2026年5月10日 (日)

「新・科捜研の女2」Season6概要

「新・科捜研の女2スペシャル」Season6 File.1。これまでは地上アナログ放送向けのHDバージョンでの配信で、左右が切れていたが、このSeasonからは地上デジタル放送向けのFHDバージョンになり、映像が画面一杯に広がる。

マリコが科捜研での徹夜の仕事を終え、家に帰る。祇園白川沿いを自転車で通り、路地のどん突き(関西弁で突き当たりのこと)にある町家へ。住所は、左京区北白川中井町で、また引っ越したことが分かる。左京区北白川は、京都屈指の高級住宅街だが、範囲も広く、マリコが暮らすのは北白川は北白川でも昔ながらの町のようである。北白川には中井町はなく、架空の地名である。
今回、洛北医科大学のキャンパスとして京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の人間館が登場。外観のみならず、館内にあった@CAFE(今は名前が変わっているがカフェ自体は存在する)でマリコと洛北医大の解剖医がお茶する場面があり、白衣を着たエキストラが何人も歩いている。京都造形芸術大学は北白川の一番北に位置する。大学自体の住所は異なるが、最寄りのバス停は「上終町(かみはてちょう)瓜生山学園 京都芸術大学」で、上終町は北白川の一番北であることを意味する地名である。

家に帰ったマリコは鍵が開いているのを知り、玄関にあった金属バット(野球もソフトボールもやりそうには思えないので護身用だろう)を手に奥へ。男が色々と物色している、と思いきや父親の榊伊知郎(小野武彦)であった。科学者である伊知郎。マリコの口癖である「科学は嘘をつかない」は父親譲りであることが分かる。伊知郎は妻との仲が悪くなり始めたので、熟年離婚を避けるべく、京都で仕事を見つけて娘の家に厄介になることにしたのだった。
寝る間もない内に、西京区桂で不審死があり、マリコは検視に出掛ける。男がマンションの自室から転落(桂の方は高さ制限が比較的緩く、高めのマンションも多い)して死亡したのだが、麻薬を常用していることが分かった。その後、科捜研の所長の宮前(山崎一)の鑑定によりメタンフェタミン(覚醒剤)であることが判明する。
現場でマリコは、嵯峨野署生活安全課の久崎英子巡査(鈴木杏樹)と出会う。久崎は麻薬に詳しかった。実は土門と久崎は四条署時代にコンビを組まされたこともあった。
検視を終えたマリコは、送りのパトカーの中で土門の肩にもたれて寝てしまう。土門も前Seasonではジャンパーなどラフな格好だったが、今シーズンは背広でビシッと決めている。

中京区のクラブで、覚醒剤の取引がある。捜査課も見張り、久崎も偵察要員として店の中にいる。
主犯である薬師寺(大沢樹生)が現れるが、逃亡を図る。組織犯罪対策部警部の角田(かくた。大浦龍宇一)が薬師寺に拳銃を向けるが、薬師寺に撃たれ、背後からも久崎に銃弾を浴びて即死。マリコが駆けつけるが、すでに事切れていた。振り返った真理子は久崎が泣いているのを見る。

誤射により処分を受けることになった久崎。更に薬師寺より先に発射した疑いも出る。
だが、土門は久崎は射撃の名手で、四条署時代は敵わなかったとマリコに口にする。

その後、監察の監視下に置かれることになった久崎だが、脱出し、逃亡する。

桂のマンションで、マリコは壁に掛けられた写真を見つける。1987年7月7日に撮られたもので、放送時より15年前である。後にここに写っているのが、久崎、薬師寺、角田、マンションから転落死した川添であることが分かる。
科捜研では、産休に入った光子に代わり、美貴(加藤貴子)が所員となる。元々ハイテク捜査室にいた美貴は、マリコに写真に写る山の稜線がどこのものか調べてほしいと依頼される。調査の結果、それらしい場所がいくつかあったが、一番近いのが西信楽高原から見たものだった。1987年7月7日に、久崎、薬師寺、角田、川添の4人はここで行われたキャンプに参加していた。この写真を撮ったのは地元のどら息子である加藤であるが、加藤は焼き増ししてあげると小学生だった久崎をだまし、久崎は少し年上で中学生だった3人に助けられたのだった。3人は加藤を突き落としたが、そのことで警察に入った角田はごろつきとなった薬師寺と川添に強請られ、京都府警が管理していたメタンフェタミンを二人に横流ししていたのだった。それでも更に薬や金を要求してくる川添を自殺に見せかけて殺した。
一方、小学生だった久崎にとって角田は憧れのお兄さんとなった。警察に入ったのも角田と同じ職に就くためであり、京都府警であった任命式を終えた久崎は角田と喜びの対面を果たす。

薬師寺の乗る車が、西院(「さいいん」「さい」という2種類の読み方があるややこしい地名)を西に向かっていることが分かり、土門らは追いかけて丹波インターチェンジまで向かうが、薬師寺の囮だったことが分かる。
薬師寺が実際に向かったのは大阪港だった。以前、川添が働いていた場所だ。そこで久崎から金を受け取ろうとする。久崎は銃口を薬師寺の頭に向けた。

一方、マリコは、加藤は突き落とされただけで死んではおらず、実は這い上がったところを実の父親によって絞殺されていたことを知った。当時、自分達が殺したと思ったのは、子どもたちの思い込みだったのだ。

覚醒剤の横流しを行っていた角田は死を願い、久崎に自分を撃つよう命ずるのだが、久崎は角田の向こうにいた薬師寺の拳銃を弾き飛ばそうとし、角田が久崎の弾道を読んで意図的に飛び込み、間接的な自殺を遂げたのだった。


大阪港で薬師寺は逮捕され、マリコは久崎に話しかける。これまで有能だったが人の気持ちを読むことが苦手だったマリコが初めて人に寄り添う回となった。


光子が超高齢出産での産休で不在という設定になっているが、光子役の深浦加奈子がすでに癌との闘病に入っており、おそらく病状が良くないのでしばらくお休みということにして貰ったのだと思われる。深浦加奈子は最後までごく親しい人にしか癌であることを打ち明けなかったそうで、「科捜研の女」にも復帰し、死の直前まで出演を続けた。いくつかあるドラマの遺作の一つに、「科捜研の女」はなるのかも知れない。現場には癌ではなくもっと軽い病気と説明したのだろう。デスクの上には深浦加奈子の写真と「I'll be back」の文字があった。


Season6 File.2。寺院の本堂で住職が頭を打って死亡する。翌朝、寺の長男(山崎裕太)が遺体を発見する。山崎裕太は「科捜研の女」二度目の出演であるが、「よく似た他人」という設定である。
この寺院の十一面観音は国の重要文化財に指定されている。指定に関与した麻生早紀江(田中美里)は、住職の十一面観音一般公開の方針に反対していた。
早紀江は、文化財保護管理委員会に属しているが、文化庁が京都に来る前なので、京都文化博物館でロケを行った京都文化博物館にいつもはいる。土門とマリコはなぜか、遠回りになるが「ばえる」別館(旧日本銀行京都支店)の方から京都文化博物館に入る。
前田珈琲が入っている中庭でのロケもある。
寺の住職は、重要文化財の十一面観音の模造品を仏師に作らせ、金儲けのための公開を試みるが、それも早紀江が食い止め、住職ともみ合いになり、住職は本尊の台座の部分に頭をぶつけて亡くなってしまったのだった。
ロケ地として大覚寺がクレジットされているが、おそらく塔頭を使って撮影したのだと思われる。他の寺院での撮影も行われたのかも知れない。

浜辺美波の台頭までは、「石川県出身の美人」の代表格だった田中美里。穏やかな役を振られることが多いが、今回は気の強い女性を演じている。

今回はなぜか、マリコと土門が南禅寺の水路閣の横を通るシーンがある。

寺院が舞台であることと、仏像の金銭的価値が描かれているため、いつもはラストクレジットに、「このドラマはフィクションです」と出るだけだが、今回は特別に「どの宗派ともどの寺院とも関係がありません」というメッセージが出た。


Season6 File.3。比較的大きなお屋敷で、老女が頭を打って亡くなっているのが発見される。老女は夫を亡くした2年ほど前から野良猫2匹に餌をあげるようになっていた。
息子の匂坂隆文(さきさか・たかふみ。太川陽介)と娘の美代子は、老女の遺書を読んだが、2匹の猫を世話することが遺産を受け取る条件だった。隆文は稲の花粉のアレルギー症で家も狭いので猫の世話は出来ない。美代子も自宅でフラワーアレンジメントの教室をしているので猫は引き取れない。ちなみに実家の価値は高く、1億円超えになることが見込まれた。
老女は猫に餌はあげるが飼おうとはしなかったため、苦情が出ていた。
マリコは、二匹の猫を見つけるべく、猫のマーキングの調査を始める。例によってしらみつぶしに当たるが、使用している地図に、「宇多野」の地名が入っており、御影堂(みえどう)の文字も見えることから、仁和寺とその周辺でロケが行われたことが分かり、立派なお屋敷も仁和寺の塔頭が用いられている可能性がある。クレジットにも「仁和寺」は出てくる。前回に続き、京都市の西部でのロケが行われた。

今回は掟破りに近い手法が用いられる。演劇界に詳しい人なら知っている俳優が犯人だが、役名は苗字のみで、最後のクレジットには役名すら出ない。そのため、話の筋がまとまっていない印象を受ける。「ノックスの十戒」にはギリギリ引っかからないが。

なお、今回、マリコの父親である伊知郎の前職が考古学の学者であることが判明する。大学の先生とは明かされていたが、科学の話ばかりするので科学の先生だと思っていた。考古学でも炭素判定法など科学は用いるが、いきなり科捜研の所長になるのは無理がある。


「新・科捜研の女」Season6 File.4。京都リサーチパークを社屋に見立てたtvkテレビ京都が登場。実際には、京都にあるテレビ放送局はKBS京都テレビである。KBSだけだと韓国の国営放送と同じになるので、基本、後ろに京都がつく。tvkは、テレビ神奈川のことで、テレビ神奈川よりもtvkテレビの方が使用頻度がずっと高く、関東地方の新聞のラテ欄にもtvkと書かれている。

架空の山である高良岳のハイキングコースで男性の遺体が発見される。高良岳には気象台があり、来場者は名前を残すのだが、事件当日に訪れていたのは五十川純子だけだった。

tvkテレビ京都の昼帯と夕方の天気番組で気象キャスターを務めている五十川純子(三浦理恵子)。視聴者からの局地的な天気を教えてほしいという要望に応えるリクエスト天気予報も好評である。だが、局にはより若い気象キャスターを据えたいという意向があり昼と夕方を降りて朝の天気予報番組に移ってくれないかとの打診があった、
千葉市の幕張新都心の本社を置くウェザーニューズの女性キャスターが人気の昨今であるが、以前からお天気お姉さんは人気の職種である。アナウンサーになりたいけれど難しく、それでもテレビに出たいというので気象予報士の資格を取りにいく人もいる。
ウェザーニューズのキャスターは気象予報士の資格を持っていない人が多いが、今回出てくるtvkテレビ京都の気象キャスターは、気象予報士の資格を持っているという設定である。
気象予報士は簡単に取れる資格ではないが、取れたとしてもそれを生かせる職業に就けるとは限らず、ペーパー気象予報士と呼ばれる人もいる。純子もtvkテレビ京都の気象キャスターになるまではペーパー気象予報士に甘んじていて、望むような仕事には就けなかったようである。
そこで純子は、気象の知識を生かして、辻が行う先物取引に加わった。アメリカのイリノイ州、オハイオ州、ミシガン州の穀物に関する先物取引である。純子はtvkテレビ京都の気象キャスターに抜擢され、先物取引を止めたかったが、辻は暴力団と関係があったため、抜けられなかった。
気象予報を外せば辻が自分を見限るのでは考えた純子だが、先物取引で予想を上回る大赤字が出る。損失補填を求められた純子だが、要求された大金は持っておらず、やむなく辻を殺すことに決めたのであった。
東京の場面があるが、四条烏丸のビル群が映っており、東京に見立てられたのか、あるいはそのまま四条烏丸のビル群として映っているのか、タイミング的に微妙である。

鍾乳洞を使った死亡時間を移すトリックをマリコが見抜くという展開、純子が乱視と遠視のためコンタクトレンズを使っており、辻を殺害する際にコンタクトを落としてしまって眼鏡に切り替えたことが疑惑に繋がるなど、推理ドラマの王道のような回となった。
撮影には京都地方気象台が協力している。


Season6 File.5。マジシャンの回である。英亜呂真(はなぶさ・あろま。高橋ひとみ)が古い小劇場でマジックのショーを行っている間に、楽屋にいた亜呂真の師であるピンキー桃山(森山周一郎)が窓から転落死する。ピンキーは傷害致死で服役し、仮釈放の身分だった。
マリコは状況から、自殺や事故ではなく、殺害の可能性が高いと見る。
亜呂真のマジックディナーショーを見るために、警察部長の佐久間(田中健)を誘う。
真っ赤なドレスは美貴から借りたものだ。土門も会場に。警察の身分があれば入れるようだが、捜査ではないのでお金を払って堂々と正面から入ったのだろう。
マリコは亜呂真に選ばれてマジックのアシスタントになる。
亜呂真のマジックは全て桃山から盗んだものであり、亜呂真は桃山に強請られるのではないかと恐れていた。
吉本のマジシャンである小泉エリが増村幹子役で出演。セリフは一つだけで叫ぶシーンもある。ラストでは手品も演じてみせる。小泉エリは大の好角家であり、高じて力士と結婚。相手が親方に昇進したため、現在は女将さんとなっている。
元々は高橋ひとみはマジシャン並みのトランプ捌きは出来ないので、手の演技を小泉エリにして貰ったのだが、脚本を書き換えて女優としても出演することになったようだ。

高橋ひとみは、「トリック」ではスリット美香子という自称超能力者を演じ、森山周一郎は冒頭のナレーションを担当していた。亜呂真は若い頃はチャイナドレスを着ているので、スリット美香子が思い出される。

師弟の間で考え方に相違があり、それが悲劇へと繋がる展開。最初の頃のマリコは相手の心に疎かったが、人物像が徐々にだが変わりつつある。


Season6 File.6。15年前に起きた誘拐事件。未解決だが、犯人から15年ぶりに接触がある。手紙が届いたのだ。京都駅のカフェテラスで会いたいというものだった。誘拐された子の親である神戸佳子(真行寺君枝)がカフェテラスに向かい、捜査課も客に扮して監視を行う。土門の要請により美貴も科捜研から捜査員に戻り、張り込みを行うが、それらしい人は現れなかった。
だがほぼ同時刻に京都東急ホテルで女性が亡くなる。医療薬の副作用による死であった。誘拐されたのは双子の女の子の片割れである。犯人は誘拐した子を我が子として育てているようで、笑顔の若い女性の映像がVHSに収められていた。前髪を掻き分けるという癖がある。
笑顔の若い女性、美玖の移ったビデオの編集された部分に、一瞬、他の映像が紛れている。上書きしたが残った映像だ。そこには滋賀県のケーブルテレビのロゴが移っていた。そのケーブルテレビが映るのは滋賀県の湖南地区だけだ。美玖はこの地区の高校に通っているはずであり、しらみつぶしに当たった結果、滋賀県内の女子高校に在籍していることが分かった。だが現在は病気で入院中である。院長の勝俣(中山仁)の診断では、「再生不良性貧血」。誘拐した犯人は京都東急ホテルで死亡した女性であり、舞と名付けて育てていた美玖が難病になったので、骨髄移植を求めたのであった。
美玖の双子の妹になる美菜は、最初こそ反抗的だったが、毛髪を提供するなど捜査に協力する。やはり前髪を掻き分ける癖がある。
勝俣は、15年前に誘拐を行った女性の主治医であり、服薬を行っていたが、最後は発作の起こる処方を行っており、死に至らしめた。勝俣の逮捕で事件は解決となる。

京都東急ホテルは実名での協力とロケ地として客室の提供を行っている。
滋賀県が舞台になるということで、滋賀県内の高校でのロケが行われたほか、大津市の琵琶湖畔、なぎさ公演で撮影が行われており、大津港とミシガン、びわ湖ホールの近くの灯籠などが映っているが、びわ湖ホールはロケには用いられなかったようだ。


「新・科捜研の女」Season6 File.7。祇園甲部が舞台になる。ということで、芸舞妓が花見小路を歩く場面があるが、普段は昼間に芸舞妓を見かけることは稀である。
祇園祭の山鉾巡行。長刀鉾などが映る。
新進の日本画家、織部が自宅の居間で遺体となって発見される。日本画の世界なので新進とはいえ48歳である。日本美術の世界では50歳でもまだ若手だ。指揮者の世界に近いものがある。だが、実際に織部が殺されたのは居間ではなく2階のアトリエである可能性が高いことにマリコは気付く。織部の遺体は仰向けで発見されたが、脚の両膝に血が溜まっており、実際にはうつ伏せであった時間が長いことが分かった。なお、織部の自宅であるが、以前に老婆か殺された仁和寺の塔頭を再び使っている。貸してくれる豪邸に見えるロケ先が余り多くないのだろう。
織部の胃の中を調べると、特別良いものを食べたことが判明。
父親で科捜研所長の伊知郎に対して無理矢理科学捜査を押しつけ、香の成分が発見されたことが分かる。匂い袋やを回り、売った先に祇園甲部のお茶屋「福に志」があることが分かる。お茶屋はマリコと最も相性が悪い場所である。
女将の小春(山本陽子)にけんもほろろに追い返されそうになったマリコだが、その時、芸妓の葉月と、舞妓の神無月(木南晴夏)が帰ってくる。木南晴夏が帰ってきた時点で確定してしまいそうだが、この時期の木南晴夏は今と違ってさほど売れておらず、「再現VTRの女の子」という認識だったはずである。旦那の玉木宏が全国区になるのも翌年に連続ドラマ「のだめカンタービレ」が大ヒットしてからである。
花見小路など、祇園甲部の名所が出てくるが、置屋の内部などはセットで撮影していると思われる。
織部がお茶屋で、仕出しの料理を食べた可能性が高いことが分かり、マリコは福に志を贔屓にしている佐久間に頼んで科捜研の面々をお座敷に上げて貰う。マリコはお茶屋で料理を作っているものと勘違いしたが、女将に料理屋の名前を教えて貰い、あの日、織部が福に志でお茶屋遊びをしたことを突き止める。
2階のアトリエに置かれた絵からルミノール反応が出た。犯行の場はアトリエで、そこから1階に遺体を運んだのだった。
アトリエに置かれた絵に、誰かが手を加えたことが分かる。四条大橋の北側から橋と南座を描いたものだが、河原に生える赤い花は後で加えられたものだった。赤い花の部分には口紅がついていた。福に志の女将は、織部に借金があり、「うちが殺しました」と申し出あるが、口紅は下唇にのみ塗られていた。そうした塗り方をするのは店だしから1年以内の舞妓だけであり、舞妓の神無月が犯人だった。神無月は小春の別名があり、女将は神無月の資質を買っていたのだった。
織部は、女将の借金を棒引きする代わりに神無月に絵のモデルになるよう言い、乱暴されそうになった神無月は灰皿で頭を打ったのだった。

マリコが芸妓の格好をして福に志を訪ねるシーンがあるが、実際にそれをやると追い出されそうな。

現在は帝国ホテル京都として生まれ変わった弥栄会館も映っている。

舞妓は中学卒業後に入門するのが一般的だが、高校卒業後に入ってくる人もいる。木南晴夏は舞妓としては年長だが、高校卒業後に入ったという設定である。

芸妓に扮したマリコが、女将から「えずくろしい」と言われる場面がある。「えずくろしい」は「趣味が悪い。気色悪い」という意味だが、美人の沢口靖子が言われているので笑っていられる。


Season6 File.8。
桂川で男性の遺体が発見される。左手にやけどの跡があったが、これが大和石に刻まれた印の文字であることが分かる。
「神の手事件」という現実にあった事件がモチーフになっている。世紀の発見を立て続けに行った考古学の先生が、実はねつ造した遺物を発掘現場に置いてあたかも大発見をしたかのように装った事件で、教科書の書き換えが必要になるなど、大きな影響があった。
15年前、二条院大学という架空の大学の考古学の教授である小山内が、六条門(東本願寺の北。江戸時代初期には六条三筋町という花街があった場所。徳川幕府により急に西新屋敷に移転するよう命じられ、バタバタする様が島原の乱に見立てられて、西新屋敷の通称は嶋原となった)にあった発掘現場で、大和朝廷の時代に作られたと思われる印鑑を発見。「大和石」と名付けた。しかしその後、ねつ造説が出て、大和石も15年前に廃棄されていた。この時期は東本願寺(真宗本廟)は修復工事中で、屋根がかぶせられている。
この回で、マリコの父親である榊伊知郎の前職が大学の考古学研究室の遺跡鑑定だったことが分かる。考古学と科学捜査の両方が専門だったようだ。伊知郎と小山内が古くからの友達であり、大和石を本物と認めたかったのだが、結果としてはねつ造されたものと認めざるを得なかった。小山内は自殺。
やけどの跡に刻まれた大和石に使われた文字は、3世紀以外に中国で実際に使われていたものだった。
小山内の妻は、今は鴨川沿いの川床の一つで働いている。
以前、小山内が大和石を発見した遺跡の後は、今はネオコート六条門となっており、マンションを建設した工務店社長の須川と妻のゆり子と出会う。
自分が鑑定ミスを犯したのではないかと悩む伊知郎はマリコに「警察の仕事を辞めようと思う」と打ち明ける。洛北の景色を見渡す高い場所にあるベランダで撮影が行われているが、ここは京都造形芸術大学瓜生山キャンパスの最上部となる。一般の人は人間館以外には用がないため、知られていない。

15年前に廃棄されたはずの大和石が、桂川で見つかる。 鑑定の結果、大和石は本物だった。
マンションを建てようとしていたゆり子は、発掘を続ける方針の小山内と対立。偽物の大和石を篆刻家の犬養に作らせ、二人で小山内を自殺に見せかけて殺害。だが、犬養に脅されるようになったゆり子は犬養を殺害したのだった。

自殺に見せかけて殺害する場面では、大津市の旧大津公会堂が再び用いられている。


Season6 File.9。小日向文世登場。京北町(現在は京都市右京区に編入)にあると思われる「京北鉄工所」の元経営者、楠見純一役である。古びた京北鉄工所。実はもう倒産しており、間もなく譲り渡す予定である。
女性の死体が見つかり、キッチンに別人のものと思われる吐瀉物が見つかる。更に指紋から嘔吐したのが桐島という男だということが分かる。
そして現場に落ちていた金属片がナットだと判明。同じナットを作る旋盤の種類も分かり、科捜研と捜査課が合同で同じタイプの旋盤を使っている工場をしらみつぶしに当たることになる。そしてマリコが当たったのが京北鉄工所であった。

今回は、沢口靖子と小日向文世の二人だけの場面が長い。

さて、根っからの善人も根っからの悪人も演じられる小日向文世。オンシアター自由劇場の看板俳優の一人として活躍。長男は俳優の小日向星一である。
演劇界では知られた存在だったが、劇団解散後は映像に進出するも上手くいかず、仕事にありつけない日々が続く。木村拓哉主演の連続ドラマ「HERO」への出演で注目を浴びて、ようやく映像方面での俳優として食べていけるようになる。
今回は素朴で臆病な感じの男性として登場するが、次第に殺人を犯したサイコパスの面を見せ始めるという、小日向の演技力が生かせる役である。こういう役をやらせると小日向さんは本当に嫌な人に見える。
天窓があり、ここが効果的に使われている。季節は夏。鉄工所の中は50度を記録する。マリコも楠見も灼熱の中で心理戦を繰り広げる。楠見は基本的に本音を語っているが、「もしこれが嘘だったら」と思うと余計に怖ろしい男である。


「新・科捜研の女」Season6 Last File。
嵐山で白骨死体が見つかったというので、捜査に出掛けた捜査課と科捜研。しかし猪のものだと分かる。帰り道、男が車道に飛び出してくる。危うく避けたが、その男は記憶喪失であった。
再び嵐山の橋の下の河畔で遺体が発見される。身元は会社員の柴田高明と判明。妻の麻美(あさみ。遠野凪子)によると二人は東京で出会い、その後、京都に移住したという。麻美は派遣社員をしている。
記憶喪失の男(東幹久)は、加藤貴子演じる美貴により「嵐山男」と名付けられた。嵐山男は、記憶を失っているが、精緻な住宅の絵を描く。男が持っていたレシートから、東京駅のコンビニで買い物をしており、その後、京都へと新幹線でやって来たようだ。
輸入された梟のサバクコノハズクの羽毛から東京の成増に嵐山男が描いた住宅がある可能性が高いことが分かる。成増にやって来るマリコと日髙。ペットショップでサバクコノハズクを探すうちに、嵐山男が描いた家を発見する。男は家の前の持ち主であった。成増のシーンはおそらく実在の成増ではなく京都市内で撮られていると思われる(不動産の「京都ライフ」の看板が映っている)。
嵐山男の身元が判明する。柴田高明。橋の下で死亡していた柴田高明はなりすましで本名は塚本一義。麻美が駆け落ちし、元夫の名前を今の夫に与えていたのだった。
殺しの犯人は麻美であった。派遣社員の社員証を下げる紐で夫を絞め殺していた。

遠野凪子(遠野なぎこ)は十代の頃は可愛い系だったのだが、心労が重なったためか次第に険しい顔つきになっている。子どもの頃から両親にDVを受けており、子役になったのも両親が子どもで儲けたいからであった。その結果、人格に歪みが生じてしまったのかも知れない。十代半ばで武満徹の名曲「系図 -family tree-」初演の語り手を務めた時がピークだったように思う。ただこの時期にも自殺未遂をしている。
45歳で孤独死。事故死とされる。

深浦加奈子が復帰。高齢出産という設定である。ただ通常ではない起用法である。深浦加奈子は癌を隠したが、気付いていた人もいたかも知れない。

ノンクレジットでいきなり出てきたりする神出鬼没の女優である加藤貴子は周りを明るくするタイプで、見えないところでも貢献しているように思う。


Season6の特徴として、画面のサイズが変わり、ロケ場所が定まらなかった洛北医科大学が京都造形芸術大学に決まったこと、これまでは烏丸通より東にロケ地が集中していたが、このSeasonからは烏丸通よりも西でロケが行われることが増えたことが挙げられる。

ラストは、南禅寺の楼門前を京都府警と科捜研の面々が横一列になって階段を降りてくるシーンであった。

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2026年5月 3日 (日)

これまでに観た映画より(435) 「四月物語」@T・ジョイ京都

2026年4月23日 イオンモールKYOTO内のT・ジョイ京都にて

イオンモールKYOTO内の映画館、T・ジョイ京都で、岩井俊二監督デビュー30周年記念特別上映「四月物語」を観る。上映時間67分。折に触れて観てきた愛らしい作品である。松たか子初主演映画。松たか子初出演映画である「東京日和」(竹中直人監督&主演。中山美穂主演)も今はなきシネマックス千葉という映画館で観ていて、こちらも優れた映画であるが、ロードショー時以降観ていないはずである。「東京日和」は岩松了によるシナリオブックも持っていたのだが、不思議ともう一度観ようという気にならないまま今まで来てしまった。
「四月物語」は今日が上映最終日。明日もやる映画館もいくつかあるようだが、京都は今日が締めである。ロードショー時に、東京・渋谷にあったシネアミューズで観て以来のスクリーン鑑賞。

脚本・監督・音楽:岩井俊二、主演&ピアノ演奏:松たか子。出演:松本幸四郎、市川染五郎、松本紀保、藤間紀子(九代目松本幸四郎夫人、松たか子の実母)、津田寛治、光石研、加藤和彦、江口洋介、石井竜也、伊武雅刀、藤井かほり、田辺誠一ほか。

北海道旭川市で生まれ育った楡野卯月(松たか子)が、武蔵野大学に入学し、慣れない東京生活や一人暮らしを経て、高校時代の純愛に結びつく話である。相手役の田辺誠一であるが、この後に撮られた松たか子のシングルのMVに出演しており、倦怠期の男女が描かれているが、「四月物語」 の続編ではない。
音楽:CLASSICとなっているが、実際に音楽を担当したのは岩井俊二監督であり、ピアノを弾いているのは松たか子で、アルバム「四月のピアノ」も発売された。ちょっとたどたどしい感じの音楽である。dtsデジタルサウンド採用。松たか子は、子どもの頃にピアノの先生から「プロを目指そう!」と言われるほど筋が良かったようだが、練習のしすぎで血を吐いて倒れ、諦めている。プロのピアニストでも血を吐くまでピアノの練習はしない。松たか子の集中力の高さが分かるエピドードでもある。

武蔵野大学であるが、映画公開当時は架空の大学であった。しかし浄土真宗本願寺派の武蔵野女子大学が共学化して武蔵野大学となり、実在する大学となった。共学化したことで、文学部のみの単科大学だったのが、社会科学系や福祉系の学科を増やし、西東京市から有明にも進出して、「共学化して最も成功した大学」として、有名になっている。卯月は武蔵野大学を知らなかったが、友人が「有名」と応えている。架空の武蔵野大学も実在の武蔵野大学もどちらも有名となった。

入学式のシーンは、吉祥寺にある成蹊大学の入学式に潜り込んで撮影している。普段過ごしているキャンパスは、栃木県小山市の白鷗大学で撮影を行っている。自転車などで走る街路は東京都国立市、田辺誠一演じる山崎先輩がアルバイトしている武蔵野堂書店や、加藤和彦演じる画廊の紳士・加藤が出てくる建物などは千葉市の幕張新都心で撮影が行われている。

何度か感想を書いていて、冒頭のシーンは明かしていなかったが、松たか子の実の両親と姉弟が駅のホームに勢揃いしている。これから東京に向かう卯月を送るためだが、カメラが被写体を追って動いたり、出演者達がカメラ目線になるため、カメラのレンズが卯月の虹彩となっていることが分かる。

学部に関しては不明。経済学の授業を受けている場面があるが、まだ一般教養だけを受けている状態なので、判然としない。ただ赤本に載っていた架空の武蔵野大学の情報を見ると文系だけの大学らしいことが分かる。

 

東京の怖さに触れる場面、「生きていた信長」というB級映画を観ている映画館(武蔵野館という実在の映画館名であるが、実際は幕張新都心に外観だけこしらえている)で卯月に近づいてくる男を演じているのは光石研である。当時はほぼ無名である。卯月が映画館に忘れ物をしたため、届けようと追いかけてくる場面もある。

卯月は、下の階に住む照子(藤井かほり)に引っ越しの挨拶に行くが、今はする人は少ない。女の一人暮らしだと分かると危ないからである。
卯月と照子がカレーを食べるシーンがあるが、メイキングによると松たか子が実際にカレーを作っており、スタッフが美味しそうに食べている。

冒頭の桜のシーンであるが、ほぼ全部造花で、大量投下作戦を行っている。若い頃の松たか子は、経験よりもDNAが勝つからか、今よりも歌舞伎の家出身というカラーが強い印象である。近頃の方が柔和な感じだ。
そんな松たか子だが、昨年公開された映画「ファーストキス 1ST KISS」では見事に若返った姿を披露している。

 

成績不振気味だった卯月が、山崎先輩と同じ武蔵野大学に入るために学力を上げ、合格したことを担任の森山先生は「奇跡」と言ったが、卯月は「愛の奇跡」と呼んでいる。少女マンガ的で私などは聞いていてこそばゆくなってしまう。岩井俊二監督が少女マンガを描いていた影響が出ているのかも知れない。

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2026年5月 2日 (土)

忌野清志郎 「満月の夜」(忌野清志郎 Official Channel バージョン)


2026年5月2日は満月の夜です。

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2026年5月 1日 (金)

コンサートの記(956) 尾高忠明指揮大阪フィルハーモニー交響楽団第597回定期演奏会

2026年4月10日 大阪・中之島のフェスティバルホールにて

午後7時から、大阪・中之島のフェスティバルホールで、大阪フィルハーモニー交響楽団の第597回定期演奏会を聴く。指揮は大フィル音楽監督の尾高忠明。
今年に入ってからスケジュールが合わず、久しぶりの大フィル定期である。枚方での特別演奏会などは聴いている。

曲目は、尾高尚忠(ひさただ)の交響曲第1番、ディーリアス作曲(ビーチャム編曲)の歌劇「村のロメオとジュリエット」より間奏曲“楽園への道”、エルガーの「エニグマ」変奏曲。尾高の十八番が並ぶ。
コンサートマスターは須山暢大、フォアシュピーラーに尾張拓登。ドイツ式の現代配置での演奏である。

 

尾高尚忠の交響曲第1番。戦中・戦後を代表する音楽家の一人、尾高尚忠。尾高忠明の父親である。ユダヤ人であっためドイツを離れ、日本に来ていたクラウス・プリングスハイムに指揮と作曲を師事。プリングスハイムはマーラーの弟子であり、尾高尚忠はマーラーの孫弟子ということになる。戦前にはウィーンに留学し、フェリックス・ワインガルトナーに指揮を習っている。ベルリン・フィルの指揮台にも立った。
戦中の1942年にNHKの資本を受けた日本交響楽団(現・NHK交響楽団)の常任指揮者として活躍し、作曲も行った。しかし過労が祟り、1951年に39歳の若さで死去。NHKによる酷使が問題視され、「NHKが尾高を殺した」という文句が躍った。
尾高氏は渋沢栄一の子孫に当たる名家。尾高忠明の兄である尾高惇忠は作曲家である。
尾高尚忠の交響曲第1番は単一楽章の交響曲と思われており、1948年に完成し、「平和のために世界に贈る交響曲懸賞」で第1位を獲得。同年、作曲者指揮の日本交響楽団によって初演されている。
しかし、2005年に遺品の中から第2楽章が見つかる。ほぼ完成形に近い出来で、発見者である尾高惇忠の補筆により、2006年に外山雄三指揮のNHK交響楽団によって2楽章版が初演されている。なお、第2楽章の最後に「アタッカ(続けて入る)」の表記があったことから、少なくとも3楽章以上からなる曲想の存在が明らかになっている。

天地を揺るがすような巨大な音によってスタート。大阪フィルの機能の高さもあって、大軍による前進が続く。平和のために書かれた曲のはずだが、戦のおぞましさが描かれているのだろう。マーラーの孫弟子ということで、影響を受けているのは明らかで、この時代にここまで力強い楽曲を書いていた人は少数派であろう。マーラー自体、ウィレム・メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)による演奏が高い評価を受けていたが、マーラーの愛弟子であるブルーノ・ワルターはユダヤ人だったため、ナチスから逃れるのに必死でマーラーの曲の演奏は限られ、それ以外ではマーラー作品は「おどろおどろしくて不気味な曲」として評価されていなかった。そんな中、マーラーの音楽性を受け継ぐ作曲家が東洋の島国に現れたというのはかなり驚くべきことである。
第2楽章は第1楽章と異なり耽美的であるが、「大地の歌」に繋がるものが感じられる。東洋的な曲想も顔を覗かせるが、尾高尚忠は正真正銘の東洋人。ということでマーラーを凌ぐオリエンタルな典雅さが花を咲かせている。
晴れた日に散りゆく桜を眺めながら、春の名残を味わうようなそんな趣である。

この後に「アタッカ」で来るなら、第1楽章のような鋭い音楽だった可能性が高いが、それはもう想像するしかない。

 

休憩後、ディーリアス(ビーチャム編曲)の歌劇「村のロメオとジュリエット」より間奏曲“楽園への道”。楽園というのはいわゆる楽園ではなくて、劇中に出てくる居酒屋の名前だそうである。
繊細な作風で知られるディーリアス。英語圏では知名度が高いが、それ以外ではさほど有名ではない。一時、出谷啓がやたらと推していた作曲家である。ビーチャムによる編曲版であるが、指揮者のサー・トーマス・ビーチャムはディーリアスの良き理解者であった。

ディーリアスは、オランダ系ドイツ人の両親の下、イングランドの裕福な商家に生まれるが、商売には興味がなく、アメリカに行ってフロリダでオレンジ栽培をしながら黒人霊歌に興味を持ち、ドイツに渡ってライプツィッヒ音楽院で教育を受けてパリで作曲活動をスタート。ライプツィッヒ音楽院では留学していたグリーグと出会っている。
デビュー後、40歳近くになって名声を得るようになるが、次第に梅毒に悩むようになり、最後は失明しながらも作曲を続けた。
歌劇「村のロメオとジュリエット」より間奏曲“楽園への道”であるが、穏やかで優しい弦の響きが次第に輝きを増したかと思うと、一瞬不吉な旋律が現れ、元へと戻っていく。
歌劇「村のロメオとジュリエット」であるが、やはりバッドエンドのようである。

 

エルガーの「エニグマ」変奏曲。ニムロッドの大英帝国の栄耀栄華を描いたかのようなゴージャスで輝かしくノーブルな響きが印象的であるが、それ以外の曲も堂々且つチャーミングで、「イギリスを代表する1曲」といっても過言ではないだろう。
「エニグマ変奏曲(謎の変奏曲)」は、二人芝居のタイトルになっており、南座で一度観たことがある(沢田研二と杉浦直樹)が、上演は余り多くないようである。「エニグマ変奏曲」に「書かれていない謎」があることから、それ同様に登場人物の一人である小説家の小説にも書かれていない謎があり、それを探るという内容。実際、エルガーは、「演奏されない中心的主題」があると記しており、その謎は今も解かれていない。
尾高の十八番である「エニグマ」変奏曲。余り腕を振らずにオーケストラを操ることが可能である。「ニムロッド」の最初の方は腕をほとんど動かさずにオーケストラに任せていた。「ニムロッド」が終わってからは少し間を置いて演奏を再開し、「ニムロッド」が他よりも一段格上の音楽であることを示していた。
ベストかと言われるとそうではないかも知れないが、「尾高らしいエニグマ」というべき仕上がり。エルガー作品の良き表現者によるエルガーを聴けるのは幸せなことである。

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2026年4月30日 (木)

Netflix連続ドラマ「地獄に堕ちるわよ」概要

2026年4月27日

Netflixドラマ「地獄に堕ちるわよ」が配信開始。全9話同時配信のようである。流石に全9話を一気には見られないので、細切れで見ていく。
占い本の売り上げがギネス記録になっている一方で、暴力団との直接的な関係を利用した恐喝など裏社会を利用した悪女でもある細木数子の一生を描くドラマ。主演:戸田恵梨香(細木数子役。ナレーション兼)。出演:伊藤沙莉(ナレーション兼)、富田靖子、高橋和也、細川岳、田村健太郎、余貴美子、根岸季衣、市川実和子(ナレーション兼)、田中要次、杉本哲太、生田斗真、三浦透子、青山テルマ、ヒコロヒー、細田善彦、石橋蓮司ほか。監督は、瀧本智行(友人に名前が似ている)と大庭功睦(おおば・のりちか)。脚本は真中もなか。音楽は、「どうする家康」の稲本響。

「SPEC」などでエキセントリックな人物も演じている戸田恵梨香。怪物クラスの人物である細木数子も、妖艶かつ時折凄みを出して演じている。終戦後、母(富田靖子)と四人姉弟でひもじい思いをした細木数子。弟や妹には街角のお供え物を与え、自分は仕方がないのでミミズを口にした。その味は、生涯忘れないと語る。一家でおでん屋を立ち上げた数子。早泣きが得意で、客から喝采を受ける。早くに稼ぐために高校時代にクラブデビュー。クラブではナンバーワンとなりやっかみを受けるもオーナーの落合元(奥野瑛太)に気に入られ、初めての体験をする。しかし、落合には裏の顔があった。自殺を図った数子だが、命を取り留める。高校を辞めた数子は、おでん屋の常連だった中園榮一(高橋和也)の紹介で、スタンド食堂「ポニー」を立ち上げる。店は繁盛するが、事実はどうか知らないが、数子は窓口係で食事の多くを姉が作ったため、姉が憤る場面がある。そのスタンドは半年で計画的にやめ、新橋にクラブ「潤」を起こす。水商売の女は教養がないと馬鹿にされるため、新聞を読み、更に大学に潜り込んで授業を受ける。どの大学なのかは明らかにしていないが、ロケでは立教大学が用いられている。一つの大学だけに潜るとは限らないが、交通費が掛かるため、複数の大学で学ぶということはなかったと思われる。
新橋の店が繁盛すると、今度は目標の地である銀座に「カズサ」という店を出す。オープン前に出資者の中園に土下座する場面がある。カズサというと千葉県の中部である上総を連想するが、彼女と千葉県には接点がない。織田上総介信長が、「総ての上に立つ」という意味で上総介を自称したが、あるいはそれを見抜いたのか。単に「カズコ」の「カズ」なのか。
数子は、最初は上司に連れられて来てその後は一人で週3回ペースで訪れるようになる三田麻呂彦(田村健太郎)のことが気になる。このままだと破産するのではと心配するが、実は三田は静岡の大地主の息子であった。三田の父親が亡くなった日、静岡に帰る三田との結婚を決意する数子。ただそれ以外の部分で三田に惚れたというより、金銭的な上がりを意識して三田と結婚したように見えてしまう。
これが第2話までの細木数子の人生である。
二番目にクレジットされている伊藤沙莉は小説家役である。伊藤沙莉本人も小説家という職業に憧れを持っているが、1から増やしていくことは出来るても、0から1を生み出す才能はないため、来世ではそうした才能を持つ天才作家になりたいようだ。おそらく蓬莱さんに惚れたのもそこだろう。売れない作家とクレジットされた魚澄美乃里であるが、実際は文芸新人賞を受賞した実力の持ち主である。しかし次の作品が書けなくなってしまい、書けないと金にはならないのでクリーニング工場でアルバイトをしている(余談だが、伊藤沙莉は若い頃にクリーニング工場ならぬクリーニング店でアルバイトをしていたことがあり、その時のことは著書やネットラジオで語られている)。細木数子のことを小説に書くことで再起を狙っている美乃里。美乃里のことは編集者が推薦し、細木からも「期待してるわ」と言われる。細木の自宅でのインタビューも行えていることから、全くの無名作家という訳でもないらしい。今後、対立が予想されるが、今のところ不仲という訳ではない。伊藤沙莉も取材対象を観察して「何でも書いてやる」と意気込んでいるためか、いつにもましてキリッとした姿勢である。

ただ気になるのは、Episode2で、美乃里の書棚が映る場面があるのだが、マンガのほかは、よしもとばななななどの現代小説と茨木のり子などの現代詩しか見当たらない。それも女性の作品ばかりである。漱石、芥川、太宰といった近代文学の王道や、泉鏡花や谷崎潤一郎などの耽美派、日本の古典文学、外国文学などは見当たらない。処女作『透明な女たち』であるが、帯を見ると私小説らしいことが分かる。誰でも私小説なら1冊は書ける。上手いか下手かは別にして。本当に何冊もヒット作を生み出す小説家になりたいのならこの読書量なら明らかに勉強不足である。私小説として『透明な女たち』に全て書いてしまったら、もう何も書けないのはむしろ当たり前といえる。
ただ第1作で自分に向き合ったというのなら、第2作で向き合うのは細木数子。細木数子が美乃里にとっては初めて描く他人だ。


静岡の旧家である三田の家(浄土真宗門徒のようで「正信偈」が唱えられる。浄土と地獄の対比である)に嫁いだ数子。しかし、眉をうすくして、『犬神家の一族』に出てきそうな風貌になった麻呂彦の母キヨ(余貴美子)が家の支配権を握っているようである。
初夜の日、麻呂彦はこれがはじめてだそうで、数子に指南して貰う。その間、鶏の映像が流れる。翌朝、起きた数子は麻呂彦の手伝いをしようとするが、キヨから何もしなくていいと言われる。それでも何かしようとするが、女中の仕事を奪うということで、何とか鶏小屋の掃除だけさせて貰う。名家である三田家では、跡継ぎを生むことだけが嫁の仕事だった。弟で「カズサ」の経営を任せた久雄への長距離電話もキヨに止められる。女中達が自身の悪口を言っていることを耳にした数子は、女中達を追い出し、鶏を皆殺しにして、夕食の膳に総て鶏料理を並べて家を出て行く。ちなみに親子丼は持って東京へ帰る途中のバスの中で食べるが(バスの中での食事は余り褒められたものではないが)卵だけ産む鶏の肉だけに、美味しくはなかったようだ。
それほど面白い話ではないが、美乃里は声を上げて笑う。数子はその理由も見抜いていた。美乃里は新人賞受賞直後に編集者の男と結婚。一女を設けるが、2作目の小説を書けない美乃里は、夫から「お前には才能がない」「小説家の道を諦めて子育てに専念しろ」と暴言を浴びせられたため離婚。娘の親権も取っている。
夫に酷い目にあった女。その復讐心や開放感が笑いへと繋がったのだと。ただ美乃里の夫はそれほど悪い人物ではない。

1963年。翌年には東京オリンピックが開催される。都内は突貫工事だらけであった。そんな中、「シンザン」と「だりや」という新店舗を銀座に出した数子は、不動産会社を経営している須藤豊という男(中島歩)と出会う。
一方、法外なみかじめ料を取ろうとした暴力団員に割って入った客がいる。滝口宗次郎(杉本哲太)。滝口組の組長だった。ここで初めて暴力団との接点が出来る。


この時点では、数子は占いを全く信じていないようだが、母親のみね(富田靖子)が占いを頼りにしており、辻占い師(田中要次)に頼み、娘の将来が明るいことを喜ぶ。
富田靖子も髪の毛を薄くするなど、かなり思い切った老けメイクを行っており、パッと見、富田靖子だと気付かない人もいそうである。

Episode5。1964年。細木数子は銀座で3軒のバーを流行らせ銀座の女帝となった。
だが好事魔多し。須藤と共同で赤坂のクラブ「艶歌」をオープンさせる計画を立て、中園と手を切るが、資金の半分を提供するはずだった須藤が金を持ち逃げして消えてしまう。新事業に力を入れていた数子だったが、須藤に欺されることになった。須藤は以前から密かに数子の内偵と欺す手口を考えていた。
そんな折、母親が死去。辻占い師に「数子が地獄を見る」と言われたという。実家にまで借金取りが来ていたそうだ。
再び自殺を考えた数子。須藤と滝口はグルだったようで、滝口は「艶歌」を存続させる代わりに自分の「おもちゃ」になるよう要求した。数子は飲むしかなかった。

現代(といっても2000年代)。細木数子は日本で最も有名な占い師となっていた。六星占術の本は世界で最も売れた占いの本として、ギネス記録になっていた。
だが、細木数子の本を書こうとしている魚澄美乃里役の伊藤沙莉は、観察の意味もあってか、厳しい眼差しを崩さない。細木数子への個人診断は10万円もし、その価格に見合うだけの診断を行っているとも思えない。やたら先祖供養を勧めるが、高い墓石を紹介し、美乃里のナレーションによると、細木はバックマージンを受け取っているという。

眼差しの演技が特徴的な伊藤沙莉。普段は強い眼差しを続けているので、それ以上のことは分からないが、細木数子が一万円札を燃やしたときに、最初は何が起こっているのか分からないという眼差しをし、その後、動揺を気取られないよう目を無表情に近づける。2枚目の一万円札に火を付けた時は流石に怒るが、これで1枚目を燃やしたことの意味が出る。火を付けてすぐ怒ったらドラマにならない。

細木数子が「最良の年」と呼んだ1964年が終わり、1965年。銀座の店は悉く閉店。数子は、「艶歌」の中では自由だが、滝口の情婦で外に一人で出ることも出来ない。滝口の求めにも応じなければならなかった。ある日、滝口の部下達が「艶歌」で騒ぐ。それを静めたのが江戸川一家の堀田雅也(生田斗真)だった。遅れてきた滝口を博打に誘う堀田。しかし堀田は博打の腕は確かであり、滝口を追い込むつもりだった。最終的には滝口は大負けし、負債を追う。そして復讐のために堀田を撃ちに現れる。

1973年。オイルショック。時短営業が求められ、「艶歌」の営業も上手くいかない。コロナを連想させる出来事だ。そんなある日、数子はついに占いに出会う。辻占い師だったが、「占いは統計学だから」(そう言いながら、占いの統計を取っている人はいないと思われる)ということで、「今付き合っている人とは相性が良いが、良すぎるかも知れない。そして新しいことを始めるのが良いかも知れない。あなたは人の何倍もエネルギーがある」
それを本気にしたのか分からないが、数子は「艶歌」をディスコ「マンハッタン」に模様替えすることにする。人一倍商才に長けた数子は再び時流に乗るが、車を運転している時に、橋から飛び降りようとしている女性を見かけ、声を掛ける。その女性は当代一の人気女性歌手、島倉千代子(三浦透子)であった、彼氏が出した手形に署名しているうちに借金が4億3千万を超え、マスコミが報じることに。数子は千代子を保護し、新宿コマ劇場でのリサイタルを完走させるのだった。
映画「ドライブ・マイ・カー」のドライバー役で注目された三浦透子。伊藤沙莉の友人である。東京理科大学数学科卒という理系の中の理系。今度、イギリスで生まれた一人芝居に挑む予定である。伊藤沙莉は高校の時にテストで0点を取ったと明かしているが、おそらく数学の試験においてであると思われるので、数学について語った場合は全く話が通じないと思われる。
伊藤沙莉がなかなかオーディションに受からず、受かったと思ってもエキストラだった時に、役を貰っていた三浦透子と昼ご飯を食べ、「ここじゃないから、沙莉のいる場所は」と言ってくれたという話がある。

Netflixドラマ「地獄に堕ちるわよ」Episode7からEpisode9(最終話)。

眼差しが険しかった美乃里だが、細木数子の話を聞いているうちに段々視線が柔らかくなる。数子は島倉千代子のマネージャーを務め、稼がせるためにドサ回りから刑務所慰問まで何でもやらせる。年間200ステージの強行軍。更にレコード購入者限定のサイン会など、金になることなら何でもやらせた。そして円満のうちに関係解消。
だが、数子の弟で一緒にバーやディスコを手伝っていた久雄から「そんなの全部嘘に決まってるじゃん」と美乃里は告げられる。久雄はその後に二度逮捕されて有罪になっており、数子からは離縁されていた。数子は姉や妹からも距離を置かれており、家族には好かれなかった。
久雄が言うには、芸能界と暴力団の両方に詳しいフィクサーから堀田に連絡があり、島倉千代子と面会し、傘下に置くことになかった。橋で千代子と会ったというのは大嘘だった。
数子が千代子に課した仕事そのものには嘘はないようだが、得た金の大半を懐に入れていた。千代子は月3万円を給料として貰っていたが、千代子の元マネージャーで今は新人のマネージメントを行っている男に聞くと、明らかにおかしいらしい。島倉千代子クラスなら、呼ぶだけで200万から500万かかるため、借金の4億円など1年で返せるという。数子は1年で稼いだという1億5千前円を出して、これで山分けとしていたがそんなはずはないというのだ。欺されたことを知り、週刊誌に離別の記事を載せて、「これで手切れ」としたようだ。美乃里は、テレビ局に島倉千代子を訪ねるが、千代子は数子への感謝を述べ、着服されたことについても「欺されたことに気付かない方が幸せなこともあるのよ」と取り合わなかった。そして数子が笑うようなタイミングで笑い声を上げる。数子の人に取り入る術を見せられる思いだ。

数子が最初に占ったのは千代子だったが、本格的に占いを学ぶことに決める。初めて占って貰った先生(木村優子)に弟子入りし、「占いには10年掛けないと」と言われるが1年でマスター。本当にそんなことが可能だったのか分からないが、これをベースにした六星占術を生み出すきっかけとなる。ちなみに先生に借りた本はついぞ返しにこなかったという。
更に思想界の大物、安永正隆(石橋蓮司)にも近づく。最初は推命学を教えて欲しいと近づき、得意の泣き真似もする。最初の先生によると「安永正隆は易経の人」で四柱推命には詳しくないそうだが、各界に顔が利く正隆との付き合いにより、数子も顔と知名度を上げていく。正隆の娘の加藤十和子(市川実和子)によると、正隆には軽度の認知症があり、それを数子が見抜いたのではないかという。認知症は徐々に進んだようで、正隆と数子が二人で部屋で飲んでいる時に、危機感を覚えて駆けつけた十和子を「静子」と母親の名前で呼ぶ。そしてその時、数子は正隆に印鑑を押させていて、婚姻届を出す準備を整えていた。しかし婚姻については後に裁判により無効となる。
正隆の葬儀の日、駆けつけた数子は、心から絞り出したかのような泣き声を上げるが、元々泣きの演技は得意であり、数子に同情する人はいなかった。
正隆が推薦文を書いた六星占術の本は売れに売れ、数子はテレビ界に進出することになる。

「ヤクザの女」じゃなくて「女ヤクザ」と呼ばれた細木数子。テレビ局の前での出迎えは、テレビ局ではなく暴力団事務所の前のような光景である。

それでも数子を悪く言う人は少数派。番組ADは不満をぶつけるが、ディレクターは大絶賛。以前、10万円払って数子に見て貰った老婆も、状況は全く改善されていない上に高額の墓石まで買わされているが、「有名な方」に見て貰って嬉しいと、述べる本人が良いと言うなら良いで収まる結果となっている。

数子は、美乃里を鑑定することにする。放送には流さずカメラも回さないという条件下だ。美乃里は今書いている小説の話をする。モデルがいて、それが誰のことなのかは明かさなかったが、数子にはすぐに分かったはずだ。

1冊しか書けていないが、小説家の血が騒ぐ美乃里。ノートパソコンのワープロソフトに向かって縦書きで書く、とにかく書く、アルバイト先でも(本来の仕事はさぼってるが)書く。そうして文字を奏でた美乃里は、2冊目の小説となる『虚飾の自画像(原題『女の自画像』)』を書き上げる。週刊誌に細木数子のスキャンダルを連載する予定があり、美乃里の小説はそれに対して細木数子擁護の書籍となるはずだった。だが、美乃里は耳にしたままを小説にした。
美乃里は、「誰よりも先に読んで欲しい」ということで、出勤前の細木数子の家に向かい、プリントアウトしたばかりのA4用紙を入れた紙袋を車中の数子に手渡す。
実のところ、数子は美乃里が書いた小説に泣いた。感受性も強い人らしい。
しかし、再び美乃里と自宅であった数子は、「面白かった」と言いながら「嘘ばかりで表に出せない」と美乃里を責める。おそらく本は世に出ないだろう。だが美乃里と対峙した時にぶちまけた原稿を、数子は美乃里が帰ってから1枚1枚慈しむかのように丁寧に拾う。
虚飾と嘘に満ちた人生。知力、商才、胆力、演技力に長けながら、それを悪へと向かわせてしまった女。それでも人々は「虚飾には虚飾を」なのか、本来の数子に向けられたとは思わない言葉を掛ける。これは自分じゃない、それも自分じゃない、あんなものも自分じゃない。そんな中でただ一人、等身大の自分に向き合う人がいた。美乃里である。美乃里は自分のことを分かってくれていた。だが、この内容で出版する訳にはいかない。

翌2006年、週間「現代」が細木数子の数々のスキャンダルを書き立てた。数子はテレビ界から追放。表舞台から姿を消す。しかし死ぬまで「占いなんて信じてない」と言いながら占い師の仕事を続け、ケータイ向けの六星占術のサイトが爆発的にヒットするなど、占いに関わり続けた。また姪を養女に貰い、細木家を繋いだ。
「細木数子は欲しいものを全て手に入れた」ように見える。本当の理解者以外は。

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2026年4月29日 (水)

観劇感想精選(515) アーサ・ミラー作「るつぼ The Crucible」(坂本昌行主演)

2026年4月3日 西宮北口の兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて観劇

午後6時から、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで、「るつぼ The Crucible」を観る。「アメリカの頭脳」アーサー・ミラーの代表作である。「アメリカの頭脳」に名前負けせず、彼が残した戯曲の数々は今も各国で上演され、高い評価を得ている。「るつぼ」は、日本でも数年前に堤真一の主演で上演されたが、チケット争奪戦に敗れて観ることは叶わなかった。

今回は坂本昌行の主演版である。テキスト日本語訳は水谷八也、演出は上村聡史。

「エクソシスト」を先取りしたような、奇怪にしておどろおどろしい作品だが、主軸にはキリスト教などの権威の傲慢さへの冷めた目があるように思う。

出演:坂本昌行、前田亜季、松崎祐介、瀧七海、伊達暁、佐川和正、夏子、大滝寛、那須佐代子、大鷹明良ほか。

舞台美術は長田佳代子で、○を八百屋飾りにし、中間の何もない部分に、こちらも少し八百屋になったセットを作っている。出入り口は背後、階段を降りた先にある。

 

魔女狩りが主題である。中世ヨーロッパでは魔女狩りが横行し、ジャンヌ・ダルクも魔女として火刑台に消えた。今もイギリスなどでは魔女として暮らしている人は多いが、特に他者を害するということはないようである。一方、新大陸では……。

アメリカ合衆国独立前の英領アメリカで起こったセイラム魔女裁判がモデルとされる。

黒人役の人が出てくるが、肌を塗ったりは出来ないので、髪型をそれらしくして演じている。鍵を握るのは、アビゲイルという17歳の女性(瀧七海)である。アビゲイルというと、オーケストラ・アンサンブル金沢のコンサートミストレスであるアビゲイル・ヤングを連想してしまう。アビゲイルという名前の人を彼女以外に知らないからでもあるが。
アビゲイルは他の女の子と共に、夜の森で踊り、それが悪魔崇拝だとして問題視される。特にパリス牧師の娘であるベティ(前田亜季)は意識不明となり、ベッドで寝ているのだが、突如起き上がって暴れたりする。本当に「エクソシスト」の世界である。ベティの出番は短いが、前田亜季はその後は成人女性であるエリザベス(エリザベスの愛称もベティである)役で登場する。

パリスというのも意味ありげな名前だが、この人物は魔女騒動を焚きつけているようなところがあり、好人物とは言えない。魔女を巡る人々の心に寄り添うのはヘイル牧師(松崎祐介)の方である。

しかし、おそらく集団ヒステリーによるものだと思われるが、街の若い娘達が悪魔を目撃するなど奇妙な精神状態へと陥り、奇声を発するようになる。

主人公のジョン・プロクター(坂本昌行)は、信仰心はそこそこ。畑仕事をしている方が好きで、安息日である日曜日にも畑に出掛けて土を耕していたことがある。日曜の集会にも出られる日だけ出ている。
妻のエリザベスとの関係は良好だが、つい侍女のアビゲイルと関係を持ってしまう。アビゲイルはそれをネタに……。

 

魔女狩りという前近代的な習慣を題材にしながら、絶対的権威と個人など、現代においても起こる対立を緻密に描いた作品である。魔女審問では次々に死刑とされるなど、血なまぐさい出来事が背後で起こっているが、そうした凄惨な出来事は今は終わったわけではない。

この小さな街の魔女狩りの話をスライドさせれば日本で言えば特高警察の話になる。アーサー・ミラーは、そうした作劇法を確信犯的に用いている。

 

坂本昌行はミスもあったが集中力の高い演技を見せ、ジョンという男の多面性を表していた。ジョンという人物は必ずしも格好良くはないのだが、坂本昌行は多くの女性の目に格好良く映るだろう。
近年は舞台を活躍の場に選ぶことが多い前田亜季。やはり可憐な役も多かったが、今回は心揺れる女性を情感豊かに演じていた。

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2026年4月25日 (土)

コンサートの記(955) 尾高忠明指揮大阪フィルハーモニー交響楽団枚方公演2026年2月

2026年2月28日 枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホールにて

午後3時から、枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホールで、尾高忠明指揮の大阪フィルハーモニー交響楽団枚方公演を聴く。枚方市総合文化芸術センターまでは、エスカレーターもしくは階段を昇った後で歩道橋を歩くと便利なのだが、今日は婦警さん、とはもう言わないんですね。女性警察官がホールへの行き方をずっと大声で案内していた。
関西医大 大ホールは、オープンした時からこの名前だが、ネーミングライツによるもので、関西医科大学が運営するホールではない。関西医科大学のキャンパスに隣接しているため、勘違いする人もいそうである。
関西医大 大ホールは、オープン時に、たまたま私が1番最初にホワイエに入り、そのまま1番で客席内にも入ったというホールである。第1号の客ということになる。特に目出度くもないが。杮落としの公演は能と狂言で、その後も鈴木京香主演の演劇公演なども行われているが、今日置かれたチラシを見る限り、今後行われるのは音楽公演のみである。
関西のホールも建て替えの時期が重なり、次々に新しい施設が生まれている。枚方市総合文化芸術センター 関西医大 小ホール(小ホールも関西医科大学がネーミングライツ)は比較的小規模の演劇向けで、今日は子どもが参加する劇の公演があったようだ。

今日も1番で入れそうだったが、残念ながら2番であった。急いだら1番になれたかも知れないが、1番であることに大した価値はない。

 

曲目は、ドヴォルザークの交響曲第8番とブラームスの交響曲第1番。

コンサートマスターは須山暢大。フォアシュピーラーが誰なのかは分からず。男性であった。尾張拓登である可能性が高い。

ドイツ式の現代配置であるが、ステージが余り広くないので、ティンパニは指揮者の正面ではなく下手端に位置する。指揮者の正面にはトランペットが来る。
管楽器はドヴォルザークよりもブラームスの方が首席奏者が多そうだ。

 

ドヴォルザークの交響曲第8番。第9番「新世界」交響曲の次に人気がある曲だが、かなり差がある。以前は、イギリスの出版社からスコアが出版されたことに由来する「イギリス」というタイトルを付けることがあったが、内容にはイギリスらしさのかけらもないため、今では使われることは滅多にない。
チェロのまろやかな響きが特徴で魅力的である。どちらかというとインターナショナルな解釈で、チェコやボヘミアといったローカリズムは余り感じない。
関西医大 大ホールの響きであるが、前回、藤岡幸夫指揮の関西フィルハーモニー管弦楽団を聴いた時から大分経つため、初めてに近い感覚になる。関西フィルを聴いた時は「平均的」という印象を受けたが、今日は弦楽群、特にヴァイオリンが痩せて聞こえる。大フィルの弦楽は分厚いのが特徴だが、音が吸われてしまう感じである。枚方市は京都市と大阪市の中間で、京阪枚方市駅には特急も停まるし、大阪に行くより楽なのであるが、中之島のフェスティバルホールか、福島(目の前まで福島区ながら実際の所在地は北区になるが、最寄り駅がJR福島駅)のザ・シンフォニーホールまで行った方が大フィルの醍醐味を味わえそうである。残響であるが、短めで、たまに濁る。一方で、ホールの音は時と共に変わり、京都コンサートホールなども以前とは別の響きである。関西医大 大ホールも今後変化していくと思われる。

 

ブラームスの交響曲第1番。コンサート演目の王道であり、私自身、コンサートで最も耳にした曲のはずである。
尾高は、比較的スマートにスタート。情熱的に演奏する人もいるが、そうした演奏からはブラームスの狂気のようなものが見え隠れするため、嫌う人もいるかも知れない。名盤として知られるシャルル・ミュンシュ指揮パリ管弦楽団盤などはそうした1枚である。
管の精度がやや落ちる感じだが、渋みのある、音符を墨で書いたような渋いブラームスである。ただし黒塗りという意味ではなく輝かしい音も奏でられる。
第2楽章の須山と、ホルンのファーストの高橋将純の掛け合いも良かった。
端正な第3楽章を経て第4楽章へ。尾高はそれほど燃焼度は上げなかったが、凱歌の部分は広がりのある演奏に仕上げた。

 

演奏終了後、尾高はマイクを使わず、「このホールでやるのが何回目か忘れましたが、良いホール」と称え、「最初の頃は無観客でやって、それから10人ぐらいお客さんを呼んで、パラパラとした拍手で。今は大きな拍手を貰えます。音楽家にとってそれが心の栄養です」と語った後で、ブラームスの交響曲第1番について「今日のが最速です。年々速くなる。若返ったのかな。この曲を初めてやったのは東京フィルハーモニー交響楽団の第150回定期演奏会。23歳でした。それから55年経ちました」

 

アンコールは、シューベルトの「ロザムンデ」より間奏曲第3番。天国的な音楽と演奏。こういう曲を聴くと、シューベルトには常人には見えないものが見えていたのではないかという気がする。

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2026年4月24日 (金)

観劇感想精選(514) ニットキャップシアター第47回公演「土曜日の過ごし方」

2026年2月20日 左京区岡崎のロームシアター京都ノースホールにて観劇

午後7時から、左京区岡崎のロームシアター京都ノースホールにて、ニットキャップシアター第47回公演「土曜日の過ごし方」を観る。ロームシアター京都10周年連携事業の一つである。脚本・出演:ごまのはえ、演出:橋本匡市(万博設計)。出演:千田訓子、仲谷萌、山﨑茉由、西村貴治、門脇俊輔、尾澤ショータロー、山谷一也、越賀はなこ、澤村喜一郎、高田晴菜、小野毅、高橋敏文。

昼に見た有名俳優に比べると、個々が反するエネルギーが小さいのが分かるが、向こうは普通の人が出来ないことをいくつも経験している一般人とはかけ離れた人。舞台での演技経験しかない、街の舞台俳優の存在が弱く見えたとしてもそれは仕方ない。別個で考えるべきである。

戦前の京都に実在した新聞「土曜日」を巡る群像劇。
主な舞台となるのは喫茶デイジーであるが、地図を見ると凄いところにある。今は綺麗になっているはずだが、往時はどうだったのだろう。
一方、京都の専門家を揃えていない弱さで、木屋町の喫茶店を「フランソア」ではなく「フランソワ」と書いてしまうなど、思い込みによるミスが目立つ。
さて、下鴨警察署であるが、元々は田中警察署であったが、移転して下鴨警察署を名乗っている。この時、現在地に移転したのか他の場所に移転したのかが不明。現在の住所は田中だが、下鴨が目の前で、田中警察署から移ったので下鴨警察署としたのか、あるいは下鴨に移ってから田中の現在地に再移転したのか、戦中、どこにあったのか気になるが、下鴨警察署は川端警察署と合併して左京警察署になるため、その手の記事しかヒットしなかった。

なお、戦前には松竹の撮影所は太秦ではなく下鴨(下加茂)にあった。下鴨神社の糺の森が、時代劇の風景に相応しかったからかも知れない。

新聞「土曜日」は、昭和11年7月から12年11月まで京都で発行されていた新聞である。映画批評などの文化欄、海外情報、京都のことを載せた社会欄などがあったが、警察に検挙されて短命に終わっている。ソ連のモスクワとの通信網なども問題視されたようである。
新聞「土曜日」を発行していたのは斎藤雷太郎という映画俳優である。大部屋俳優としての待遇に納得がいかず、新聞の発行を始めたのだった。映画欄には若き日の淀川長治も寄稿しているようだが、批評として成立していない短い文章だったので、これを機に映画評論家へ、とはならなかったようである。
ただ単に映画評を載せるだけでなく、伊丹万作(伊丹十三の父親、池内万作の祖父)監督の「新しい土」が満州への進出を促す内容であり、それによって満州国が傀儡国家であることが明らかになっていることを、ヒントとして載せるなど、政治的な批評に及ぶ場合もあり、特高に目を付けられるようになる。

ちなみに喫茶デイジーの白瀬キミ(山﨑茉由)が通っている学校は校名が記されていないが、現在は御所東小学校が建つ場所で、架空の学校である可能性が高い。

齋藤雷太郎が、主人公格かと思いきや、当時の特高のやり方などを体験した館林(門脇俊輔)の方が与えられた役割は大きいようだ。

政府に従う人々は日々増えていき、それは無表情の面で示される。個人的には面を使った演出は好きではないが、単純に好きではないだけである。

館林は大学で独逸文学を学んだ学者であるが、共産主義者ということにされ、転ぶよう命じられる。共産主義者でも何でもないので転ぶも何もなかったが、特高の刑事(ごまのはえ)と出町柳(往時は一帯は、「柳ヶ辻」、「柳」、「柳元」といういい方の方が一般的だったようだ。由来となった柳の巨木が倒れてからは、叡山電車のターミナルである出町柳に呼び方が移ろう)に食事に行ったりするなどして過ごし、最終的に作文を書いて釈放される。
「人民戦線」という言葉がある。奥寺(澤村喜一郎)は、戦争を阻止しようとし、電柱に「戦争反対」と書いた紙を貼ったり、「帝国主義侵略戦争反対」という言葉を広めようとするが、特高に逮捕される。

途中からは、録音した音声による、戦時下のメッセージが延々と流れる。面を被った人々が時計回りにせわしなく歩き回る。

ただ、戦後のシーンはもっと軽く済ませても良かったかも知れない。

無料パンフレット代わりに、新聞「土曜日」を模したタブロイド判が入っているが、東京ヤクルトスワローズの応援をしている人の記事があって楽しかった。

 

時代的に笠置シヅ子が重なっており、最初は、「Smile」、「東京節」の替え歌、「アラビヤの唄」「リンゴの木の下で」(ジャズバンド版)など、アメリカの曲やアメリカの影響を受けた音楽が流れるが、戦時色が濃くなるにつれて軍歌が流れるようになり、玉音放送を経て、最後は復興ソング第1弾の「リンゴの唄」が流れるなど、音楽でも時代の経過が把握可能であった。

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2026年4月22日 (水)

「新・科捜研の女1」Season5概要

「新・科捜研の女1」Season5 File.1。寝台特急(ブルートレイン)が出てくる。今はブルートレインは全廃となった。私は上野初金沢行きのブルートレインに乗ったことがあるが、一睡も出来なかった。1996年のことである。

新たに田中健が、佐久間誠として京都府警刑事部長となる。

寝台列車の中で中年男性が毒物によって殺害されていることが分かる。長崎発の特急あかつき。事件は1年前に遡る。文学系のサイトで知り合った5人がワゴンの中で練炭による集団自殺を図る。実際にこの時期には練炭などによる集団自殺が流行っていた。
寝台列車の中で死んでいた中年男性は、借金で首が回らず集団自殺に加わろうとしていた。その後、練炭自殺に加わっていた美咲(さとう珠緒)と響子(遠山景織子。特別出演となっている)が相次いで殺害される。美咲はOLだったが、執筆した小説がベストセラーとなっていた。
京都府警も新しい顔を迎える。最終回まで出演することになる土門薫が登場。前回までは小説家の武藤要役だった内藤剛志が演じる。武藤も出てきた当時は関西のアクセントだったが、すぐに標準語に変わった。土門も基本は関西弁であるが、犯人に迫るときには標準語に変わる。何と言っているのか分からない地域があるためだと思われる。なお終盤に京言葉を使ってマリコをからかう場面があるが、これは京都の人でないと分からないと思われる。土門がマリコの関西訛りを聞いて、「あんたも関西か」と聞く場面がある。マリコは横浜市出身という設定で、関西の言葉は基本出ないが、この時はたまたま出ていた。沢口靖子は堺市出身なので関西の言葉は普通に扱える。

実は土門は、過剰暴力により、舞鶴東署に飛ばされていたのだが、妹であるハイテク捜査部の土門美貴(加藤貴子)の働きで、京都府警本部に栄転となった。内藤剛志は五分刈りにしての役作りである。

その他では斉藤暁もSeason1とは顔はそのままだが別人という役で出ている。

犯人は練炭自殺に参加していた有紀(有森也実)。メイクでかなり暗めの顔にしている。苦しみを抱え、心中にも失敗して一人だけ生き残り、死ぬしかないと思っていたのに、美咲は自殺するつもりはなく、練炭での集団自殺を題材にした小説を書くために参加していた。響子もサイトの管理人と結婚に向けて歩き出していた。皆、幸せになろうとしている。それが恨めしかった。
なお、有紀は長崎にある篠山金属工業という小さな会社で事務員のような仕事をしているが、篠山金属工業の社長をなぜかハマコーこと浜田幸一が演じている。
長崎市での場面は、マリコが迷ったという設定にして、観光名所をこれでもかとばかりに映している。


「新・科捜研の女1」Season5 File.2。パティシエール(女性パティシエ)の遠山喜和子(丘みどり)の誕生日パーティーで、爆発事件が起こるパーティー会場となった洋館は、2000年に復元された京都女子大学錦華殿が用いられている。2階ベランダに出るシーンがあり、2階の内装は見えるのだが、1階が用いられているのかどうかは不明。キッチンはないので他の場所で撮っているはずである。
Season5に入ってから、マリコがコミカルなことをすることは減り、表情も敢えて固くして才気を感じさせるなど、我々が知る榊マリコに近くなっている。お笑い的要素は深浦加奈子などが受け持ち、元気で明るいキャラは加藤貴子が担当する。演技の分業制である。
主役はマリコだが、チームで演技する体制である。Season4では何のためにいるのかよく分からなかった宮前(山崎一)が、マリコに検査を頼まれて仕事をしている場面も多い。
また、番組の最後に、マリコと土門が関西弁でやり取りをしている。ただこれがいつまで続くのか分からない。先に書いたとおり、沢口靖子は堺市出身なので、関西の言葉を喋りながら育っているが、マリコは横浜市の生まれ育ちという設定なので、そんなに流暢な関西弁を喋られると違和感を抱く。
しかし、前回、遠山景織子(とおやま・きょおこ)が殺される役で出たのに、今回は遠山喜和子という名前の似た人物が出る。脚本家が異なるのだと思われるが、事前の打ち合わせの問題はあるとして、事前にいくらでも役名は変えられたはずなのにそれをしなかったということは、「問題なし」という見解なのだろう。
喜和子には、出来の良い弟子がいた。沢木美沙である。喜和子も日本最高のパティシエとして賞を受けているが、美沙はミラノ・コンクールで賞を受け、師匠である喜和子を侮るようになっていた。だが、実際、美沙の方が調理のバリエーションも多く、喜和子は嫉妬していた。
ということで、喜和子は美沙殺害を企てるのだが、そもそも自分の誕生日に殺人を犯そうと思うかという話である。おそらく喜和子と美沙は今は疎遠なので顔を合わせる機会が誕生日パーティーしかないのかも知れないが、めでたい日なのに。
マリコは、砂糖が爆発する可能性を指摘。実際、粉砂糖をオーブンに入れると爆発する。喜和子は、美沙がオーブンを開けたときに爆発するよう準備していた。だが、美沙は電子レンジでケーキを作ろうとしていた。
だが、オーブンの電源を切った後で必ず中を確認という喜和子からの教えを守った美沙は、オーブンを開け、爆発が起こったのだった。
喜和子はとっさに、クッキングテーブルの裏に身を隠し、左手のやけどだけで済んだ。
しかし、電子レンジで作るケーキをマリコが再現したことで、喜和子の美沙に対する思いが明らかになっていく。

京都らしい場面は五条大橋西詰と思われる場所しか出てこなかった。御池大橋西詰にも似た場所があるのでそちらかも知れない。


Season5 File.3。男性の絞殺体が見つかる。貝の一部が付着しており、首はクッキリとした墨の入ったもので絞められていた。
貝はボタンに使われているものだということが分かり、海外産。土門は、同じ貝を使っている仕立屋をピックアップし、殺されたのがテーラー貫井の店長であったことから、テーラーの石津(秋野太作)がホシとにらむ。しかし、石津にはアリバイがあった。
だがマリコは高温多湿の場所に遺体を置けば、死亡推定時刻が変わる可能性を述べる。そして、石津がアイロンのスイッチを入れたまま外出していたことが分かる。トリックを使ったのではなく、偶然死亡推定時刻が変化したのだ。
石津は40年前に貫井に拾われ、以後、評判のテーラーとして勤めてきた。だが、近年はミスが目立つようになり、貫井にクビを言い渡されていたのだった。まだ隠居出来る歳でもなく、テーラー一筋では他に何も出来ない。職人の悲哀が滲む回であった。
マリコと土門が歩くのは、鴨川の丸太町橋下から南。旧京都中央電話局上分局という名建築が上にあるが、ほとんど映っていない。京都は洋式建築の宝庫でもあり、これまでも学校の建築に見立てられた使い方はされているが、視聴者が京都にモダンなものを望んでいないのかも知れない。


「新・科捜研の女」Season5 File.4&5。今回は、「科捜研の女」シリーズ初の回跨ぎとなる。
山奥の採掘現場で男性の白骨死体が発見される。傍らにはICレコーダーが落ちていた。鑑識の進藤(山本圭)が現場でマリコらと共に現場検証を行う。死体が完全に白骨化するまでには7年ほど掛かるそうだ。
遺体は井上という男のもので、遺品から指紋が出る。1年前に殉職した木場警部(小林稔侍)のものだった。ということでオールアップしたはずの小林稔侍が再度登場する。
木場は生前、松山寿子(としこ)という女性と親しくしていた。寿子は女優で、現在は芸名の木村彩(渡辺典子)を名乗っている。今は小劇団である「蒼天」の主宰者でもある。以前、劇団付き演出家だった男とは内縁関係にあったが暴力が酷く、ある日、演出家に殴られて顔を腫らしながら雨の中を彷徨っている時に木場に出会った。木場の助言で心も強くなり、演出家とも離れて、現在は演出も自分でやっているようである。進藤は木場と彩の関係を知っており、昨夜、ミステリードラマが好きな娘と共にテレビを見ていたところ、松山寿子=木村彩が犯人役で出演しており、木場と彩の関係を思い出していた。
彩はDVで警察に4度ほど相談に訪れていたが、同じく暴力に悩む長山照子(川上麻衣子)というホステスと、同じ悩みを共有する仲として親しくなる。照子は、安西というチンピラに借金があり、返すことが出来ずたびたび暴力を受けていた。
マリコは現場に残されていたICレコーダーの音声を解析して貰うが、そこには木場の声が入っていた。このICレコーダー、感度が良すぎてツッコミのネタになりそうである。

5年前のマリコについての話が進藤から語られたり、生前の木場とマリコの再現映像が流れたりするのだが、明らかに以前のシリーズのマリコではない。「アメリカ帰りの氷のように冷たい女」にも見えるのは、今シリーズからで、「科捜研の女」Season1が始まった5年前のマリコは、「頭が良く、有能で明るいがちょっと残念な人」であった。「新・科捜研の女」とタイトルを変えたことで、マリコの性格も一新されたようである。
これまで沢口靖子が受け持っていたコミカルな場面も、いつの間にか若いイケメン(丁度、この回が放送された2004年頃に普及した言葉である)好きで甘えるという設定になった深浦加奈子と、土門薫刑事の妹役である加藤貴子が分散して担っている。沢口靖子は目以外は余り表情を付けないクールな演技だ。

劇団の話ということで、三条御幸町にある1928ビル(その名の通り1928年=昭和3年竣工の旧毎日新聞京都支局)の3階にあった小劇場のART COMPLEX 1928がロケで使われている。ART COMPLEX 1928は、以前は京都の小劇団のメッカであったが、現在はGEAR専用劇場となっている。
ここで本番を行うのだと思っていたが、実際はリハーサル会場という設定のようで、本番は外観からいって京都市右京ふれあい文化会館をロケ地にした劇場で行われるようだ。リハーサル会場で通し稽古を行っていたという謎の設定がある(本番の会場で全てやり直しになってしまう)。また舞台上のトップが舞台監督(監督とあるが、映画監督とは異なり、裏方の総責任者を差す。本番中はこの人がトップになることが多い)ではなく彩のマネージャー(Season4まで別の役で出ていた小林千晴が演じている)になっているのも、小劇場の知識が余りない状態で本を書いたからだと思われる。

浅田という井上の遠縁の金貸しから度々借金返済の催促があり、暴力も受けていた照子は彩に電話で浅田を殺すことに決めたと告げる。慌てて浅田の事務所に駆けつけた彩。照子は浅田殺害に失敗し、浅田に死ぬほどに殴られていた。彩はその場にあった壺で浅田の後頭部を打つ。二人は更に井上も殺害。彩が井上の喉をナイフで刺す。
操作線上に上がった照子であるが、結局は彩に殺される。
5年前、雨の日に出会い、木場からラーメンをおごって貰った彩。「夢を応援している」とも言われたが、結局は薄幸な女に留まることが出来ず、3人を殺害した殺人鬼に落ちてしまった。照子絡みの事件も殺害を受け持ったのは全て彩だ。

ロケ地として、今は内部改装されて別の施設になってしまった烏丸御池の新風館が映っている。兄妹を演じる内藤剛志と加藤貴子の場面だ。
土門美貴役の加藤貴子が取調室に忍び込んでパンを食べ、マジックミラーの向こうから土門薫役の内藤剛志に注意されるという場面もある。ここで加藤貴子が、「お兄ちゃん、今朝もトイレ流してなかったでしょう。汚いからやめてよね」と、その場には関係のないセリフを話すのだが、これは二人が同居していることを視聴者に分からせるためのテクニックとしてのセリフである。

渡辺典子や川上麻衣子といった放送時点でも懐かしい女優の共演。二人ともかなり若い頃に頂点が来てしまったため、保つのは難しそうだ。

クールな女に変貌した沢口靖子とマリコだが、木場刑事との最後の思い出(映っていないがインクラインの上を歩いていると思われる)や本編のラストでは笑顔を見せた。

「新・科捜研の女」Season5 File.6。
洛北医科大学に自転車で向かうマリコ。しかし、途中で無灯火運転ということで、東山署の婦警、で当時は良かったのだが(劇中にも「婦警さん」という言葉が出てくる)、今は女性警察官の村岡葉子(菊池麻衣子)に呼び止められる。盗難車ではないかと疑われ、後部のタイヤに空気が十分入っていないと指摘される。
遅れそうになったマリコは、自転車を鍵を付けたまま空き地に止めてタクシーを使うが、案の定、盗まれる。自転車を取りに来たマリコだが、自転車はないので帰ろうとするが、警察のサイレンが聞こえる。すぐそばの事務所で京都府議会議員の古谷要一が胸を果物ナイフで一突きにされて殺されていたのだ。古谷は京都政界での評判も良く、次の参院選に立候補が期待され、当選確実と見なされていた。
高架があることから、亀岡方面に向かうJR嵯峨野線沿いであることが分かる。本来なら東山署の管轄ではないが、芝居の嘘である。
犯人はマリコの自転車を盗んで逃走した可能性が高いことが分かる。そこでマリコの自転車のタイヤ痕を追うことに。

今回は観光地が比較的良く映る。祇園の辰己大神宮、京阪四条駅(現在は京阪祇園四条駅。舞妓が歩いている様子が映るが、舞妓は昼間にお座敷の格好で出歩かないので、イメージ映像、もしくは舞妓体験サービス中の観光客である)、平安神宮前の神宮道(岡崎公園内の車道は現在は歩道に変わっている)、太秦の広隆寺、哲学の道など。
犯人は、左京区岡崎の東天王町まで来たことが分かる。
深浦加奈子演じる光子が、古谷をワイルドでセクシーでナイスミドルで投票しようかと思ってたと言ったり、10円玉を見つけて大喜びしたり、血痕を追って男子トイレに入ってしまったりする。沢口靖子がコミカルな演技を止めたため、他の人がコメディー部分を受け持つが、この回は加藤貴子もシリアスな役目を帯びることになるため、深浦加奈子に集中しているのだと思われる。Season4では、あんたそんな人じゃなかったじゃん。

マリコの自転車は、JR嵯峨野駅で発見される。タイヤ痕は鴨川の東岸に集中しているが、嵯峨野は京都市内でも西の方である。更に一つ、よくロケに協力してくれている同志社女子大学今出川校地付近でも見つかった。この二つだけが逸れている。また、自転車に数種類の毛髪が付着しており、理髪店に行った後の可能性が考えられた。

マリコは、自分の自転車の後部タイヤに触ったはずの葉子の指紋が出ないことを不審に思う。また葉子は以前はロングヘアだったのに今はショートにしている。
葉子は、土門美貴と同じ京都府警内のテニスサークルに所属しており、美貴によると、水泳以外の運動能力はかなり高いそうで、ダブルスを組んだこともあるという。マリコは美貴に葉子の毛髪を手に入れるよう頼む。最初は反発した美貴であったが、一緒にテニスサークルに参加した日に、タオルに付着した葉子の髪の毛1本を手に入れる。毛髪鑑定の結果、同一のものとの結果が出た。

葉子は哲学の道沿いの自宅アパートに犯人を匿っていた。犯人は葉子の幼馴染みである飯島陽一郎。共に愛媛県新居浜(にいはま)市出身であり、幼馴染みであった。川で溺れた葉子を陽一郎が助けたこともあり、葉子は陽一郎のことを命の恩人と感じていた。別の高校に進んで別れたようだが、先日、行きつけの理容室が満員だったために、初めての店に訪れた葉子は陽一郎と再会した。だが、陽一郎は同じ新居浜市出身である古谷の不倫の証拠を掴み、強請っていた。古谷は陽一郎の父親に儲け話を持ちかけて破産させ、自殺に追い込んでいた。古谷の家は愛媛の地元ではよく知られた資産家のようである。

葉子は、マリコの自転車を、今出川通沿いに走らせ、嵯峨野駅に返したようだ。途中で、本来なら同志社女子大学がある場所も今出川通沿いである。

葉子が犯罪に加担したことが分かり、葉子がアパートの外に出たところで、土門らが尋問に訪れる。ここで菊池麻衣子が大声を出すのだが、哲学の道という観光地沿い、銀閣寺ハイツも実在のアパートで住人がおり、一戸建ての住宅や店舗もあるということで、おそらく全家屋に撮影への協力を呼びかけたのだと思われる。哲学の道には誰もいないので通行も止めているはずである。

京大生役が多く、「京大女優」と呼ばれたこともある菊池麻衣子。実際には慶應義塾大学卒である。京都に縁のある女優だが、最近は余り見かけない。今回は髪型がショートだったが、ロングの方が似合う。陽一郎に髪を切ってもらう前はロングヘアだった。おそらくだが、陽一郎ともっと話したくてショートになるまで切って貰ったという設定もあるのだと思う。
「科捜研の女」シリーズは、これまで京都市の東側でロケを行うことが多かったのだが、今回は広隆寺が登場するなど、西側でのロケも行っている。本作品でも小道具を扱う高津(こうづ)商会があるも広隆寺のそばだ。

Season5 File.7。「科捜研の女」シリーズは、脚本も演出もオーソドックスで、それゆえ長寿ドラマとなったのだと思われるが、この回は映画でよく見られるような実験的な要素をいくつも取り入れている。まず時間が移動するという演出が冒頭付近にあり、その後、窓の向こうを移動する人物を撮っていると思ったら、光子がクリーナーを吹き付けて窓の掃除をし始める(つまりカメラは誰かの視線ではない)、左側から背中を映しながらカメラが移行し、右側に抜けると別の場所になっている。若手刑事が捜査一課の部屋で一人語りをしていて、顔をちょっと左に向けるとそこはもう科捜研の部屋であり、科捜研のメンバーが話を聞いているという瞬間移動もある。その他にも主役であるはずのマリコが一番遠くから回ってカメラに入ったり、マリコが夕陽を背に立って始めは表情がよく見えないが、回り込んで見えるようになるなど、他の刑事ドラマでは余り見られない演出が施されている。沢口靖子が走ってドアの前まで来て、ドアが開いて数秒後に振り返ると、それまで誰もいなかったはずの場所に3人立っているという人物のワープもある。かなり特殊な回である。

右京区のアパートの一室で、若い男が銃殺される。モデルガンを改造した拳銃で、1発で死亡しているところを2発目も浴びせている。死んでいる相手を撃つというシーンは北野武監督の映画なら見かけるが、ドラマでは珍しい。若い男の名前は伊勢本隆。スーパー「ライフ」の主任である。実は伊勢本は15年前に同じ「ライフ」でパートとして働いていた菅久美子を射殺したことがあるのだが、当時は交番勤務だった土門によって吉沢(徳井優)が誤認逮捕され、15年間服役することとなった。徳井優は以前は別の役で「科捜研の女」に出ていたが、「よく似た他人扱い」である。
15年前に射殺された菅久美子の夫である建築士の菅勝(すが・まさる。渡辺裕之)は土門の昔からの友人である。
土門は誤認逮捕をしたことで自ら捜査一課の捜査を離れ、マリコと独自の捜査を始める。まず自宅を兼ねた町家の菅の建築事務所を訪ねるが、
土門「刑事が聞き込みに来るかも知れない」
菅「もう来てる」
と、土門がいきなりボケる。これも実験なのだろう。
菅は妻と城南宮で出会い、城南宮の名物であるカキツバタが二人とも好きだったことから交際がスタートしている。
土門は、捜査一課の若手からの要望で、刑事としての捜査に復帰するが、恨みを持っている吉沢に包丁で腹部を刺され、「西陣病院」に入院する。
吉沢がシロで伊勢本が妻を殺した犯人だと知った菅は、伊勢本の住所をメモする。住所的には京都市内で出さない方が良い場所である。この住所のメモの上に同じ人物が別のことをメモしていた。「P.S. ラーメンで」。今はラーメンズが有名になったが、放送当時はそれほどでもなかったことが察せられる回で、いずれも建築用語である。

「ライフ(LIFE。ライフコーポレーション)」は、関西でメジャーなスーパーで、あるいは他のスーパーだったら、「殺人犯と被害者が勤めていた」という設定を嫌がったかも知れないが、大型のライフの店舗が映し出され、コマーシャルになることの方が大きいと踏んだのだと思われる。「ライフ」はその後も店舗を増やし続けている。
観光名所は、今回は金戒光明寺の三門と石段、文殊塔などが映っており、墓地も撮影されている。


渡辺裕之は、コロナ禍に、自宅の地下にあったトレーニングルームで死去。「縊死」と発表されたが、自殺なのか事故なのかは明らかにされていない。

「新・科捜研の女」Season5 File.8。火災があり、焼死体が発見される。洛北医科大学で解剖が行われ、焼死ではなく扼殺された後で放火されたものと断定される。
京都市内では放火殺人が続いており(なんて治安の悪い街なんだ)、多くの現場に顔を見せていた影山(近藤公園)が逮捕された。影山は無職だが、若手刑事二人がかりでやっと取り押さえることが出来たほどの武闘派で、普通の若者ではないように思える。殺し屋なのかも知れない。
火災現場を捜査しているマリコは、京都中央消防署の鮫島(勝村政信)と合同で調査を行うことになる。京都中央消防署の顔でもある鮫島は、立て続けに火災現場で人命を救助して雑誌に載り、深浦加奈子と加藤貴子のコメディ担当組からキャーキャー言われる存在である。深浦加奈子はなぜかセクシーポーズもするが、少なくとも映像作品では慣れていないので嵌まっていない。誰が発案して、なんでやらせようと思ったんだろう?
研究員の日野(斉藤暁。Season1には別人の役で出ていた)は鮫島と旧知の仲である。

犯人逮捕を祝ってか、鮫島の家でホームパーティーが開かれる。だが、マリコは群れるのが嫌いなのかベランダに。そこに鮫島がやって来て花をプレゼントしようとする。
二人ともバツイチの独身。招かれた研究員は、「お似合い」「マリコさんのバツイチ生活にピリオド」などと言うと、加藤貴子演じる土門美貴は、「うちのお兄ちゃんどうなっちゃうの?」

番組が始まった当初から、社会性に欠け、スタンドプレーが目立ったマリコだが、今回は他の研究員の反発を招いてしまう。

発火原因を探るマリコは、ニトログリセリンが使われたのではと考える。ニトログリセリンが炭酸マグネシウムに変化して発火するのだが、市販の材料でどう作るか。下剤にはニトログリセリンが半分ほど含まれているので、薬局に行って買い占める(おーい、本当に必要な人にとっては迷惑だぞ。マリコ相変わらず)。最終的には海外から輸入した花の肥料を使うと発火するのだが、マリコは美貴に放火の記録と鮫島の足取りを辿るようお願いする。そしてマリコは夜中に鮫島の後をつける。火事の現場に出くわしたマリコは、大声で人々に教えようとするが、影山に襲われる。
鮫島が現れてマリコを助け、あんパンと牛乳というベタなものを手にした若手刑事(多分、笑うところなんだろう)が影山を取り押さえる。
影山が逮捕されて鮫島は、「やはり影山でしたね」と言うが、マリコは放火を行っていたのが鮫島だと見抜いていた。
おそらく、殺しを行っていたのが影山で、火付けは鮫島ということなのだと思われる。鮫島には殺害動機がない。
鮫島は、「火の中でしか生き甲斐を感じられない」と語る。

レギュラーのように出てくる祇園白川沿いでのロケが今日もある。京都らしい古い街並みの場面があるが、これはセットだと思われる。ラストに出てくる新風館は、名前と外観は変わらないが、改装が行われ、内部は撮影当時から大きく変わっている。ホテルとショップ、地下には映画館のアップリンク京都が入った。

なお、この回から、専門用語は字幕で表記されるようになっている。


Season5 LastFile。通常の1時間(CMなしで45分)枠での放送である。この回から、馴染みのない実験法などは字幕で説明されるようになる。
街中のネオンサインに、吊り下がる形で老年の男性の遺体が発見される。洛北医科大学法医学部教授の利根貝進一である。感電死と思われたが、洛北医科大学での検視に立ち合ったマリコは首に薄く絞められた跡があるのを見つける。一方、洛北医科大学で利根貝の下で助教授(まだ准教授となる前の話)を務める楠木里香(戸田恵子)は、利根貝の足の裏に感電の跡があるのを発見する。
利根貝の妻である数子(梅沢昌代)は、夫のことを「女にだらしない。浮気ばかり。天罰」と憤っていた。ずっと別居していたようだ。
死因を誤ったとして落ち込むマリコ。一方、里香は死因を見抜いた功績で教授に上がることが決まる。

「科捜研の女」の最初の方で、京都医科大学のキャンパスとして登場した龍谷大学深草キャンパスが、今回は洛北医科大学のキャンパスとして登場。以前は正門付近のみの使用だったが、今日は正門の裏に校舎が見えるアングルでも撮られており、校舎や校地も用いるなど全面的に協力している。
戸田恵子は、声優出身であるためか、他の女優よりも声に張りがあるのが分かる。マイクの加減もあるかも知れないが、声に芯が通って聞こえる。

薫と美貴の兄妹が、京都府警の屋上で語らう場面があるのだが、薫は塀の上に乗り、美貴はバドミントンをしている。最初は手前側にバドミントンの相手がいるのかと思われたが、そうではなく、一人でシャトルを打っているようだ。何してるんだろう?

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2026年4月15日 (水)

宮川町 第七十五回「京おどり」

2026年4月12日 宮川町歌舞練場三ツ輪座にて

午後4時から、宮川町歌舞練場三ツ輪座で、第七十五回「京おどり」を観る。五花街のうち四つが「をどり」表記を採用し、宮川町だけが「おどり」と書くが、理由に関しては誰も知らないとされる。おそらくなんとなく「おどり」にしたので理由も分からないのだろう。

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宮川町歌舞練場は経年劣化により5年前に取り壊され、新しい歌舞練場が同じ場所に建つまでは、京都府立文化芸術会館や京都芸術劇場春秋座で「京おどり」を行ってきた。宮川町は比較的新しいもの好きなので、京都芸術劇場春秋座で「京おどり」を行った際には、母体である京都芸術大学のアニメ専攻と組んで公演を行ったりした。正直、失敗だったと思うが。京都芸術大学と同じ瓜生山学園の京都芸術デザイン専門学校とは今年もコラボレーションを行っていて、舞芸妓のアニメ風似顔絵ポストカードなどを売っていた。
今回、ようやく新しい宮川町歌舞練場三ツ輪座での「京おどり」公演が行われる運びとなった。三ツ輪というのは宮川町の紋である。以前の入り口は宮川筋に面していたが、新しい歌舞練場の入り口は、宮川筋から東に入った新道通寄りにある。なお、公的な道標には「宮川筋」と書かれているが、「京おどり」の有料パンフレットには「宮川町通」と記されており、宮川町としては花街の名前三文字全てが入った名称にしたいようである。

「京おどり」に先駆けて、市川右團次や九團次が出演した公演があったようだが、バーで九團次さんに会っていないので、公演のことは知らなかった。

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入り口から入ってすぐのところは二階席の入り口で、一階席に行くには階段を使うかエレベーターに乗る必要がある。今回は珍しく抹茶とお菓子付きの券を買ったのだが、いただくには一番上の階まで行かないといけない。点茶担当は、ふく兆さん。控は富美彩さんである。

 

今回の京おどりは、北林佐和子の作による「京洛振袖始(みやこふりそではじめ)」全八景である。振袖というと東京では縁起が悪そうだが、京都ではそういうことはない。

宮川町歌舞練場三ツ輪座の一階席は手頃な広さ。良い劇場である。左右に花道があり、有効に使われる。緞帳は上手に桜、下手に紅葉である。地方の前の幕も上手側は桜、下手側は紅葉である。

第一景「柱建」四方の柱への感謝を唄い、三ツ輪の由来や宮川町の歴史が示される。三ツ輪は、鴨川の宮川(祇園祭の際に四条大橋で神輿を洗うので、四条大橋と団栗橋の間だけ鴨川を宮川と呼ぶ習慣がある)、川端通、四条通の南座と八坂神社の参詣の賑わいに由来すると唄う。その後は、歌舞伎由来の曽我の仇討ちの話なども出てくる。舞台上で芸妓さんが舞い、その後ろで舞妓さんが三味線を演奏する。

続く第二景「ささ(酒)売り」では、セリフがあるが通りが良かった。途中でお客さんに手拍子を呼びかける場面あり。

第三景と第四景の「京洛振袖始」。元ネタは近松門左衛門の「日本振袖始」。「古事記」をアレンジしたものである。なぜか素戔嗚命が、京の南で木花開耶姫と岩長姫に会うという展開になる。本来は、木花開耶姫と岩長姫は、天孫降臨中の瓊瓊杵尊と会い、岩長姫は醜女であったため、瓊瓊杵尊は木花開耶姫を妻に選ぶのだが、木花開耶姫には寿命があった。岩長姫には寿命がなかったが、見た目で選んだため、人間に寿命というものが出来てしまったという話である。
今回の話では岩長姫が妹である木花開耶姫への嫉妬から岩戸に閉じこもる。多分、天岩戸だと思われるのだが、そこ入ったら死ぬよ。ただ岩長姫には寿命がないためか死ぬことはない。やがておろちへと変身する。その後、素戔嗚命が現れ、おろち(槌のようなもので戦う)や水の精に翻弄されるが、木花開耶姫から草薙剣を貰い、岩長姫の嫉妬を剣に封じる。そして姉妹は仲良く振袖を着てこれが振袖始となったのだった。
水の精を演じる芸妓達にはかなり素早い動きが求められる。また殺陣は分かっていてもハラハラする。

続く第五景と第六景「都の染織」。そのまま都の染織を題材にした舞である。「恋はタテ糸 愛はヨコ糸」という中島みゆきみたいな歌詞が出てくる。またオノマトペが効果を上げている。西陣や千本(通)といった京の機織りで有名な場所も出てくる。実は友禅染は現在の左京区高野の高野川で行われていたのだが、残念ながら登場せず。
次いで呉服屋の店先での話となり、「浅黄にあらぬ情けの末」という言葉が出てくるが、浅黄は「浅き」に掛かっていることは間違いない。ただ「浅黄」には二種類あって、そのまま浅い黄色と、新選組のイメージが強い浅黄である。新選組の方は浅葱と書く方が多いが、永倉新八などは「浅黄色」と書き記している。おそらく浅い黄色は似合う人が少ないので、浅葱と書く方の「あさぎ」の可能性が高いと思われる。

第七景「狛犬さん招き猫さん」は、全員舞妓による舞。ただ「誰が見ても可愛い」というタイプの舞妓さんは最初からセンターにいて、その後にフォーメーションが変わっても必ず目立つポジションにいる。以前から思っていたが、やはり容姿はかなり重要なようである。舞妓の募集に「容姿端麗」とは書かれていないが、それは大前提だからだと思われる。
晴明神社、一条戻橋、下鴨神社、上賀茂神社などを巡る。背景は五山送り火である。正確に書くと火は灯っていないので、送り火が行われる五山である。
可愛らしい舞だが、やはり芸妓さんの方が腕などはピシッと止まる。
今は舞妓さんの方が芸妓さんより知名度が上だったりするが、これは宮川町の戦略により始まったと言われている。元々は「半人前」「修行中」を意味する言葉だった舞妓が、初々しさを売りに人気となった。もっとも、宮川町だけの力ではなく、山村美紗の「舞妓さんは名探偵シリーズ」など複数の要因はあるだろうが。

第八景はお馴染み「宮川音頭」。総踊りである。背景は桜。
煌びやかな場面なのだが、音楽の「これも所詮ひとときの宴」という調子により、今が華でいずれ失う舞芸妓の儚さが染みてくる。華々しいから悲しくなるというのはモーツァルトの音楽のようだ。転調を経てアッチェレランドとなり、緞帳が下りる。終わりが急かされているかのよう。それまでの1時間がまるで夢だったかのような心地になる。緞帳は桜の花びらだけのものに変わっていた。

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