第九あれこれ 2006 その3 バイロイトの第九
史上最も有名な第九の演奏は、1951年7月にヴィルムヘルム・フルトヴェングラーがバイロイト祝祭管弦楽団および合唱団を指揮したものでしょう。
フルトヴェングラーは最晩年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全曲のスタジオ録音を進めていたのですが、1954年11月のフルトヴェングラーの死により第九のスタジオ録音は行われませんでした。代わりにEMIが出したのが、1951年のバイロイト盤。フルトヴェングラーの死により発売許可が得られないままの発売でしたが、その演奏の出来映えにより、今日まで第九の代表盤とされています。
この録音は従来はEMIからのみ発売されていましたが、最近になって版権が切れたため、様々なレーベルから発売されるようになりました。写真は最新(2006年12月発売)のNAXOSヒストリカル盤。名技師マーク・オバート=ソーンによる復刻で、金管の鮮明度が増しています。その分、トランペットだけが妙に輝かしく却って妙になっていたりもするのですが、分離も良く、ラストのラストに起こる有名な音のズレが実は僅かなものであったことがわかったりするなど(EMIのブランククランクステレオ盤ではグシャリと潰れたように聞こえる)存在感を示しています。
フルトヴェングラーのバイロイトの第九は音質はともかくとして、スケールの大きさ、堂々たる音運び、フルトヴェングラーのベートーヴェンへの共感の深さなど、今後も歴史に残るであろう特別なものになっています。
バイロイトの第九の他のレーベルのCDや、フルトヴェングラーによる他の第九(たとえばフィルハーモニア管弦楽団とのルツェルンの第九など)も紹介したいのですが、それは来年以降ということで。
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