オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団来日公演(西宮)
2006年10月9日午後2時から西宮市にある兵庫県立芸術文化センター大ホールで、フィンランドのラハティ交響楽団の来日公演がありました。指揮は音楽監督を務めるオスモ・ヴァンスカ。1953年、フィンランドに生まれ、シベリウス・アカデミーで名教師ヨルマ・パヌラに指揮を師事した名指揮者です。
画像は無料パンフレット。500円の有料パンフレットも売られていたのですが、結局購入しませんでした。
曲目は現代フィンランドの作曲家であるヨーナス・コッコネンの「風景~室内管弦楽団のための」、エドヴァルド・グリーグのピアノ協奏曲イ短調、そして「ラハティ交響楽団といえば」のジャン・シベリウス交響曲第2番。アンコールとしてシベリウスの「悲しきワルツ」と交響詩「フィンランディア」の2曲が演奏されました。
シベリウスを演奏させたら現在世界最高ともいわれるヴァンスカとラハティ交響曲のコンビ。その至芸を十分に堪能できる名コンサートになりました。
「オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団来日公演(西宮)の感想」(『猫町通り通信』より)
西宮北口駅南口にある兵庫県立芸術文化センター大ホールで、フィンランドのラハティ交響楽団の来日公演を聴く。
ラハティは首都ヘルシンキから北へ100キロほど離れたところにある人口10万人弱の小都市。スキーの大会が行われる街として一部では知られていたが、ラハティ市が1949年に設立したラハティ交響楽団の音楽監督にフィンランド指揮者のオスモ・ヴァンスカが1988年に就任。スウェーデンのBISに録音した「シベリウス交響曲全集」が大ヒットしたことで世界中の音楽ファンに知られる街となった。
ラハティ交響楽団は今や「シベリウスといえばラハティの名が真っ先に浮かぶ」というほどの名門オーケストラとなっている。
ラハティ響の黄金期を築いたオスモ・ヴァンスカだが、近くラハティのポストを退く予定で、今回がラハティ響の音楽監督としては最後の来日公演になる。
曲目は、予告では冒頭にコッコネンの「間奏曲」が演奏される予定であったが、同じ作曲家の作品である「風景~室内管弦楽のための」に変更となった。
2曲目がグリーグのピアノ協奏曲イ短調(独奏:ユホ・ポホヨネン)。メインはシベリウスの交響曲第2番である。
4階席で聴く。兵庫県立芸術文化センター大ホールの4階席はステージからかなり遠い。東京・渋谷のNHKホール3階席並みであるが、響きはNHKホールなど比較にならない程良く、残響も理想的。佐渡裕指揮のオープニングコンサート(ベートーヴェンの第九)で訪れたときはさほどとは思わなかったが(その時はレフト側〔下手〕サイドの2階席で聴いた)、遠くの客席で聴いて、優れたホールであることがわかった。
現代フィンランド音楽界を代表する作曲家の一人であったヨーナス・コッコネン(1921-1996)の「風景~室内管弦楽のための」は爽やかで詩的な曲であったが、続く有名曲2曲を聴いているうちに印象が薄くなってしまった。
グリーグのピアノ協奏曲イ短調のソリスト務めるユホ・ポホヨネンはまだ20代半ばのピアニスト。UFOを連想させるファーストネームと、金子みすゞの親友の名前を思い起こさせる苗字がユニークだ。
ポホヨネンは実に瑞々しいピアノを奏でる。設定テンポは少し速め。技術は確かであり、若さに任せない表現力の持ち主だ。全ての音を淀みなく響かせる力量には関心させられる。
オスモ・ヴァンスカ指揮のラハティ交響楽団も澄んでいながら厚みのある音を出す。
アンコール曲としてポホヨネンはグリーグの抒情小曲集より「春に寄す」を弾く。春になって溶けたばかりの雪が清らかな流れとなっていく様を連想させるような清冽な演奏であった。
シベリウスの交響曲第2番。この曲の理想像を見事に描き出した最高の演奏であった。
ラハティ交響楽団は総勢50人ちょっとの中編成のオーケストラであるが、音の鳴りは素晴らしい。バランスも最上に保たれ、テンポも理想的。
弦が大らかに歌う第1楽章。チェロのピッチカートに始まり、管楽器が次々に悲歌を奏でる第2楽章。そして立体感が素晴らしい第3楽章。スケール豊かな凱歌が何度も繰り返される第4楽章。いずれもこれまで私が生で聴いたシベリウス演奏の中でトップである。
アンコールは「悲しきワルツ」。特別な演出は施さない、落ち着いた演奏であった。
「悲しきワルツ」演奏後も、楽団員達が楽譜を繰り、これまでステージ上にいなかった打楽器奏者が徐に歩いて出て来たことで、更にアンコール曲があることがわかる。曲目も予想できる。
そして予想通り、交響詩「フィンランディア」が演奏される。冒頭のブラスから迫力満点であり、フィンランド第2の国歌とも言われる中間部の旋律も北欧の空気を連想されるヒンヤリとした音でありながら情熱一杯に歌われる。
そしてラストはヴァンスカとラハティ響の力を見せつけるような巨大な音の伽藍を築き上げる。最高の「フィンランディア」だ。
会場は割れるような拍手に包まれる。ラハティ響のメンバーが全員退場しても拍手は鳴りやまず、オスモ・ヴァンスカが一人でステージに現れて一礼。聴衆は最高の指揮をしたヴァンスカをスタンディングオベーションで讃えた。
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