カテゴリー「オペラ」の3件の記事

2008年9月22日 (月)

コンサートの記(22) 兵庫県立芸術文化センター 佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ[リバイバル]『蝶々夫人』

2008年3月28日 兵庫県立芸術文化センター大ホールにて

兵庫県立芸術文化センター大ホールで、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ[リバイバル]「蝶々夫人」を観る。午後2時開演。

2006年に、兵庫芸術文化センターの佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ第1弾として上演されたプッチーニの歌劇「蝶々夫人」の再演である。

芸術監督&指揮:佐渡裕、演奏:兵庫芸術文化センター管弦楽団。演出:栗山昌良。舞台装置:石黒紀夫。衣装:緒形規矩子。

佐渡裕指揮 「蝶々夫人」[リバイバル] Wキャストによる公演であり、本日の配役は、蝶々夫人に並河寿美、ピンカートンにアレッサンドロ・リベラトーレ、スズキに小山由美、シャープレスにキュウ・ウォン・ハン、ゴローに松浦健、ヤマドリに松澤政也、ボンゾに若林勉、役人に服部英生、ケイト・ピンカートンにマリアム・タマリ。

合唱は、ひょうごプロデュース・オペラ合唱団(つまり臨時編成)。
プロダクションディレクター:小栗哲家(俳優・小栗旬の父親)。

昼間っからオペラというのはちょっときついが、様々な事情があって、毎回午後2時開演であり、他に選択の余地はない。

佐渡裕の指揮の特徴は何といってもドラマティックな音楽作りであり、フォルテでの迫力である(佐渡本人は、「弱音こそが自分の音楽の良さ」だとインタビューなどで語っているけれど、弱音の美しさならもっと上の人は多い)。兵庫芸術文化センター管弦楽団は、音色こそやや硬めではあったが、蝶々さんとピンカートンの「愛の二重唱」の伴奏での浮遊感、「ある晴れた日に」での高揚感、ラストの迫力など、重要な箇所での健闘が光る。

4階席に座ったので、舞台から遠く、最初のうちは余りのめり込めなかった。第1幕はピンカートンと蝶々さんの愛が語られる場であるだけに、のめり込めないときつい。何といっても、歌詞自体が、

蝶:「星が見てますわ」
ピンカ:「おいでこの優しい胸に」

といった調子のものだけに、醒めた目でいると、怖ろしくクサイことをいうバカップルにしか見えない。

悲恋の場である第2幕、第3幕は佐渡の指揮が生み出すエネルギッシュな高揚感が心地良く、なかなかの名演となった。オペラだけに大仰な要素が多いのだが、そうした大仰さに説得力を与えられるのが佐渡の良さである。

歌手達の水準は文句なしとは言えないけれど、日本が舞台のオペラだけに日本人が日本人役を演じる今回の「蝶々夫人」は、所作も含めて違和感の少ない仕上がりになっている(仏教と神道がごっちゃになっていたりするが、原典のテキストを変えるわけにはいかない。いかないのだろう多分)。

4階席から観ていたということもあるが、歌手達の動きが洗練されておらず、不自然に思えるところがいくつかあった。それでも結局は感動してしまうのだから音楽の力は大きい。

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2007年12月 7日 (金)

レナード・バーンスタイン自作自演 「ウェスト・サイド・ストーリー」全曲

ブロードウェイ史上空前絶後の完成度と言われた、レナード・バーンスタイン作曲の「ウェスト・サイド・ストーリー」。アメリカが生んだ初の偉大な指揮者でもあったレナード・バーンスタインの天才ぶりを示す傑作です。

レナード・バーンスタイン(愛称はレニー)は大変複雑な個性の持ち主であり、指揮者であり作曲家でありピアノの腕も一級品、シリアスなクラシックの作曲家でありながらジャズやポピュラー音楽への関心も非常に高く、指揮者として売れる前はバーでジャズピアノを弾いて稼いでいた、同性愛者でありながらチリ人女優と結婚して子供ももうける、ハーバード大学とカーティス音楽院出たインテリであり、世紀の天才でありながら希代の変人、自己中心的な性格で周囲を呆れさせながらも教育熱心で多くの優秀な弟子を生んでいる、という分裂的な性向の持ち主でした。レニー自身もこの分裂的傾向に悩んでおり、生涯を通じて精神科のクリニックに通い続けましたが、良くなることはありませんでした。

レナード・バーンスタイン自作自演 「ウェスト・サイド・ストーリー」全曲

今回紹介する「ウェスト・サイド・ストーリー」と自作自演によるその全曲盤(ドイツ・グラモフォン)もレニーの分裂的傾向が出たものです。

「ウェスト・サイド・ストーリー」はブロードウェイ・ミュージカルとして作曲されましたが、レニー自身はオペラとしても通用するようにとの意図を込めていました。普通、そうした作品はどっちつかずとなって失敗することが多いのですが、レニーの才能はその難題を見事に、しかも高い次元で乗り越えています。

「ウェスト・サイド・ストーリー」にオペラ歌手の起用も考えたというレニーですが、ミュージカルの歌手が歌う初演を観て、〝「声楽家」を配役に使わなかったのは正しかったと思う〟と書いています。

しかし、いざ自作自演で「ウェスト・サイド・ストーリー」の録音をするという段になってレニーが選択したのはオペラ歌手の起用。しかもプエルトリコ移民のマリアにニュージーランド出身のソプラノであるキリ・テ・カナワ、ポーランド系移民のトニーにスペイン人テノールのホセ・カレーラスという妙な配役。
キリ・テ・カナワもホセ・カレーラスも名歌手ですが、役に全く合っていません。それでも「ウェスト・サイド・ストーリー」のオペラ的な性格を出すことと、レコーディングされて後世まで残るということを考えたレニーは音程の正確なオペラ歌手を起用することにしたようです。

オーケストラはブロードウェイの名手を集めた特別編成の楽団。晩年のレニーの個性を反映して、大変重い演奏をしていますが、重いにも関わらず他のどのCDよりもノリがよく、スウィングしているという、これまた妙な味わいがあります。

ちなみにドイツ・グラモフォンは純クラシック音楽レーベルですが、レーベル史上最も売れたCDがこのクラシックともポピュラーともオペラともミュージカルともつかない「ウェスト・サイド・ストーリー」全曲盤です。レニーは自分自身以外のところにも分裂的傾向をもたらしたのでした。

問題点も多いレナード・バーンスタイン自作自演盤「ウェスト・サイド・ストーリー」ですが、総合点はやはり高く、他の全曲盤(ワーナーのバリー・ワーズワース盤やNAXOSのケネス・シャーマーホーン盤)を大きく引き離す出来映えです。

レナード・バーンスタイン指揮 「ウェスト・サイド・ストーリー」オリジナル&現行版ジャケット

バーンスタイン (1918-90)/West Side Story: Bernstein / O & Cho Te Kanawa Carreras Troyanos Ollmann

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2007年10月 8日 (月)

ベルク 歌劇「ヴォツェック」(オペラ映画版) ブルーノ・マデルナ指揮

新ウィーン学派を代表する作曲家アルバン・ベルク(1885-1935)の傑作歌劇「ヴォツェック」。20世紀に生まれた最高のオペラと呼ばれながら、現在のところ手に入るDVDは2種類のみ。最近になってDVD化されたバレンボイム盤はパトリス・シェローの斬新な演出が特徴ですが、同時に抽象的でもあり、「ヴォツェック」という作品をよく知らない人には内容がわかりにくいため、もう1つの入手しやすいDVD、1970年に制作されたオペラ映画版を紹介しておきます。現代音楽の作曲家・指揮者として活躍したブルーノ・マデルナ(1920-1973)の指揮、ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団、ハンブルク州立歌劇場合唱団の演奏。ヴォツェックを歌うのはトニ・ブランケンハイム。
バレンボイム盤でヴォツェックを歌うことになるフランツ・グルンドヘーバーも徒弟職人役で出演しています。
ヨアヒム・ヘス監督作品。ほぼ全編ロケによる撮影が行われています。ドリームライフからの発売。ジャケットはモノクロームですが、カラー映画です。

アルバン・ベルク 歌劇「ヴォツェック」映画版 ブルーノ・マデルナ指揮 トニ・ブランケンハイム(ヴォツェック役)

歌劇「ヴォツェック」は、わずか23歳で病死した劇作家・小説家・自然科学者のゲオルク・ビューヒナー(1813-1837)の未完の戯曲「ヴォイツェック」を、カール・エミール・フランツフォースが編纂したテキストにベルクが作曲した作品。ベルクに渡されたテキストには「Woyzeck」であるべきところが「Wozzeck」と誤植されていたため、ベルクはヴォツェックだと思いこんで作曲。完成後、「ヴォイツェック」が正しかったと知ったベルクですが、完成したオペラは戯曲とは別物であると判断、そのまま「ヴォツェック」という題で発表しました。

初演は1925年12月14日、ベルリン国立歌劇場にてエーリヒ・クライバーの指揮にて行われ、20世紀に初演されたオペラとしては最初の成功作との評判を得ています。

現代音楽のスペシャリストとして知られたブルーノ・マデルナの指揮だけに演奏は緻密。ヴォツェックの不安な心理と、病んだ世界を巧みに表します。
トニ・ブランケンハイムのフランツ・ヴォツェックは、ここまでしょぼくれる必要はないんじゃないかと思える表情と演技をしますが、心を病んだ男を演じ、歌うには適任であるとも言えます。

〈あらすじ〉
貧しい兵士のフランツ・ヴォツェックは、嫌みな上司の髭を剃ったり、ファナティックな医師の人体実験に協力するなどして小銭を稼いでいる。人体実験の影響なのか、死と終末感に満ちた幻覚を見るようになるヴォツェック。
ヴォツェックの心の支えは妻であるマリー。しかしそのマリーはある日、たくましい肉体を持つ軍楽隊鼓手長に惚れて一度きりだが浮気をしてしまう。
マリーと鼓手長の関係を知ったヴォツェックの精神状態は更に悪化していくのだった……。

ベルク/Wozzeck: Maderna / Hamburg Po Blankenheim Haage Cassily Jurinac Sotin

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