罪に処せられました。

IVCから出ている「戦艦ポチョムキン」のDVDには、なつかしの淀川長治による解説が収められています。

小林多喜二 『蟹工船 一九二八・三・一五』(岩波文庫) 紀伊國屋書店BookWeb

Antonov / Eizenstein/戦艦ポチョムキン Bronenosets Potyomkin

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2008年6月10日 (火)

これまでに観た映画より(25) 「グランド・ホテル」

DVDで映画「グランド・ホテル」を観る。名画として知られるが、まだ観たことはなかったのでレンタルビデオ店で探してきたのだ。
GGの愛称でも知られるグレタ・ガルボ出演作。1932年制作のアメリカ映画。

「グランド・ホテル」はベルリンの同名ホテルに集まる人々による群像劇。盛りを過ぎたバレリーナ、こそ泥、婿入りワンマン社長と彼にこき使われていた従業員、タイピストの女性などがこのホテルに泊まり、出会い、それぞれの人生の断片を見せ、去っていく。
脚本がよく練られており、「通り過ぎる場所」としてのホテルの哀感を出すことにも成功している。

ガルボはこの時27歳であるが、現代の27歳より大分年上に見える。他の俳優も現代の同年代の俳優に比べると落ち着いて見える。戦前の人は同じ年の頃であっても現代人に比べると10歳老けて見えるという説があるそうだが、それは本当のようだ。
ただ調べてみると、当時でもガルボは実年齢より上に見られがちだったそうで、本人も自分が老けてみられることをやはり気にしていたそうだ。そのためかガルボは36歳で引退してしまい、生涯独身を通し、引退以降はマスコミの前に出ることも一切なかったという。

それにしても1932年にアメリカはこれほどまでに洗練され、計算された映画を作っているのだ。こんな映画を作っている国と戦争しても日本は勝てるわけがない。

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2008年6月 4日 (水)

これまでに観た映画より(24) 「藍色夏恋」

DVDで台湾映画「藍色夏恋」を観る。イー・ジーイェン監督作品。チェン・ボーリン、グイ・ルンメイ主演。2001年の作品。
高校を舞台にした恋愛映画である。

師範大学付属高に通う女子高生のモン・クーロウ(グイ・ルンメイ)は、親友のリン・ユエチェン(リャン・シューフイ)と、ユエチェンが好きなチャン・シーハオ(チェン・ボーリン)という男の子の間を取り持とうとする。しかし、チャン・シーハオにユエチェンを紹介しようとしたところ、肝心のユエチェンが姿を消していた。チャンは「ユエチェンなんて本当はいないんだろう」と決めつけ、モン・クーロウを好きになり始めてしまう。

まず独特の色彩美に溢れる映像が美しい。肝心なシーンではセリフをほとんど使わず、動作で心理を表現する手法も上手いと思う。
爽やかな青春映画ではあるけれど、単純な青春賛美には終わらず、かといって暗さは排除してある。
ピアノによるシンプルな映画音楽も素敵だ。
傑作ではないかも知れないけれど、愛すべき佳編である。

ちなみに劇中に、「木村拓哉」の名前が出てくる。キムタクが台湾でも大変な人気であることがわかる。

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2008年5月31日 (土)

これまでに観た映画より(23) 山中貞雄監督作品「丹下左膳余話 百萬両の壷」

DVDで1935年制作の日本映画「丹下左膳余話 百萬両の壷」を観る。天才と呼ばれながらわずか28歳(数え年で29歳)で夭逝した山中貞雄監督の満25歳時の作品。大河内傳次郎主演。出演は喜代三(きよぞう。またの名を新橋喜代三〈しんばし・きよみ〉。のちの中山晋平夫人である)、四代目沢村国太郎(長門裕之、津川雅彦の父親)、花井蘭子、深水藤子ほか。大映京都制作。右目と右腕のない剣豪・丹下左膳を主人公にしたコメディー時代劇。カットされた大立ち回りのシーン(ただし音声はなし)も含めた完全版。

「丹下左膳 百萬両の壷」は、津田豊滋監督、豊川悦司の主演でリメイクされているが、やはりオリジナルの方がずっと面白い。大河内傳次郎の丹下左膳は腕は立つが普段は駄目男という丹下左膳像が良く出ているが、トヨエツの場合は駄目男をやらせても格好良すぎて笑えないのである。

当時、当代一の芸者として鳴らし、歌手としても活躍していた喜代三の歌と演技も素晴らしく、江戸女の粋を見事に再現している。

山中演出はシーンの飛ばしや、セリフの間の置き方が絶妙で、観ていて大笑いしてしまうシーンも多数。25歳でこれだけの映画を取ることの出来た山中の早世が今更ながら惜しまれる。

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どうでもいいことかも知れませんが

映画「ロルカ、暗殺の丘」でロルカを演じたアンディ・ガルシアとリッカルド・ムーティは似ていると思いませんか?

アンディ・ガルシアとリッカルド・ムーティの両方を知っている人がどれぐらいいるのかわかりませんが。

アンディ・ガルシアといえば、何といってもケビン・コスナー主演の「アンタッチャブル」が良かったですね。

シカゴ駅での階段落ちの場面、

「狙いは?」
「完璧です」

うーん、格好いい。

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2008年5月27日 (火)

これまでに観た映画より(22) 「バベル」

2007年6月1日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で、「バベル」を観る。メキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。出演は、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、菊池凛子、二階堂智、役所広司ほか。音楽は既成のものが使われ、ラストシーンでは坂本龍一の「美貌の青空」(ピアノ&ストリングス・バージョン)が流れる。

モロッコ、アメリカ南部とメキシコ、東京を舞台とした作品。3つの場所での出来事が微妙に関わっている。

モロッコで、少年が遊び半分でライフルを撃つ。その弾がアメリカからの旅行客・スーザン(ケイト・ブランシェット)の首に命中する。

アメリカ南部、アメリカ人の家で乳母をしているメキシコ出身のアメリアは、主である夫妻が外国旅行に出ている間、留守と主夫妻の2人の子供を預かっている。しかしメキシコでアメリアの息子の結婚式がある日、代わりに来るはずだった育児担当者が来られなくなってしまう。やむなく2人の子供とともに国境を越えるアメリア。

東京、耳と口の不自由な女子高生・チエコ(菊池凜子)は孤独の底にいた。

モロッコと、アメリカ南部およびメキシコ編は、砂漠という大自然の前に無力な人間の姿が描き出され、ベルトルッチ監督の「シェルタリング・スカイ」を思い起こさせる。ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットが夫婦を演じるモロッコ編は特にそうだ。

東京では、最先端の都市(少なくとも映画の中では東京は世界最先端の街として登場する)に生き、裕福な家庭に育ち、夜景の素晴らしい高層マンションに住みながら、そうした恩恵から遠い少女の姿が描かれる。

別の人が言えないでいる言葉を別の場面にいる他の人間に語らせるなど、意欲的な演出が光る。

本質的には人間存在の不安定さに重点を置いた重い作品である。
やむにやまれぬ事情が重なったということもあるのだが、やらずもがなのことをしてしまう人間という生物の本質でもある「愚かしさ」に歯がゆさを覚え、同時に人間の弱さに胸を痛める。

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2008年5月15日 (木)

これまでに観た映画より(21) 「過去のない男」

DVDでフィンランド映画を観る。「過去のない男」。監督は、フィンランド映画といえばこの人、アキ・カウリスマキ。

有名なので書くまでもないことだが、アキ・カウリスマキは男性である。フィンランドではアキ、ミツコ、ミカなどは男性のごく一般的なファーストネームである。

3人組の暴漢に襲われ、記憶をなくした男が主人公。家を借り、仕事を始め、女性を愛するという記憶喪失ものの王道パターンを行くのだが、非常に面白い。記憶喪失者にとって現実は厳しいが、周囲の人との心の交流により(それも比較的淡々とした交流である)、以前よりももっと幸福になるストーリーは心温まる。

主人公は身元が判明し、家に戻るが妻とはすぐに離婚することになる。その帰りの汽車の中で男は寿司を食べ、日本酒を飲むのだが、なぜかその車両にはクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」がBGMとして流れている。あのシーンの意味は何なのだろう? 

悲惨な人間像をユーモアを込めた視線で温かく見守るというカウリスマキ監督の作風が最も良く現れた作品である。

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2008年5月 6日 (火)

これまでに観た映画より(20) 「ワンダフルライフ」

DVDで是枝裕和監督の映画「ワンダフルライフ」を観る。この世を去った人々が訪れる天国の入り口にある施設。死者達はこれまでの人生で一番思い出に残る場面を選び、それを撮影してから次の世界に旅立っていく。主演:ARATA、小田エリカ、内藤剛志、寺島進ほか。

旅立ちとは何か、と考えさせられる作品。死者達と面談する施設の人達は実は全員、「一番の思い出」を選ぶことが出来なかったためにここで働いているのだ。

施設で働く青年・望月隆(ARATA)はある老人との面談を担当する。実はその老人は望月のかっての許嫁と結婚した人物であった。望月は容貌こそ22歳だが、太平洋戦争で戦死しており、その老人とは同世代だったのだ。
望月の心の中に起きる旅立ちへの思い。

何を選び、どこへ行くのかという問いは実は人生そのものの問いでもある。岡村孝子の歌にもあるが、「いつかはみな旅立つ、それぞれの道を歩いていく」。何がきっかけで、どの道を選ぶのかは個人個人の最重要問題だ。選択なんて実は出来ないし誰もしてはいないというのもまた真実かも知れないが、信じる道を歩むという決意を常に再認識していくことの大切さを思い出させてくれるドラマである。

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2008年4月30日 (水)

街の想い出(23) 銀座その4 銀座シネパトス

街の想い出(23) 銀座その4 銀座シネパトス

東銀座にある銀座シネパトス。地下にある映画館です。3つのスクリーンがあり、ロードショー、名画など様々な映画を上映。

この映画館観た映画で印象深いのは、ルネ・クレマン監督、アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」のリバイバル上映。1994年か1995年のことだったと思います。

今はどうか知りませんが、当時の銀座シネパトスは近くを走る地下鉄の音がときおり館内に響いてくるという、のんびりした感じの映画館。そうした場所で、アラン・ドロン演じる主人公が海辺で太陽の光を浴びながら満面の笑みを浮かべ、でも実は……、という切ないラスト(このラストシーンは原作にはない、映画独自のもの)を観るのは、最新式の映画で万人向けの映画を観るのとは違った独特の感慨があったのをよく憶えています。

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2008年4月26日 (土)

これまでに観た映画より(19) 「あなただけ今晩は」

DVDでビリー・ワイルダー監督の「あなただけ今晩は」を観る。シャーリー・マクレーンとジャック・レモンの主演。1963年の作品。原作はブロードウェイのミュージカルだという。

舞台はパリである。ロケのシーンは美しく、当時のパリの様子がよくわかる。セットのシーンはDVDで映りが良くなった分、背後の建物が書き割りだとわかってしまう。それに登場人物は全員フランス人の設定なのに英語を話す。いかにもハリウッドらしい映画だ。
2時間20分と長い映画だが、飽きることなく見せる。ただ設定には無茶苦茶なところと巧妙なところが混在する。

様々な経歴を持ち、「それはまた別の話」という口癖を持つバーのマスターであるムスタッシュは三谷幸喜の作品に登場する人物の元ネタであることがわかる(例えば『巌流島』の佐助など。毎回、「それはまた別の話」という森本レオのナレーションで終わったテレビドラマ『王様のレストラン』では最終回に三谷幸喜がムスタッシュの格好をして登場した)。

X卿復活の場面は予想がつくのだが実際に目にすると笑ってしまう。
上質のコメディとして大いに推薦したい。

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2008年4月21日 (月)

DVD「夕凪の街 桜の国」

日本映画「夕凪の街 桜の国」のDVDを紹介します。こうの史代のマンガを佐々部清の監督により映画化。主演:田中麗奈、麻生久美子。出演は、堺正章、中越典子、金井勇太、吉沢悠、伊崎充則、粟田麗、藤村志保ほか。

映画「夕凪の街 桜の国」DVDジャケット

広島の原爆をテーマとした作品でありながら、原爆を直接描くことなく、それでいて原爆の悲惨さをリアルに伝えるという異色作。

映像も音楽も美しく、それゆえに原爆の悲劇がよりクッキリと浮かび上がります。テーマは重いものの、描かれるのは日常であり、いかにも戦争映画といった雰囲気はありません。しかしそうであるがために、半世紀以上前と現在との繋がりが深く感じられるということでもあります。

1958年が舞台の「夕凪の街」編と、2007年が舞台の「桜の国」が緩やかに繋がる構成。原作マンガの芸術性が高いため、脚本と演出にかなり手こずった形跡が見られますが、映画としても高い水準は得られています。

陰と陽、内向きと外向きという正反対のキャラクターと役作りを見せる主演二人の演技の対比も見所の一つです。

Movie/夕凪の街 桜の国

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2008年4月16日 (水)

ネオ・クロサワの名を全世界に轟かせた衝撃のサイコ・サスペンス 「CURE」

ネオ・クロサワこと黒沢清監督の名を全世界に轟かせたサイコ・サスペンス映画「CURE」のDVDを紹介します。
脚本&演出:黒沢清。主演:役所広司、萩原聖人。出演は、洞口依子、うじきつよし、中川安奈、大杉漣ほか。

黒沢清監督作品「CURE」 DVDジャケット

東京23区内を中心とした南関東地方各地で奇妙な連続殺人事件が起こる。死体はいずれも頸部を「X」の形に切り裂かれているのだが、逮捕された容疑者は複数で、互いに面識がなく、なぜ頸部を「X」型に切り裂いたのかを訊いても明確な答えが得られない。

警視庁の高部(役所広司)は、ドラマや映画、小説の影響の線を当たってみるが、それもないという。
捜査を続けるうちに、容疑者達と関連のある一人の男が浮かび上がる。男の名は間宮邦彦(萩原聖人)。数年前まで医科大学で精神医学を学んでいた青年である。記憶に障害を持つ間宮に殺人教唆の疑いがかかる……。

これまでに何度も何度も繰り返し観た映画ですが、最初に観たときの衝撃はさすがに弱まるものの、人間であることの悲しさや人間存在そのものの危うさと不気味さへの認識はむしろ高まっています。
そして何といっても萩原聖人が演じた間宮邦彦という男の存在。脚本や演出も巧みですが、間宮という、おそらく俳優なら誰でも演じてみたくなるような魅力的な悪役の造形に成功したことが、この映画の面白さを倍加させているのは間違いのないところでしょう。

Movie/Cure: キュア

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2008年2月25日 (月)

これまでに観た映画より(18) 「接続」

ビデオで韓国映画「接続」を観る。ハン・ソッキュとチョン・ドヨンが送る恋愛ドラマ。インターネットのチャットやメールを使った現代的な恋愛の形。しかしインターネットでなく電話によるすれ違い劇なら1990年にフジテレビで放送された「素敵な片思い」というドラマがあった(中山美穂、柳葉敏郎:主演)。それに少し似ていなくもない。

97年の公開だが携帯電話が出てこないのが気になる。今や珍しくなったじれったくなるくらいのすれ違い劇なのだが、携帯が普及した現在ならどうだろう。すれ違いは起きないかも知れない。かっての恋人を忘れられない男と、友人に彼を奪われた女の恋模様。チョン・ドヨン演じるスヒョンのいじらしほどの乙女心が愛らしい。ラストのドンヒョン(ハン・ソッキュ)の静かな心の揺れも説得力がある。

ラストの音楽が「ラヴァーズ・コンチェルト」なのがベタだが、まずは愛らしい「大人の童話風」映画に仕上がっている。

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2008年1月30日 (水)

これまでに観た映画より(17) 『シコふんじゃった。』

DVDで、日本映画『シコふんじゃった。』を観る。周防正行監督作品。出演は本木雅弘、清水美砂、竹中直人、柄本明、田口浩正ほか。
千葉にいた頃はこの映画のセルビデオを持っていて何度も観た。何度観ても勇気づけられる良い映画である。

教立大学(モデルは漢字をひっくり返した立教大学。周防正行監督の母校である)の4年生である山本秋平(本木雅弘)は就職も決まり、所属するシーズンスポーツ同好会の夏合宿である沖縄スキューバツアーを企画して盛り上がっている。しかし遊び学生である秋平は単位が足りず、卒論も書けそうにない。そこで卒論担当教授の穴山(柄本明)は、かって自分が所属していた教立大学相撲部に入って大会に出てくれれば、特別に卒論の単位を出してもいいと提案する。教立大学相撲部には青木(竹中直人)という大学8年目の学生一人しか所属していない。このままでは大会に出られないのだ。
単位と引き替えに相撲の大会に出ることにした秋平は青木とともに部員の勧誘を始めるのだが……。

海外でも評価の高い名画である。1992年の作品。ということで、当然ながら出演者は皆まだ若い。

ライバル校として登場する大学もみな漢字を逆にしただけなのでどこの学校がモデルなのかすぐわかる。北東学院大学、波筑大学、応慶大学、衛防大学校、本日医科大学など。何てイージーな。ちなみに本日医科大学の相撲部員役で無名時代の手塚とおるが出ているのだが、役名は足塚であった。これもまたイージーな。

余談だが、秋平(本木雅弘)の、「沖縄……、スキューバ……」を、青木(竹中直人)が「え? 大きなスケベ?」と聞き違えるという、かなり笑えるシーンがあるのだが、青木のセリフは竹中直人のアドリブだそうである。

周防正行監督はもともとはロシア文学が好きで、ロシア文学科のある早稲田大学に行きたかったのだが、二浪しても(その間、勉強せずに映画ばかり観ていたということもあって)入れなかった。フランス文学も好きだったので、立教大学の仏文科に進んでいる。当時、立教大学には映画評論家として著名な蓮實重彦(のちの東京大学総長)が助教授として籍を置いており、周防監督は蓮實重彦の「映画論」の講義に感銘を受けて映画を撮り始めるようになる。

なぜ、周防監督の経歴について書いたかというと、『シコふんじゃった。』の人間関係における「片思いの連鎖」はチェーホフの『かもめ』の影響なのではないか、と気づいたからだ。周防監督はロシア文学の中でも特にチェーホフが好きであることがわかっている。

それはともかくとして、『シコふんじゃった。』は本当に良い映画だ。私も色々と教わることが多かった。これからも何度も見直したい映画である。

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2008年1月16日 (水)

これまでに観た映画より(16) 「オールド・ルーキー」

DVDでアメリカ映画「オールド・ルーキー」を観る。実話を基にしたベースボール・ドリーム・ムービー。

ジミー・モリスは大学を出て、ミルウォーキー・ブリューワーズに入団。130キロ前半のスピードしか出ないピッチャーであり、肩を壊して夢は破れた。35歳になったモリスはテキサスのビッグ・レイク高校で化学の教師と野球部の監督を務めている。昨年、一昨年と1勝しかできなかった弱小チームの監督だ。
しかしモリスの野球への情熱は冷めていなかった。夜毎、一人で金網に向かって投げ込みを続けるモリス。ボールのスピードは常時150キロを超えるようになっていた。
ある日、モリスの豪腕ぶりが生徒に知れる。

試合に負けた日、モリスは、「夢や希望を簡単に捨ててしまうから負けるんだ」と生徒を諭す。しかし生徒からは「夢を捨てたのは監督の方だ」と言われ、もし自分達が優勝したら監督もメジャーの入団テストを受けるという約束を交わす。ビッグ・レイク高校はこれまでの成績が嘘だったかのように勝ち続け、地区大会で優勝。モリスはメジャーのテストを受け、時速156キロを叩き出して合格。デビルレイズ傘下のマイナーチームに入団する。そしてテキサスでの対レンジャース戦でついにメジャーのマウンドに立つのだった。

夢と希望を与えてくれる映画であり、観ていて胸が熱くなる。単なる野球映画やサクセスストーリーではなく、家族の問題や、父と子の関係など、男なら誰でも通過する苦悩を真摯に描き、丁寧な作りで自然な感動を呼ぶ。

「諦めない」というそのことが、いかに大切かを教えてくれる秀作であった。

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2008年1月 9日 (水)

街の想い出(21) 千葉その2 シネマックス千葉

街の想い出(21) 千葉その2 シネマックス千葉

千葉市中央区にある映画館「シネマックス千葉(CINEMAX千葉)」。5つのスクリーンを有する、千葉市初のシネマコンプレックスです。1997年のオープン。この映画館で最初に観た映画は、確か竹中直人監督の「東京日和」だったと思います。写真家のアラーキーこと荒木経惟(あらき・のぶよし)夫妻をモチーフにしたドラマです。竹中直人と中山美穂の主演。松たか子の映画初出演作でもありました。岩松了の脚本。映画音楽の作曲は大貫妙子で、坂本龍一が編曲を担当しています。私は「洛北日和」というブログもやっていますが、そのタイトルの基になったのが「東京日和」です。

この映画館にはたびたび通い、色々な作品を観ています。というのもシネマックスにはメンズデイがあって、毎週木曜日に男性は1,000円で映画を鑑賞することが出来るので行きやすかったという理由があります。学生料金も1,300円で、東京の映画館に対抗しています(東京の映画館の学生料金は1,500円が一般的)。

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2007年12月28日 (金)

祝ご結婚 麻生久美子主演「SF Short Films」

本日、ご結婚を発表された麻生久美子さん主演映画のDVDを紹介します。
中野裕之監督のSFシリーズ第3作「SF Short Films」。タイトル通り、ショートフィルムの連作で、麻生久美子は全6作品中3作品に主演しています。

「SF Short Films」

「Return」(中野裕之監督作品、出演:麻生久美子、田中要次、村上淳ほか)、「県道スター」(ピエール瀧監督作品、出演:ゲッツ板谷、安藤政信ほか)、「ハナとオジサン」(芹澤康久監督作品、出演:ピエール瀧、hanaeほか、「アダージェット」(安藤政信監督作品、出演:麻生久美子)、「仲良き事は良きことかな」(中野裕之監督作品、出演:大竹まこと、斎木しげる、きたろう、犬山犬子ほか)、「Slow is Beautiful」(中野裕之監督作品、出演:麻生久美子、桃生亜希子ほか)の6本のショートフィルムを収録。

ショートフィルムだけに傑出して面白いという作品はありませんが、普段とは別の角度から見た日常を上手く切り取って見せています。

40本以上の映画に出演しているという売れっ子映画女優の麻生久美子ですが、「SF Short Films」の立川空子(たちかわ・くうこ)が彼女の地に一番近い役だと思われます。

麻生久美子の実家の付近でもロケが行われており(感心するくらい田舎です)、また「Return」には麻生久美子の実のお母さんが、「Slow is Beautiful」には麻生久美子の実のお祖母さんが出演されています。

ショートフィルムス

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2007年12月17日 (月)

街の想い出(19) 銀座その2 東劇

街の想い出(19) 銀座その2 東劇

東劇。銀座と築地の中間、東銀座にある映画館です。

ここで観た映画と特に印象に残っているのは、竹中直人監督の「119」と黒沢清監督の「ニンゲン合格」。

「119」は消防署員の物語。とはいえ、ここ何年も火事が起こっていないという平和な海辺の街でのお話です。出演は、赤井英和、鈴木京香、温水洋一、塚本晋也、浅野忠信、津田寛治、マルセ太郎、宮城聰、竹中直人ほか。脚本は、筒井ともみ、宮沢章夫、竹中直人の3人が担当。音楽:忌野清志郎。
静岡県沼津市を中心とした日本情緒の残る風景、小津安二郎を意識した竹中の演出、撮影当時25歳だった鈴木京香の日本美人ぶり、忌野清志郎の歌など、見所の多い作品です。

「ニンゲン合格」は、14歳の時に事故で記憶を失った青年(西島秀俊)が10年ぶりに目覚めたところから始まるヒューマンドラマ。出演は、西島秀俊、役所広司、りりぃ、麻生久美子、哀川翔、洞口依子ほか。
展開が淡々としているので、“退屈だ”と評価する人も多かったようですが、「人間」、「夢」、「家族」などについて考えさせられるところも多く、個人的には第一級の人間ドラマであると思っています。

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2007年12月 6日 (木)

これまでに観た映画より(15) 「ウエストサイド物語」

DVDでミュージカル映画「ウエストサイド物語」を観る。監督はロバート・ワイズ。音楽はいうまでもなくレナード・バーンスタイン。
かなり強引な展開と設定の不自然さ(街の不良達が基礎万全のダンスを繰り広げる)には苦笑してしまうが、それらはこの作品の本質ではないので笑って流すことにする。

ここに描かれているのは「人間の愚かしさ」だ。争いを重ねれば重ねるほど不幸になるだけ、そんなことは分かり切ったことなのにそれでも争いをやめられない、人間という存在の愚かさ。結局、血が流され、誰一人幸福にならず、一人一人、その場を去っていくという有名なラストを迎える。
バーンスタインは、師の一人であるセルゲイ・クーセヴィツキーから、「ショービジネスには手を出すな」という忠告を受けていたが、戦いを憎み、平和を愛する精神から、「ロミオとジュリエット」を下敷きにしたこのミュージカルの作曲を決意した。初演は成功し、こうして映画化もされ、名画になった。
その結果、「バーンスタインといえば『ウエストサイド・ストーリー』」というイメージが出来てしまい、シリアスな作品が正当な評価を受け入れられなくなってしまったのだが。
とはいえ、「ウエストサイド~」が名作であることには間違いない。

シャーク団(シャークス)のリーダーであるベルナルド役のジョージ・チャキリスがやはり格好いい。私がまだ小学生の頃、「日本の面影」というNHKドラマで、ラフカディオ・ハーンをチャキリスが演じていたが、今でも印象に強く残っている。もっともチャキリス自身は映画ではヒットを飛ばせず、テレビと舞台を中心に活躍することになる。
チャキリスに限らず、この映画の出演者はどういうわけか不幸に見舞われることが多い。マリアを演じたナタリー・ウッドは1981年、映画撮影中に水死。トニーを演じたリチャード・ベイマーはこの作品で全ての運を使い果たしたのか、以後パッとせず、テレビ界に移ったが脇役ばかりだそうだ。

ロバート・ワイズ監督の演出は頻繁に用いられる俯瞰ショットが今見ても斬新である。

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2007年11月29日 (木)

これまでに観た映画より(14) 「かもめ食堂」

2006年6月5日 京都シネマにて

久しぶりに映画館まで映画を見に行く。京都シネマで公開中の「かもめ食堂」。オール・フィンランドロケによる日本映画である。
10時20分の回(つまり初回)を観る。京都シネマのロビーには早朝サービスとしてお茶が無料で飲めるようになっている。

「かもめ食堂」。フィンランドの首都ヘルシンキで、おにぎりをメインにした食堂「かもめ食堂」をオープンしたサチエ(小林聡美)。しかし1ヶ月経っても一人も客が来ない。ヘルシンキの3人のおばちゃんが食堂の中を覗いて、「あの子(サチエ)、大人かしら? 子供かしら?」、「子供なんじゃないの?小さいから」などと言っているだけである。
ようやく最初のお客が来る。日本オタクのトンミ・ヒルトネンという青年である。ヒルトネンはサチエに、「ガッチャマンの歌」を全て歌って欲しいと要望するが、サチエは「誰だ、誰だ、誰だ」の部分しか思い出せない。その日、書店に立ち寄ったサチエは、ミドリ(片桐はいり)という女性に出会い、「ガッチャマンの歌」をフルコーラス教えて貰う…。

はやらなかった「かもめ食堂」が繁昌するまでのお話。主要スタッフは全て日本人だが、フィンランドで撮影したためか、画面上に日本映画とは異なった時間が流れているのがわかる。出てくる料理も全て美味しそうで、こちらも食べたくなる。

小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、というとても濃い3人のコメディエンヌの主演だが、互いの個性と個性が調和して、爽やかな味わいが生まれている。

フィンランドの森のシーンがあるのだが、本当にトロルが出そうな雰囲気である(実際に、「トロルの悪戯か?」と思われるシーンがある)。映像も、画面に吸い込まれそうになるほど美しい。

ほのぼのとしたラストシーンも良く、愛すべき一本になっている。

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2007年11月16日 (金)

これまでに観た映画より(13) 「風の丘を越えて/西便制(ソピョンジェ)」

DVDで韓国映画「風の丘を越えて/西便制(ソピョンジェ)」を観る。1993年の作品。イム・グォンテク監督作品。
これは日本でもかなり話題になった作品で、私も日本でロードショー公開された時(1994年)に銀座テアトル西友(現・銀座テアトルシネマ)で観ている。韓国映画を観たのはその時が初めてだったと思うが大いに感銘を受けた。
韓国映画がまだ、「重い暗い」というイメージを持っていた頃の作品であり、やはり重く暗いが、秀作だ。

12年ぶりに見直してみて、画質が古いのに驚く。当時はそれほど気にならなかったのだが。最近の韓国映画の画質の向上のめざましさが却ってよくわかる。
韓国映画の画質が飛躍的に上がるのはこの直後、韓国が国策として映画とコンピューターゲームに力を入れてからである。

韓国の伝統歌謡パンソリ。唱劇とともに一時は隆盛を誇ったものの次第に廃れていく。「風の丘を越えて~」はそんな死にゆく芸術パンソリと、義理の親子愛、姉弟愛を描いた作品。「芸のためなら~」という芸人の愛と表裏一体の残酷さが胸に迫る。

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2007年11月15日 (木)

矢口史靖×鈴木卓爾 「ONE PIECE」秋コレクション

矢口史靖監督と鈴木卓爾監督が作ったショートフィルム集「ONE PIECE」の秋コレクションを紹介します。

以前に、春コレクションを紹介しましたが、秋コレクションもやはり全て家庭用ビデオカメラを用いた、ワンカット、編集なし、アフレコなしのショートフィルム集。

矢口史靖×鈴木卓爾 「ONE PIECE」秋コレクション

出演は、自主制作映画の帝王、BOBAさんこと田中要次、自主制作映画の女王こと唯野未歩子(ただの・みあこ。ジャケットの女性が彼女です)ほか。

大地震後の部屋を描いた「二人ぽっちの惑星」(矢口史靖監督)、おそろしくシュールな「傘男」(鈴木卓爾監督)、これまた怖い「暗室」(矢口史靖監督)、女性の嫉妬心を描き、恐ろしい結末を迎える(?)「祝辞」(矢口史靖監督)、これまた別の意味で恐ろしい結末を迎える「社長の首」(鈴木卓爾監督)、河原で集団ダンスの練習をする中学教師の姿をコミカルかつシリアスに描いた「サウンドオブ中学教師」(鈴木卓爾監督)、のちに深津絵里主演のテレビドラマとしてリメイクされることになる「猫田さん」(矢口史靖監督)など、全14作品が収められています。

特典として、唯野未歩子が踊るエンディング映像と鈴木卓爾監督の短編映画「おっけっ毛ビビロボス」(出演:西田尚美、西牟田恵、猫田直、上野純子、阿部サダヲ、田中要次ほか)がついています。

軽い感じで撮られたものが多いので、観て、「あー、面白かった」と思う作品は少ないのですが、恋愛ものである「猫田さん」(主演の相川直はこの作品に出演したのをきっかけに猫田直に改名した)などはなかなかです。

ONE PIECE 秋コレクション

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2007年10月14日 (日)

これまでに観た映画より(12) 「小説家を見つけたら」

DVDで映画「小説家を見つけたら」を観る。監督は、「グッド・ウィル・ハンティング」のガス・ヴァン・サント。主演はショーン・コネリー、ロブ・ブラウン。

ニューヨーク・ブロンクス。ジャマール(ロブ・ブラウン)がいつもバスケットボールを楽しむ広場の近くのマンション最上階の部屋から何者かがこちらをのぞいている気配がする。「ウィンドー」、それがジャマールらがつけた部屋の男の名前だ。ウィンドーについて「人を殺した」、「実は幽霊だ」。色々な噂が広まる。

ジャマールがある日、ウィンドーの部屋に忍び込む。ウィンドーの正体を知る鍵を盗もうというのだが、突然現れた男に驚いたジャマールは盗むどころが自分のバックパックを部屋に置き忘れてしまう。後日、ジャマールがウィンドーに部屋の下の道を歩いているとバックパックが投げ返される。バックパックの中にあった、ジャマールが書き留めた文章には添削がしてある。実はウィンドーの正体は50年前に文学史に残る小説を一作だけ発表して、その後姿をくらませてしまっていたウィリアム・フォレスター(ショーン・コネリー)だとわかる。

「グッド・ウィル・ハンティング」に少し似たところもある、青年の成長を描いた教養映画。「グッド・ウィル・ハンティング」では数学の天才だったが、今回は文章の天才だ。類い希な文才を持つジャマールが、頑固じじいのフォレスターの指導により、文章力だけでなく人間としても成長していくのがわかる。そしてジャマールだけではなく、フォレスターもまた人間としての成長を遂げるのだった。

胸を振るわせる感動ではなく、そっと心を温めてくれるような安心感を与えてくれるのが、ガス・ヴァン・サント監督らしい。

ショーン・コネリーもロブ・ブラウンも好演だが、一番印象に残ったのは敵役であるクロフォード教授を演じた、F・マリー・エイブラハム。「アマデウス」のサリエリ役でおなじみの俳優である。挫折を経てひねくれてしまった男を丁寧に演じ、浮いたところのない悪役像を作り出してみせる。本当に上手いと思う。

「ピアノ・レッスン」の演技で11歳にしてアカデミー助演女優賞を受賞したアンナ・パキンも愛らしい演技を見せており、順調に成長しているようだ。

クライマックスのシーンにもっと説得力があると良かったのだが、あるいは日本語字幕スーパーでは駄目でも、英語の原文そのものは素晴らしかったのかも知れない。いずれにせよ、ドラマがかっているのが少し鼻についた。

とはいえ、「グッド・ウィル・ハンティング」には及ばないにしても、なかなかの佳篇であることは確かだ。「グッド・ウィル・ハンティング」に主演し、脚本も手掛けたマット・デイモンがちょい役で出ているのも嬉しい。

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2007年10月 8日 (月)

ベルク 歌劇「ヴォツェック」(オペラ映画版) ブルーノ・マデルナ指揮

新ウィーン学派を代表する作曲家アルバン・ベルク(1885-1935)の傑作歌劇「ヴォツェック」。20世紀に生まれた最高のオペラと呼ばれながら、現在のところ手に入るDVDは2種類のみ。最近になってDVD化されたバレンボイム盤はパトリス・シェローの斬新な演出が特徴ですが、同時に抽象的でもあり、「ヴォツェック」という作品をよく知らない人には内容がわかりにくいため、もう1つの入手しやすいDVD、1970年に制作されたオペラ映画版を紹介しておきます。現代音楽の作曲家・指揮者として活躍したブルーノ・マデルナ(1920-1973)の指揮、ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団、ハンブルク州立歌劇場合唱団の演奏。ヴォツェックを歌うのはトニ・ブランケンハイム。
バレンボイム盤でヴォツェックを歌うことになるフランツ・グルンドヘーバーも徒弟職人役で出演しています。
ヨアヒム・ヘス監督作品。ほぼ全編ロケによる撮影が行われています。ドリームライフからの発売。ジャケットはモノクロームですが、カラー映画です。

アルバン・ベルク 歌劇「ヴォツェック」映画版 ブルーノ・マデルナ指揮 トニ・ブランケンハイム(ヴォツェック役)

歌劇「ヴォツェック」は、わずか23歳で病死した劇作家・小説家・自然科学者のゲオルク・ビューヒナー(1813-1837)の未完の戯曲「ヴォイツェック」を、カール・エミール・フランツフォースが編纂したテキストにベルクが作曲した作品。ベルクに渡されたテキストには「Woyzeck」であるべきところが「Wozzeck」と誤植されていたため、ベルクはヴォツェックだと思いこんで作曲。完成後、「ヴォイツェック」が正しかったと知ったベルクですが、完成したオペラは戯曲とは別物であると判断、そのまま「ヴォツェック」という題で発表しました。

初演は1925年12月14日、ベルリン国立歌劇場にてエーリヒ・クライバーの指揮にて行われ、20世紀に初演されたオペラとしては最初の成功作との評判を得ています。

現代音楽のスペシャリストとして知られたブルーノ・マデルナの指揮だけに演奏は緻密。ヴォツェックの不安な心理と、病んだ世界を巧みに表します。
トニ・ブランケンハイムのフランツ・ヴォツェックは、ここまでしょぼくれる必要はないんじゃないかと思える表情と演技をしますが、心を病んだ男を演じ、歌うには適任であるとも言えます。

〈あらすじ〉
貧しい兵士のフランツ・ヴォツェックは、嫌みな上司の髭を剃ったり、ファナティックな医師の人体実験に協力するなどして小銭を稼いでいる。人体実験の影響なのか、死と終末感に満ちた幻覚を見るようになるヴォツェック。
ヴォツェックの心の支えは妻であるマリー。しかしそのマリーはある日、たくましい肉体を持つ軍楽隊鼓手長に惚れて一度きりだが浮気をしてしまう。
マリーと鼓手長の関係を知ったヴォツェックの精神状態は更に悪化していくのだった……。

ベルク/Wozzeck: Maderna / Hamburg Po Blankenheim Haage Cassily Jurinac Sotin

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2007年10月 7日 (日)

これまでに観た映画より(11) 「北京ヴァイオリン」

DVDで中国映画「北京ヴァイオリン」を観る。陳凱歌(チェン・カイコー CHEN Kaige)監督作品。何故か監督自身も余(YU)教授役で出演している。なかなか達者な演技だ。
ストーリーはだいたいこんな感じかなという予想通りに進んでいく。メッセージもありきたりな感じ。ただ主人公に注ぐ父親の愛情が心に響く。種明かしはしたくないが日本人にはなかなか真似できない。ここだけは流石、陳凱歌だ。そこまでとは読めなかった。中国映画というと暗い、陳凱歌監督作品は特に暗いというイメージがあるがそれを吹き飛ばしてくれる愛らしい作品だ。
ただラストはちょっと俗に過ぎるか。冷静に考えると相当変なシーンである。
この作品は陳監督には珍しく現代物だ。もとになった実話がある。この実話は中国ではかなり有名な話のようで、日本人向けの中国語学習テキストにも良く出てくる。
北京の街も10年前に比べるとかなり洗練されている。俳優達も生き生きしている。特にリリを演じる陳紅(CHEN Hong)がいい。実は陳紅は陳凱歌監督夫人である。この映画の製作を務めているのも彼女だったりする。

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2007年9月24日 (月)

これまでに観た映画より(10) 「スーパーサイズ・ミー」

DVDでアメリカのドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー』を観る。国民の半数以上が肥満体というアメリカで、肥満に悩む少女2人が、「肥満になったのはマクドナルド社が肥満に直結すると知りながら高カロリーの商品を売り続けたせいだ」として訴訟を起こしたことに興味を覚えたモーガン・スパーロック監督が、自分の体を実験台に、「1ヶ月、毎食マクドナルド製品、それもスーパーサイズ(特大サイズ)のものを食べ続け、しかも運動をしないとどうなるか」試してみるというドキュメンタリー。
スパーロック監督は、酒は飲まず、煙草もやめ、ベジタリアンの彼女と暮らしている。体は健康そのもの。そんなスパーロック監督の体と心がマクドナルド製品しか食べないことにより蝕まれていく。

ファーストフードを1ヶ月食べ続けたら体に悪いのは当たり前、というよりファーストフードでなくても1ヶ月同じものばかり食べ続けたら体に悪いのは明白であるが(しかし実際には何年もビッグマックを食べ続けて何ら問題を抱えていないという人物も登場する)、スパーロック監督は、単にファーストフードと健康の問題ではなく、アメリカの食品メーカーと社会の関わりにまで視点を拡げている。
アメリカでは、ファーストフードメーカーが大量のテレビCMを流すことで、幼児に向かっても自社製品を売り込んでいる。また学校とも提携して、給食にファーストフードを提供しているメーカーもある。そうしたファーストフードメーカーに頼らずに、アメリカ農務省が提供するレトルト製品を仕入れている学校もあるが、実はアメリカ農務省が提供する食品は、ファーストフードメーカーのものより更に高カロリー、高脂肪であったりする。国よりはファーストフードメーカーの方が良心的だったりするわけだ。

また、アメリカの教育問題にも触れており、2001年に就任したブッシュ大統領が始めた落ちこぼれ校底上げ対策により、体育や栄養学の時間が削られ、肥満問題が更なる悪化の一途をたどっていることも知らせる。何しろ、体育の時間が週に1時間しかない小学校がざらにあるのだ。
マクドナルド商品の大型化についても触れており、かってのレギュラーサイズが今のスモールサイズであること(ちなみにフランスのマクドナルドのレギュラーサイズは、アメリカのSサイズよりも小さいとのことである)、スーパーサイズが半端でない量のコースであることも教えてくれる(スパーロック監督が一番最初に、スーパーサイズのメニュー購入したとき、全部食べ終えるまで30分以上を要した。更に、「ファースト=健康に悪い」という先入観もあってか、スパーロック監督は食べたばかりのマック製品を嘔吐してしまう)。
また、実はファーストフード以上にアルコールが体に危険を及ぼすことがさりげなく示されている。
肥満問題を考えるには、マクドナルドを始めとするファーストフードや食品メーカーだけでなく、その背後に立ちはだかっているものを念頭に置く必要があるということも教えてくれる。

*余談 映画の中でフランス人の女性がインタビューに答えている場面があるのですが、彼女はマクドナルドを「マクド」と略しています。フランスではマクドナルドのことを関西同様「マクド」と略すようです。

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2007年9月18日 (火)

これまでに観た映画より(9) 「ナチュラル」

DVDで「ナチュラル」を観る。ロバート・レッドフォード主演の野球映画、というより野球ファンタジーと言った方が適当だろう。
1918年。将来有望な若手投手ロイ・ハブス(ロバート・レッドフォード)はシカゴ・カブスの入団テストを受けようとしていた。しかしシカゴに向かう列車の中で出会った、スポーツ選手を殺害し続けていたサイコパスの女に銃で撃たれてしまう。
16年後、35歳になったロイはルーキーとして弱小球団、ニューヨーク・ナイツに入団する。

高校生の時にビデオで観て、大変な感銘を受けた映画。当時はロバート・レッドフォード演じるロイ・ハブスの格好良さに痺れたものだが、今見直してみると、神秘的な側面に目がいく。雷で割れた大木で作ったバット。精霊か何かのような存在。
物語自体は「がんばれベアーズ」同様、弱小チームが優勝するまでのサクセスストーリーである。しかしそれだけでない、アメリカ人にインプットされ、受け継がれていく野球スピリッツのようなものを感じさせる。これは単なるスポーツ映画ではないのだ。むしろ大人のためのお伽話に近い。この映画にリアリズムを求める人はあるいは大人でないのかも知れない。
ロイがサヨナラホームランを照明塔に打ち込み、ライトが破裂して花火のように降りかかる中でロイがダイヤモンドを一周する有名なシーンは今見ても「クール」である。
100%悪人という奥行きの全くないタイプの人間が出て来てしまうのがハリウッド映画の限界を感じさせ、唯一の難点といえる。
ところで、ニューヨーク・ナイツは架空の球団なのだが、相手チームのシカゴ・カブス、フィラデルフィア・フィリーズ、ピッツバーグ・パイレーツなどは実在の球団である。この設定の中途半端さは何なのだろう?

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2007年8月28日 (火)

「レッド・バイオリン」オリジナル・サウンドトラック

本日8月28日は「バイオリンの日」なのだそうです。そこで、ジョン・コリリアーノが作曲した、映画「レッド・バイオリン」のオリジナル・サウンドトラックを紹介します。ソニー・クラシカルの録音&発売。

ジョン・コリリアーノ作曲 「レッド・バイオリン」オリジナル・サウンドトラック イタリアで作られた一挺のヴァイオリンが数奇なる運命をたどる様を描いた、カナダ人映画監督フランソワ・ジラールの「レッド・バイオリン」(カナダ・イタリア・オーストリア・イギリス・中国合作)のための音楽。

ジョン・コリリアーノは、現代アメリカを代表する作曲家。彼自身が同性愛者である(エイズをテーマにした交響曲を書いていたりもします)ということも関係しているのかどうかはわかりませんが、妖美な旋律を書かせたら当代一のメロディーメーカーです。「レッド・バイオリン」の音楽で、2000年度のアカデミー賞作曲賞受賞。

コリリアーノ特有の妖しいメロディーが、ミステリアスな雰囲気と奥行きを作り出しています。

演奏は、エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団、ヴァイオリン独奏:ジョシュア・ベル。

ボーナストラックとして、コンサート用の作品である「『レッド・バイオリン』より~ヴァイオリンとオーケストラのためのシャコンヌ」を収録。演奏、音楽ともに充実していてクラシック音楽ファンも楽しめます。

レッド バイオリン/Red Violin

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これまでに観た映画より(8) 黒澤明 「天国と地獄」

DVDで映画「天国と地獄」を観る。黒澤明監督による刑事サスペンス。主演:三船敏郎。刑事役に仲代達矢。犯人役は山崎努。
エド・マクベインの小説を翻案、映画化したもの。横浜を中心に神奈川県内各所が舞台となっている。

会社重役権藤(三船敏郎)の息子が誘拐される、と思いきや実は誘拐されたのは権藤の運転手の息子だった。だが誘拐犯は身代金を渡さなければ子供を殺すと言い張り……。

特急こだま(まだ新幹線ではない)の唯一開く窓を使った酒匂川鉄橋(小田原市内)での身代金のやり取り、モノクロの映像に煙だけが赤く染まって流れる場面(このシーンは映画「踊る大捜査線」でパロディー化されている)、阿片窟として描かれた横浜・黄金町など見所が多く、2時間20分を超える大作ながら一息に見せてしまう。

三船敏郎は世界的な俳優であるが、例えば電話で喋るシーンなど、迫力はあるが巧さは感じられない。俳優の平均的な演技水準は今の方が上だと思う。

横浜の黄金町がとんでもない場所として描かれている。確かに黄金町はいかがわしい街ではあるがこれほど酷くはない。ただ黒澤監督は黄金町を怖れていたそうで、昼間でも決して一人ではこの街を歩かなかったという。後に林海象監督が映画・濱マイク三部作(「我が人生最悪の時」、「遥かな時代の階段を」、「罠」)を黄金町を舞台として撮っているが、これは「天国と地獄」の黄金町の場面にオマージュを捧げたものだろう。

権藤のことを恨む、犯人の医学生・竹内銀次郎を演じる山崎努はこの頃から存在感抜群だ。

全編スリル溢れる構成となっているが、竹内が花屋に入ったという情報を無線で受けた戸倉警部(仲代達矢)が「誰か花を買いに行かせろ」と命令したところ、車で尾行中の刑事から「生憎、花を買いに行きそうな面(をした刑事)がいません」と答えが返ってくるという、客席は大爆笑したであろうシーンも挿入されていて心憎い。

麻薬中毒者の群れの中に菅井きんがいたり、刑事の一人を名古屋章が演じるなど、私のような団塊ジュニア世代にも馴染み深い俳優が紛れているのが面白い。

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2007年8月21日 (火)

これまでに観た映画より(7) 「ゆれる」

DVDで日本映画「ゆれる」を観る。西川美和:脚本&監督作品。出演は、オダギリジョー、香川照之、真木よう子、伊武雅刀、蟹江敬三、新井浩文ほか。

東京で写真家として成功している猛(たける。オダギリジョー)が母の葬儀のために山梨の実家に戻ってくる。猛の兄・稔(香川照之)は実家のガソリンスタンドを継いでいる。そのガソリンスタンドで働く猛と稔の幼なじみ・智恵子(真木よう子)。稔と親しい智恵子の姿を見て、猛は軽いジェラシーを感じる。その夜、猛は智恵子を家まで送り、一夜を共にする。
翌日、猛と稔と智恵子は三人で渓谷まで出かけた。そして、渓谷に架かる吊り橋から智恵子が転落死する…。

心象風景を徹底して用いるきめ細やかな演出がまず印象的である。「ゆれる」というタイトルは、直接的には吊り橋に由来するのだろうが、人間の心の動き、特に猛と稔の心の揺れを暗に示し、セリフもまた両義的なものが数多く用いられ、観ている者に揺さぶりをかけてくる。
内容的には目新しいものではないかも知れないが、構造や細部の作り方の丁寧さに好感を持った。全て映像で語ってしまうのではなく、ヒントを与えて観客の想像力を信じるスタンスも悪くないと思う。

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2007年8月15日 (水)

これまでに観た映画より(6) 「太陽はひとりぼっち」

DVDでイタリア=フランス合作映画「太陽はひとりぼっち」を観る。イタリアの巨匠ミケランジェロ・アントニオーニ監督作品。アラン・ドロン、モニカ・ヴィッティ:主演。モノクロームの映像が美しい。

リカルドという男との恋に敗れたヴォットリア(モニカ・ヴィッティ)と、証券取引所に勤務するピエロ(アラン・ドロン)とが恋に落ちていく様を描いた作品。一応、恋愛映画ということになるのだろうが、甘い雰囲気は感じられず、誰もいない広大な道(心象を表してもいる)を撮したり、各国の核開発競争を話題に絡めたりするなどして、茫漠とした恋路や、終末への不安感を示したりもしている。

ローマが舞台であり、役名を見てもわかるとおりイタリア人の話なのだが、セリフはフランス語。「チャオ」という挨拶のみイタリア語である。妙だが、当時(1962年)はこれが普通だったのだろう。

極端にセリフの少ないヴィットリアとリカルドとの別れの場面に始まり、どうということもなくストーリーは進み、どうということもなく終わってしまうのだが、2時間を超える作品であるにもかかわらず、「気が付いたら終わってしまっていた」と感じられるほど、見せてしまう技術は高い。個人的には好きなタイプの映画である。

ヴィットリオ役のモニカ・ヴィッティは実にチャーミング。アラン・ドロンが放つ男の色気も印象的。

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2007年8月 6日 (月)

こうの史代 マンガ『夕凪の街 桜の国』

こうの史代のマンガ『夕凪の街 桜の国』(双葉社)を紹介します。現在公開中の同名映画(佐々部清監督作品)の原作。絵からもストーリーからも、こうの史代の優しさが溢れ出ている素敵な作品です。

こうの史代 マンガ『夕凪の街 桜の国』

広島の原爆を題材とし、原爆投下直後とその後、そして現在に至るまで続く悲惨な現実を描きつつ、詩的で芸術的ともいえる表現方法、マンガだからこそ可能な高度な技法を駆使して美しい物語に仕上げています。
原爆そのものの描写はなるべく抑え、被爆者達やその家族、周りの人々を美しく描いているからこそ原爆の悲劇がよりクッキリ浮かび上がっているともいえます。

帯には、「読後、まだ名前のついていない感情が、あなたの心の深い所を突き刺します。」というコピーが書かれていますが、まさにその通り。「感動」という言葉を超えた瑞々しい感情に出会うことが出来ました。

こうの史代 『夕凪の街 桜の国』(双葉文庫) 紀伊國屋書店BookWeb

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2007年7月31日 (火)

これまでに観た映画より(5) 「あの子を探して」

DVDで中国映画「あの子を探して」を観る。張芸謀監督作品。良い映画である。

ストーリーは至ってシンプル。中国の僻地にある水泉村。水泉小学校の老教師であるカオ先生が病気の母親を見舞うため1ヶ月ほど村を離れることになる。代用教員として水泉村の村長が探してきたのはウェイ・ミンジという13歳の少女。水泉村はとんでもない田舎であるため、なり手が他にいなかったのだ。中学も出ていないような少女に教師が務まるのかと不安なカオ先生。実際、ウェイ・ミンジは歌もきちんと歌えず、教える力もなさそうである。カオ先生は黒板に教科書の字を写すことで授業の代わりとするようミンジに命じる。

中国の僻地では良くあることだが、水泉村でも教育は重要視されておらず、家の事情で学校をやめる生徒が多い。生徒が一人もやめなかったら50元やると約束する村長。
しかし、11歳の男子児童ホエクーが病身の母親の借金を返すため、都会(ロケ地である張家口〈zhangjiakou〉市をモデルにしたjiangjiakou市)に出稼ぎに出されてしまう。ホエクーを連れ戻したいミンジはあの手、この手を使って何とか都会に出るのだが、ホエクーは街の駅で仲間からはぐれてしまっており…。

出演者は全員素人。役名も本名のままである。
中国は映画を国策の一つに掲げているため、映像はとにかく美しい。

僻地の農村だけに人々の心に優しさが残っており、都会にも優しい心を持つ人はいる。素人の俳優を使っているだけに人間の素朴な優しさがよりストレートに出ている。
心温まる物語。やはり張芸謀は「LOVERS」のようなワイヤーアクションよりも、こうしたシンプルながらも味のある映画を撮った方がずっと良い。

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2007年7月28日 (土)

これまでに観た映画より(4) 小林正樹監督 「怪談」

DVDで映画「怪談」を観る。小泉八雲原作、小林正樹監督、出演は三國連太郎、新珠三千代、仲代達也、岸恵子、田中邦衛、志村喬、ほか。音楽音響:武満徹。「黒髪」、「雪女」、「耳なし法一」、「茶碗の中」の4話オムニバス。全編で3時間3分の大作である。
背景に絵を用いたり、見るからにミニチュアとわかるセットを敢えて用いるなど独自の美学が生きている。
「怪談」には不思議な美しさがある。静謐の美といったら良いだろうか。小泉八雲が「怪談」に惹かれたのも日本人独自の感性が怪談の中に生きていると感じたからではないか。
「黒髪」では若い頃の三國連太郎が出世のために妻を捨てる武士を演じているのだが、たまに見せる表情が息子の佐藤浩市そっくりなことがあり、やはり血は強いものなのだと感心してしまう。

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2007年7月 5日 (木)

これまでに観た映画より(3) 『河』

ビデオで映画『河』を観る。台湾映画。蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督作品。

シャオカンは街でたまたま知り合いの女性と出会う(何と台北の三越の前でである)。彼女は映画関係の仕事をしていて、シャオカンは何故か河に浮かぶ死体役を演じる羽目になる。それ以来、シャオカンは首の痛みにつきまとわれるようになり…。

「河は遠くから見ると綺麗だが、近くで見ると汚れている。現代社会もそうだ」と蔡明亮監督がインタビューで語っていたのを以前雑誌で読んだことがある。

シャオカンの家族は静かに暮らしている。だが実際は父親は男色に耽り、母親は不倫をしている。シャオカンは職もなく友達もいないというひたすら孤独な日常を過ごしている。

水のイメージが全体を支配している。河の流れ、シャオカンの家族が暮らすアパートの上の部屋からへ水が漏れてきており、ついには床を水浸しにしてしまう。河につかったことから首の病に取り憑かれたことと、これはリンクしている。逆らえない何かに心身共にハイジャックされたような心象風景として。
ゲイのサウナクラブ(というものが台湾にはあるらしい)の一室の闇の中でシャオカンはある男に抱かれる。ところが明かりを点けてみると何とそれは父親だった。近くにいる家族の闇。その不気味さ。ゲイのサウナクラブの暗い廊下をさまようシャオカンの姿がそれを象徴的に表す。
ラストでシャオカンはビルのテラスに出る。飛び降りようとしたがそれも叶わなかったようだ。
この映画の特徴はセリフの極端な少なさ。みなほとんど喋らないのである。黙然としている人物をカメラは長回しで捉えている。
エンドテロップにも音楽は流れない。音楽という救済を捨ててしまったかのような絶望と孤独感が息苦しくなるほどに迫ってくる。

蔡明亮監督は2002年に来日。京都にも訪れ、京都国際交流会館イベントホールでの『ふたつの時、ふたりの時間』の上映会に参加。トークを行った。私もこれを見に行っている。『ふたつの時、ふたりの時間』はクロスカッティングの手法、かと思いきや、二つの世界は最後まで重ならないという救いがたい絶望を描いた映画だった。

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2007年7月 4日 (水)

怖くて切ないサイコサスペンス 映画『ハサミ男』

映像化は不可能と言われた、殊能将之の小説『ハサミ男』に池田敏春監督が挑み、見事、映像化に成功した、映画『ハサミ男』のDVDを紹介します。2004年制作、2005年2月劇場公開。

主演:豊川悦司、麻生久美子。出演は他に、阿部寛、斎藤歩、樋口浩二、阪田瑞穂、石丸謙二郎、小野みゆき、広岡由里子、柄本祐、寺田農ほか。

池田敏春監督 豊川悦司&麻生久美子主演 映画『ハサミ男』

埼玉と東京都江戸川区で女子高生が絞殺され、首にハサミを突き刺された格好で遺体が発見される。マスコミは犯人を「ハサミ男」と名付け、センセーショナルに取り上げた。
そんな中、東京都目黒区鷹番で第3の事件が起こる。しかし、それが「ハサミ男」の犯行ではないと気付いた男(豊川悦司)と女(麻生久美子)は第3の事件の真犯人を探る…

池田敏春監督が原作を読んでから映画を完成させるまで5年を費やしたというだけあって、非常に緻密な仕上がりの映画になっています。映画が始まってしばらくの間は、頭に引っかかるところがいくつも出てきますが、その理由について一つ一つ考えながら映画を観ると、より楽しめると思います。

また出来れば繰り返し観て下さい。同じセリフと仕草が、最初に観たときとは別の意味を持って伝わって来て、構築の見事さに気付くはずです。

殊能将之の原作では希薄だった人間ドラマにも重点が置かれており、人間の怖さと同時に切なさも追求されていて、池田監督の力に舌を巻きます。

豊川悦司のギラギラとした妖しさが魅力的。
また、この映画で女優魂を感じさせる演技を見せる麻生久美子は、同時に非常にエロティック、それも陰性のエロティシズムを発揮しており、女優としての能力の高さに魅せられます。

音楽担当は、映画『マルサの女』や、『ニュースステーション』のテーマ音楽の作曲で知られる、作曲家兼サキソフォン奏者の本多俊之。この映画では、池田監督の要望により、ラッシュフィルムを観ながら即興でサキソフォンを吹いて音楽を付けていくという、ルイ・マル監督が『死刑台のエレベーター』でマイルス・デイヴィスを起用して行ったのと同じ手法が採られており、即興的な味わいのある奥深いサキソフォン演奏を楽しむことが出来ます。

Movie/ハサミ男

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2007年6月25日 (月)

ポップな香港映画の嚆矢 『恋する惑星』

王家衛(ウォン・カーウァイ)監督の『恋する惑星』を紹介します。1994年制作、1995年日本公開。私はロードショー時に、東京の銀座テアトル西友(現:銀座テアトルシネマ)に通って何度も観ています。

『恋する惑星』DVDジャケット

上がDVDジャケット。現在、DVDで出ているものは王家衛監督が編集し直した香港版でこれが最終決定版です。ただ日本でロードショーされた時はDVDに収録されたものより8分ほど長いインターナショナルバージョンでした。

下にあるのが銀座テアトル西友で買った、映画のパンフレットです。

映画『恋する惑星』パンフレット表紙はDVDジャケットと全く同じ写真が使われているので、裏表紙をスキャンしてみました。
映画パンフレットというと大して内容のないものも多いのですが、『恋する惑星』のパンフレットは、日本語版シナリオも収録されており、読み応え十分です。

王家衛監督が注目を集めたのは、レスリー・チャンらが出演した『欲望の翼』(1990年制作)ですが、世界的な評価を勝ち得たのが本作品『恋する惑星』。原題は『重慶森林』。重慶とは中国の重慶市ではなく、香港にある重慶大廈(チョンキンマンション)のこと。映画にも出てきますが、インド系移民が多く住んでおり、一種の無法地帯と化している香港で最も危険な場所の一つです。この映画は重慶マンション一帯を舞台にしていますが、当然ながら撮影許可は下りなかったため、ほぼ全編無許可のゲリラ撮影が敢行されました。

また『重慶森林』は村上春樹の小説『ノルウェイの森』に影響されたタイトルでもあります。1990年代、香港では村上春樹の小説がブームとなり、村上春樹の小説の登場人物のような話し方をする若者が増えたこともありました(村上春樹の小説のファンや村上春樹に影響を受けた若者はハルキ族と呼ばれた。王家衛監督も自他共に認めるハルキ族の一人である)。この映画でも、金城武やトニー・レオンが思いっきり村上春樹風のモノローグを語っています。

出演:金城武、ブリジット・リン、フェイ・ウォン、トニー・レオンほか。撮影:クリストファー・ドイル(杜可風)ほか。

一瞬の恋を描いた前編と、奇妙な女と鈍い男を描いた後編から成る連作。「恋愛映画」の既成概念を覆す斬新な一本です。

Movie/恋する惑星(Rmt)

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2007年6月22日 (金)

矢口史靖×鈴木卓爾 「ONE PIECE」春コレクション

東京造形大学の同期生である矢口史靖(やぐち・しのぶ)監督と鈴木卓爾監督が手がけたショートフィルム集、「ONE PIECE」春コレクションのDVDを紹介します。

家庭用ビデオカメラを使った、ワンカット、長回しを基本とし、アフレコも編集もなしという超低予算短編映画集。

ショートフィルム集「ONE PIECE」春コレクション

1994年から1998年にかけて撮られた作品集。出演は、自主制作映画の帝王こと田中要次(愛称:BOBAさん)、自主制作映画の女王こと唯野未歩子(ただの・みあこ。DVDジャケットの写真に写っているのが彼女です)、相川直(現在の芸名は猫田直)、女優としては駆け出しだった頃の西田尚美ほか。

親友が自分に対する悪口を言っているのを聞いてしまう「女友達」(矢口史靖監督)、あの世からのメッセージが届く「地獄のおじいさん」(鈴木卓爾監督)、妙な面接を描いた「バニー」(矢口史靖監督)、わずか36秒の「ベアー」(矢口史靖監督)、監督が次々に登場する「演出×出演」(鈴木卓爾監督)、プロポーズを描いた「春のバカ。」(矢口史靖監督)など14作品を収録。

おまけとして矢口史靖監督の13分の短編「バードウォッチング」も収められています。

大笑いではなく、クスリと笑えるショートフィルム集。気楽に撮られたものが多いので、本格的な映画が好きな人には不向き。実験映像やショートフィルムが好きな方にはお薦め。自分でも映像作品を作っている人は必見のDVDです。

「ONE PIECE」DVDには秋コレクションもありますが、それは後日紹介します。

矢口史靖×鈴木卓爾 「ONE PIECE 春コレクション」(HMV) icon

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2007年6月16日 (土)

これまでに観た映画より(2) 「レッド・バイオリン」

DVDで映画を観る。カナダ・イタリア・オーストリア・イギリス・中国合作の「レッド・バイオリン」。フランソワ・ジラール監督作品。音楽は現代アメリカを代表する作曲家ジョン・コリリアーノ。バイオリン演奏はジョシュア・ベル。伴奏はエサ=ペッカ・サロネン指揮のフィルハーモニア管弦楽団。
1681年、イタリア・クレモナ。名バイオリン職人のニコロ・ブソッティ(カルロ・セッチ)は芸術品以外の何ものでもないバイオリンを製作する。彼の妻、アンナが生むはずの子供にそのバイオリンを捧げ、音楽家にするつもりであった。しかしアンナは難産のため死去。子供も死産であった。絶望に苛まれたニコロは、子供に捧げるはずだったバイオリンに赤い物質を加えた特別なニスを塗る。
こうして出来上がったレッド・バイオリンは数奇な運命をたどることになる。

芸術指向の強い作品である。完成度も高く、特に音楽好きには面白い映画だろう。設定そのものは特に目新しくなく、というよりありがちなのだが、バイオリンという楽器の持つ魔力の援護を得て、説得力を出すことに成功している。

カナダ、アメリカ、オーストリア、ドイツ、フランス、イギリス、中国の俳優が出演。撮影も、クレモナ、ウィーン、オックスフォード、上海、モントリオールなど世界各地で行われた。

時代と場所が次々に飛ぶが(メインは1990年代、カナダ・モントリオールのオークション会場)、わかりにくいということはない。文革期の上海も舞台になっているのだが、いわゆる西洋音楽が排斥された場所と時代を選んだことで奥行きが出ている。

芸術し過ぎてしまっていること、その割りに俗な展開があること、また赤いニスの正体にすぐに察しがつくこと、などを瑕疵と感じる人もいるだろう。芸術映画至上主義の人にも、芸術映画が苦手な人にも積極的には薦めない。芸術映画としてはかなりわかりやすい部類に入るので、それを中途半端と感じるかどうかがこの映画の評価を分けるだろう。ちなみに私は「好き」と感じる側である。

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2007年6月 1日 (金)

これまでに観た映画より(1) 「息子のまなざし」

DVDで映画「息子のまなざし」を観る。ジャン=ピエール・ダルデンヌとリュック・ダルデンヌの兄弟による監督作品。オリヴィエ・グルメ主演。ベルギー&フランス合作。

ベルギー。職業訓練所で木工を教えるオリヴィエ(オリヴィエ・グルメ。役名は同じだが、オリヴィエ・グルメ本人を演じているわけではない)。かっては家庭を持っていたが、息子が少年の手に掛かって殺されてからは離婚し、今は一人で暮らしている。ある日、オリヴィエの下に前妻のマガリがやってくる。再婚が決まったという知らせ。子供も出来たという。

そんな折り、職業訓練所にフランシスという少年が入所する。オリヴィエの木工クラスに入ってきたこのフランシスこそ、5年前にオリヴィエの息子を殺害した犯人だった。オリヴィエはそのことをマガリに知らせ、二人でかっての悪夢を思い出すのだった…

まがう事なき秀作である。秀作中の秀作と、いくら絶賛してもまだ足りないほどに素晴らしい。

オリヴィエ・グルメの抑えた演技。そしてフランシスを演じるモリガン・マリンヌの孤独を湛えた眼差し。

カメラワークは独特で、ほとんどずっとオリヴィエの顔を撮り続けている。あるいはカメラこそが「息子のまなざし」なのか、とも思ったが、どうやらそうではないようだ。「息子のまなざし」とはオリヴィエの中にある息子のまなざしなのである。息子が生きていて、今、自分を見ていたらどう思うか、という客観的で内面的なまなざし。

オリヴィエもフランシスも無表情で、何を考えているかわからない。だがおそらく本人達も気持ちの整理が上手くつけられず、自分が何をどうしたいのかわからないのだろう。そういった戸惑いが無表情であるが故に──まるで能面のように──雄弁に語られる。

セリフは極端に少ないが、いずれも洗練されていて、「良いセリフ」のお手本のようである。そして、語られない部分が多いが故に、観る者は想像力を駆り立てられるのである。

本当に真摯に誠実に作られた名作であり、是非多くの人に観て貰いたい。

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2007年2月21日 (水)

韓国映画 「永遠の片想い」

韓国映画「永遠の片想い」を紹介します。2002年の作品。主演は、チャ・テヒョン、ソン・イェジン、イ・ウンジュ。

韓国映画 「永遠の片想い」

写真、左から、ソン・イェジン、チャ・テヒョン、イ・ウンジュ

イ・ジヒョン(チャ・テヒョン)は、差出人不明の手紙を受け取っていた。モノクロームの写真に白い文字で書かれたメッセージ。差出人を捜す旅に出たジヒョンは5年前のことを思い出していた。5年前のある日、ジヒョンはスイン(ソン・イェジン)とギョンヒ(イ・ウンジュ)という二人の女の子と出会う。姉妹のように仲の良いスインとギョンヒ。彼女たちには実は秘密があった…。

愛らしくも切ない青春映画。互いに惹かれあいながらまさに「永遠の片想い」のままで終わってしまいますが、その終わり方に一工夫ある映画です。結末はご自分の目でお確かめ下さい。

特典映像では、撮影の合間にイ・ウンジュがピアノを弾いている場面を見ることが出来ます(実は、イ・ウンジュはもともとはピアニスト志望で、音大を受けようと決めていたそうですが、高校3年の時に映画に出演して、その魅力にはまってしまい、進路変更したという経緯があります)。

永遠の片想い Lover's Concerto 恋愛小説

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2006年12月15日 (金)

街の想い出(4) 新宿その2 テアトル新宿

新宿には何度も映画を観に行きました。多くの映画館に行きましたが、その中で最も多く通ったのがテアトル新宿です。新宿駅東口から地下街を通り、紀伊国屋書店に入って本を探したり買ったりした後、その裏通りを歩いてテアトル新宿に通いました。

テアトル新宿

テアトル新宿で観た映画で特に印象に残っているのは3本、中国映画祭で観た「息子の告発」とDVDのカテゴリーに記事を書いた「カリスマ」、そして「ナビィの恋」です。

「カリスマ」のことはもう書いたので、「息子の告発」と「ナビィの恋」について書きます。

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2006年12月 9日 (土)

黒沢清監督作品 「カリスマ」

黒沢清監督作品 「カリスマ」DVDジャケット

黒沢清監督、役所広司主演の映画「カリスマ」のDVDを紹介します。

1999年に公開された作品ですが、紆余曲折があり、黒沢監督が脚本を執筆してから5年ほどは撮影に入れず、完成した映画も一時はお蔵入りになりかけています。

カリスマと呼ばれる一本の木を巡る話なのですが、とにかく難解で、日常的なストーリーとして追うと奇妙なことばかり起きます。
「平凡な全体と一個の傑出した存在、重要なのはどちらか」がテーマの一つとなっていることはわかりますが、そんな一個の主題に収斂されるほど単純ではないのがこの映画の面白さです。

監督・脚本:黒沢清

出演:役所広司、池内博之、風吹ジュン、洞口依子、大杉漣ほか

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2006年10月12日 (木)

「オー!マイDJ」

「オー!マイDJ」 イ・ウンジュとイ・ボムス

2005年2月22日に24歳(韓国は数え年なので25歳と表記されることが多い)の若さで散った女優、イ・ウンジュ主演のラブコメディー「オー!マイDJ」のDVDを紹介します。

かっては韓国映画といえば、「暗い、重い」というイメージで、完成度の関係もあってそういうシリアスな作品ばかりが日本を始めとする海外では上映されていましたが、近年は韓国製コメディー映画のレベルも飛躍的にアップし、目にする機会も増えました。
本作「オー!マイDJ」は、イ・ウンジュ演じる目は不自由ですが明るく、時に勝ち気な女性チェ・ギヒョンと、バスの運転手で、音楽と自らのナレーションをテープに吹き込み、バス内でラジオ番組として流しているというパク・サンヒョン(イ・ボムス)との恋を描いたコメディーです。2004年の作品。

「あらすじ」

続きを読む "「オー!マイDJ」"

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2006年8月31日 (木)

映画「UDON」関連商品

映画「UDON」関連商品

公開中の映画「UDON」(本広克行監督作品。ユースケ・サンタマリア主演。フジテレビ制作)の松井製麺所(架空の会社である)とローソンのコラボレーションにより生まれた冷やし讃岐うどん「鶏天おろしうどん」。監修は本広監督の実弟である本広秀行氏。うどん職人である秀行氏は香川で「松井うどん」という店を開いているという。

メディアミックスを得意とするフジテレビですが、次々と関連商品を送り込んできますね。ちなみにこのようにブログで宣伝していますが、私自身は「UDON」を見に行くかどうかまだ決めていません。

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2006年8月19日 (土)

UDON 讃岐風うどん

UDON 讃岐風うどん

本広克行監督、ユースケ・サンタマリア主演の映画「UDON」公開に合わせて、マルちゃんこと東洋水産が発売した「UDON 讃岐風うどん」。外観は「赤いきつね」にしか見えないが味はどうなのか? ということで食べてみた。麺が若干太めであるが、味はやはり「赤いきつね」であった。なるほど、「赤いきつね」の味は讃岐うどんのそれだったのか。ユリイカ(我発見せり)!? まあ、あくまで「讃岐風」うどんであって、讃岐うどんとは書いていないので、マイナーチェンジでも良いのでしょう。

ちなみに映画「UDON」にもこのカップ麺は出てくるそうです。

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2006年7月21日 (金)

忌野清志郎「不確かなメロディー」

忌野清志郎「不確かなメロディ」

頑張れ忌野清志郎。
というわけで、喉頭ガンで入院した忌野清志郎を応援する意味も兼ねて観たDVD「不確かなメロディー」。忌野清志郎が2000年に行ったライヴツアー「マジカデ・ミル・スター・ツアー」を追ったドキュメンタリー映画である。ツアータイトルはいうまでもなくビートルズのアルバム「マジカルミステリーツアー」をもじったもの。
武道館でのコンサートを満員にしたばかりの忌野清志郎が、敢えて、地方のライヴハウスを巡る旅に出る。移動に使うのはマイクロバス。忌野の意向だそうだ。
忌野やツアーのための結成されたバンド「ラフィータフィー」のメンバーへのインタビューとライヴの模様を中心にした構成。ナレーターを三浦友和が務めている。

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