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2018年2月14日 (水)

コンサートの記(344) 大阪フィルハーモニー交響楽団「Enjoy!オーケストラ ~オーケストラで聴く映画音楽の世界!~」

2018年2月9日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて

午後7時から、大阪・福島のザ・シンフォニーホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団「Enjoy!オーケストラ ~オーケストラで聴く映画音楽の世界!~」を聴く。指揮とお話は大阪フィルハーモニー交響楽団ミュージック・アドヴァイザーの尾高忠明。

大阪フィルハーモニー交響楽団は、フェスティバルホールを本拠地としているが、定期演奏会はフェスティバルホールで行い、その他の企画はザ・シンフォニーホールを使う傾向がある。音響だけとればザ・シンフォニーホールは日本一だと思われるため、使用しないと勿体ない。今回は武満徹とジョン・ウィリアムズという二人の作曲家の作品を取り上げる。

曲目は、第1部が武満徹作曲による、3つの映画音楽(「ホゼ・トレス」、「黒い雨」、「他人の顔」)、「夢千代日記」、「乱」、「波の盆」組曲。「夢千代日記」と「波の盆」はテレビドラマのための音楽である。 第2部がジョン・ウィリアムズ作曲の映画音楽で、「未知との遭遇」メインテーマ、「ハリー・ポッターと賢者の石」メインテーマ、「シンドラーのリスト」メインテーマ、「E.T.」よりフライングシーン、「ジョーズ」メインテーマ、「スター・ウォーズ」メインテーマ。

まず武満の3つの映画音楽。大フィルは元々音量は豊かだが音の洗練については不足気味の傾向がある。初代の音楽監督である朝比奈隆が「愚直」を好み、骨太の演奏を指向したということもある。2代目の音楽監督である大植英次は現代音楽も得意としたが外連を好む傾向にあり、首席指揮者を務めた井上道義に関しても同傾向であったことは言うまでもない。ということで、もっと緻密で繊細な音作りも望みたくなるのだが、洒脱さは出ていたし、まずまずの出来だろう。

演奏終了後、尾高はマイクを手に振り返り、トークを始める。「僕は桐朋学園に学びました。齋藤秀雄という怖い怖い先生に教わりましたが、『尾高! 良い指揮者になりたかったらあんまり喋るな!』」といういつもの枕で笑いを取る。「大阪フィルハーモニー交響楽団は人使いが荒くて、指揮だけでなく話もして欲しい」。ここから武満の思い出となり、「コンピューターゲームが大好きな人でした。うちによく遊びに来てくれて嬉しかったのですが、コンピューターゲームで自分がお勝ちになるまでお帰りにならない」「これは喜ばれると思うのですが阪神タイガースの大ファンでした。阪神が負けた日には話しかけない方が良さそうな」という話をする。雑誌のインタビューで読んだことがあるのだが、尾高はこの話を日本だけではなく海外でも行っており、海外のオーケストラ団員も「タケミツってどんな人?」と興味津々で、この話をすると喜ばれるそうである。

その後、次の「夢千代日記」の話になり、主演した吉永小百合が今でも「バレンタインデーにチョコレートを貰いたい有名人アンケート」で1位を取るという話もする。どちらかというと響きの作曲家である武満徹。世界で彼にしか書けないといわれたタケミツ・トーンは海外、特にフランスで高く評価され、フランス人の音楽評論家から「タケミツは日系フランス人作曲家である」と評されたこともある。ただ武満本人は、「ポール・マッカートニーのような作曲家になりたい」と望んでおり、メロディーメーカーに憧れていた。残念ながらメロディーメーカーとしてはそれほど評価されなかった武満であるが、「夢千代日記」や「波の盆」に登場する美しい旋律の数々は、武満の多彩な才能を物語っている。

「乱」に関しては、監督である黒澤明と武満徹の確執を尾高は話す。黒澤明は武満に作曲を依頼。レコーディングのためにロンドン交響楽団を押さえていた。「ロンドン交響楽団で駄目だったらハリウッドのオーケストラを使ってくれ。ゴージャスにやってくれ」と注文したのだが、武満は岩城宏之指揮の札幌交響楽団を推薦。黒澤は「冗談じゃない!」と突っぱね、ここから不穏な空気が漂うようになる。武満が想定した音楽は黒澤が想像していたものとは真逆だった。
よく知られていることだが、黒澤映画のラッシュフィルムにはクラシック音楽が付いており、黒澤は「これによく似た曲を書いてくれ」というのが常だった。「乱」に関してはマーラーの曲が付いていたことが想像される。黒澤はマーラーのようにど派手に鳴る音楽を求めていたようだ。武満も「強い人だったので」折れず、じゃあ一緒に札幌に行こうじゃないかということになり、札幌市の隣町である北広島市のスタジオで札幌交響楽団に演奏を聴く。黒澤は納得したようで、札幌交響楽団のメンバーに「よろしくお願いします」と頭を下げたそうである。実はこの後、武満と黒澤は更に揉めて、絶交にまで至るのだが、それについては尾高は話さなかった。ただ演奏終了後に、「この音楽はハリウッドのオーケストラには演奏は無理であります」と語った。

武満の映画音楽の最高峰である「乱」。色彩豊かなのだがどこか水墨画のような味わいのある音楽である。巨人が打ち倒されるかのような強烈な悲劇性と群れからはぐれて一人ヒラヒラと舞う紋白蝶のような哀感の対比が鮮やかである。タケミツ・トーンがこれほど有効な楽曲もそうはない。

「波の盆」。尾高は日系ハワイ移民を題材にしたストーリーについて語る。笠智衆、加藤治子、中井貴一が出演。日米戦争に巻き込まれていく姿が描かれている。「あんまり詳しく話すとDVDが売れなくなりますので」と尾高は冗談を言っていた。
叙情的なテーマはよく知られているが、いかにもアメリカのブラスバンドが奏でそうなマーチが加わっていたりと、バラエティ豊かな音楽になっている。武満自身がマニア級の映画愛好者であり、オーケストレーションなどは映画音楽の仕事を通して学んだものである。

ちなみに尾高は子供の頃は指揮者ではなく映画監督に憧れていたそうで、果たせずに指揮者となり「一生を棒に振る」と冗談で笑いを取っていた。


第2部。ジョン・ウィリアムズの世界。最初の「未知との遭遇」メインテーマでは、高校生以下の学生券購入者をステージ上にあげての演奏となった。演奏終了後に子供に話も聞いていたが、今の子供も「未知との遭遇」のテーマは「聴いたことがある」そうである。

尾高は、ジョン・ウイリアムズは武満を尊敬していたということを語る。

ジョン・ウィリアムズは、「ジュリアード音楽院、日本でいうと東京芸大のようなところ」で学び、カステルヌオーヴォ=テデスコに師事した本格派であり、スピルバーグもジョージ・ルーカスも「自分が成功出来たのはジョンの音楽があったから」と語っていることを尾高は紹介する。

「ハリー・ポッターと賢者の石」はスピルバーグ作品でもルーカスフィルムでもなく、クリス・コロンバス監督作品であるが、「ハリー・ポッター」シリーズは、イギリス人の魂そのものだと捉えられているそうである。ミステリアスな曲調を上手く現した演奏であった。そういえば、私が「ハリー・ポッターと賢者の石」を観たのはまだ千葉にいた頃で、富士見町にあるMOVIX千葉での上映を観たのだった。

「シンドラーのリスト」では、今日は客演コンサートマスターに入った須山暢大(すやま・のぶひろ)が独奏を担当。サウンドトラックでソロを受け持ったイツァーク・パールマンのような濃厚さはなかったが技術面ではしっかりした演奏を聴かせる。

「E.T.」よりフライングシーンの音楽。今日取り上げたジョン・ウィリアムズ作品の中で、この曲だけがメインテーマではない。CMでもよく使われる曲で、尾高はピザのCMに使われたものが印象的だったと述べた。大フィルの音楽性には武満よりもジョン・ウィリアムズ作品のようが合っているように思う。

「ジョーズ」メインテーマ。スピルバーグが「28歳ぐらいの時の映画だと思うのですが」「自分より1つか2つ上なだけの人間(尾高は1947年生まれ、スピルバーグは1946年生まれである)がこうした映画を撮るのか」と衝撃受けたそうである。演奏を見ているとかなり高度はオーケストレーションが用いられているのが確認出来る。

今日はチケット完売、補助席まで売り切れという盛況である。尾高によると満員というのが文化の高さの指標になるそうで、以前、新国立でベンジャミン・ブリテンの「ピーター・グライムズ」をやった時、二日とも満員御礼で初日は良かったのだが、二日目に1階席の真ん真ん中2列が空いてしまっていたという。そこはスポンサー関係者用の席で誰も聴きに来なかったようなのだが、2幕の始まりに、ビーター・グライムズ役のイギリス人歌手が尾高の所に飛んできて、「チュウ! チュウというのは僕のことです。『もう歌わない! あそこが空いてるじゃないか!』となりまして」と語った。

さらにチケット完売時の返券(キャンセル)の話になる。尾高がウィーン国立音楽アカデミー(現・ウィーン国立音楽大学)でハンス・スワロフスキーに師事していた時代のこと。ヘルベルト・フォン・カラヤンが毎年夏に自身が主催するザルツブルク音楽祭を開いており、「カラヤン指揮のオペラが聴きたい」と思った尾高はザルツブルク祝祭劇場(カラヤンが大阪の旧フェスティバルホールをモデルに自らも設計に加わって建てさせたもの)まで出掛けた。
帝王カラヤン指揮のオペラなので前売り券は当然ながら完売、尾高は返券を求めて、開場の1時間半ほど前から並ぶことにしたという。午前8時半頃にザルツブルク祝祭劇場の前に着くと、すでに100人ほどが列を作っている。「こりゃ駄目かな」と思いつつ尾高が列に並んでしばらくすると、黒塗りの豪華な車が劇場の前で止まり、いかにも上流階級といった風の男性が降りてきた。男は尾高に、「おい、君は何やってるんだ?」と聞く。尾高が「オペラを聴くために並んでます」と答えると、「そんなことはわかっている。なにをやっていて、どうしてこのオペラを聴こうと思ったのかを聞いている」。尾高がウィーンで指揮を学んでいることを話すと、男性はチケットをくれたという。なんとS席の中でも特等の座席であったそうだ。
男性はカラヤンの知り合いで、毎年、ザルツブルク祝祭劇場でオペラを観ていたのだが、この年はどうしても抜けられない仕事が出来てしまい、「チケットを無駄にしたくないから、音楽を学んでいる奴にやろう」と決めて、目的地に向かう途中で高速道路を下りて、わざわざザルツブルク祝祭劇場に車を横付けしたのだった。

ラストの「スター・ウォーズ」メインテーマ。輝かしい演奏で掉尾を飾った。

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2018年2月 9日 (金)

これまでに観た映画より(98) ケネス・ブラナー監督&主演「オリエント急行殺人事件」

2018年2月7日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で、アメリカ映画「オリエント急行殺人事件」を観る。アガサ・クリスティの有名小説の映画化。監督&主演:ケネス・ブラナー。出演は他に、ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォー、ジュディ・デンチ、ジョニー・デップ、ジョシュ・ギャッド、レスリー・オドム・ジュニア、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリーほか。オールスターキャストである。
製作:リドリー・スコット、マーク・ゴードン。脚本:マイケル・グリーン。音楽:パトリック・ドイル。

とにかく有名な作品であり、日本人キャストによる翻案も含めて何度も映像化されている。ということで犯人もトリックも分かっており、感心は「どう描くか」に向く。
すぐに気づく特徴は、真上からのアングル。ここまでのハイアングルを用いた映画というのもなかなかない。客室内のみならず、雪崩を山の山頂付近から俯瞰で捉えるなど、この手法は徹底されている。そもそもケネス・ブラナーは他の映画でも俯瞰の手法は用いていた。

エルキュール・ポワロというとどうしてもNHKで放送されていたデヴィッド・スーシェのイメージが強く、ケネス・ブラナー演じるポワロは怜悧に過ぎて「なんか違う」ように思えるのだが、慣れの問題だろう。声も熊倉一雄が念頭にあったため、「スマート過ぎやしないか」と感じるのだが、これも同様であると思われる。ともあれ全体的にソフィスティケートされた「オリエント急行殺人事件」に仕上がっており、ストーリーの収斂の仕方といい、映像といい、綺麗に過ぎる出来かも知れないが、エンターテインメインとしては上質と言っていいだろう。

最近は余り外国の映画を観ていないのだが、ミシェル・ファイファーの存在感やデイジー・リドリーの可憐さなどは印象に残った。

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2018年2月 8日 (木)

Happy Birthday ジョン・ウィリアムズ 「スター・ウォーズ」メインテーマ ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス・オーケストラ


ジョン・ウィリアムズが手兵としていたボストン・ポップス・オーケストラを指揮した映像。ボストン・ポップス・オーケストラはボストン交響楽団の楽団員のうち、首席奏者を除いたメンバーで構成されたポップス・オーケストラ。アーサー・フィードラーに率いられて一時代を築き、ルロイ・アンダーソンの曲などを初演。ジョン・ウィリアムズはボストン・ポップス・オーケストラの2代目常任指揮者であった。

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2018年2月 7日 (水)

これまでに観た映画より(97) 「坂本龍一 PERFORMANCE IN NEWYORK : async」

2018年2月5日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で、音楽映画「坂本龍一 PERFORMANCE IN NEWYORK: async」を観る。坂本龍一のニューアルバム「async」のリリースを記念して、ニューヨークのパーク・アヴェニュー・アーモニーで行われた限定ライヴを収録したもの。1時間ちょっとの映画であるが、2500円とチケット代は高めである。

坂本龍一はポップな作品も数多く作曲しているが、根源的には現代音楽指向の作曲家であり、「async」ライヴも音楽とノイズの境界線を探るような曲調が選ばれている。

アンドレイ・タルコフスキー監督の架空の映画のための音楽という設定である。ピアノの弦を棒で叩いたり、こすったりするというプリペイドな技法を始め、エレキギターの弦を金属製のサックをはめた指でなぞることでノイジーな音を生んだり、アクリル板を叩くことで音を出したりと、現代音楽的な試みが行われている。天井にモニターがあり、聴衆がたびたび上方を確認する姿が見られる。映画では映像だけの部分がスクリーンいっぱいに映し出される。森の映像や、水滴が拡がるデジタル画像などである。

わかりやすい内容ではなく、料金も高いので、現代音楽の素養がない人には全く薦められないが、抵抗がない人や坂本龍一の音楽が好きな人は観ておいて損はないだろう。坂本がピアノで奏でる旋律には、彼らしいメロディアスでセンチメンタルな味わいがある。

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2月7日の誕生花は勿忘草 尾崎豊 「forget me not」

個人的には、伊藤英明&仲間由紀恵主演の「LOVE SONG」という映画で主題歌として用いられたのが印象に残っています。

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2018年1月20日 (土)

これまでに観た映画より(96) 「DESTINY 鎌倉ものがたり」

2018年1月15日 MOVIX京都にて

MOVIX京都で、日本映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」を観る。「ALWAYS 三丁目の夕日」の西岸良平の漫画を、「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴の監督で映画化。出演:堺雅人、高畑充希、安藤サクラ、堤真一、吉行和子、田中民(民はさんずいに「民」)、要潤、大倉孝二、神戸浩、國村隼、鶴田真由、三浦友和、市川実日子、ムロツヨシ、瀬戸たかの、木下ほうか、薬師丸ひろ子、橋爪功、中村玉緒ほか。声の出演:古田新太。音楽:佐藤正紀。主題歌:宇多田ヒカル「あなた」

妖怪や幽霊の出る架空の鎌倉(パトカーにも神奈川県警ではなく鎌倉警察と書かれている)が舞台。
三文ミステリー小説家の一色正和(堺雅人)と出版社のアルバイトをしていた亜紀子(高畑充希)は新婚。代々、民俗学の学者をしていた一色家で新が婚生活を送ることになるのだが、鎌倉には妖怪や幽霊が出る。初めて河童を見た亜紀子は震え上がってしまい、トイレにも一人でいけなくなってしまう。
ある日、正和と亜紀子は化け物が繰り広げる夜市で、優子(吉行和子)に出会う。実は優子はすでに他界しているのだが、死神(安藤サクラ)との話し合いで、旦那(橋爪功)が他界するまでこの世に居させて貰っているという。
そして、一色家には貧乏神(田中民)忍び込んでいて……。

基本的にはファンタジー映画だが、黄泉国に向かうところなど、アドベンチャーの要素も盛り込んでいる。黄泉国ではその人の心象によって風景がガラリと変わるそうだなのだが、これはエマニュエル・スウェーデンボルグの発想であり、そうしたポイントもちゃんと押さえているの好印象である。

高畑充希演じる亜紀子の人物造形が実にチャーミングに出来ており、もはや「ずるい」領域である。あんな子ともう会えなくなるなんて考えたら、自然に涙が出ちゃうよね。三十歳を越えたら涙腺が弱くなってるんだから、無闇に泣かせたりしないで欲しい。ちなみにファーストカットは亜紀子の顔のアップからなのだが、亜紀子の魅力は一貫してぶれることがない。

堺雅人はお得意の飄々とした男を演じており、今回もはまっている。死神を演じる安藤サクラは若い頃はそうでもなかったが、今ではとても魅力的な女優になった。

「龍馬伝」などの佐藤正紀の音楽もやや大仰ながらゴージャス感に溢れ、スケール雄大。明らかにハリウッド映画を意識した音楽作りである。

また観に行きたくなる映画であった。私は映画のパンフレットはまず買わないのだが、今日は購入。帰りに河原町OPAのタワーレコードでサウンドトラックも購入した。

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2018年1月19日 (金)

これまでに観た映画より(95) 「火花」

2018年1月16日 MOVIX京都にて

MOVIX京都のレイトショー上映で、日本映画「火花」を観る。吉本興業の制作。板尾創路監督作品。原作は又吉直樹の芥川賞受賞作。
出演:菅田将暉、桐谷健太、木村文乃、川野修士、三浦誠己、加藤諒、高橋努、日野陽仁、山崎樹範ほか。

テレビのお笑い番組に出たりはするものの、うだつの上がらない芸人・スパークスの徳永(菅田将暉)と、先輩芸人・あほんだらの神谷(桐谷健太)の物語。徳永はサッカーの大阪選抜に選ばれたことがあるという設定であり、又吉直樹自身が投影されている。

日曜日(2018年1月14日)に見た「新生紀ドラゴゲリオンZ」でR藤本が映画「火花」を紹介しており、「芸人の又吉の原作を芸人の板尾が監督しているため、芸人が見るとリアルすぎて痛い」と語っていた。興味を持った。
お笑いの話であるが、終始一貫して悲しみに包まれている。お笑いは感情を動かすことだが、悲しみはより普遍的に感情を突き動かしていく。その関係を例えるなら二卵性双生児のようなものだ。

自分に素直であろうとして壁に当たり、尊敬していた先輩の醜態を知る。そしてこれまで同格であった芸人の出世を見せつけられる辛さ。表現に生きる男達のひりつくような痛みが、そこには確かにある。
ただこれは悲劇ではない。お笑いの世界に生きた意味が強く肯定されているポジティブな映画だ。


私は常々、世界というのは一つの山脈のようなものであり、個々の人間はその一つの峰のようなものであると考えてきた。ユングの影響もあるのかも知れないが、そうした考えをある意味、肯定してくれているような映画だった。

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2018年1月10日 (水)

「戦艦ポチョムキン」よりオデッサの階段

ロシア暦1898年1月10日(グレゴリオ暦1月23日)、モンタージュ理論の大成者として知られるセルゲイ・エイゼンシュテイン監督がラトヴィア(当時はロシア帝国の領土)のリガに生まれる。

エイゼンシュタイン監督の代表作として知られるのがポチョムキンの反乱を題材とした「戦艦ポチョムキン」である。小林多喜二の「蟹工船」にも似たストーリーを持つということもあり(両者は完全に無関係である)、日本人にもわかりやすい内容ということもあるのか、歴代名画の上位にランクされる作品として知られている。その「戦艦ポチョムキン」に中でも最も有名なシーンが「オデッサの階段」。

ロシアの都市、オデッサでの虐殺劇(史実ではないそうだ)を描いたもの。ショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」第3楽章(モスクワでの血の日曜日事件を描いた音楽)が流れる中、逃げ惑う人が大階段(プリモスキーの階段と呼ばれるようです)を駆け下りて行くシーンがまず印象的である。

子供に怪我を負わされた女性が迫りくるコサック兵たちに抗議に向かい、銃殺される(女性の遺体にコサック兵の影が映るのが印象的である)。この後で、音楽はショスタコーヴィチの交響曲第5番第3楽章に切り替わり、ジェノサイドが続く中、ベビーカーに赤ん坊を乗せた女性が階段の上で射殺される(5分12秒付近)。女性が後ろに倒れると同時にベビーカーが押し出され(5分54秒付近)ここからクライマックスである階段落ちが始まる。

画像の切り替え、ストーリー運び、影の用い方、エキストラのみによる演技、悲惨さを訴えかけるメッセージ性などいずれもがサイレント映画として「完璧」の域に達しており、わずか7分程度の映像でありながら、極めて濃密な時間であり、映画史の中で最も有名なシーンの一つに数えられている。

このシーンは後世の作品に様々な影響を与えたことで知られている。

最も有名なのは、ブライアン・デ・パルマ監督の映画「アンタッチャブル」。ケビン・コスナーの出世作として知られるこの作品では、シカゴ駅での階段落ちのシーンがオマージュとして登場する。こちらは著作権が切れていないので映像が載せられないのが残念だが、当時はまだ駆け出しの俳優だったアンディ・ガルシアの演技が実に格好良く(「完璧です」のセリフがいい)、一見の価値ありである。

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2017年12月 3日 (日)

恐怖音楽ではなくてただのポップナンバー 「Feels Like Heaven」

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2017年10月31日 (火)

笑いの林(95) 「芸人活弁グランプリ」2017

2017年10月14日 中京区の大江能楽堂にて

午後6時から、押小路の大江能楽堂で、京都国際映画祭「芸人活弁グランプリ」を観る。

吉本の映画祭である京都国際映画祭。そこで吉本芸人が活動弁士に挑むという試みである。
司会はザ・プラン9の、お~い!久馬。「芸人活弁グランプリ」が行われるのは去年に続いて二度目。昨年はよしもと祇園花月で行われ、お~い!久馬はヤナギブソンと組んで弁士に挑んだのだが滑りまくったそうで、そのため「今年は司会で(弁士を)やらせて貰えない。そういうシステムなんでしょうか」と言っていた。

今年は大江能楽堂ということで、キャパは狭いのであるが、入場客は30人ちょっとというところで、空いていた。

出演は、ラニーノーズ、桜 稲垣早希、堀川絵美、ダイノジ。プロの活動弁士である片岡一郎と、片岡の妹弟子である山内菜々子も登壇する。音楽は鳥飼りょうがキーボードで奏でる(ラニーノーズの時はお休み)。

4人組バンド・ラニーノイズのメンバーとしても活動しているラニーノーズの二人はギターを手に登場。堀川絵美は前職であるバスガイドの格好をしている。早希ちゃんはアスカのコスプレで、橋掛かりから出てくるときに狂言方の歩き方を真似していた。そして「エヴァンゲリオンの次に活弁を愛しています」と思いっきり嘘をつく。

1分ほどのクラシカルショートフィルムに即興で弁舌を行う。予選では1930年代に作られたというアニメ映画「0助漫遊記」とアメリカのショートフィルムである「キゲキ・キャメラマン」に全員が言葉を載せる。
 
「0助漫遊記」は、どういう意図で作られたのかもうわからなくなってしまっているという映画だそうである。少年剣士である0助が、天狗や妖怪を倒していく。
トップバッターの堀川絵美は市原悦子になりきって語るが、説明の要素が濃すぎる。他の出演者の語りも聞いたが、「この人達は弁士付きのサイレン映画を観たことが一度もないんだろな」わかるものでしかなかった。ラニーノーズはほとんど語りを行わずにギターでスーパーマリオの音楽を奏で、早希ちゃんはシンジになりきっての完全エヴァネタ。ダイノジは「マッチでーす!」と本編とは関係ないことを喋って大滑り。「来年、僕らが司会やります!」と言っていた。
山内菜々子がお手本を見せることになるのだが、片岡一郎が、「なんで最初にやらせないんだ?」と語るなど、段取りはグダグダである。

片岡一郎が、市川右太衛門の「まぼろし峠 江戸編」を弁じることになるのだが、マイクなしで張り切っていたためにやる前に早希ちゃんから「格好つけてる」と言われ、やり終えた後は、お~い!久馬に「いきってましたね」と言われてた。

「キゲキ・キャメラマン」は、飛行機を撮影しようとしているカメラマンが主役のスラップスティックサイレント。バイクの運転手がトラックに跳ね飛ばされるなど、スタントマンを使ったアクロバティックな要素が満載である。まず山内菜々子がお手本を聞かせる。
ラニーノーズは、「名探偵コナン」やファミリーマートに入るときの音楽(作曲者により「大盛況」というタイトルがつけられている)をギターで奏で、早希ちゃんは今度は「アンパンマン」のバタコさんになりきる。堀川絵美は京都ネタを行い、ダイノジは吉本ネタをやっていた。

片岡一郎が決勝進出者二組を選ぶ。決勝に進んだのは堀川絵美とラニーノーズ。
決勝のお題は、「愉快な連中」という1930年代制作のアニメ映画。おじいさんがある家族を乗せて自動車を運転するのだが、この自動車というのが生き物のように意思があり、動物のような動きをしたり、へばってしまったり、海の中で泳いだりする。
この映画もどういう経緯で作られたのかは今となっては不明の作品のようだが、片岡一郎は「思いっきりシュールにしたサザエさん」と語る。

能舞台上でのあっち向いてほいに勝ったラニーノーズが後攻を選ぶ。堀川絵美は、今度も「市原悦子です」と自己紹介してから語る。一方のラニーノーズは「サザエさんのテーマ」や「世にも奇妙な物語」のテーマを奏でるなど音楽勝負。軍配は堀川絵美に上がったが、理由は「(ラニーノーズのネタは)JASRAC的に問題があるから」だそうである。

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