カテゴリー「映画」の193件の記事

2019年6月 4日 (火)

観劇感想精選(302) 日本ポーランド国交樹立100周年記念公演 ヤネック・ツルコフスキ 「マルガレーテ」

2019年5月20日 ロームシアター京都ノースホールにて観劇

午後7時からロームシアター京都ノースホールで、ヤネック・ツルコフスキの「マルガレーテ」を観る。日本ポーランド国交樹立100周年記念公演。

ヤネック・ツルコフスキは、ポーランド西部のシュチェンにある劇場Kana Theatre Centreの企画にも携わる演出家。ニューヨークの演劇フェスティバル「アンダー・ザ・レイダー・フェスティバル」に招聘されるなど、欧米を中心に活動している。日本で公演を行うのはこれが初めて。

「マルガレーテ」は今から10年前に初演された作品。小さなスクリーンに映像が投影され、観客も1回25名までという少人数での上演が行われる。ツルコフスキが英語で喋り、大庭裕介(カンパニーデラシネラ)が日本語吹き替えを行う。プライベートな雰囲気を生み出す上演時間約1時間の作品である。

ツルコフスキが、蚤の市で8ミリフィルムと映写機を手に入れる。価格は日本円で2500円という安さであった。そのフィルムに映っている一人の老女。フィルムを収める箱に記された文字から、彼女の名前が「マルガレーテ」であることがわかる。ドイツのヴォルガストという街の住所も記されている。マルガレーテの苗字はルーベといい、ドイツ人らしくないがはっきりしたことはわからない。

特にどうということもない映像が流れる。彼女は歩き、旧東ドイツ国内や旧ユーゴスラビア、当時はソ連の首都だったモスクワや映画「戦艦ポチョムキン」で有名なオデッサの大階段などに友人と旅行に出掛ける。撮影者の正体は不明。ツルコフスキはヴォルガストが原発に近い街であることから、撮影者は西側のスパイで、ヴォルガストの街を撮っているふりをして実は原発の情報も密かに撮影し、確実なものは西側に送ったと……、というのはあくまでツルコフスキの妄想である。そもそも世界を揺るがすような出来事が偶然手にしたフィルムに映っているなどということは、まずあり得ない。
ツルコフスキは、フィルムから何かを手に入れようと、気になった部分を探ってみるのだが、実は重要な部分はツルコフスキが気になった部分とは別のところに映っていたことが後にわかる。
今はインターネットの時代ということで、ヴォルガストの住所をグーグルマップで検索するなどしているうちに、マルガレーテの現在の居場所が判明する……。

マルガレーテは、ヴォルガストの薬局に勤めていた女性で、双子の姉がおり、長生きでツルコフスキと出会った時には99歳。2度目に出会った時に100歳の誕生日を迎えている。
彼女はラトヴィア出身だった。

フィルムは思い出のために撮ったもので、旅行から帰った時には、親族でささやかな上映会も開いたそうだ。
映っているもの自体は平凡なものなのだが、マルガレーテと彼女が映った映像を見たものにとっては、それは特別なものとなっていく。一人の老女のささやかな歴史に向かい合うことは、実はスパイ映画などよりもドラマティックなのだ。
実は、マルガレーテのフィルムに映っていた当時7歳ぐらいの少年から1か月程前にコンタクトがあり、ツルコフスキは会ったそうだ。彼もインターネットでマルガレーテのことを検索して映画になっていることがわかり、連絡をくれたそうである。本来は埋もれるはずだったフィルムからこうした広がりが生まれているというのも素敵なことだと思う。

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2019年5月18日 (土)

これまでに観た映画より(126) 「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」

2019年5月13日 京都シネマにて

京都シネマで「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」を観る。ブルース・スピーゲル監督作品。20世紀を代表するジャズピアニストの一人であったビル・エヴァンス(本名:ウィリアム・ジョン・エヴァンス)の生涯を、関係者と残されたビル・エバンス本人の証言で綴るドキュメンタリー映画である。

理知的な容姿と繊細にして美しいタッチ、抒情的かつ哲学的な作風が印象的なビル・エヴァンス。死から40年近くが経過した今でも最も人気のあるジャズピアニストの一人であり、ミニシアターとはいえ京都シネマのシアター2がほぼ満員となる。

初期は見るからにインテリ風の容貌であったビル・エヴァンスであるが、実際にサウスイーストルイジアナ大学でクラシック音楽を専攻しており、学歴のない黒人が多かった当時のジャズミュージシャンの中では異色であった。白人がジャズをやっているというだけで黒人からも白人からも白眼視されるという世代ではなかったが、それでもマイルス・デイヴィスのバンドに参加していた頃には、黒人用クラブで演奏を行うと、「白い野良猫が何の用だ?」などと暴言を浴びせられたそうである。

大学でクラシック音楽を学んだ白人ピアニストということで、「きちんとした」印象を抱かれがちなビル・エヴァンス。実際、マイルスのバンドに「エレガント」な要素を加えたのは彼なのであるが、その生涯は「史上最も緩慢な自殺」といわれており、麻薬に溺れ、音楽の中でしか生きられない人生であった。ヘロインを始めたのはマイルスのバンドに加わった1950年代半ばのこと。マイルスを始めとする一流のジャズミュージシャンに囲まれ、しかもエヴァンス以外は全員黒人というプレッシャーの中で、弾けない状態に陥った彼は、ストレスをやわらげるためにヘロイン注射を始め、最も酷いときには45分置きに注射をしないと気が済まないようになってしまう。あるいはもし音楽がなかったら、彼は20代で自殺していたかも知れない。

ビル・エヴァンスは、兄のハリーや内縁の妻であったエレインを自殺で喪っている。ビル・エヴァンス・トリオ最初のベーシストであったスコット・ラファロもトリオ結成直後に事故死するなど彼の周辺には常に悲劇がつきまとっている(もっともエレインの自殺の原因はビル・エヴァンスの浮気であり、エヴァンスはエレインに新しい相手のネネットを紹介し、エレノアはショックで地下鉄に飛び込んで自殺。その直後にエヴァンスはネネットと結婚しており、彼が見た目に反して「いかれたジャズメン」の一人であることがわかるのだが)。その陰は音楽にも表れており、後年の音楽の奥深さに影響しているのは間違いないと思われる。「自己との対話」など、若い頃から孤独と向き合ってきたビル・エヴァンスの音楽は、悲劇的な人生展開によってより内省的になっていく。それであるが故にビル・エヴァンスの音楽は孤独に優しい。

トニー・ベネットはビル・エヴァンスが電話で彼に語った言葉を人生訓としている。「美と真実だけを追究して他は忘れろ」。良い言葉だ。ただいかにも不器用だ。ビル・エヴァンスは人生を破綻させても全てを音楽に捧げた。ビル・エヴァンスの録音は今も聴くことが出来る。仮の肉体を纏ったものではない本当のビル・エヴァンスは今も生き続けていると言えるのだろう。

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2019年4月25日 (木)

これまでに観た映画より(125) 「がんになる前に知っておくこと」

2019年4月18日 京都シネマにて

午後5時55分から京都シネマで「がんになる前に知っておくこと」を観る。がんの医療関係者などに女優でピアノ講師などもしている鳴神綾香がインタビューするスタイルで撮られたドキュメンタリー映画。三宅流監督作品。プロデューサーの上原拓治が4年前に義妹をがんで亡くしたことから制作を決めた映画である。
オープニングとエンディング曲は、J・S・バッハの「ゴルトベルク変奏曲」よりアリア。鳴神綾香が演奏しており、演奏風景を収めたシーンもある。

二人に一人がかかる癌。日本人の死亡率トップの病気である。でありながら癌に関する知識は十分という人を余り見かけないのが現状である。私自身も癌の家系ではなく癌で亡くなった親族が少ないということもあって、全くといっていいほど知識を持ち合わせていない。
数年前に胸にしこりを感じ、乳がんを疑った鳴神。幸い良性であったが、癌に対する恐怖を感じたということでナビゲーターに選ばれている。
癌の治療に携わる外科医、放射線腫瘍医、癌の専門医である腫瘍内科医、癌の研究医、癌治療の緩和ケアを行う緩和医療医、更にがん専門看護師、がん相談支援センター相談員、癌経験者によるピア・サポーター、癌経験者などに鳴神が話を聞いていく。癌をめぐる多くの人々の話を聞くことで複数の視座と立体感を得ることに成功しており、また順番も工夫されていて、例えば複数の人が口にする「緩和ケア」についての情報を観る者に十分に与えるため、まず緩和医療医の話を流すことで、他の人やほとんどの日本人が抱いている緩和ケアに対する誤解などがわかるようになっている。

正しい知識を伝えることの大切さも語っており、例えばインターネット上には様々な情報が乗っているが、国立がんセンターなど確かな情報を載せているサイトを閲覧することが重要で、そうでないと効果のない療法にはまってしまう危険性がある。また、がん相談支援センターというものが日本全国の病院に約400ほど設置されているそうで、その病院の患者でなくても相談出来るようになっている。

癌に携わる医師に共通することは、「治せばいい、生きられればいい」ではなく、「いかに癌と生きていくか」を考えているということである。癌になったら死ぬだけというのは30年前の考えだそうで、今は癌と共存する時代だそうである。癌の治療をしながら働いてい生きていけることが可能になっているそうで、今なお「癌になったら終わり」というイメージが流布してしまっているのはマスコミにも責任があるそうだ。
感じるのは、「癌と生きる哲学」。複数の治療法が提案可能な時代であり、敢えて治療をしないという選択肢もあるという。ただ、個人的に「もう年だから何もしなくていい」と考えても、家族と医師による話を聞くことで考えが変わったりもするようである。
治療しても他に影響が出てしまって、それがクオリティ・オブ・ライフ(QOL)が低下するようでは本末転倒でもあり、医師や医療従事者が「何を優先するか」を患者と話し合うことで決めるというスタイルが取られている。ちなみに「ライフ」は「生活」という意味でとらえられることが多いが、「人生」という意味もあり、「癌になってもいかなる人生を設計するか」がこれからの癌治療では重要になってくる。
癌を経験しても希望を捨てずに生きている人も何人も登場し、「癌=終焉」ではないことを教えられる。
どうも「癌患者は癌患者らしくしなければならない」という思い込みと押しつけがまかり通っているようで、本人が率先してそうした考えに囚われてしまうケースが大半のようなのだが(仏教でいうところの「無縄自縛」である)、「押し込められた人生観」から自由になることは癌に罹患していなくても重要であるように思われる、というよりそうした姿勢でいることが癌に対する心構えにも繋がっているようだ。


帰り道の四条通は華やいでおり、気候の良さも相まって夢の中を歩いているような気分になる。

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2019年4月13日 (土)

これまでに観た映画より(124) 「翔んで埼玉」

2019年4月4日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で、関東人必見といわれるバカ映画「翔んで埼玉」を観る。東京人から蔑まれ、通行手形がないと都内に入ることすら出来ないという20世紀の架空の埼玉を題材とする、とんでも作品である。
原作は魔夜峰央の未完成の漫画作品。監督:武内英樹(千葉県出身)。出演:二階堂ふみ、GACKT、伊勢谷友介、中尾彬(千葉県出身)、ブラザートム(埼玉県育ち)、麻生久美子(千葉県出身)、島崎遥香(埼玉県出身)、麿赤児、益若つばさ(埼玉県出身)、竹中直人(神奈川県出身)、加藤諒、武田久美子、小沢真珠、成田凌(埼玉県出身)、京本政樹ほか。埼玉県出身の有名人が多数カメオ出演している。

 

夏暑いことで知られる埼玉県熊谷市に住む菅原夫妻(ブラザートムと麻生久美子が演じている)とその娘の愛海(島崎遥香)が、都内で行われる結納に参加するため車で向かっている。愛海の結婚相手は浦和に住んでいるのだが、都内に務める埼玉都民であり、都内に家を建てるつもりということで都内を会場に選んだのだ。愛海は埼玉暮らしにうんざりしており、都内に引っ越せるということでウキウキである。埼玉のFMであるNACK5からは、さいたまんぞうの「なぜか埼玉」が流れているが、その後、埼玉の都市伝説ラジオドラマが始まる。物語は、ラジオドラマ内と熊谷市に住む一家の間を行きつ戻りつしながら進む。

ラジオドラマ内では、都内の超一流私立高校の白鵬堂学院高校(旧東京府立第一高等女学校である都立白鴎高校に由来するのかどうかは不明)に、美男子である麻実麗(GACKT)が転校してくるところから始まる。麗はアメリカ帰り、英語だけでなくフランス語、スペイン語、北京語などを操る才子であり、宝塚の「ベルばら」さながらの白鵬堂学院高校の女子達は全員夢中になる。生徒会長で白鵬堂学院高校内唯一の男子である壇ノ浦百美(どう見ても女だが男という設定。二階堂ふみ)は、最初こそ麗に反発を覚えるが、その後、ボーイズラブへと発展していく。

ラジオドラマ内の埼玉県人は、縄文時代そのままの竪穴住居での生活を送っており、通行手形がないと都内に入ることは許されず、不法侵入が見つかった場合は即座に捕獲、追放が行われていた。ラジオドラマ内の東京都民は埼玉県人を毛嫌いしており、埼玉県人と関わったということがわかっただけで卒倒する有様である。
白鵬堂学院高校は、住所によって学級と待遇が変わり、都心がA組、周辺になるに従ってクラスが下になるというヒエラルキー構造で、最下級のZ組は埼玉県から引っ越してきた現都民が所属している。Z組の教室は離れの廃屋が割り当てられ、今もなお、ぽっとん便所の使用を強制されている。体調が悪くなっても医務室に入ることは許されず、百美からは「埼玉県人にはそこらへんの草でも喰わせておけ!」などと吐き捨てられる。
Z組の面々は埼玉県生まれであることを恥じており、差別されるのは当然として埼玉に恨みすら感じている。そんな埼玉県人に失望を感じる麗。実は麗は生まれは埼玉であり……。

 

埼玉あるある(浦和と大宮は仲が悪い、名産がない、出身地を聞かれて思わず「東京です」と答えてしまうなど)は勿論、千葉あるある(「東京」を冠するものがやたらと多い、茨城県と一緒の「チバラキ」扱いされると怒る、「とにかく海はあるぞ」など)、東京あるある(ブランドや箔付けが大好き。故郷と呼べるような場所を持たない)などの小ネタが満載であり、関東人ならクスリと笑える要素に溢れている。逆に他の地方の人達にとってはピンとこないことが多いかも知れない。ギャグなどは日本全国共通だと思われるが、東京都民と他の関東の県人の距離感などは上手く掴めないのではないだろうか。

役名からして非現実的だが、物語展開からは徹底してリアリズムが排除されている。映画の内容を考えれば当然で、ストーリー展開の面白さよりも、馬鹿馬鹿しさに徹底的に浸るべき映画となっている。埼玉、千葉(野田にはヌーが出るらしい)、神奈川(東京都の腰巾着。ヒーローは加山雄三)の南関東に隠れた形にはなっているが、群馬(謎の巨大生物が生息しているとしてニュースになる秘境)、茨城(名前を聞いただけで百美が卒倒)という北関東も登場する。栃木県だけ影が薄いが、クライマックスには那須塩原の栃木県民が参加していることが確認出来る。

余りにも馬鹿馬鹿しい差別を描いたおバカ映画であるが、世の中にはこれらと同等な差別が横行しており、差別の根っこがそもそも馬鹿なことであること考えると、「面白うてやがて哀しき」という言葉も浮かぶ。

 

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2019年1月12日 (土)

これまでに観た映画より(123) 中島哲也監督作品 松たか子主演作 「告白」

ブルーレイで日本映画「告白」を観る。わが家初のブルーレイディスク。「告白」は映画館でも観ているが、気に入ったのでブルーレイディスクを購入したのだ。湊かなえ:原作、中島哲也:脚本・監督作品。出演は、松たか子、木村佳乃、岡田将生、新井浩文、山口馬木也ほか。

映画ファンから絶賛される一方で、映画の作り手側からは、「あんなの映画じゃない」「説明過多だ」(説明不足でわけがわからないという意見もあるのが面白い)「PVみたいだ」「途中で寝た」などと酷評された問題作。日本で最も権威があるとされるキネマ旬報の2010年度ベストテン邦画の第2位、最も華やかな(しかし大手映画会社の持ち回りとの悪評も高い)2010年度の日本アカデミー賞最優秀作品賞、脚本賞、監督賞、編集賞を受賞しているが、その一方で映画芸術誌ではワースト1に選ばれてもいる。

体育館や校舎など撮影は栃木県の廃校を利用して行われたという(教室はセット撮影)。松たか子は実は泳ぐことが出来ず、劇中でプールに飛ぶ込むシーンがあるので、脚本を読んで「どうしよう」と思い、中島監督に「私、泳げないんですけど」と告白。中島監督は落胆しつつも「大丈夫」と答えたそうである
いざ、本番になるとプールの水は腰の高さまでしかなく、水中を歩いていけるので問題なかったそうだ。

ある中学校が舞台。教師の森口悠子(松たか子)が、幼い娘の愛美(ドラマ「Mother」の演技で世間を驚かせた芦田愛菜が演じている)の死にまつわる告白を始める。愛美は事故死として処理されたが、実はクラスの生徒二人に殺されたのだという。ここから森口悠子の静かで冷酷な復讐劇が始まる。

ほぼ全編に渡って音楽が流れており、PVを多く手掛けた中島哲也監督らしい作品だ。セリフの量も膨大で、セリフに寄りかかりすぎと思う人がいてもおかしくないほどである。

「命」がテーマの重い作品であり、軽々しいところは一切ない。人間の重みの軽重を問う一方で、罪を犯した人間の命の重み、被害者の命の重みなどがケースとして扱われ、生きるとは、生きさせるとはどういうことなのかも問いかけてくる。そしてそうしたことを考えること自体が人間の傲慢さであり、病んだ部分なのではないかとさえ思えてくる。

キーを握る二人の女優、松たか子と木村佳乃(かつてライバルとして良く比較された二人だ)の演技にともに凄みがあり、特に松たか子の演技はこれまで出演した映画の中でも最高だろう。

独特の映像美も相まって、他では余り観たことのない世界が広がっている。あるいは賛否両論ということ自体がこの映画の成功を物語っているのかも知れない。


ブルーレイディスクは特別版で、DVDがもう一枚ついており、そこにはメイキング映像、中島監督と主演の松たか子へのインタビュー、重要な生徒を演じる橋本愛(北原美月役)、西井幸人(渡辺修哉役)、藤原薫(下村直樹役)の3人へのインタビュー、生徒37人からの一言メッセージ、劇団ひとりによる「告白」特別講義、各劇場による舞台挨拶や品川女学院(広末涼子の母校として知られる)における中島監督と松たか子による特別授業、TVスポットなどが収められている。TVスポットではパガニーニの「24の奇想曲」より第24番のピアノ編曲版とドヴォルザークの「新世界」交響曲が用いられているが、本編にはそれらは用いられておらず、主題歌はRadiohead、音楽は日本のインディーズバンド、エンディングはヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」のピアノ編曲版が使われている。



「スクリーンで観た時の感想」 2010年8月26日

TOHOシネマズ二条で日本映画「告白」を観る。湊かなえ原作、監督・脚本:中島哲也、主演:松たか子。

愛娘を殺害された中学校の女性教師が犯人である教え子に復讐を図るという物語である。

直接手を下さず、ジワジワと犯人を追い詰めていく女教師の復讐の姿が怖ろしい。

重たいがそれだけ見応えのある作品であった。

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これまでに観た映画より(122) ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督作品 「罪とか罰とか」

DVDで、日本映画「罪とか罰とか」を観る。成海璃子主演作。ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督作品。出演は他に、永山絢斗(ながやま・けんと。瑛太の弟)、段田安則、奥菜恵、犬山イヌコ、大倉孝二、山崎一、安藤さくら、入江雅人、市川由衣、佐藤江梨子、六角精児、田中要次(BOBA)、緋田康人、広岡由里子、高橋ひとみ、石田卓也、森若香織、行定勲、玉置孝匡、串田和美、徳井優ほか。いなくてもいい役で「時効警察」つながりの麻生久美子がカメオ出演している(当初は脚本になく、特別に出てくれることになったので、役を作ったとのこと)。

重層構造の映画で、様々なシーンが一つにまとまっていくという構造を持つ。文学における意識の流れ的な手法も用いられる。

売れないグラビアアイドルの円城寺アヤメ(成海璃子)が、自身が映っているグラビアが逆さまに印刷され、鼻の下に変なシミまでつけられていることに怒る。コンビニで雑誌を確認したアヤメは、「立ち読み禁止」を示す店長(徳井優)に「買いますから」といいつつ、お金がないことに気付き、万引きしてしまう。マネージャーの風間涼子(犬山イヌコ)に連れられてコンビニに謝罪に訪れるアヤメ。取り調べに来た警官に一日署長の話を持ちかけられたアヤメは、やむなく一日署長を務めることに。アヤメが一日署長を務める警察署にはアヤメの元彼である春樹(永山絢斗)がいた。この春樹というのが連続殺人を犯している殺人鬼であるが、アヤメは春樹が殺人鬼であることを隠し、付き合ってきたのだった。

演劇を主舞台とするケラリーノ・サンドロヴィッチらしい作品。緻密な構造が印象的だが、その分、出来すぎの印象を受け、現実感が乏しいような印象も受ける。私は高く評価したいが、嘘くさいと感じる人も出てくるだろう。


レンタルDVDだが、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、成海璃子、犬山イヌコの3人によるコメンタリーが全編に渡って入っている。内容よりも、注文したケーキが大変なことになって大騒ぎになったりしていて笑える。

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2019年1月10日 (木)

これまでに観た映画より(121) 「白夜行」

2011年3月1日 MOVIX京都にて

一日ということで、映画を観に行くことにする。今日観るのは日本映画「白夜行」。綾瀬はるか主演でドラマ化もされている、東野圭吾の代表作の一つである。MOVIX京都での鑑賞。原作:東野圭吾。脚本:入江信吾、山本あかり。脚本&監督は33歳の若手、深川栄洋。

出演:堀北真希、高良健吾、田中哲司、戸田恵子、姜暢雄(きょう・のぶお)、粟田麗(あわた・うらら)、緑友里恵、斎藤歩、長谷川愛、小池彩夢(こいけ・あやめ)、吉満亮太、宮川一郎太、山下容莉枝、中村久美、黒部進、船越英一郎ほか。

昭和55年、廃ビルの一室で、質屋を営む桐原洋介(吉満亮太)の他殺体が発見される。第一発見者は小学生達で、ビルは入り口が塞がれており、密室状態であった。桐原の家内である弥生子(戸田恵子)と、質屋の従業員で弥生子と不倫の関係にあった松浦勇(田中哲司)が容疑者として浮かぶ。桐原家の二階は戸が閉まるようになっており、階上には桐原の息子の亮司がいた。弥生子にも松浦にも確固としたアリバイはないが、どうやらホシである可能性は低いようだ。

事件を担当する笹垣潤三(船越英一郎)のもとに、桐原が当日、西本文代(山下容莉枝)という女の家に行っていたという情報が入る。文代のもとに聞き込みに行く、笹垣と古賀久(斎藤歩)。文代は留守で、文代の娘の雪穂が対応に出る。やがて文代は戻ってくるが、アリバイを話せない。しかし、聞き込みを続けたところ、文代は事件のあった時間に公園のブランコに乗っているところを目撃されていた。文代には寺崎忠夫(宮川一郎太)という恋人がいた。文代とともに寺崎にも容疑がかかるが、寺崎は車を運転中に事故死してしまう。更に文代もガスが充満した自室で亡くなっているのを発見される。事件は容疑者不在のまま迷宮入りしようとしていた。

文代の娘の雪穂は、遠縁の唐沢礼子(中村久美)の幼女となる。やがて高校生となった唐沢雪穂(堀北真希)。学校では模範的な生徒で、いじめられっ子の川島江利子(緑友里恵)と交流するなど、優しさも見せる女性へと成長していた。一方、桐原の息子である亮司(高良健吾)は女遊びをするなど危険な道を歩んでおり、ずっと年上で薬剤師の免許を持ちながら今はホステスに身を落としている栗原典子(粟田麗)と同棲していた。殺人の被害者の息子と、容疑者の娘。二人には何の接点もないように感じられたのだが……。

内面に怖ろしい一面を隠しながら美貌でのし上がっていく雪穂。そんな雪穂を演じる堀北真希がこの映画の主役である。しかし堀北は抑制された演技で内面の怖ろしさを表現しようとしているものの、どうしても優等生的なイメージが強く出てしまい、悪女にはなりきれていない。

しかし、そんな堀北が主役であることで、脇の役者達の演技が光って見える。偶然の産物かも知れないが、結果的には良かったのかも知れない。特に、二時間ドラマの帝王こと船越英一郎は、「こんな良い役者だったっけ?」と思うほど優れた演技を見せ、事件を粘り強く追い続ける刑事を好演していた。

怪しげな魅力が光る亮司を演じる高良健吾もはまり役である。

そして、木村多江をも凌ぐかと思うほどの薄幸ぶりで、濡れ場も演じる典子役の粟田麗(同じ1974年生まれということもあり、私は密かに彼女を応援している)は出番は短いながらも強烈なイメージを残した。

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2019年1月 8日 (火)

これまでに観た映画より(120) 「ノルウェイの森」

2011年2月1日 TOHOシネマズ二条にて

TOHOシネマズ二条で上映されている「ノルウェイの森」を観に出掛ける。原作はもちろん村上春樹。ベトナム生まれでフランス育ちのトラン・アン・ユン監督作品。出演は、松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、霧島れいか、初音映莉子、玉山鉄二ほか。なお、YMOのメンバーの内、主人公ワタナベ(松山ケンイチ)がアルバイトをするレコード店の店長として細野晴臣が、直子(菊地凛子)が入寮(実質的には入院)することになる阿美寮の門番として高橋幸宏が出演している。村上春樹と交流があるはずの坂本龍一は出演していないが、まあ、オファーがあっても教授は出演しないだろうな。

村上春樹の小説は映像化が困難であり、過去に村上春樹の中学の先輩である大森一樹が監督した「風の歌を聴け」があるのみ。それも不評だった(短編では「パン屋再襲撃」も映像化されている)。

「ノルウェイの森」は村上春樹の長編としては、ほぼ唯一といっていいリアリズムに書かれた小説であるが、それでも作品の魅力は繊細な心理描写の筆致にあり、映像化は困難である。今回の映画でも村上春樹作品の映像化として成功かというと否だろう。「ノルウェイの森」は村上春樹の作品の中でもとりわけリリカルなので、抒情派のトラン・アン・ユン監督がそれを映像化すると綺麗すぎるという結果になっていて、それを批判する人があるかも知れない。ただ、興味深いのは映画を観ているうちに、それが村上春樹を原作にしたものではなく、夏目漱石作品を映像化したものに思えてくる点である。「現代の夏目漱石」といわれることもある村上春樹だが、映像化されたものを観てそれを再確認することになった。
というわけで、村上春樹ファンよりも夏目漱石ファンにお薦めしたい映画である。

役者では、当初、ユン監督から「直子のイメージではない」と断られるも粘り勝ちで直子役を勝ち取った菊地凛子が、まるで直子が憑依したかのような演技を見せるのが印象的。ただ、直子に対する思い入れが強すぎるためか、キズキ(高良健吾)との関係をワタナベと草原で語るシーンでは感情表現が激しすぎて逆に観客に訴えかける力が弱まってしまっている。あそこはもっと淡々とやった方が効果的だし、村上春樹らしくもある。ただ、菊池凛子の直子は予想を遥かに超えて良かった。

主役のワタナベ(原作ではワタナベトオル。村上春樹はテレビを見ない人なので俳優の渡辺徹を知らなかったのだろう)を演じる松山ケンイチも細やかな演技を見せてで好演。ワタナベ役として最適だったのではないだろうか。

残念なのはミドリを演じた水原希子。演技未経験で、ユン監督から厳しい演技指導を受けたそうだが、それでも他の役者に比べると演技力の不足は顕著であり(ユン監督が日本語を理解出来たならOKを出さなかっただろうと思われるテイクも用いられている)、外見もキャラクターも直子と被ってしまっているので、ミスキャストだろう。ミドリはもっと元気溌剌としたタイプの女優がやらないと直子との対比が生まれない。


原作にない部分では永沢(玉山鉄二)とワタナベが女遊びをした話をしてハツミ(初音映莉子)を傷つける場面、雪の日のワタナベと直子の激しいやり取りとその直後の屋外でのシーン、直子がキズキの幻影を見る(実際はキズキは現れず、代わりにレイコ<霧島れいか>が直子を探して駆けてくる)情景などは効果的であった。

逆に私が原作の中で気に入っている、ワタナベとミドリがミドリの実家から火事を眺めるシーン(二人の感情の燃え上がりを象徴している)や、直子の葬式の場面(自殺者の葬儀ということで冷たさに満ちている)、レイコとワタナベによるギターを用いた音楽葬の話などはなく、残念である。ラストシーンは原作の通りだが、原作のままあれをやってしまうと、小説を知らずに映画を観に来た人には意味がわからないものになってしまっていたのではないだろうか。もう一工夫欲しかった。

ただ、村上春樹原作ということを意識せず、一つの映像作品として観た場合は出来は悪くはない。もしDVDやブルーレイが発売されたなら私は購入すると思う(その後、実際にブルーレイを購入した)。

原作は36歳になったワタナベがハンブルクの空港に着陸した旅客機内で「ノルウェイの森」を聴いてパニックに襲われるというシーンから始まるのだが、それはカットされている。ただ、私が今36歳で、その時に「ノルウェイの森」が映画化されるというのはタイミングが良かった。

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2019年1月 5日 (土)

これまでに観た映画より(119) 「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」

2010年6月4日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で日本映画「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」を観る。

日本一の製紙の街・四国中央市。しかし不況のため、商店街のシャッターを下ろす店が増えていた。愛媛県立四国中央高校書道部では新入部員達が次々とやめていくという事態に。そんな中、新たに赴任してきた臨時教師の池澤(金子ノブアキ)が書道部の顧問を務めることになり、音楽をかけながら書道をするというパフォーマンスを行う。書道部部長の里子(成海璃子)は池澤に反発するが、部員の清美(高畑充希)は池澤に影響を受け、書道パフォーマンスを始める。里子らは清美に反発を覚えるが、やがてその書道パフォーマンスを競う「書道パフォーマンス甲子園」を企画し、全国に募集をかけて、その「書道パフォーマンス甲子園」を実現させる。

実話を基にした映画。特別に面白いという印象は受けなかったが、書道パフォーマンスに青春をかける高校生の熱演ぶりには感動を覚える。地味な映画かも知れないが、静かな感動を呼ぶ良質の映画といって良さそうである。

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2019年1月 4日 (金)

これまでに観た映画より(118) 「Kー20 怪盗二十面相・伝」

DVDで日本映画「K-20 怪盗二十面相・伝」を観る。原作:北村想、脚本・監督:佐藤嗣麻子、出演:金城武、松たか子、仲村トオル、國村準、本多奏多、益岡徹、高島礼子、鹿賀丈史ほか。

第二次大戦が避けられた後の日本というパラレルワールドで繰り広げられる冒険活劇。


1949年・帝都。華族制は今なお堅持され、身分の差は厳しく、人々は自分の職業を選ぶことも禁じられているという格差社会が続いている。上流階級を狙った窃盗も少なくなく、特に怪人二十面相なる男が暗躍している。怪人二十面相は新たなエネルギーとして開発されたテスラ装置を盗むと予告。軍警(警察)はそれを拒もうと躍起になっている。

サーカス団の花形俳優・遠藤平吉は(金城武)は、あるカストリ雑誌(三流写真誌)の男(鹿賀丈史)から、近く執り行われる、男爵で名探偵の明智小五郎(仲村トオル)と羽柴公爵家の令嬢・葉子(松たか子)との結納の儀の写真を撮ってくれないかと頼まれる。羽柴公爵家はテスラ装置を未来のエネルギー源として開発を推進してきた羽柴財閥のトップだ。

結納の儀の当日、平吉が、写真を撮ろうとすると、カメラのシャッターが起爆装置となり、爆発が起こる。すぐに平吉は怪人二十面相として逮捕されるのだった。


脚本も演出もよく練られており、楽しめる映画になっている。

俳優では、盗みを稼業とする源治を演じる國村準の演技が渋く、一番印象的。松たか子は、大きな悲鳴の上げ方、令嬢としての気位の高さ、コメディーの要素などを自然に演じきっているが彼女ならまだ出来るような気もする。金城武と仲村トオルの演技は熱演だがまずまずといったところだ。

美術もしっかりとしているし、娯楽作として観るには十分な映画だろう。

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