名匠クラウディオ・アバドが描く豊饒なるワーグナー
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第5代常任指揮者であったクラウディオ・アバドが2000年と2002年に録音した「ワーグナー管弦楽曲集」(ドイツ・グラモフォン)。
音楽一家に生まれたクラウディオ・アバドは育ちの良さから生まれる気品ある音楽性を特徴とする指揮者。しかしそのためにドイツものを振らせると、「迫力に欠ける」、「深みがない」という評価を受けることもあった。
ベルリン・フィルのシェフを務めていた頃も、前任者であるカラヤンと比較され、「カリスマ性に欠ける」、「ドイツものを得意としない指揮者がベルリン・フィルを率いていいのか」という疑問を投げかけられることもあった。しかしこの「ワーグナー管弦楽曲集」はアンチ・アバドをも黙らせる傑出したアルバムである。
ベルリン・フィルの優秀な機能を生かし、強固な構築を保ちながら旋律を豊かに歌わせ、しかもスコアの細部まで目を配ることで、全ての音に湧き出でる泉のような生命力と清冽さを与えることに成功している。ワーグナーが書き込んだ音符が今初めて生命を与えられ、活動を始めたような新鮮さを持ち、スピーカーを勢いよく飛び出して部屋中を満たすような豊饒なる音楽。
輸入盤も出ているが、国内盤は特別に「ワルキューレの騎行」を収録。
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